調査研究成果データベース

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詳細情報 E2000014587
報告書等題名 調査研究報告書 No.114 新規高卒労働市場の変化と職業への移行の支援
調査研究分野 雇用政策
労働市場
職業教育・進路指導
実施組織名 日本労働研究機構
研究参加者 小杉 礼子、下村 英雄、西澤 弘、本田(沖津)由紀、中島 史明
研究期間開始 1997年10月
研究期間終了 1998年9月
報告書等
−発表年月

1998年9月発表
−発行元 日本労働研究機構
−判型/ページ数 B5判/249
−発表・発表予定の別 発表
−販売の有無 販売
−要旨 【調査研究の目的】
我が国における新規高卒者の職業への移行は、高等学校と企業との緊密な連携関係のもとに、比較的スムーズに行われてきたとされる。しかし、情報化や高学歴化などの社会経済状況の変化に伴い、新規高卒者に対する企業の採用や育成のあり方も、急激に変化している。こうした新規高卒労働市場の変化に対し、高等学校の進路指導はいかに対処してきたのか。様々な変化は、地域特性や高等学校の学科によってどのように異なる表れ方をしているのか。これらについて実態を把握し、今後必要とされる進路指導の課題や、労働行政としての支援のあり方をさぐることを、本調査研究は目的とする。

【調査結果の概要】
1、求人側の変化
これまで大量の高卒者を採用していた大規模事業所が、製造部門の海外移転、契約社員などを多用する雇用管理への変更、採用対象の高学歴化などにより、高卒採用の中止・縮小を行っており、特に地方の高校への求人を削減している。一方、これまで新規高卒の採用が少なかった、あるいは採用できなかった小規模製造業やサービス職での求人が増加している。各高校に送られる求人票の数は、企業が1求人について複数校に求人票を配布しているため、それほどの減少にはなっていないが、その分競争が激化している。
2、求職側の変化
普通科では10年前の時点ですでに就職者は多くなかったが、さらに減り進学が増えている学校が多い。工業科では一部の学校を除き就職者が多いが、近年は全般にやや減少し、専門学校や推薦による大学・短大への進学が増加している。商業科では全体として就職者が大きく減り、卒業者の4〜6割程度になっている。都市部ではフリーターが、地方では進学が増えており、特に高校3年の初めには就職希望であった生徒が進学やフリーターに進路を変えるケースが増加している。いずれも、就職試験の失敗や学校内の推薦基準に達しなかったり、それを予期しての変更が多い。また、生徒の間には学校の進路指導を忌避する傾向も見いだされる。多くの高校では、生徒の就職希望が不明確であることが指摘されたが、その背景には、学校による選抜など「外的に」就職が決まる従来の指導システムが揺らぎ始めたため、逆に生徒の主体的な意思決定が重要化したという状況があると考えられる。
3、労働行政の類型
高卒就職においては、各地域の労働行政が就職日程を主導し、また政策的意志のもとに求人情報の流れを一定の方向に導いて、労働市場の需給調整の機能を果たしてきた。この関与には次の3つの類型がある。a.情報共有型=企業が学校を指定して求人を行うことをできるだけ排除し、また労働行政が求人を積極的に公開して、すべての生徒に平等に求人情報を提供する。b.情報規制型=学校と企業との相互信頼関係に基づく推薦指定校制を原則とし、行政の関与を最小限にとどめる。c.情報折衷型=指定校制を維持しながら、管内高校間の情報量の均等化を進める。このうちaタイプは労働力供給地域に、b・cタイプは労働力需要地域に多い。近年、労働市場状況の緩急や地元就職促進策など各地域の諸条件は変化したが、この三類型は基本的に変わっていない。
4、高校の進路指導の変化
上記のような労働行政の大枠のもとで、企業は求人票の送付を特定の高校に限る推薦指定校制をとり、高校は就職希望の生徒に一時点で一社のみしか応募を認めない一人一社制でこれに応え、また卒業までに全員に内定を得させることを重視してきた。このシステム自体は変更されていないが、就職希望者の質的・量的変化や企業の採用行動の変化とともに、学校ごとの指導方針の違いが鮮明化している。すなわち、従来は企業との信頼関係の維持を重視しつつ細かな編み目の指導を行ってきた職業科においては、その枠組みからこぼれる生徒への対応ができなくなりつつある。普通科では進路が多様であるため細かな対応ができず、指導の手控えともいえる状態になる場合もある。こうした中で、生徒の企業選択の機会を制約し、ミスマッチをももたらす危険がある一人一社制の問題点が、高校の進路指導担当者と企業の採用担当者双方の側で強く意識され始めている。
5、高校と企業との関係の変化
高卒就職においては、特定の高校と特定の企業との間に「求人−採用」が継続する関係(=「実績関係」)が重要な機能を果たすとされてきた。しかし調査対象校での実際の就職先を過去にさかのぼって検討すると、継続的な就職先は少なく、実績関係は従来考えていたよりはかなり弱い。しかも90年代半ば以降、特定企業への就職の継続性は顕著に低下している。継続性は普通高校で最も弱く、商業高校で最も強く、工業高校がその中間に当たるが、商業高校も近年の低下を免れていない。さらに、実績関係に付帯するとされてきた、1)成績等を基準とする校内選抜、2)企業によるその受容、3)成績や生活態度に対する日常的コントロールという諸現象についても、当てはまる範囲が狭まっている。すなわち、これまで日本の高卒就職システムの特徴とされてきたことは、全体像の中の一部分を強調した理解であり、また歴史的・偶発的産物であったといえる。

