調査研究成果データベース
[全文情報を閉じる]
- 全文情報
-
第2章 離婚直後の世帯の経済面と生活面の状況
─人口動態社会経済面調査報告『離婚家庭の子ども』の再分析
1.はじめに
『人口動態社会経済面調査報告:離婚家庭の子ども』(平成9年10月実施)は調査時点の3ヶ月前の1ヶ月間に協議離婚した者を取り出した全国調査(回収率は40%、集計客対数1885、男性336、女性1549)である。別居後10ヶ月より多く経た世帯は除外されており、離婚直後の状況を伝える貴重なデータである(注1)。厚生労働省『全国母子世帯等調査』や本研究会で実施した『母子世帯の母への就業支援に関する調査』に比べると低年齢児童が多いことが目立つ。調査によれば協議離婚世帯の8割は母親が親権を持っているが、そのうち0-2歳児を抱える母親が4割近くと高く、未就学児を抱える母親は離婚直後の母親の6割を占めている。これは、調査が離婚直後のフローデータであるのに対して、他の統計は、離婚・死別等の後、再婚せずに母子世帯として統計に表れ続けるストックのデータであることが大きい。つまり、子あり離婚は、2歳以下、あるいは6歳以下の子どものいる世帯で多く起こり、女性が引き取ることが多いことが、この調査からわかる(注2)。
以下、第2節では母子家庭、父子家庭の離婚後の家族や住まいの状況を見る。第3節は女性を中心に、子ども年齢と離婚前後の就業状態の変化や離婚前の経済状況を見る。第4節では養育費や一時金はどういう場合に支払われているのかその決定因を検討し、第5節は、児童扶養手当の申請や受給状況をみた上で、だれが早い受給を受けやすいかを分析する。第6節は暮らしむき全般の分析である。第7節が結語である。付録は第3節の付録であるが、収入の男女別分布を就業形態や住居の状況などからみたものである。
2.離婚直後の家族と住まいの状況
2-1 末子の年齢、子ども数、兄弟が分かれることの有無
図表3-2-1 協議離婚直後の末子学齢
子どものいる世帯の離婚直後の状況を見ると、女性は0-2歳児を持つものが4割近くであり、3-6歳児の者も2割強、合わせて6割は末子が未就学であり、中学以上の子供のみがいるケースは2割弱である。男性は、年齢が上がった子どもが相対的に多く、末子が中学生以上である場合が3割である。しかし末子が未就学児の離婚父親も4割弱いる。また未就学児のみがいる女性は50%、男性は28%である。
子ども数を見ると、女性の回答は1人が46%と2人の39%よりも多い。女性の年齢は34歳以下が全体の43%を占め、子ども数が少ない若い段階の離婚が多いと想像される。一方男性が親権者となったケースでは、子ども1人は35%、2人が46%であり、男性が親権者のケースでは、本人が34歳までの者は全体の19%に過ぎず、年齢階層がより高い。
兄弟が別れて引き取られるかどうか、別れるケースは少ないが、男性ではやや多い。女性の回答では6%だが、男性が親権者の場合は18%である。男性回答者で見ると、子どもが2人いる場合、別れた配偶者が1人育てることになったケースが156人中33人、子どもが3人以上いる場合、別れた配偶者が1人以上育てることになったケースは62人中26人である。女性回答者を見ると、子どもが2人いる場合、別れた配偶者が1人育てることになったケースが608人中43人、子どもが3人以上いる場合、別れた配偶者が1人以上育てることになったケースは223人中39人である。
2-2 他の親族との同居の有無と住居の状況
図表3-2-2 親族との同居状況(父親、母親別)
また親権のある子どもとの同居状況を見ると、非同居であることが、男性は末子で9%、2人以上の場合、年長の子で9〜10%あった。一方女性は非同居のケースは少なく、一番幼い子どもで2%、2人いる場合、3人いる場合の年長の子どもで3%、6%である。
親権者が父親の場合は、末子が小学校1〜3年まで離婚直後に親族と同居しているケースが多い。また親権者が母親も、末子が0〜2歳児の場合は、離婚直後に親族同居であるケースが4割である。しかし、3歳以上では母子のみの世帯が7割近く、その後も末子年齢の上昇とともに8割にまで増え、独立世帯が多い。
離婚前を見ると、女性の73%は核家族で暮らしており、自分の親族と同居である世帯は、女性の6%に過ぎない。離婚後は、女性の28%が親族同居となり、子どもが幼い場合は、34%が親族同居である。一方男性は、離婚前、核家族は62%、自分の親族との同居が22%であり、女性よりも親同居比率がもともと高い。離婚後は、男性の35%が親族同居となるが、未就学児では、もとは15%だったのが、40%が親族同居となる。もともと拡大家族に暮らしている男性が子どもを引き取る傾向が強いが、子どもが幼い場合では、同居という形で親族援助を受けられるよう、親同居が女性同様に増えると見られる。
