論文データベース

[検索に戻る]

詳細情報 F1999040291
論文題名 年金・雇用保険改正と男性高齢者の就業行動の変化
−カナ題名 ネンキン・コヨウ ホケン カイセイ ト ダンセイ コウレイシャ ノ シュウギョウ コウドウ ノ ヘンカ
分類 高齢者労働問題
著者氏名 小川 浩
−カナ著者氏名 オガワ ヒロシ
掲載誌名 日本労働研究雑誌
−巻号 461号
−発行年月 1998年11月
−発行元 日本労働研究機構
登録年月 1999年4月現在
内容抄録 (著者抄録)
わが国の人口構造は急速に高齢化が進んでおり、団塊の世代が60歳を超える21世紀初頭には世界的にも極めて高齢者の比率が高い社会になると見込まれている。このような状況において、高齢労働者の有効活用は政策的に重要な課題である。本論文では、年金制度や高年齢雇用継続給付のような補助金制度が高齢者男性の就業行動にどのような影響を与えるかについて、「高年齢者就業実態調査」の個票データを用いて分析を行い、以下のような推計結果を得た。1)本来年金という概念を導入することによって、従来の制度であっても在職老齢年金が就業促進的な効果を持っていることを直接的に示した。2)高年齢雇用継続給付は就業促進的な効果を持つが、弾力性は1より小さいことを示した。3)2013年に予定されている厚生年金の部分年金化は年金額の減少による就業促進効果よりも在職老齢年金の減額による需要減退の効果の方が大きいことが推定された。4)在職老齢年金を雇用補助金として積極的にデザインしなおすことにより、高い人的資本を持つ高齢者を活用できる可能性があることが示された。

(論文目次)
I はじめに
II 在職老齢年金・高年齢雇用継続給付の効果
   1 厚生年金の部分年金化
   2 在職老齢年金
   3 高年齢雇用継続給付
   4 厚生年金の影響の分解
   5 本来年金の定義
   6 本来厚生年金の推定
   7 市場賃金の推定
   8 在職老齢年金の推定
III 補助金としての在職老齢年金を含んだ推定
   1 補助金を含んだ分析の枠組み
   2 データと説明変数
   3 雇用補助金としての在職老齢年金および高年齢雇用継続給付の効果
IV 制度改正による就業行動の変化
   1 賃金月額と雇用補助金スケジュールの変化
   2 高年齢雇用継続給付および在職老齢年金制度改正の影響
   3 厚生年金の60−64歳部分年金化の影響の推定
V まとめ
全文情報

I はじめに

 わが国の人口構造は現在急速に高齢化が進んでおり,団塊の世代が60歳を超える21世紀初頭には世界的にも極めて高齢者の比率が高い社会になると見込まれている。この高齢化の趨勢は過去の世代ごとの出生数の大きな差に起因するものであり,完結出生率が1970年出生コウホート以降では2.0に戻るような強力な少子化対策を行ったとしても,老齢人口比率に大きな変化が出てくるのは21世紀後半になるという大きなタイムラグがある(麻生1997)。
 そのため,短期的な対策としては人口構造の高齢化に伴い高齢化していく労働力をどのように有効に利用していくかという点が課題となってくる。特に就業意欲が旺盛な60−64歳層の雇用就業の場の確保は政策的に極めて重要であるといえる(清家ほか1997)。
 労働力需給に関するマクロモデルから推計された2010年における60−64歳男性の推定労働力人口は394万人,推定労働力率は81.7%であり(いずれも雇用政策研究会[1995]による推計値),これは1995年の実績値と比較してそれぞれ+126万人,+6.8ポイントの増加となっている。ただし,この数値は個人の選択としてこのような増加が達成されるという推定ではなく,あくまでマクロモデルとしてわが国の労働需給を推定した結果である。
 しかしながら,一律定年制を採用している企業での定年年齢は60歳としている企業が8割弱であり,現在65歳以上の定年年齢となっている,あるいは今後65歳以上に定年年齢を引き上げる予定がある企業の割合は8.1%にすぎない(注1)。
 また,60−64歳層の有効求人倍率は0.1以下で推移しており,60−64歳層の雇用を確保するためには就業意欲の喚起よりも労働需要を増やすような施策が必要であることを示している。
 以上の点を考慮し,本論文では,1994年の年金改正および高年齢雇用継続給付が高齢者の就業に与える影響に分析を加えることにしたい。
 1994年の年金制度改正により,2013年(女性は2018年)までに厚生年金の定額部分および加給年金の特別支給が停止され,定額部分については自営業者の国民年金(注2)と同等の扱いになることが決定された。これは高齢者の就業に関しては年金額を減らすことによって促進する効果を持つと予想される。
 一方,1994年改正では同時に在職老齢年金についても変更が加えられ,従来の賃金+年金=一定(生活費保障)という考え方から賃金+年金が賃金収入に伴って増える方式(雇用促進型)に切り替えられた。また,60歳時点での賃金と再雇用後の賃金格差が大きすぎることが引退促進的であるとの考え方から,雇用保険から給付される高年齢雇用継続給付が新たに設けられた。これらは高齢者の就業に対し補助金を出すことにより企業の負担を軽くし,雇用を支援する効果を持つであろう。
 これまでの研究では,公的年金が引退促進的であるということは一貫して確認されてきているが,在職老齢年金を雇用に対する補助金と考えた場合の効果については,低賃金を選択する高齢者が少なからず存在することから間接的にその効果が認められているものの(橘木・下野1994),直接的な分析は行われていない。本論文では,「就業しなかったならば本来得られたはずの年金」(以下,本来年金と略記)を推定することにより,在職老齢年金の持つ雇用に対する補助金としての効果を直接的に推定することを試みる。