【調査研究のまとめ】
これまでの高卒就職のシステムは、大量の高卒者を一斉に就職させるのに適した効率的なシステムであった。しかし、求人者も求職者も急激に減少し、また、それぞれに内在的な要因から質的変化も大きい中で、従来の「推薦指定校制」と「一人一社制」に基づく学校と企業との「実績関係」の中で就職先を決定するシステムは、揺らいでいる。すなわち、指導にのらない生徒が出現しフリーターを選んだり、企業が自社試験を重視するようになり学校推薦の効力が低下するなどの事態が起こっている。さらに、そもそも「実績関係」による就職の範囲は、実態をつぶさに検証すれば、言われてきたほど広範にあったことではなく、さらにその範囲は90年代に入って縮小している。需給の変化に対応した新たなシステムの方向は明確ではないが、まず第1に、斡旋段階では求人の質や採用方法の変化を受けて、生徒にとっての応募の機会拡大と均等化を図ることが必要になると予測される。第2に、学校の指導にのらず未就職で卒業する者が増えるならば、それに対する援助における職業安定行政の役割がいっそう増大すると考えられる。第3に、学校推薦の機能の低下により、「よい就職先」への斡旋を誘因とした学校生活のコントロールは機能しなくなると考えられるため、学校は教育内容の実質的有効性や充実性を向上させることが求められるようになる。第4に、学校による配分機能が弱まる結果、生徒は主体的な進路決定を行うことが求められるため、学校進路指導はこうした進路選択力を身につけさせるような指導に早い段階から取り組むことがより重要になる。
−目次

[全文情報]
まえがき

 序章 課題の設定と研究の概要
  1 問題の所在
  2 高卒就職をめぐる先行研究
  3 本研究の課題
  4 研究方法
  5 結果の要約

第1部 高卒労働市場の変化と高校進路指導

 第1章 高学歴化と高卒労働市場の変化
  1 高学歴化の進展と若年人口の減少
  2 求人サイドの変化
  3 就職先の変化
  4 学科による違い
  5 フリーター・学卒無業者の増加
  6 新規高卒労働市場の主な変化

 第2章 新規高卒者の需要構造の変化
  1 分析課題
  2 求人票に見る量と質の変化
  3 進路指導担当教師が捉える求人の変化
  4 求人変化の背景と今後の展望

 第3章 高卒就職者の変化
  1 進路先の地域特性
  2 進路先の学科特性
  3 就職者の問題(ヒアリング調査から)

 第4章 高卒求職システムと就職先決定プロセス
  1 課題の設定
  2 高卒就職システムの現状
  3 新規高卒労働市場と行政の機能
  4 高校における進路指導
  5 企業の高卒採用行動
  6 高卒就職システムの光と陰

 第5章 実績関係の実態と変化
  1 分析課題
  2 分析結果
  3 まとめ

第2部 高等学校・企業・公共職業安定所のヒアリング記録
 (1)東京都A安定所管内
  1 管下の労働市場の概況
  2 都立A普通学校
  3 都立B工業高校
  4 都立C商業高校
  5 A社
  6 B社
  7 C社
 (2)埼玉県B安定所管内
  1 管下の労働市場の概況
  2 県立D普通高校
  3 県立E工業高校
  4 県立F商業高校
  5 D社
  6 E社
 (3)秋田県C安定所管内
  1 管下の労働市場の概況
  2 県立G普通高校
  3 県立H普通高校
  4 県立I工業高校
  5 県立J商業高校
  6 F社
  7 G社
  8 H社
 (4)長野県D安定所管内
  1 管下の労働市場の概況
  2 県立K普通高校
  3 県立L普通高校
  4 県立M工業高校
  5 県立N商業高校
  6 I社
  7 J社
 (5)島根県E安定所管内
  1 管下の労働市場の概況
  2 県立O普通高校
  3 県立P普通高校
  4 県立Q工業高校
  5 県立R商業高校
  6 K社
  7 L社E工場
 (6)愛知県F安定所、新潟県G安定所における新規高卒者への職業紹介の実際
  1 愛知県F安定所管内労働市場の概要
  2 F安定所管内の新規高卒就職者の状況
  3 F安定所が新規高卒就職に果たす役割
  4 新潟県G安定所管内労働市場の概要
  5 G安定所における新規高卒職業紹介の流れ
  6 G安定所における指導の実際と問題点
−問い合わせ先 日本労働研究機構
−JIL図書館所蔵の有無 資料センター(上石神井)で所蔵しています。
研究する上で実施した調査
−調査の有無

実施した
−調査方法 ヒアリング調査
−調査対象等 労働市場の需給状況から全国5地点(秋田県、東京都、埼玉県、長野県、島根県)の安定所を選び、さらに管下の高校18校(普通科8校、商業科5校、工業科5校)及び12事業所(建設業2、製造業4、小売り業3、サービス業3)、安定所については5地点の他、県としての政策的対応の異なる新潟県と愛知県の安定所にもヒアリング調査を行う
−調査開始 1997年10月
−調査終了 1998年4月
−調査事項 高校=進路指導の体制とプログラム、卒業生の進路状況、就職状況、求人状況等、事業所=採用・募集状況、他学歴・非正規雇用形態従業員の採用状況、雇用管理等、安定所=管下の高卒労働市場の概況、事業所、学校への指導の状況等
登録(調査)年月 2000年1月現在
情報入手方法 アンケート以外

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