図表3-2-3 離婚前の住居の状況と離婚後の転居の有無
住まいの状況を見ると、男性は離婚後の転居が少なく(転居していないが71%、うち転居していない男性の5割は持ち家)女性は逆に7割が転居と多い。子供あり離婚で男性が親権者となる場合は、相対的には裕福な男性が多いのかもしれない。父親の回答では、離婚前43%が持ち家、離婚前賃貸住宅が33%であるが、母親の回答では、離婚前29%が持ち家、51%は賃貸住宅である。
離婚後の住まいで、女性にもっとも多いのは賃貸住宅であり、狭くなったが4割を占める、賃貸住宅の費用負担が重いだけでなく、居住環境も悪化するケースが多いと想像される。一方、親の家に頼った場合は、広くなったという回答も4割を占める。
図表3-2-4 離婚後の住まいと広さの変化
3.子ども年齢と離婚前後の就業状態の変化、離婚前の経済状況
3-1 就業状態の変化
男性については、離婚前7割強が常勤であり、2割が自営業であるが、離婚後も多くは、そのままの就業形態を続けている。男性の70%は仕事先が「変わらない」としている。
一方、女性については、女性は「変わらない」は50%であり、20%が新規に就職、23%が転職をしている。離婚前常勤の仕事を持っていた者の8割はそのままの仕事を続けているが、パート・アルバイトだった者で常勤に移った者が4人に1人程度おり、また5人に1人がパートの仕事の中で転職をしている。また女性の33%は離婚前無職であり、離婚後の3ヶ月間に無職に留まる者も4割弱いるが、パート・アルバイトに就く者が同じく4割弱と多く、また常勤の仕事を得る者も18%いる。図表3-2-5は男女計について、離婚後の職業移動をみたものである。
図表3-2-5 離婚前の就学状況と離婚後の職業移動(男女計)
離婚後に職業移動の多い女性について、離婚前と離婚後の就業状況を末子年齢別に見たものが図表3-2-6および図表3-2-7である。0〜2歳の子どものいる層では離婚前無職者が半数を超え、次いで3〜6歳の子どものいる層で無職者が多い。常勤の仕事を持つ者は子ども年齢の上昇とともに上昇している。離婚後については、無職者は減少、すべての子ども年齢層で常勤比率が上昇している。
図表3-2-6 離婚前の仕事の状況(女性)

図表3-2-8は、もと配偶者の1年前の年収を問うたものを女性について集計したものである。配偶者の年収が0または不詳がどの群でも2割以上と高く、さらに末子年齢が中学生以上でなぜか上昇している。日本の年功的な賃金を考えれば、平均的には、末子年齢が上がるほど、年収500万以上の層が増えて良いはずだが、末子が中学生以上で離婚した世帯にそうした特徴はハッキリは見られない。離婚の原因として、夫の収入の不安定といった経済問題も大きいことが想像される。
図表3-2-8 離婚前の配偶者の収入(女性)
男女別に、9月の収入分布を見ると、女性は月収15万円以下の低収入に偏っている。また母子世帯、父子世帯とも所得が低い者の親同居割合は高い。収入が低く、かつ、「親族」という資源がある場合にはこれに頼る者が多い。
図表3-2-9 9月の収入と親族同居の有無(男女別)
3-2 現在収入の規定要因としての子ども年齢と就業形態、就業履歴
9月の月収(調査月の前月の収入、就労収入、定期金、親からの仕送り、家賃・地代収入、社会保障給付金を含む)の規定要因は何だろうか。性差、女性は末子年齢による差、さらに就業形態や就業履歴の差が大きく、また児童扶養手当が給付がされているかどうか、また別れたもと配偶者から定期金の送付があるかどうかが月収に影響を与えているが、これについて順次見ていこう。
母子家庭の9月の月収平均は、12.7万円、父子家庭の29.6万円と比べて大幅に低く、性差は大きい。
図表3-2-10 末子年齢と9月の収入(女性)