II 在職老齢年金・高齢者雇用継続給付の効果

 公的年金と高齢者の就業行動について考慮する場合,わが国には年金給付額や仕事からの収入による減額システムが異なる(1) 厚生年金,(2) 国民得年金,(3) 共済年金があり,それぞれの受給者の就業行動はかなり異なるということを考慮する必要がある。特徴を簡単に整理すると,

厚生年金 民間企業雇用者のための年金制度であり,支給額は比較的高い。65歳未満で雇用されている場合は被保険者となるため,仕事からの収入に応じてかなりの割合で年金額が減額される。また,ある一定額以上の収入がある場合は支給停止される

国民年金 自営業者や雇用者の妻のための年金制度で,給付額は比較的低い。満額支給開始年齢は65歳であるため,現在の興味の対象である60歳代前半層では受給率は低い

共済年金 主として公務員のための年金制度であり,職域年金相当分が上積みされるため厚生年金よりも給付額は一般に高い。受給資格者が厚生年金の被保険者となった場合には減額されるが,減額率は厚生年金の在職老齢年金にくらべればはるかに穏やかである。また,どんなに所得が多くても支給停止にはならない

のようになる。以下では,
 1.被保険者数が最大の年金制度であり,長期の労働市場を考慮する場合には影響が一番大きいこと
 2.年金制度改革の影響が直接現れる年金制度であること
 3.60歳以上の被保険者に対する在職給付が収入感応的であること
などの理由により厚生年金受給者の就業行動は3種類の年金制度のうち最も年金額や制度に影響されやすいと考えられるため,厚生年金に分析の対象を限定する。


1 厚生年金の部分年金化

 厚生年金の1994年改正では2013年(女性は2018年)までに厚生年金の定額部分および加給年金の特別支給が停止され,定額部分については自営業者の基礎年金と同等の扱いになることが決定された。この結果として,基礎年金部分の繰り上げ支給を選択しない場合は60歳代前半に支給される部分年金額は現在の厚生年金特別支給額の6割程度(注3)となるはずである。
 公的年金,特に厚生年金が引退促進的であることは多くの先行研究が一致して示すところであり,60歳代前半の厚生年金の部分年金化は厚生年金額を減らすことによって就業促進効果を狙ったムチであるといえる。


2 在職老齢年金

 従来の在職老齢年金制度は,年金は生活保障であるから追加的な収入がある場合は総額を一定以下にしておくため年金を減額する,という制度であり,引退促進的であると一般にはいわれてきていた。これは実質的には勤労収入に対して100%の課税を行っているのと同等であるという考えからである。
 これが1994年の年金改正で180度方向転換して雇用促進的な制度に変更されたとされている。減額の幅を減らして,賃金増2に対して賃金+年金の合計額が1増えるようなシステムとなったからである。
 しかしながら,従来のシステムであっても使用者と労働者が結託することにより雇用に対する補助金としてこの制度を利用することが可能であった。これは,減額システムの基準となる収入が月収のみであり,賞与が含まれていないという理由による(高山1992b)(注4)。
 1994年改正以前の在職老齢年金のシステムで減額前の厚生年金月額が20万円の高齢者を雇用する場合を考えてみよう。極端な例として
 1.月収9万4000円,年間賞与295万2000円で雇用する
 2.月収50万円,年間賞与ゼロ円で雇用する
の二つの賃金システムを比較してみる。1の場合,厚生年金の減額率は0.2であるから,在職厚生年金額まで含めた雇用者の年収は
 (9.4万+20万×(1−0.2)×12+295.2万=600万
となる。一方,2の場合は厚生年金は支給停止となるため,雇用者の年収はやはり600万となり,在職老齢年金まで含めれば年収額は等しくなる。一方,使用者の負担額は1のケースでは408万円,2のケースでは600万円である。つまり1のケースでは実質的には年額200万円近い雇用補助金を得ているに等しい。
 このことは,改正前の在職老齢年金の仕組みであっても,賞与で年収を調節することにより雇用に対する補助金として利用可能であったことを示している。(注5)
 また,このような結託を仮定しない場合でも在職老齢年金制度の存在自体が再雇用などで従前の職場で働けるような限られた人以外の高齢者に進んで低賃金率を選択させるため,結果的に労働生産性以下の賃金率で高齢労働力を利用することができること,さらにこのような状況は高齢者の雇用促進効果を持つため,結果的には需要面からみると補助金として利用されていることが橘木・下野(1994)で明らかにされている。


