論文データベース

[検索に戻る]

詳細情報 F1999010031
論文題名 地位達成過程と社会構造―制度的連結理論の批判的再検討
−カナ題名 チイ タッセイ カテイ ト シャカイ コウゾウ − セイドテキ レンケツ リロン ノ ヒハンテキ サイケントウ
分類 労働市場
著者氏名 佐藤 嘉倫
−カナ著者氏名 サトウ ヨシミチ
掲載誌名 日本労働研究雑誌
−巻号 457号
−発行年月 1998年7月
−発行元 日本労働研究機構
登録年月 1999年1月現在
内容抄録 (著者抄録)
近年,地位達成過程モデルに対する構造社会学の批判が盛んである。この批判は,入職経路に論点を絞れば,初職入職時における学校と企業の制度的連結と転職時における転職者の社会ネットワーク特性とを重視する。本稿では,1995年SSM調査データを用いて,この批判の検討を行い,次の結果を得た。(1)初職入職時には,学歴別および男女別で入職経路が異なる。(2)しかし初職威信を被説明変数とした回帰分析では,学校関係を利用できても直接参入と威信の違いはない。(3)現職での転職では,男性のみ前職が専門職だと学校関係を利用できると直接参入に比べて威信が高くなる。したがって初職と現職の違いと微妙な性差別を取り入れる方向に制度的結論論を修正する必要がある。

(論文目次)
I はじめに―構造社会学からの地位達成過程モデル批判
II サンプルと変数
III 初職と入職経路の分析
    1 初職入職経路の分析
    2 初職の分析
IV 現職と入職経路の分析
    1 現職入職経路の分析
    2 現職の分析
V むすび
全文情報