女性については末子年齢の影響が大きい。調査前月である9月の本人の収入を見ると、図表3-2-10の通り、収入0、収入5万未満などは、0〜2歳児、3〜6歳児を持つ親に大きく偏っていることがわかる。また女性の月収が10万円以下は、末子年齢で見ると、0〜3歳児で58%、4〜6歳児で44%、小学校で37%、中学生以上で25%であり、末子年齢の上昇が離婚直後の女性の年収を上げる。とはいえ、月収17.5万円以上の割合を見ると、6歳以下で20%弱、小学校高学年で36%、中学校以上でも4割であり低収入が多い。月収26万以上を見ると、未就学児のいる世帯では5%未満、末子が小学生の世帯で1割、末子が中学生以上でも2割に満たない。ところが男性については、月収17.5万以上は、未就学児で7割以上、就学児童以上では9割である。また月収26万以上も、未就学児のいる世帯で約3割、小学校高学年以上で7割である。男性も子ども年齢が上がると月収36万円以上等が増えるが、これは子どもの影響というよりは、年齢と勤続の影響も大きいだろうと考える。
また常勤やパートの別、仕事の継続などが女性の現在収入に影響を与えている。離婚を機に仕事の移動があった者、なかった者など女性の9月の収入を見てみよう。
図表3-2-11 女性の離婚前後の就業形態の変化と9月の収入
常勤の仕事を変わらないでいる者の年収がもっとも高く、9月の平均収入は18.6万円である。常勤から常勤に転職した者の年収が次いで高く、平均月収が14.1万円、パートの仕事を続けた者が続き、平均月収が12.5万、無職から常勤になった者の平均月収は12.3万、パート内転職をした者と無職からパートになった者の月収はほぼ同じ程度の10万円である。
図表3-2-12はどのような女性が無業にとどまりやすいか、またどのような女性が常勤やパート、自営等を選択するかを多項ロジット分析の手法を用いて推計したものである。頼れる親族がいるので無業に留まっているというだけでなく、無業であるから親族同居を選ぶ面もある可能性がある(内生変数の可能性がある)と考えられるが、親族同居の場合に、常勤の選択は少ない。離婚前の仕事形態を選択する確率が高い(パートであればパートなど)とともに、離婚前に有業であるほど常勤に移りやすくもある。また末子が0-2歳の場合、常勤の仕事であれば、無職でなくこれを選択する可能性も高いが、パートや自営で働くよりは無業選択が増える。
図表3-2-12 離婚後の就業形態の選択(女性)−多項ロジット分析
付録に、男女別に作成した収入分布の箱ひげグラフを添付した。こちらは月収ではなく年収変数を利用した。A−1からA−3は、離婚後1年間の年収見込みを見たものである。A−1は、離婚後の就業形態を横軸にとったものだが、男女の常勤比率の差と男女の大きい年収差が示されている。A―2は、末子年齢別の男女の収入状況を見たものだが、幼い子どものいる離別女性の収入が全体にきわめて低収入であることが示されている。A−3は離婚後の住まいの状況別に見たものだが賃貸住宅住まいの女性の経済状況の厳しさが示されている。
付録のB−1からB−7は縦軸を離婚前後の収入変化見込み額とした箱ひげグラフである。年収変化は、離婚前年収から離婚後年収見込みを差し引いて作成した。B−1は離婚前年収別のグラフである。男性の年収変化は少ないが、女性は無収入者が多いだけに100万円程度年収が増える者は多いが、離婚前に年収200万円程度であった者は、それ以上にはなかなか増やせてはいない。B−2は児童扶養手当の有無別にみたもの、B−3は末子年齢別、B−4とB−5は離婚後と離婚前の就業形態別、B−6は転職女性の収入変化、B−7は児童手当を受けてない者の年収変化見込みである。
定期金の支払いを受けているかどうか、児童扶養手当を受けているかどうかは収入水準を若干上げていることが付録のB−2に示されているが、この詳細は次節で検討する。
4.養育費・一時金の支払い状況とその決定因
4-1 養育費・一時金等の支払いの状況
離婚に伴う財産分与、慰謝料、養育費等の取り決めの有無を見ると、「あり」が女性で39%、男性で26%ある。「あり」のうち文書がある者は半数程度であって、女性56%、男性48%である。つまり文書での取り決めがあるものは、女性の22%、男性の13%に過ぎず、きわめて低い。
また離婚時に一時金を受け取った者はより低く、全体で13%、女性の15%のみである。女性について見れば、取り決めがあったとした者の32%、文書で取り決めがあったとする者の39%が一時金をもらっていた。その金額は中位数が160万、平均が416万円である。うち子供の養育費として一時金がある者が女性の6%、その金額の中位数は12万円である。
また別れた配偶者から「定期金」がある者は23%、女性の27%である。女性に対する定期金の中位数が月額5万程度、平均値は6.92万円である。定期金のうち子供の養育費は中位数が月額同じく5万円程度、平均値は5.83万円である。定期金金額を回答した者が416人、うち子どもの養育費の額を回答した者が388人である。(金額がわからない者を含めると、定期金ありの441人中389人が養育費がある)つまり一時金は子ども養育目的が少ないのに対して、定期金は養育費として受け取っている者の割合が高いということとなる。