3 高年齢雇用継続給付

 60−64歳層で再就職する場合,学卒後直ちに就職して長期勤続している労働者と比較して賃金が大幅に低下するのが一般的である。企業規模計・学歴計で勤続年数別に所定内給与をみると,60−64歳層では勤続年数1年未満の場合月額23万7000円に対し勤続年数30年以上では38万1700円となっており,約60%になっている(注6)。
 1992年の退職厚生年金(男性)の新規裁定者平成年金月額は19万6336円であることを考えると,定年到達後も就業意欲を持っている高齢者であっても働いた場合の賃金水準と厚生年金の特別支給額を比較した場合,引退を選択することは少なくないであろう。
 さらに,従来は定年到達後「求職中」ということにしておけば雇用保険から求職者給付を最大300日受給できたため,非常に引退促進的な環境が定年直後にあったといえる。
 このような点を考慮し,高齢者の雇用促進のために平成7年4月1日から高年齢雇用継続給付が制度施行された。この制度は,60−64歳層について,60歳時点での給与月額からの賃金低下率に応じて補助金を出すことにより賃金水準の落ち込みによる引退を防止することを目的としたものである。同時に年金と求職者給付の併給は行えないように制度改正された。
 具体的には,60歳時点の賃金の85%未満に賃金が落ち込んだ場合は,現在の賃金額の最大25%(注7)を雇用保険から補助することになっている。この制度は補助金を出すことによって就業促進を狙うアメといえる。
 本来の意図としては高年齢雇用継続給付は高齢者の就業意欲を維持・喚起することであるが,金子(1998)の推計によると高年齢雇用継続給付の効果は主として高齢者に支払う賃金の引き下げを可能とすることによる労働需要の増加であり,高齢者の手取り賃金を上げることによる労働供給の増加はほとんどない。
 支払い賃金の低下による労働需要増加という効果は,上でみた在職老齢年金の雇用補助金としての効果と類似していると考えられる。そのため,以下の推計では高年齢雇用継続給付を在職老齢年金と同様の雇用補助金として扱う。


4 厚生年金の影響の分解

 厚生年金制度が高齢者の就業に与える影響としては,大きく分けると(1)年金給付による引退促進効果,(2)在職老齢年金を前提とした賃金決定により,労働生産性以下の賃金率で高齢者を雇用できるという補助金としての需要拡大効果という二つの効果があると考えられる。
 従来の研究では表1に示すように,清家(1989)以外は実際に受給している年金額,すなわち収入によって減額された後の年金額を直接用いて年金の効果を計測している。そのため,年金の効果として出てくるパラメータは上記の二つの効果を合わせたものであり,個別に分離して計測することは不可能であった。しかしながら前者はReservation Wageを経由して個人の労働供給に関する意思決定に影響し労働供給に負の影響を持つのに対し,後者は結果的な賃金率の低下を経由して企業側の労働需要に関する意思決定に影響し,労働需要に正に影響を持つと考えられる。この点において両者は正反対の効果を持つものであり,本来別個に評価される方が望ましいと考えられる。

表1 先行研究での年金の扱いおよび60−64歳男性での弾力性

 同時決定バイアスを回避するために,清家(1989)では実際に受給した年金の額ではなく,受給資格の有無を用いて年金受給資格の弾力性を計測している。この変数は在職減額の有無に関係なく本来の受給権を聞いているため,就業行動とは無関係となり,同時決定バイアスも存在しない。しかし,1988年,1992年調査ではこの設問は調査項目から外されてしまったことと,制度改革による年金額変化の影響を知りたいという本論文の目的からこの方法は採用できなかった。
 さて,本論文では,「減額されなかったならば本来受給できたはずの年金額」(「本来年金」)を推定することにより,公的年金による引退促進的な結果と在職老齢年金の持つ雇用補助金としての効果の分離を試みる。ここで必要となるデータの推定は,
 1.現在就業している人が,就業しなかった場合に支給されるであろう本来年金の推定
 2.現在就業していない人が就業した場合に得られるであろう市場賃金の推定
 3.現在就業していない人が就業した場合に支給される在職老齢年金額の推定
の3点である。


5 本来年金の定義

 本来,就業/非就業の選択を行う際に各個人が前掲として考える年金額は「高年齢者就業実態調査」で調査されている実際に受給した(減額されているかもしれない)年金額ではなく,ここで定義した本来年金額であると考えられる。これは,就業しなかったときの効用の基礎となる収入は就業時の受給年金ではなく非就業時の本来年金額であることを考えれば自明である。また,本来年金は就業状態とは独立であるため,年金額と就業状態の同時決定バイアス問題は本来年金を利用した場合にはそもそも存在しない。


6 本来厚生年金の推定

 本来厚生年金の推定手続き(注8)は大きく(1)在職老齢年金が支給されている場合,(2)支給停止になっている場合の二つに分けられる。

 在職老齢年金が支給されている場合 厚生年金の減額率は標準報酬月額によって決まっているため,「高年齢者就業実態調査」で調査している仕事からの収入から標準報酬月額を計算し,制度的に決まっている減額率を求めることにより本来年金を計算することが可能である。つまり,減額率を仕事からの収入の関数と考えて