I はじめに−構造社会学からの地位達成過程モデル批判

 地位達成過程モデルは,Blau and Duncan(1967)によるパス解析を用いた研究以来,社会移動研究,特に世代間移動研究の標準型の一つになっている。日本でも,1975年社会階層と社会移動調査(以下SSM調査と略す)で本格的に導入されてから,やはり世代間移動研究のひな型となっている(富永,1979;盛山・直井・佐藤・都築・小島,1990)。この地位達成過程モデルは,単純化していえば,次のような仮定に基づくモデルである。親の職業と親の教育が本人の教育に影響し,親の職業と親の教育と本人の教育が本人の初職に影響し,親の職業と親の教育と本人の教育と本人の初職が本人の現職に影響する。もちろん研究者によって仮定の詳細は異なるし,また経験的には,たとえば親の教育が本人の初職に直接的に影響しないことも明らかになっている(富永,1979)。しかしながら,親の職業と親の教育,本人の教育,本人の初職,本人の現職を主たる変数とし,それらの間で時間的に先行する変数が時間的に後続する変数に影響するという発想は,地位達成過程モデルの中核部分である。
 この地位達成過程モデルに対して,構造社会学からの批判が盛んである(Breiger,1995参照)。すなわち地位達成過程モデルは個人と職業とのマッチング(ジョブマッチング)における構造的要因を無視している,という批判である。この批判の背後には,現実の労働市場は経済学が想定するような自由市場ではなく,市場の中に何らかの構造が存在する,という大前提がある。重視される構造的要因は論者によってさまざまである。内部労働市場論のように労働市場の分断と内部労働市場の内的構造を重視する議論もあれば(Doeringer and Piore,1971),Rosenbaum(1984)のトーナメントモデルのように企業内部での昇進構造に焦点を当てた研究もある(注1)。
 本稿では,構造的要因のうち入職経路=学校と企業のつながりや個人的紐帯=を分析の対象とする。もし構造社会学の主張が正しいとするならば,地位達成に対して入職経路は重要な説明変数であり,従来の地位達成過程モデルはこの説明変数を見落としていたことになる。入職経路の分析は,初職入職時の分析と転職時の分析に大きく分けられる。そして既存研究は,ジョブマッチングのメカニズムが両者で異なっていることを示唆している。初職入職時の分析では学校と企業の間の実績関係ないしは制度的連結(institutional linkages)が重視される(苅谷,1991;1998;Kariya and Rosenbaum,1995;苅谷・沖津・吉原・近藤・中村,1992)。これに対して,転職時の分析では転職者を取り巻く社会ネットワークの特性が強調される(Granovetter,1973;1974;Lin,Ensel and Vaughn,1981;Bridges and Villemez,1986;Marsden and Hurlbert,1988;Lin,1990;渡辺,1991)。これらの研究について,以下で簡単に説明しよう。
 苅谷(1991)は,高卒者の求人・採用をめぐる高校と企業との長年にわたる関係=これを彼は「実績関係」と呼ぶ=の実態を分析し,実績関係が経済的に合理的なジョブマッチングを実現していることを指摘する。そしてKariya and Rosenbaum(1995)では,実績関係よりも一般的な「制度的連結」という概念を用いる。これは「それを通じて個人のキャリアが移行していく,組織間の繰り返される選択的取引」(p.102)と定義される。そして彼らはこのような制度的連結が,日本の高校と企業の間だけではなく,アメリカの大学と企業の間にも見られると主張する。さらに苅谷・沖津・吉原・近藤・中村(1992)は,このような制度的連結が,日本の大学と企業の間でも(指定校制や学校推薦制が廃止された後でも)先輩後輩関係という形で存続していることを明らかにしている。
 これら一連の研究は,学校と企業との制度的連結が労働市場における重要な構造であることを示している。この点ではたいへん高く評価できる。しかし次の2点に関してあまり明確ではない。第1に,制度的連結を利用できた新卒者は利用できなかった新卒者よりも何らかの意味で有利な就職をしたことになるのだろうか。制度的連結に注目した研究は,制度的連結そのものに重点を置きすぎるために,このような比較が十分に行われていないように思われる(注2)。第2に,転職者は新卒者と異なり制度的連結を利用することはできないのだろうか。たとえばある人が転職を考える際に母校の先生に相談して良い職業に就くということはないのだろうか。この点に関しても,制度的連結に注目する研究は,新卒者を研究対象としているため,明確な回答を提示していない。
 次に,転職時における社会ネットワークの影響に着目した研究を検討しよう。この研究領域はGranovetter(1973:1974)によって発見されたといっても過言ではない。彼は,マサチューセッツ州ボストン郊外の町で過去5年以内に転職した専門・技能・管理の男性被雇用者を対象にした調査を行い,次のことを発見した(Granovetter,1974)。(1)個人的接触によって職情報を得た人の割合は公的手段や直接申し込みによって得た人の割合よりも高い。(2)職情報を個人的接触によって得た人の方がそれ以外の方法で得た人よりも満足度も収入も高い。(3)転職者と個人的接触の相手との紐帯の強さを接触頻度で測定すると,個人的接触で職を見つけた人のうち8割強が「ときどき会う人」または「めったに会わない人」と答えた。これらの発見に基づいて,彼は有名な「弱い紐帯の強さ」テーゼを提唱した(Granovetter,1973)。
 彼の研究は,労働市場における社会ネットワークの重要性を発見し,新しい研究領域を開拓した点で高く評価できる。しかし方法論的にはいくつかの問題がある。第1に,サンプル数が少ないため統計分析のほとんどがクロス表分析によるもので,他の変数の影響を統制していない(注3)。第2に,社会ネットワークの特性を紐帯の強弱だけに限定すると,他の特性の影響を見落としてしまう。
 彼以降の研究は,これらの問題を克服する方向で展開した。しかしながら,渡辺(1991)が指摘するように,結果は必ずしも一貫したものではない。Lin,Ensel,and Vaughn(1981)は,紐帯の強弱に加えて社会的資源も地位達成に影響すると想定した。これは,当該個人と紐帯でつながっている人々(特に職の仲介者)の持つ資源(富や地位など)が当該個人の社会的資源として当該個人の地位達成に影響する,という考え方である。Lin et al.は,ニューヨーク州のある地域に住む男性を対象とする調査を行った。そして,弱い紐帯は初職や転職後職業の地位に直接影響するのではなく,当該個人を地位の高い仲介者に結びつける方向に影響し,地位の高い仲介者が当該個人を地位の高い職業に結びつける,というメカニズムを提示した。Bridges and Villemez(1986)は,Granovetterの調査サンプルが限定的であることを批判し,シカゴの標準大都市統計地区(SMSA)を対象地域とし,女性や他の職種の労働者,5年以上の期間で転職した人を含むようにサンプルを拡張した。そして転職後収入を秘説名変数とする回帰分析の結果,人種,性別,教育,労働経験を統計すると,紐帯の強弱は転職後収入に影響しないことがわかった。Marsden and Hurlbert(1988)は,デトロイト地域を対象としてLin et al.とBridges and Villemezの追試とモデルの拡張を行った。すなわち職業威信と収入だけでなく,産業セクターや企業規模,職の自律性を被説名変数とする分析を行っている。職業威信を被説名変数とする回帰分析では,社会的資源にかかわる変数のうち仲介者の職業威信しか正の影響を持たず,紐帯の強弱は影響しない。また賃金を被説名変数とする回帰分析では,社会的資源にかかわる説明変数はどれも影響しない。これらの結果と産業セクターや企業規模,職の自律性を被説名変数とする分析の結果とを合わせて言えることは,すべての被説名変数に正の影響を及ぼす万能の社会的資源は存在しないということである。日本では渡辺(1991)が首都圏在住の男性労働者を対象にした調査を行い,年収や社会帰属意識,職務満足度,企業規模,職位を被説名変数とする分析から,おおむね「強い紐帯が望ましい転職結果をもたらすこと」(9頁)を明らかにした。
 以上のように,Granovetterから始まった研究領域は,紐帯の強弱だけではなく社会的資源の影響も視野に入れるようになり,また被説名変数も職業威信や収入だけではなく,職にかかわる他の変数を含めるようになった。この意味で,確実に研究の蓄積が進んでいる(注4)。しかしながら,一貫した分析結果が得られていないという問題がある。これは,渡辺(1991)が指摘するように,紐帯の測定方法や対象サンプルの違いから生じるものと考えられる。さらには,Marsden and Hurlbertらの研究が明らかにしたように,被説名変数に用いられる職業特性によっても分析結果は異なるだろう。
 本稿では,上で述べた二つの研究動向を踏まえたうえで,初職および現職に関して次の2種類の分析を行う。第1は,入職経路を規定する要因の分析である。制度的連結の理論が正しいとするならば,学歴は入職経路に大きく影響するはずである。すると,学歴が地位達成過程で果たす機能がより明確になる。第2は,職業に対する入職経路の影響の分析である。構造社会学の主張が正しいとするならば,この影響は大きいはずである。
 本稿では,これらの分析を男女別に行う。Bridges and Villemez(1986)は弾性だけでなく女性も含めた分析を行っている。しかし男女合わせたサンプルを対象とすると,男女の違いを抽出することはできない。本稿では,同じ変数を用いた分析を男女別に行うことで,男女間の地位達成過程の違いや入職経路の影響の違いを検討する。