女性について見ると、一時金を得ている者が231人、定期金が430人、両方を得ている者が、126人である。
4-2 養育費や一時金の支払いの決定要因
養育費の支払いが少ない点が目につくが、どのような特性が養育費の支払い額を上げるのか、養育費の支払いを挙げる要因を合理的に説明できるか計量分析を行った。
養育費の額を決める要因として、子どもの年齢と人数(子どもが幼くて働きに出られないと想像されるほど、養育費の支払いが増える)が重要だろう。加えてもと配偶者に支払い能力があるかどうかが大きいと考える。また専業主婦だったかどうか(専業主婦であれば、経済力が当面ないことから定期金の支払いが増えるのではないか)、子どもと定期的に面会をしているほど(全く面会なしの場合は、子どもへのお金の払い甲斐が減るのではないか。逆にほとんど毎日会う場合は、お金の支払いよりも物の持参ともなるのではないか)増えると考えた。
また一時金の支払いについては、夫婦が共同で形成した財産の分割の側面があるから結婚期間が長いほど増えるのではないか(結婚期間の変数がないため、子供数や妻の年齢で代理する)と考えた。一時金は慰謝料の側面もあり、どちらの側に問題があったかが影響を与えると考えられるが、データからはわからないため、これは分析には含められない。
支払いを全く受けてない者が多いため、トービット分析を行った。図表3-2-13が定期金、養育費(定期金に含まれている)に関する結果である。それぞれ2つの結果を示したが、左は、「取り決めの有無」を入れた結果、右はこの変数を除いた結果である。両者を比べると、「取り決めの有無」を入れた場合に、擬似決定係数に表される説明力は大きく上がっているが、これを除いた場合には、説明変数は有意なケースは多かったものの、式全体の説明力はきわめて低い。つまり「取り決めをしたかどうか」が定期金、養育費の支払いにきわめて重要であり、「取り決めの有無」を考慮すると、子ども数が支払い額を増やすといった説明変数の説明力も上がった。つまり一般的に考えて、定期金、一時金の支払いを増やすと考えられる変数は、直接に「養育費の支払い」、「一時金の支払い」額を説明するというよりは、いったん「取り決めをすることが合意された」場合において、その額の多寡を説明する要因というべきであった。
「養育費」は、子どもが1人増えると増加、また、専業主婦だった場合、6歳以下児童がいる場合、面会が週か月で決まっている場合などに養育費額は増加する。またもと配偶者の年収の高さも緩やかに関係している。しかしながら一番重要なのは、取り決めの有無である。
図表3-2-13 定期金・養育費の額の決定因の計量分析−トービット分析−
一時金も同様に「取り決めの有無」が重要である。図表3-2-14が結果であるが、年齢が上がるほど、おそらく夫婦共同で形成した資産の清算の色彩も強いと考えられるが一時金の払いは増える。また幼い子どもがいること、専業主婦であったことなども一時金の支払いを増やす。夫の所得は子どもと異なり有意ではない。今回も「取り決めの有無」が重要であるが、この変数を入れても、「養育費」よりもはるかに説明力は低い。一時金については、どちらの側に問題があったかなどがより重要となるためではないだろうか。
図表3-2-14 一時金の受け取り額の決定因の計量分析
5.児童扶養手当の申請と受給
5-1 児童扶養手当の認知と申請の状況
女性の95%が児童扶養手当があることを認知しており、認知度は大変高いといえる。また認知している者の86%が申請している。申請した女性のうち、受給中の者が47%、申請中の者が45%、支給停止中の者が5%である。
申請しなかった14%の女性は申請した女性に比べてやや正社員比率は高く、(35%に対して49%)、パートの者が40%に対して22%と低いものの、無業の者も19%に対して14%おり、必ず高収入というわけではないように見える。しかしこれは子ども年齢が18歳をこえて支給資格がなくなることにもよるのかもしれない。女性の年齢が上昇するほど、認知はしていても申請しない者が増えている(『人口動態社会経済面調査報告』(1997)参照)。
5-2 児童扶養手当の申請、受理の決定因のプロビット分析
誰が児童扶養手当を申請し、誰がこの調査の時期まで(離婚後3ヶ月)ときわめて早い間に受理されるのだろうか。