という計算を行えばよい。

 支給停止になっている場合 支給停止になっている場合には,二つの問題がある。一つはそもそも年金受給権がないため厚生年金額がゼロである人と,年金受給権があるが仕事からの収入が多すぎるため支給停止になっている人を識別することであり,もう一つは受給権がある人の本来年金額を推定することである。「高年齢者就業実態調査」の1983年調査では厚生年金を実際に受給しているかどうかとは関係なく本来の受給権を聞いているため前者の問題はないが,1988,1992年調査についてはこの設問はなくなっている。また,後者の問題については3時点いずれも「高年齢者就業実態調査」から直接データを得ることはできない。
 ここでは,受給権については,(1) 55歳当時民間雇用者であったこと,(2) 現在民間雇用者であること,(3) 週労働時間が32時間以上であること,(4) 仕事からの収入が当該年の支給停止額を超えていること,の四つの条件を満たす人は本来は厚生年金受給権があるが,支給停止になっていると判断した(1988,1992年)。1983年に関しては,受給権に関する設問のデータをそのまま利用している。
 55歳当時民間雇用者という条件だけでは年金加入期間によっては本来受給権がない人も受給者と判断される可能性があるが,それ以前の職歴については調査されていない。同様に,企業規模や産業,雇用形態などによってもある程度年金加入率が異なることは十分予想されるが,「高年齢者就業実態調査」の個人票では業種に関するデータが得られないため年金加入率を受給権の推定時に反映させるような手続きは行っていない(注9)。
 さて,このような推定方法の妥当性をチェックするために,受給権に関する設問がある1983年,60−64歳男性のデータを用いて厚生年金額がゼロであるようなサンプルについて実際の受給権と上のような方法で推定した受給権を比較してみた結果は以下の通りである。
 1.推定された受給権と実際の受給権が一致する割合は約86%
 2.受給権がないにもかかわらずあると推定される割合は約11%
 3.受給権があるにもかかわらずないと判断される割合は約4%
 この比率は厚生年金額がゼロであるようなサンプルについてのみ計算したものである。厚生年金額がゼロでないサンプルも含めた場合は,正しく受給権が推定される割合は90%を超えることになり,ここで仮定した受給権の推定方法は比較的妥当なものであると言えるだろう。
 受給権推定後の金額の推定については,わが国の厚生年金給付額決定に重要である加入期間と平均標準報酬月額を何らかの方法で推定する必要がある。しかしながら,「高年齢者就業実態調査」にはこのような情報は個別には含まれていない。
 職種や企業規模によって賃金が大きく異なることは一般に観察される事実であり,また職種や企業規模によって平均勤続年数もかなり異なる。そこで,過去の職歴が似ている人は過去において同じような賃金を受け取り,同じような勤続年数(加入期間)であるという仮定を置くことにより,厚生年金額は職歴が同じならば同じ程度の額になるはずであると考え,推定を行った。
 ここでは,減額されていない厚生年金を受給している人を選んで計算した過去の職歴別平均年金を当てはめていくことにより推定を行った。


7 市場賃金の推定

 実際には就業していない人に対して,実際に労働市場で観察された賃金から求めた賃金を割り当てる場合は,サンプルセレクションバイアスが生じることはHeckman(1979),清家(1989)などで指摘されているが,この点については本質的に避けることができない。しかしながら,実際に観察された賃金の割り当て方法については工夫の余地がある。
 表2に,就業確率関数推定のために先行研究で行われた賃金の割り当て方法を示す。いずれの方法でも,割り当ての基準となっている属性は高齢者の現在の属性であり過去の履歴は重視されていないことがわかるが,実際に高齢男性が就業する場合,過去の履歴によってかなり行動が左右される可能性が高いと考えられる(注10)。

表2 先行研究における非就業者への賃金の割り当て方法

 清家ほか(1997)でも指摘されているように,現在の厚生年金制度は現役時代の職業履歴,すなわち人的資本の蓄積状況とリンクして年金給付金額が決まるようになっているため,高い人的資本を持つ高齢者は十分な年金を受け取ることにより引退している可能性が高い。このような層が就業するためには,高い人的資本を正当に評価する賃金が提示されることが必要であろう。
 ここでは,過去の履歴をある程度調査しているという「高年齢者就業実態調査」の特徴を生かし,過去の履歴をできるかぎり生かした形での賃金の割り当てを試みた。具体的には

55歳当時雇用者 (1) 調査年,(2) 性,(3) 5歳階級での年齢,(4) 55歳当時職種,(5) 55歳当時規模を属性として利用し,引退経験者(定年経験があるか,定年前に離職した)について計算した平均賃金を割り当てる