II サンプルと変数

 分析対象となるサンプルは1995年SSM調査A票の回答者である(注5)。この調査は1995年秋に実施された全国調査で,A票に関しては設計サンプル数4032,有効回収数2653,回収率65.8%である。ただし本稿では,これらの回答者のうち新制学校教育を受けた人のみを対象とする。なぜならA票では新制学校教育を受けた人にのみ学校歴を詳しく質問していて,後述するように,これらの学校歴が重要な変数になっているからである。
 分析に用いる主な変数は,父親の主な職業(以下,父職と略す),本品学歴,初職入職経路,現職入職経路,本人職業(初職,現職,前職)である。父職と本人職業は,分析に応じて職業分類と職業威信スコアを使い分ける(注6)。本人学歴は,中卒,高卒(普通科),高卒(職業科),大卒(文系),大卒(理系その他)に分類する(注7)。入職経路については,調査票では13の選択肢から複数選択してもらっている。複数回答は分析が複雑になり複数回答したサンプル数も少ないので,これらのサンプルは分析から除外する。本稿では,13の選択肢を表1のように学校関係,個人的紐帯,血縁関係,直接参入に分類する(注8)。

表1 入職経路の対応表

 この分類は,本稿の分析にとって重要なので,ここで解説しておこう。本稿では紐帯の強弱による分類は行わない。その理由は二つある。第1に,前節で述べたように,紐帯の強弱に関しては一貫した分析結果が見られない。第2に,紐帯の強弱の測定法が確定していない。Granovetter(1973)は紐帯の強さを接触頻度(時間),感情的強さ,親密性,互酬的サービスの組み合わせとして定義しているが,実証研究では接触頻度のみを用いている(Granovetter,1974)。しかしLin et al(1981)は,接触頻度とは無関係に,知り合いと間接的紐帯(友人の親戚など)を弱い紐帯とし,親戚・友人・隣人を強い紐帯としている。したがって本稿では紐帯の強弱に拘泥せず,さまざまな紐帯を個人的紐帯としてひとくくりにし,他の入職経路との対比を重視する。
 個人的紐帯以外の入職経路としてまず考えられるのは,学校関係である。学校と企業の制度的連結や先輩後輩関係に関する議論から,初職入職時に学校関係は大きな影響を及ぼすと考えられる。血縁関係は世代間移動の視点から重要である。第1に,家業を継ぐことと自営業とのつながりがある(金,1998)。第2に,他の変数を統制しても血縁関係が地位達成に対して大きな影響を持つならば,地位達成過程はある意味で属性原理からまだ解放されていないことになる。直接参入は「つて」を頼らずに労働市場に参入することを意味する(注9)。これは経済学の想定する自由な労働市場における参入プロセスであり,構造的要因の影響を見るための基準カテゴリーとなる。



III 初職と入職経路の分析

 初職入職経路の男女別分析は図1のようになる。制度的連結の理論が示唆するように,学校関係で入職した人の割合が男女とも高い。ただし女性の方が男性よりも若干高い。学校関係ほどではないが,血縁関係と直接参入の割合も20%と高く,血縁関係では男性の割合が女性のそれより高い(注10)。個人的紐帯の割合は男女とも12%前後で他の入職経路に比べて低い。

図1 初職入職経路の分布

 本節では,先行変数→初職入職経路→初職という因果関係を想定する。すなわち初職入職経路という構造的要因を初職入職過程の媒介変数として扱い,先行変数と入職経路との関係と入職経路が初職に及ぼす影響を分析する。

1 初職入職経路の分析

 初職入職経路を規定する要因の分析は,Lin et al.(1981)や苅谷(1998),渡辺(1998)によって行われている。Lin et al.は紐帯の強弱を被説明変数とする回帰分析を行っているが,本稿では紐帯の強弱は扱っていないので,参考にならない。苅谷は1995年SSM調査データを用いて男女別に学校経由の就職をしたか否かを被説名変数とする分析を行っている。彼の研究は本稿と密接な関係にあるが,残念ながら,他の入職経路との比較がなされていない。渡辺は,やはり1995年SSM調査データを用いて,入職経路をパーソナルネットワーク,学校ネットワーク,直接入職に分類し,それらの対比を被説名変数とするロジスティック回帰分析を行っている。彼の分析も本稿と深いつながりがあるが,3種類の対比の結果を解釈するのは若干煩雑になる。そこで本稿では,入職経路と先行変数の微妙な関係をできるだけ単純にとらえるために,分析にはログリニアモデルとクロス表を用いることにする。
 本稿では,先行変数として父職と本人学歴を用いる。父職は本人の属性的資源として考える。ここでは父職を自営・農業と専門・管理・一般被雇用者とに分ける(注11)。自営・農業に注目するのは,本人に受け継げる資産があるからである。この点では,オーナー社長のような管理的職業も一つのカテゴリーとして分類すべきだと考えられるが,予備分析から独自のカテゴリーとして扱う必要がないことがわかっている。なお本人の属性的資源として父親の学歴や母親の職業・学歴も考えられる。しかしログリニアモデルを用いるので,できるだけ変数を少なくしたいため,父親の学歴は父職で代替できると想定して,分析には用いなかった。また母親の職業や学歴が直接的・間接的に女性の初職に影響することを明らかにした研究(岩永,1990)や母親の就業形態が女性の就業形態に影響することを示唆する研究(中西,1993)もあるが,本稿では同じ変数の影響の男女差を見ることに関心があるため,母親の職業・学歴も分析に用いることはあえてしなかった(注12)。
 学歴は前節で説明したように分類した。普通科高校よりも職業科高校の方が企業との実績関係が強い(苅谷,1991:82-83)。したがって高卒(職業科)の方が高卒(普通科)よりも学校関係のチャネルを通じて入職すると考えられる(注13)。また専門特化した大学の方がそうでない大学よりも企業との制度的連結を形成しやすい(Kariya and Rosenbaum,1995:115)。したがって大卒(理系その他)の方が大卒(文系)よりも学校関係のチャネルを通じて入職すると考えられる(注14)。
 父職・学歴・初職入職経路の連関を見るために,階層ログリニアモデルの選択を行った。その結果,男性の場合,父職×学歴と学歴×入職経路という交互作用効果を持つモデルが選択された(尤度比12.74,自由度15)。すなわち父職は学歴に影響を及ぼすが,入職経路に直接には影響を及ぼさない。一方,学歴は入職経路に直接的な効果を持つ。
 学歴と入職経路の関連を詳しく見るために,クロス表分析を行う(表2)。X2(Xの2乗)検定により1%水準で両変数間の独立性仮説は棄却される。調整済み標準化残差(以下,標準化残差と略す)を見ると,中卒では個人的紐帯と血縁関係の割合が高く,学校関係と直接参入の割合が低い。高卒(普通科)ではあまり違いはない。高卒(職業科)では学校関係の割合が高く,個人的紐帯と直接参入の割合が低い。大卒(文系)では直接参入の割合が高く血縁関係の割合が低い。大卒(理系その他)では学校関係の割合が高く血縁関係の割合が低い。