55歳当時非雇用者 (1) 調査年,(2) 性,(3) 都道府県,(4) 5歳階級での年齢を属性として利用して計算した平均賃金を割り当てる

という方法を取っている。55歳当時雇用者(注11)で適切な平均が得られないケースでは,本来厚生年金の割り当てと同様に上で属性を並べてある順序の後ろの方(55歳当時雇用者なら55歳当時規模の属性が一番後ろ)から順に落とし,平均の割り当てを行った。このとき,勤務時間についても同じ属性での平均を割り当てた。
 このような方法による賃金の割り当ては,在職老齢年金を考慮した賃金調整が行われるか否かが55歳当時の職種や企業規模に依存していること,すなわち橘木・下野(1994)で指摘されているような高賃金率での雇用者と低賃金率での雇用者へのタイプ分けはある程度過去の職歴に依存することを前提としている。
 この点について「高年齢者就業実態調査」(1992)でチェックすると(注12),定年経験のある高齢者の場合,再雇用時の職種と55歳当時の職種が同じか否かは55歳当時の職種によって大きく異なることがわかる。職種が異なる場合は過去の経験が生かされないため低賃金率になる可能性が高いと考えられる。
 また,1992年の個人票を用いた筆者の再集計によると,55歳当時と60−64歳での勤務先や職種が同じであるか否かは55歳当時の職種と企業規模によって大きく変動することが見いだされている。たとえば1000人以上の企業の専門職であった人が定年後働く場合,専門職になる率は7割近いが,技能工の場合は6割近くが別職種についている。
 これらの事実より,55歳当時の職種と企業規模を用いて市場賃金の割り当てを行うという方法は再就職の結果,在職老齢年金を考慮した賃金調整が行われるような低賃金率労働につくか否かまで含めて賃金の推定が行えるといえる。この点において,先行研究所で採用された小企業での所定内賃金やパートタイム労働者賃金の平均よりも「実際に働いたならば得られるであろう賃金」の推定値としては優れていると考えられる。


8 在職老齢年金の推定

 調査時点で実際に就業している人については,そのときに受給している厚生年金額あるいは在職老齢年金額をそのまま在職時の厚生年金額と考えればよいが,就業していない人については在職老齢年金についても推定する必要がある。
 ここでは,上で割り当てた月収を標準報酬月額に換算して減額率を求め,悲就業者が実際に受け取っている厚生年金額を減額するという方法で非就業者が就業した場合に受け取るはずの在職老齢年金額を推定した。ただし,月収と同時に割り当て済みの労働時間が週32時間に満たない場合は厚生年金の被保険者とならないとみなして減額は行っていない。



III 補助金としての在職老齢年金を含んだ推定

1 補助金を含んだ分析の枠組み

 従来広く用いられてきた就業選択モデルは,ある個人の就業・非就業の選択はその個人が就業した場合に得られるであろう市場賃金(Wm)と労働供給開始賃金(Wr reservation wage)の大小関係によると考えるものである。
 このようなモデルは,就業時に得られる所得が市場賃金のみであるようなケースでは適当であるが,わが国での高齢者の雇用においては高山(1992b),橘木・下野(1994)などで指摘されているように在職老齢年金額を考慮して賃金額を低く抑えるコントロールが広く行われており,市場賃金だけで就業/非就業を決定しているとは考えにくい。
 そこで,本論文では,高齢者が労働供給を行うかどうかの意思決定を行う場合には市場賃金として観察されているWmではなく,Wmに在職老齢年金を賃金補助金として加えた金額とWrとの大小関係で意思決定を行っているとして計測を行った。
 すなわち,個人の就業に関しては,
 Wm+在職老齢年金>Wr→就業したい
 Wm+在職老齢年金≦Wr→就業したくない
という行動を行っているとしている。
 就業するか否かの意思決定というモデルの原型からすると,市場賃金と在職老齢年金の合計金額のみが重要であり,二つの変数を別々に計測式に加える必要はない。しかしながら,本論文では被説明変数として就業意欲ではなく実際の就業状態を利用しているため,労働需要に対する効果も考慮する必要がある。これは,
 1.わが国の高齢者の労働市場は,有効求人倍率が0.1以下の労働供給過剰市場であり,雇用の制約条件として労働需要が大きな要素であること
 2.高齢者に対する労働需要の価格弾力性は若年者のそれよりも大きく,在職老齢年金よる賃金調整が行われることにより高齢者によって若年者の雇用が代替されると考えられること(金子1997)
 3.高齢者の雇用労働力率の賃金弾力性は非常に小さいこと(金子1998)
などの理由によるものである。労働供給に関していえば,賃金も在職老齢年金もプラスの効果を持つが,より制約となるであろう労働需要に対する効果は,賃金が高ければ需要は減少し,在職老齢年金給付額が高ければ賃金を下げられるため需要は増加するという逆の効果を持つことが予想される。そのため,ここでは別の変数として計測した(注13)。
 具体的な計測方法としては,ある個人iについてのWmi,Wriを説明する変数のベクトルをXi,サンプル全体に対応するパラメータをβ,攪乱項をeiとおき,観察された就業状態が「就業」である場合はyi*>0,「非就業」である場合はyi*≦0となるようにyi*=xi´β−ei*のパラメータβをプロビット測定により求めた。


2 データと説明変数

 推定に利用するデータは,「高年齢者就業実態調査」の1992年個票から60−64歳男性を抽出し,さらに本来年金額で評価した場合に厚生年金の金額が他の年金制からの支給額よりも高くなるサンプルに限定した。これは在職老齢年金の制度変更および高年齢雇用継続給付によって支給額に大きな変更があるサンプルのみを使って推計を行うためである。
 また,実質賃金と補助金としての在職老齢年金をモデルに加えての計測を行う。賃金の変数として賃金率ではなく仕事からの収入(およびその推定値)を直接利用するのは,
 1. 在職老齢年金の減額率は収入の月額によって決まるため,賃金率と直接の関係がない
 2. 図1に示すように,本来厚生年金額が正である60−64歳男性サンプルでの観察された労働時間はフルタイム労働に集中しており,希望としての短時間労働が直接労働時間に反映するような労働市場の状況ではないと考えられる
の二つの理由による。