表2 本人学歴と初職入職経路のクロス表(男性)

 次に女性について見てみる。階層ログリニアモデルの選択では,父職×学歴と,学歴×入職経路,父職×入職経路という3種類の交互作用のあるモデルが選択された(尤度比11.91,自由度12)。男性の場合と異なり,父職と入職経路の交互作用効果が見られる。
 父職と入職経路のクロス表は表3のようになる。1%水準で独立性仮説は棄却される。標準化残差から,自営・農業では血縁関係の割合が高く学校関係の割合が低い。専門・管理・一般被雇用者では逆のパターンが見られる。学歴で統制すると,中卒の場合のみ独立性仮説は棄却される(5%水準,表省略)。このため階層ログリニアモデルの選択で父職と入職経路の交互作用効果が残ったと考えられる(注15)。

表3 父職と初職入職経路のクロス表(女性)

 学歴と入職経路のクロス表は表4のようになる。中卒では男性と同じパターンが見られる。高卒(普通科)では学校関係の割合が高く,直接参入の割合が低い。大卒(文系)と大卒(理系その他)では直接参入の割合が高く学校関係の割合が低い。

表4 本人学歴と初職入職経路のクロス表(女性)

 以上の男女分析からまず言えることは,男女ともに,全般的に(中卒女子を除いて),学歴が父職と入職経路の関連を断ち切っていることである。入職経路の一つに学校関係があるので,このことは当然といえば当然である。しかしこのことは父職と初職のつながりを学歴が切断するメカニズム=しかも従来の地位達成過程モデルが見過ごしていたメカニズム=の一端を示している。それは,特定の学歴を取得することで制度的連結を利用できるようになるというメカニズムである。
 ただしこのメカニズムは,学歴別にまた男女別に複雑はパターンを見せる。中卒の場合,男性でも女性でも人的資本(human capital)が相対的に低いので,個人的紐帯や血縁関係のような社会関係資本(social capital)に頼らざるをえない。また学校関係に頼れないのは,高校のような学校と企業との実績関係がないからだと推測できる。高卒(普通科)と高卒(職業科)を比較すると,高卒(職業科)で男女とも学校関係の割合が高くなるのは,予想されたとおりである。ただし高卒(普通科)に関していえば,女性の場合,学校関係の割合が高くなる。このことは普通科高校でも女子に対しては「生徒のためを思ってなされる教育的な職業配分」(苅谷,1991:216)が優勢であることを示唆する。ところがこのような教育的配慮は大学では男女で逆転する。大卒(文系)では,男女とも直接参入の割合が高い。これは大学と企業の制度的連結が弱く,また卒業者の人的資本が高いため個人的紐帯や血縁関係に頼らず直接に労働市場に参入できるからだと考えられる(注16)。しかしながら大卒(理系その他)の場合,学校関係に関する男女格差が著しい。男性の約半数が学校関係で入職しているのに対し,女性は約4分の1しか学校関係で入職していない。その分,直接参入と血縁関係の割合が高くなっている。ただし大卒(理系その他)には,女性サンプルだけの家政学関係や保育・幼稚園教育関係の短大卒などが含まれるので,この点を割り引いて見る必要がある。

2 初職の分析

 次に先行変数が初職に及ぼす影響を分析する。地位達成過程モデルの知見から,学歴と初職が強く結びついていることはわかっている。しかしその結びつきに関しては,いくつかの仮説が考えられる。まずBecker(1993)の人的資本論やCollins(1979)の資格社会論,Spence(1973)のシグナリング理論が考えられる。これらの仮説はそれぞれ違いがあるが,学歴による個人特性の有利な変化に着目する点では共通する。これらをまとめて個人特性仮説と呼ぶ。これに対して,制度的連結の理論から示唆される仮説がある(制度的連結仮説)。学歴を得ることで学校関係を利用でき,それを用いて有利な地位達成をするという仮説である。また学歴とは独立に,個人的紐帯や血縁関係を利用することで有利な地位達成をする,という社会ネットワーク仮説もある。本項ではこれらの仮説の妥当性を検討する。
 前項ではログリニアモデルを用いたが,本項では,従来の地位達成過程モデルとの連続性を考慮して,初職威信を被説明変数とし父職威信,学歴,入職経路を説明変数とする回帰分析を行う。父職は統制変数として用いる。学歴については中卒を基準カテゴリーとするダミー変数を作成し,入職経路については直接参入を基準カテゴリーとするダミー変数を作成した。分析結果を表5にまとめてある。モデル1は父職と学歴を投入したモデル,モデル2は入職経路を追加投入したモデルである。

表5 初職威信を被説明変数とする回帰分析

 この結果から二つのことが明らかになった。第1に,モデル1でもモデル2でも,男女ともに学歴による違いが明確に現れている。これは地位達成過程モデルからも予想されることである。ただし男女で微妙な違いがある。女性の場合,高卒の係数は男性よりも大きく,大卒(文系)と大卒(理系その他)の係数の差は男性ほど大きくない。このことは,女性にとって高校を卒業することが地位達成の重要な契機であるが,大学(理系その他)を卒業することは大学(文系)を卒業することよりも必ずしも有利に働かない,ということを意味する。
 第2に,モデル1とモデル2を比較すると,説明変数に入職経路を追加しても,男女ともに学歴の係数はそれほど小さくならないことがわかる。ただしモデル2から入職経路について興味深い発見がある。第1に,男女とも学校関係と直接参入で統計的に有意な差がない。第2に,直接参入にくらべて男性では血縁関係が,女性では個人的紐帯と血縁関係が初職威信を低くする方向へ働く。
 これらの発見から次のことが言える。学歴に関しては個人特性仮説が当てはまる。ただし入職経路も,制度的連結仮説や社会ネットワーク仮説とは異なる形で,学歴とは独立に初職威信に影響する。まず制度的連結の効果は見られない。また,個人的紐帯や血縁関係といった社会ネットワークによって入職すると,威信が低くなる傾向がある。これは社会ネットワーク仮説と矛盾する発見である。



IV 現職と入職経路の分析

 次に,転職経験者を対象とした入職経路の分析を行う。SSM調査では現職への入職経路を尋ねている。そこで転職者(初職と現職で従業先が異なる人)を対象にして入職経路の分布を見ると,図2のようになる。当然のことながら,初入職経路にくらべて学校関係は激減し,直接参入が激増する。また個人的紐帯の割合も増えている。さらに男女別に見ると,直接参入では男性の方が女性よりも多いが,個人的紐帯と血縁関係では女性の方が多い。初職の場合は血縁関係では男性の方が多かったが,現職では逆転現象が見られる。

図2 現職と入職経路の分析

 本節では,先行変数がこの現職入職経路に及ぼす影響と現職入職経路が現職に及ぼす影響を検討する。ただしこの分析には方法論的に難しい点が二つある。第1にセンサリングの問題がある。上述したように,ここでは転職者を対象とする。しかしながら,初職から調査時点に至るまで転職していない人でも将来は転職するかもしれない。このような人々のデータを落としてしまう問題がある。第2に,人によって前職に就いてから現職に転職するまでの時間がさまざまである。そしてこの時間の長短は転職過程に影響すると考えられる。
 これらの問題を回避するためには,イベント・ヒストリー分析を用いるのが望ましい。しかし現職入職経路のデータはセンサリングされたサンプルについては論理的に得られない。そこで次善の策として,前節と同様にログリニアモデルと回帰分析によって分析を進めることにする。

1 現職入職経路の分析

 本項では,先行変数として父職,本人学歴,前職を取り上げ,これらが現職入職経路の及ぼす影響を見る。男性から見てみよう。まず先行変数について説明する。父職に関しては,初職の場合と違って,予備分析から管理職の影響があることがわかっている。そこで自営・農業,管理,専門・一般被雇用者の3カテゴリーを用いる。学歴については前節と同じ4カテゴリーを用いる。前職に関しては,無職のサンプルは少なく意味を持たないので,このサンプルは分析対象から外す。また予備分析から専門職の影響があることがわかっている。そこで自営・農業,専門,管理・一般被雇用者の3カテゴリーを用いることにする。
 これらの先行半数と入職経路を用いて階層ログリニアモデル分析を行うと,前職×入職経路,父職×入職経路,父職×学歴×前職という交互作用のあるモデルが選択された(尤度比102.3,自由度120)。すなわち父職と前職が独立して入職経路に影響し,学歴は直接的には影響しないことがわかる。初職では学歴が入職経路に影響したが,現職への転職では学歴の影響は前職に吸収されたと考えられる。これに対して,初職では影響力のなかった父職が現職への転職では入職経路に影響するようになる。これは後で見るように,管理職の影響が強いからだと考えられる。以下では,父職と前職の影響をより詳しくい見るために,クロス表分析を行う。
 父職と入職経路のクロス表は表6のようになる。この表で興味深いのは,管理と専門・一般被雇用者との対比である。標準化残差を見ると,父親が専門・一般被雇用者の場合,血縁関係に頼ることは難しくなり,学校関係に頼らざるをえない。ところが父親が管理の場合,血縁関係による入職が専門・一般被雇用者にくらべて断然高くなる。このことは二つの可能性を示唆する。第1は,いったん外へ出した息子を自分の跡取りとして自分の会社に迎え入れることである。第2は,父親が管理職としての自分の影響力を利用して息子の転職をサポートすることである。

表6 父親と現職入職経路のクロス表(男性)

 前職と入職経路のクロス表は表7のようになる。この表で興味深いのは,専門と学校とのつながりである。標準化残差を見ると,管理・一般被雇用者が学校関係に頼れなくなっているのに対し,専門は現職への転職においても学校との関係を用いることができる。

表7 前職と現職入職経路のクロス表(男性)