図1 労働時間の分布

 被説明変数は,「高年齢者就業実態調査」個人票のうち「収入になる仕事をしたか」という設問を用いる。仕事をした場合には1,しなかった場合には0である。
 表3にここでの計測に利用した説明変数を示す。

表3 就業選択に関する説明変数一覧

 世帯類型という変数は,高年齢男性の就業行動を世帯の構成によって影響されることを反映させるために導入された変数である。具体的には
 1.単身世帯
 2.夫婦世帯
 3.親世代が主たる所得者である親子同居世帯A
 4.子世代が主たる所得者である親子同居世帯B
 5.1−4以外
の5パターンである。「高年齢者就業実態調査」には世帯に関する情報はほとんど含まれていないため,複数の設問を組み合わせることによってこの世帯類型は推定している(注14)。
 この推定式では同居世帯Bをベースにしたダミー変数として世帯類型を導入する。各類型の就業への効果の大きさは,高山・有田(1996)などの結果から
 同居世帯A>夫婦世帯>単身世帯>同居世帯B
となることが予想される。


3 雇用補助金としての在職老齢年金および高年齢雇用継続給付の効果

 雇用補助金として厚生年金の在職者給付と失業保険の高年齢雇用継続給付の影響を考えると,本推計で用いた調査期間との差は表4のように要約できる。全体としては就業促進的となっていることが期待される。

表4 在職老齢年金と高年齢雇用継続給付の効果

 表5に推計結果を示す。

表5 雇用補助金の影響

 符号条件はすべて予想通りとなっている。
 また,雇用補助金(在職老齢年金)の弾力性は賃金の弾力性より大きく,賃金上昇による労働供給増加よりも雇用補助金による労働需要増加の影響の方が高齢者の就業においては効果が大きいという先行研究と整合的な結果となった。



IV 制度改正による就業行動の変化

 それでは,制度変更による就業促進効果がどの程度となるかを表5の推計値を用いて計算してみよう。雇用政策研究会(1995)では高年齢雇用継続給付を賃金の一部として計算しているが,ここでは前述の通り高年齢雇用継続給付については賃金ではなく在職老齢年金に加えて変動を評価する。


1 賃金月額と雇用補助金スケジュールの変化

 高年齢雇用継続給付を考慮した際に,賃金調整の方式が変化してしまうと単純には比較できなくなるため,60歳到達時の賃金が38万/月,本来年金額が15万の場合に賃金コントロールによって在職老齢年金および高年齢雇用継続給付による補助金総額が変化するかを図2,図3に示す。

図2 従前の制度での在職老齢年金

図3 1994年改革後の在職老齢年金

 図2では「旧制度在職老齢年金」が雇用補助金として支払われる額であり,賃金が9万強までは8割給付のため補助金額は最大である。また,図3では「補助金額」が賃金に応じた雇用補助金の額を示す。在職老齢年金制度と高年齢雇用継続給付という二つの制度の効果が混在しているためにグラフの形状は若干異なるが,やはり賃金が9万から12万程度の比較的低賃金の部分で補助金額が最大となっている。
 このように,従前の制度と新制度のいずれでも,厚生年金および雇用保険からの給付額を最大にするような賃金月収は10万円前後である。このことは,今回の制度改正では雇用補助金を最大にするような賃金コントロールには大きな変更はないであろうことを意味する。そのため,賃金については制度変更後も従前と変わらないと仮定して推定を行う。


2 高年齢雇用継続給付および在職老齢年金制度改正の影響

 表5では平均的高齢者像は市場賃金は23.5万円,平均本来厚生年金額は14.24万円となっている。
 さて,高年齢雇用継続給付を計算するためには,60歳到達時の賃金額が必要であるが,「高年齢者就業実態調査」には過去の賃金に関する設問は存在しないため直接データを得ることはできない。そこで,ここではこの人の60歳当時の賃金は38万円/月(注15)と仮定して新しい制度下での手取り額を求める。

 賃金額 23.5万/月で変わらず(23.5万の標準報酬月額は24万)

 高年齢雇用継続給付 23.5/38<0.64であるから,高年齢雇用継続給付は現在の賃金の25%給付される。そこで0.25×23.5万=5.875万/月となる。

 在職老齢年金額 平均本来厚生年金額が14.24万円。標準報酬月額が24万であるから14.24万×0.8+24万=35.392万。35.392万>22万となる。さらに22万を超えた部分の1/2が減額の対象となり,(35.392万−22万)/2=6.696万減額。高年齢雇用継続給付との併給調整でさらに−2.4万/月となり,14.24万×0.8−6.696万−2.4万=2.296万/月

となり,高年齢雇用継続給付と在職老齢年金の合計額は5.875万+2.296万=8.171万/月である。これは,表5での平均雇用補助金と比較して,+4.022万/月である。雇用補助金の偏微係数の符号は+であるから,結果としてこの制度変更は60−64歳男性の就業に関して促進的な効果を持つことになる。これらの制度改正は,目的通りの効果を持つと考えてよいであろう。