 次に女性について検討する。男性の場合と同様に,先行変数として父親,学歴,前職を用いる。父職と学歴は男性と同じカテゴリーを用いる。前職に関しては,予備分析では男性の場合と異なり専門が独自の影響を示さない。また女性の場合,無職が重要なカテゴリーである(今田,1990;岡本・直井・岩井,1990)。そこで自営・農業,専門・管理・一般被雇用者,無線の3カテゴリーを用いる。なお入職経路に関しては,学校関係のサンプルが少ないので,このカテゴリーを欠損値扱いし,3分類の入職経路を用いる。
 先行変数と入職経路を用いて階層ログリニアモデル分析を行うと,父職×学歴,学歴×前職,前職×入職経路という交互作用のあるモデルが選択された(尤度比102.9,自由度104)。すなわち前職のみが入職経路に直接的な影響を及ぼす。男性の場合と異なり,父職の影響が見られない。これは女性の場合,管理が独自の影響を持たず,上述した二つの可能性が見られないからだと思われる。
 前職と入職経路のクロス表は表8のようになる。自営・農業の場合,男性とくらべて血縁関係の割合が圧倒的に高くなる。このことは自営・農業の女性が血縁ネットワークに埋め込まれていることを示唆する。さらに興味深いのは専門・管理・一般被雇用者と無職との対比である。前者では,血縁関係の割合が高く個人的紐帯の割合が低い。一方,後者では,逆のパターンを見せる。常識的には,前者の方が仕事を通じたネットワークを形成して,転職の際にもそのネットワークを利用すると考えられるが,データから現れるパターンはこの常識を否定する。

表8 前職と現職入職経路のクロス表(女性)

 以上の現職入職経路の分析から見えてくるのは男女格差である。第1に,父親が管理職であることは男性の入職経路に影響を及ぼすが,女性のそれには影響を及ぼさない。第2に,専門職の男性は転職の際に学校関係を利用できるが,女性ではそもそも学校関係を利用したサンプルが少ない。職業をめぐってはさまざまな男女格差が存在するが,入職経路に関する格差の存在がここで確認された。

2 現職の分析

 次に先行変数が現職に及ぼす影響を分析する。なお本節では男女の比較をするだけではなく,女性を前職が有職の女性と無職の女性に分けて,その違いも検討する。有職女性と無職女性では前職が違うだけではなく,キャリアパターンも異なると考えられる。したがって両者を女性全般として一括して扱うのではなく,別々に分析する必要がある(注17)。
 現職威信を被説明変数とする回帰分析を行う。説明変数は,父職威信,学歴(中卒を基準カテゴリーとするダミー変数),入職経路(直接参入を基準カテゴリーとするダミー変数),前職威信(無職女性の場合は用いない),転職時年齢,転職時西暦年である。年齢と西暦年は,転職に関する年齢の効果と労働市場の動向の効果を統制するために用いる(注18)。
 分析結果は表9にまとめてある。男性の場合,現職威信に対して学歴が興味深い効果を持っている。すなわち転職の際に大卒のみが有利な効果を持っている。また入職経路では学校関係の係数だけが有意に正である。したがって大卒で学校関係を利用できるものは労働市場において有利な位置を占めていることになる。

表9 現職威信を非説明変数とする回帰分析

 有職女性の場合,学歴も入職も影響しない。男性と違って大卒の学歴も有利に働かない。まさに前職だけを頼りに労働市場を生き延びる姿が浮かんでくる。
 無職女性の場合,夕食所異性の結果と比較すると,学歴の影響が興味深い。すなわち高卒(普通科)と大卒は有利な職に就ける。このことは次のことを示唆する。有職女性の場合,学歴の効果は前職までのキャリアの中に組み込まれていて,前職が人的資本ないしはシグナルとなる。これに対して,無職女性の場合そのような前職がないので,初職入職時と同じように学歴が人的資本ないしはシグナルとなる。
 さて,これら一連の回帰分析で,入職経路を説明変数に投入しても,学歴や前職の係数はあまり変化しない。また個人的紐帯と血縁関係の係数が直接参入のそれと有意に異ならないことから,現職への転職の場合には,このような社会ネットワークの「しがらみ」がなくなることがわかる。このように制度的連結仮説や社会ネットワーク仮説の描く労働市場像とは異なり,転職者は自由な労働市場で移動しているように見える。しかし一つだけ例外がある。それは,男性の場合にのみ学校関係が正の影響を持つ,ということである。したがって単純な制度的連結仮説は支持されないが,男性にのみ制度的連結が作用するという意味で,性差別を取り入れた制度的連結仮説は支持される。



V むすび

 前節までの分析で入職経路に関するいくつかの発見があった。ここではそれらが制度的連結の理論に対して持つ含意について検討する。
 初職入職経路は主に学歴の影響を受ける。しかし,制度的連結の理論の含意と異なり,学校関係を利用したとしても直接参入と結果は異ならない。この発見に対しては,Marsden and Hurlbert(1988)や渡辺(1991)のように職業威信以外の職業特性を被説明変数とする分析を行えば違いが出てくる,という反論もあるだろう。たしかに,本稿と同じ1995年SSM調査データを用いた苅谷(1998)によれば,初職で大企業に就職できたか否かを被説明変数とするロジスティック回帰分析では,学校経由は直接応募よりも大企業に就職するチャンスを高くする(注19)。しかし初職継続年数を被説明変数とする回帰分析では,学校経由も直接応募も同じように初職継続を促す傾向を持っている。したがって制度的連結の理論の検証を綿密に行うためには,さまざまな職業特性を被説明変数とする分析が必要になる。
 しかし本稿の発見は少なくとも制度的連結の理論を修正する必要があることを示唆する。たしかに初職入職時においては学歴によって学校関係を利用できるチャンスが異なる。しかし学校関係を利用できたからといっても,直接参入の場合にくらべて,必ずしも「望ましい」職業に就けるとは限らない。ところがいったん労働市場に入ってからの現職への転職となると,男性についてのみ制度的連結は有利に作用する。すなわち専門職の男性は学校関係を利用できるチャンスが高い。また学校関係を利用できる男性は現職威信が高くなる。このように従来の理論が示唆するよりも微妙な形で制度的連結は作用している。
 なお,本稿では先行変数が入職経路を規定するという因果関係を想定した。しかし合理的選択理論の立場から入職経路を分析するならば,「○○という職業に就きたいから××という入職経路を選ぶ」という仮定を設定することになる。また企業側の求人・採用仮定における合理的選択も考慮する必要があるだろう(注20)。この発想に基づいて1995年SSM調査データを分析したのが渡辺(1988)である。合理的選択理論と構造社会学は対立するものではなく,社会構造に埋め込まれながらもできるだけ望ましい地位達成を行おうとする人間像を描き出すうえでは相補的な関係にある。合理的選択理論と構造社会学の接点から地位達成過程を分析することは今後の実りある研究分野であろう。



(注1) ただしRosenbaum(1984:Ch.1)は内部労働市場論が一次セクターの重要性やキャリア経歴,外部環境の影響などを軽視していると批判している。

(注2) ただし苅谷(1998)は,学校関係とそれ以外の入職経路の比較を行っている。

(注3) このほかに,サンプルのバイアスに関する問題もある。Granovetter(1974)はこれらの問題に気づいていて,自らの調査の限界を自覚している。

(注4) 入職経路の研究は労働経済学でも行われているが,紙幅の都合上,本稿では扱わない。渡辺(1998)を参照されたい。

(注5) データの使用については1995年SSM研究会の許可を得た。

(注6) 職業分類に関しては,SSM総合分類(自営,専門,管理,大企業ホワイト,中小企業ホワイト,大企業ブルー,中小企業ブルー,農業)を基準とし,分析に応じて適宜カテゴリーを合併した。なおここでいう大企業とは従業員数1000人以上の企業を指す。また本人が自営だと答えても従業員数が300人以上の場合は,管理とした。職業威信に関しては,95年版威信スコアを用いた。このスコアに関しては,1995年SSM調査研究会(1995)と盛山・原(1998)を参照されたい。

(注7) 普通科・理数科の高校卒業者を高卒(普通科),農業・工業・商業・家庭・家政に関する学科の高校卒業者を高卒(職業科)とする。また法学・文学・経済・経営・教育・教養系統の学部卒業者を大卒(文系)とし,それ以外の学部卒業者を大卒(理系その他)とした。したがって大卒(理系その他)にはいわゆる理工系学部以外の学部卒業者も含まれるが,これらは入職過程において文系学部よりも理系学部に近いだろうと推測したからである。なお短大や高専,大学院は大学に含めた。

(注8) 初職の場合,前の従業先の紹介はありえないので,この選択肢は欠損値扱いとした。

(注9) 13の選択肢を一つも選ばないサンプルがいくつかあったが,これらは直接参入に含めた。

(注10) 学校関係と血縁関係の男女差に関しては,雇用職業総合研究所の調査結果も類似したパターンを示している(今田,1989)。

(注11) ここでいう一般被雇用者とは大企業ホワイト,中小企業ホワイト,大企業ブルー,中小企業ブルーである。

(注12) 渡辺(1998)のように,入職経路を被説明変数とするロジスティック回帰分析を行うならば,説明変数として父学歴や母職,母学歴を用いることも可能である。しかし本文中で述べた理由により,この手法は用いない。

(注13) 日本労働研究機構の調査でもこの予測を支持する結果が得られている(吉本,1990:46)。

(注14) 日本労働研究機構の調査でもこの予測を支持する結果が得られている(小杉,1994:38)。また国立大学と私立大学の違いも明らかになっているが(小杉,1994:39-40),サンプル数の関係から本稿ではこの違いは扱わない。

(注15) ただしこの主張には若干の留保がいる。なぜならクロス表におけるエラボレーションが学歴ごとに独立性を検定しているのに対し,ログリニアモデルは標本全体におけるモデルを検定の対象にしているからである(原,1983:258)。

(注16) 後で見るように,人的資本だけではなく,大卒という資格やシグナルが有利に働くのかもしれない。

(注17) このような「女性内分化」については,たとえば中西(1993)や吉原(1995)を参照されたい。

(注18) 転職時年齢・転職時西暦年の効果は線形的というよりもむしろ非線形的であり,ダミー変数を用いるのが適当だろう。しかしここでは分析を簡略にするために,連続変数を用いた。また無職女性を対象にした分析では,既婚か否か,既婚者ならば夫の職業や子供の数・年齢も有力な説明変数候補となりうる。しかし男性や有職女性と比較するために,これらの変数を用いることはしない。

(注19) 苅谷の用いた学校経由・直接応募は本稿の学校関係・直接参入と若干異なる。彼の学校経由は「卒業した学校や先生の紹介」であり,直接応募は「求人情報を見て直接応募した」である。