3 厚生年金の60−64歳部分年金化の影響の推定

 厚生年金の1994年改正で決定された60歳代前半の部分年金化は,現行の特別支給の厚生老齢年金の定額部分相当分の特別支給を停止し,報酬比例部分相当分のみを給付する,という変更である。2013年に60歳になる人は1953年生まれであるから,報酬比例部分の給付乗率は7.5/1000である。また定額部分の単価は1994年改正で1625円となった。そのため,
   定額部分=1625×厚生年金被保険者月数
   報酬比例部分=平均標準報酬月額×7.5/1000×厚生年金被保険者月数
となる。上の式から明らかなように,部分年金化によってどの程度の減額率となるかは平均標準報酬月額×7.5/1000と1625円の比に依存しており,平均標準報酬月額が高ければ高いほど定額部分の比率は小さくなる。
 表6を見ると,当然のことながら平均標準報酬月額が高い人の方が部分年金化による影響が少なくなっている(ただし将来的な年金改正によって報酬比例部分が相対的に圧縮される場合は,部分年金化による減額はこの表の数値より大きなものになる可能性がある)。

表6 2013年の部分年金化での減額率

 このような部分年金化の就業行動に与える影響は,
 1.本来厚生年金が減額される影響による就業促進的効果
 2.本来厚生年金の減額に伴い雇用補助金としての在職老齢年金額も減少することによる引退促進的効果
の二つに分けられる。IV.2と同様に表5での推計結果を用いて上の二つの効果の大きさを推定してみよう。
 まず,60歳代前半の厚生年金額が部分年金化によって6割になったと仮定して(注16)本来年金額と雇用補助金(在職老齢年金+高年齢雇用継続給付)の金額を求める。ただし,60歳当時の月収は上と同様に38万であったとする。

 賃金額 23.5万/月で変わらず(標準報酬月額では24万)

 高年齢雇用継続給付 23.5万/38万<0.64であるから月収の25%が支給され23.5万×0.25=5.875万/月

 本来厚生年金 14.24万が部分年金化で60%になって8.544万

 在職老齢年金 標準報酬月額が24万であるから,8.544万×0.8+24万=30.8352万>22万となり,22万を超えた部分の1/2が減額の対象となる。(30.8352万−22万)/2=4.4176万減額。高年齢雇用継続給付との併給調整でさらに−2.4万/月となり,8.544万×0.8−4.417万−2.4万=0.0176万/月

 となり,雇用補助金の総額は5.875万+0.0176万=5.8926万/月となる。上で計算したケースとの差は,本来厚生年金額が−5.696万/月,雇用補助金(在職老齢年金+高年齢雇用継続給付)が−2.28万円/月である。これらの変動と表5の偏微係数で厚生年金の部分年金化の影響を計算すると,本来厚生年金の減額による就業促進効果(+0.6%ポイント)よりも在職老齢年金の減額による就業抑制効果(−2.0ポイント)の方が大きくなることがわかる。つまり,厚生年金の部分年金化は60−64歳男性の就業に関しては就業抑制的な効果を持つであろうと予想される。
 この変化は在職老齢年金額が本来年金の低下とともに低下してしまったことに起因するものであるから,在職老齢年金の給付方式を変更して本来年金額が低下してもあまり在職老齢年金が低下しないように調整することにより回避可能である。
 たとえばアメリカで1998年に提案された複数の年金改革案では,年金給付に関する所得チェックの廃止を主張している(Moynihan(1998),Gregg(1998a),Gregg(1998b)。賃金による減額を廃止し,定率の(ゼロを含む)減額を行った場合は
 1.在職老齢年金額を最大にするための賃金コントロールが必要なくなり,在職老齢年金を考慮した賃金決定を行っても低賃金にこだわる必要がなくなる
 2.本来年金額が高く,就業すると高い賃金が得られるような人的資本蓄積を持った高齢者が就業した場合に失う年金額が少ない
などの理由により,高い人的資本を持っている高齢者の活用に役立つ可能性もある。高い人的資本を持つ高齢者の活用は清家ほか(1997)でも指摘されるように今後のわが国とって重要な課題であり,年金制度改革には在職老齢年金を雇用補助金としてどのようにデザインするかという視点も必要であるといえよう。



V まとめ

 以上の再集計および推計により,次のような発見があった。

 1.本来年金と在職年金を同時に推定式に入れることにより,従前の制度であっても在職年金の効果が就業促進的であることがわかった。
 2.高年齢継続雇用給付金は就業促進的な効果を持つが弾力性は1より小さいことが推定された。
 3.厚生年金の部分年金化が60−64歳男性の就業に与える影響は,年金額の減額による促進効果より在職老齢年金の減額による抑制効果の方が高いことが推定された。
 4.在職老齢年金の持つ補助金としての効果は公的年金の就業意欲に関する効果より大きく,別データから推計を行った金子(1998)のと整合的であった。
 5.在職老齢年金を雇用補助金として積極的にデザインし直すことにより,高い人的資本を持つ高齢者を活用できる可能性があることが示された。


*本論文で用いた「高年齢者就業実態調査」の個票データは,日本労働研究機構におかれた総合プロジェクト「年金制度改革が就業・引退行動に及ぼす影響に関する研究」のために労働大臣官房政策調査部より供与されたものである。資料についてご協力いただいた労働大臣官房政策調査部に感謝申し上げる。本論文は当該プロジェクトにおいて筆者の担当した報告をさらに発展させたものである。また,貴重なコメントをいただいた本誌レフェリーおよびプロジェクト委員各位にも深く感謝する次第である。なお本論文の内容はすべて小川個人の見解である。


注1) 労働省「雇用管理調査」1995年。

注2) 1986年改正により,基礎年金はすべての年金に共通の制度となったが,本論文では自営業者の年金としては「国民年金」,改正後の各年金制度共通の1階部分を表すときには「基礎年金」という用語を用いる。

注3) 1953年生まれの男性が2013年に受け取る部分年金を加入期間40年,平均標準報酬月額を1990年価格で40万円であると仮定して計算。

注4) 雇用契約上は短時間勤務としておいて厚生年金の被保険者となることを免れるという方法もある。

注5) 残念ながら,ここで利用している「高年齢者就業実態調査」には賞与額に関する設問は含まれていない。そのため,このような結託がどの程度実際には行われているかについての定量的なデータを示すことはできなかった。

注6) 労働省「賃金構造基本統計調査」1994年。

注7) 現在の賃金が60歳当時の賃金の0−64%の場合,64−85%の場合は低下率に応じて補助率が異なる。

注8) ここでは概略のみを示す。詳細は小川(1997)を参照。

注9) 職種ごと,雇用形態ごとの加入率は厚生年金の事業統計からは得られない。また,規模のみによるコントロールは試験的に行ってみたが,1983年データで大きな改善は見られなかったため採用しなかった。

注10) 研究会として1995年6月に大分県経営者協会で行ったヒアリングでは,高齢者雇用における労働者側の問題点として「給与が減ってまで仕事をしたくない」というものがあった。

注11) 本来は都道府県も属性として利用したかったが,上記の属性区分に都道府県を追加すると分類が細かくなりすぎて,それぞれの属性区分での有効な平均が計算できなくなるため,過去の履歴の情報を優先した。

注12) 調査結果の概要 第24表。

注13) 合計額でも推計を行ってみたが,予想通り合計額では著しく有意性が落ちることが観察された。

注14) 推定方式の詳細や世帯類型の特徴などは,小川(1997),小川(1998)を参照。

注15) 企業規模計・学歴計で勤続年数30年以上の60−64歳男性の平均所定内給与。

注16) 1992年の男子新規裁定者の平均標準報酬月額は28万程度。


参考文献
麻生良文「少子化対策は年金負担を軽減するか」『人口問題研究』Vol.53,No.4,1997年。
小川浩「年金と男性高齢者の就業行動」『年金制度改革が就業・引退行動に及ぼす影響に関する研究I』第2章,日本労働研究機構。1997年。
小川浩「年金が高齢者の就業行動に与える影響について」『経済研究』Vol.49,No.3,1998年。
金子能宏「企業の高年齢者雇用と雇用政策の効果」『年金制度改革が就業・引退行動に及ぼす影響に関する研究1』第6章,日本労働研究機構,1997年。
金子能宏「高年齢者雇用政策と雇用保険財政」『経済研究』Vol.49,No.1,1998年。
雇用政策研究会編『労働力需給の展望と課題』,雇用政策研究会,1995年。
下野恵子・橘木俊詔「高齢者の就業行動分析」『季刊社会保障研究』Vol.19,No.4,1984。
清家篤「高齢者就業の趨勢と公的年金」『日本労働協会雑誌』328号,1986年。
清家篤「高齢者の労働供給に与える公的年金の効果の測定」『日本労働協会雑誌』359号,1989年。
清家篤ほか「高齢化社会の労働市場における高齢者の能力活用に関する研究」『経済分析』No.155,1997年。
高山憲之「公的年金と男子高齢者の労働供給」高山憲之編著『ストック・エコノミー』第7章,東洋経済新報社,1992年(高山1992a)。
高山憲之『年金改革の構想』日本経済新聞社,1992年(高山1992b)。
高山憲之・有田富美子『貯蓄と資産形成』岩波書店,1996年。
橘木俊詔・下野恵子『個人貯蓄とライフサイクル』第5章,日本経済新聞社,1994年。
三上芙美子「女子高齢者の労働供給パターン」『季刊社会保障研究』Vol.19,No.2,1983年。
八代尚宏・大石亜希子・二上香織「高齢者就業の決定要因」日本経済研究センター『人的資源の高度活用と職業構造の変化に関する調査研究報告書』第1章,1995年。
Gregg,J.“The 21st Century Retirement Security Plan",National Commission on Retirement Policy,May 1998.
Gregg,J.“21st Century Retirement Act",S.2313,105th Cong.,2nd Sess.,§4(1998).
Heckman,J.J.“Sample Selection Bias as a Specification Error",Econometrica,Vol.47,No.1,1979.
Moynihan,D.P.“Social Security Solvency Act of 1998",S.1792,105th Cong.,2nd Sess.,§10(1998).


おがわ・ひろし 1965年生まれ。一橋大学大学院博士後期課程単位取得退学。関東学園大学経済学部助教授。主な論文に「年金と男性高齢者の就業行動」『年金制度の改革が就業・引退行動に及ぼす影響に関する研究I』(日本労働研究機構,1997年)など。労働経済学専攻。

[先頭に戻る]