(注20) 企業側の求人・採用過程や組織特性を取り入れた分析はMarsden and Campbell(1990)が行っている。


参考文献
Becker,G.,(1993)Human Capital,Third Edition,The University of Chicago Press.
Blau,P.M.and O.D.Duncan,(1967)The American Occupational Structure,Wiley.
Breiger,R.L.,(1995)“Social Structure and the Phenomenology of Attainment”,Annual Review of Sociology,21:115-36.
Bridges,W.P.and W.J.Villemez.,(1986)“Informal Hiring and Income in the Labor Market”,American Sociological Review,51:574-82.
Collins,R.,(1979)The Credential Society:An Historical Sociology of Education and Stratification,Academic Press.(新堀通也(監訳),(1984)『資格社会−教育と階層の歴史社会学−』,有信堂)。
Doeringer,P.B.and M.J.Piore,(1971)Internal Labor Markets and Manpower Analysis,D.C.Heath and Company.
Granovetter,M.,(1973)“The Strength of Weak Ties”,American Journal of Sociology,78:1360-80.
Granovetter,M.(1974)Getting a Job:A Study of Contacts and Careers,Harvard University Press.
原純輔(1983)「質的データの解析法」,直井優(編)『社会調査の基礎』,サイエンス社。
今田幸子(1989)「初職達成とその適応」,雇用職業総合研究所(編)『青年の職業適応に関する国際比較研究−学校から職業への架橋−』(職研調査研究報告書No.86),雇用職業総合研究所。
今田幸子(1990)「地位達成過程−閉ざされた階層空間−」,岡本英雄・直井道子(編)『現代日本の階層構造 4 女性と社会階層』,東京大学出版会。
岩永雅也(1990)「アスピレーションとその実現−母が娘に伝えるもの−」,岡本英雄・直井道子(編)『現代日本の階層構造 4 女性と社会階層』,東京大学出版会。
苅谷剛彦(1991)『学校・職業・選抜の社会学』,東京大学出版会。
苅谷剛彦(1998)「学校から職業への移行過程の分析−初職入職経路と職業的キャリア−」,苅谷剛彦(編)『教育と職業−構造と意識の分析』,1995年SSM調査研究会(科学研究費成果報告書)。
苅谷剛彦・沖津由紀・吉原恵子・近藤尚・中村高康(1992)「先輩後輩関係に“埋め込まれた”大卒就職」,『東京大学教育学部紀要』,32:89-118.
Kariya,T.and J.E.Rosenbaum,(1995)“Institutional Linkages between Education and Work as Quasi-internal Labor Markets,”Research in Social Stratification and Mobility,14:99-134.
金明秀(1998)「自営業と職業移動」,佐藤嘉倫(編)『社会移動とキャリア分析』,1995年SSM調査研究会(科学研究費成果報告書)。
小杉礼子(1994)「大学卒業時の就職行動」,日本労働研究機構(編)『大学就職指導と大卒者の初期キャリア(その2)−35大学卒業者の就職と離転職−』(調査研究報告書No.56),日本労働研究機構。
Lin,N.,(1990)“Social Resources and Social Mobility:A Structural Theory of Status Attainment,”R.L.Breiger(ed),Social Mobility and Social Structure, Cambridge University Press.
Lin,N.,W.M.Ensel,and J.C.Vaughn,(1981)“Social Resources and Strength of Ties:Structural Factors in Occupational Status Attainment,”American Sociological Review,46:393-405.
Marsden,P.V.and K.E.Campbell.(1990)“Recruitment and Selection Processes:The Organizational Side of Job Searches,”R.L.Breiger(ed),Social Mobility and Social Structure,Cambridge University Press.
Marsden,P.V.and J.S.Hurlbert,(1988)“Social Resources and Mobility Outcomes:A Replication and Extension”,Social Forces,66-4:1038-59.
中西祐子(1993)「ジェンダー・トラック−性役割観に基づく道路分化メカニズムに関する考察」,『教育社会学研究』,53:131-54。
岡本英雄・直井優・岩井八郎(1990)「ライフコースとキャリア」,岡本英雄・直井道子(編)『現代日本の階層構造 4 女性と社会階層』,東京大学出版会。
Rosenbaum,J.E.,(1984)Career Mobility in a Corporate Hierarchy,Academic Press.
盛山和夫・原純輔(1998)「威信スコアの使い方について」,都築一治(編)『職業評価の構造と職業威信スコア』,1995年SSM調査研究会(科学研究費成果報告書)。
盛岡和夫・直井優・佐藤嘉倫・都築一治・小島秀夫(1990)「現代日本の階層構造とその趨勢」,直井優・盛山和夫(編)『現代日本の階層構造 1 社会階層の構造と過程』,東京大学出版会。
1995年SSM調査研究会(1995)『SSM産業分類・職業分類(95年版)』,1995年SSM調査研究会。
Spence,A.M.(1973)“Job Market Signaling,”Quarterly Journal of Economics,87:355-74.
富永健一(1979)「社会階層と社会移動の趨勢分析」,富永健一(編)『日本の階層構造』,東京大学出版会。
渡辺深(1991)「転職−転職結果に及ぼすネットワークの効果−」,『社会学評論』,42-1:2-16.
渡辺勉(1998)「戦後日本の入職経路の分析」,佐藤嘉倫(編)『社会移動とキャリア分析』,1995年SSM調査研究会(科学研究費成果報告書)。
吉本圭一(1990)「進学・就職の選択過程と指導」,日本労働研究機構(編)『高卒者の進路選択と職業指向−初期職業経歴に関する追跡調査より−』(調査研究会報告書No.4)日本労働研究機構。
吉原恵子(1995)「女子大学生における職業選択のメカニズム−女性内分化の要因としての女性性−」,『教育社会学研究』,57:107-24。


さとう・よしみち 1957年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。東北大学より博士(文学)の学位を取得。東北大学文学部助教授。主な著書に『意図的社会変動の理論−合理的選択理論による分析−』(東京大学出版会,近刊)など。行動科学・社会学専攻。

[先頭に戻る]