図表3-2-15の左の蘭から、申請は、末子が中学生以上の場合有意に下がること(18歳より上の可能性がある)、見込み年収が低いほど増えることなど、申請受理のための要件(18歳以下の子ども、所得制限)などが良く知られていることがわかる。一時金等の多寡は、支給制限には入らない(資産調査はなく所得調査のみである)。実際、一時金は申請と無関係である。一方、定期金をもらっている者については、有意水準は高くないが、申請が下がる可能性があることが示されている。
次に図表3-2-15の右欄は、離別後3か月の間に既に申請が受理されたのは誰かを見たものである。最右欄の偏微係数は、説明変数の限界的な変化が申請受理に与える影響を示している。例えば末子の子ども年齢が0-2歳の場合は、中学生以上の場合に比べて、28%申請受理されている確率が高く、末子が小学校高学年の場合は、これが15%であることを示している。全般に末子が幼いほど、申請受理は早いようである。また離婚前に常勤の職を持っていたほど、すぐには受理されにくく、さらに離婚後、仕事に就く努力をしている(が内職などより低所得である)方が無職や自営業等に比べて早く受理されていると解釈できる。
図表3-2-15 児童扶養手当を申請する者、受理される者の計量分析
6.暮らし向き全般
女性の心配事は、子どものこと、経済的なこと、仕事と子育ての両立などが多い。男性の場合は、子どものこと、仕事と子育ての両立、家事のことなどが多い。
女性は再婚の意思はないが36%と多く、機会があれば再婚したいは19%、男性は逆に前者は10%、後者は41%であり、結婚に期待するものの男女差が見られる。
離婚後の生活状況(経済状態)の変化について、「苦しくなった」は女性に61%。男性の36%に比べて経済問題は大きい。女性の場合、就業形態に変化がないケースでも苦しくなったが、57%、就職した、転職したケースでは63-64%が苦しくなっている。
9月の収入から9月の支出を除いたものを黒字・赤字として、男女それぞれが100%となるようにした上で、分布をみたものが図表3-2-16である。女性は赤字が多い。収支ほぼ均衡およびそれより赤字の者が全体に占める割合を見ると、男性は35%、女性は69%である。「収支とんとん、もしくは赤字」の女性の比率を見ると、児童扶養手当受給中の者では64%、申請中では75%、定期金ありでは66%、定期金なしでは72%である。赤字の原因は、収入が少ないことだけでなく、支出も多いことにある。両方のデータのとれる女性(1261サンプル)の収入平均は13.5万円、支出平均は15.2万円である。これに対して赤字が10万未満5万円以上(196人)の女性の平均収入は10.6万円とより低く、平均支出は17.0万円とより高い。逆に黒字が10万未満5万円以上の女性(91人)は平均収入が19.9万円とより高く、平均支出が12.2万円とより低い。
図表3-2-16 9月の収支−−−−男女でみた赤字と黒字の状況
おそらく女性に見られる高い赤字は、離婚前の主に配偶者の所得に基づいた消費水準を離婚後の低い所得に合わせた消費水準に調整できていないことにあるのだろう。調整しにくい支出としては子どもの教育費や住居費などがあると想像される。また離婚前の夫の収入が高いほど調整が必要となるだろう。
赤字の要因を最小二乗法で見ると、実際に末子が低学年のうちは黒字が多く(逆にベースである中学生以上の場合に赤字が増えることを意味する)、子ども数が多い場合、またもとの配偶者の年収が高い場合に赤字が拡大している。親族同居の場合は、その支援があるためかそれは黒字要因となっている。また離婚前専業主婦であるほど、赤字となりやすく、離婚後常勤の仕事を得ていることは、黒字要因である。一方、児童扶養手当を申請し受給されていることや定期金の額は、この分析の中では有意な影響を与えてはいなかった。
図表3-2-17 黒字赤字の規定要因(女性)
7.子どもの心の状態の変化
子どもの情緒がどのように変化したか、女性が親権者の場合について、子ども年齢、母親の就業の変化、転居の状況、兄弟別れの有無や父親の面接の状況、経済状況(年収、自己認識、および養育費の有無)などを説明変数として、「良くなった」を1とするプロビット分析を行った。
全般に説明力は低かった。離婚した父親が、離婚後3ヶ月間に定期的に面会していることは、子どもの情緒、友人関係、親権者との関係に離婚直後のこの時期にはどちらかというと負の影響を与えるようである。子どもが混乱するかもしれない。また母親の転職や就職は、変化であるが、子どもの情緒に対してどちらかというと良い影響を与えている。仕事が見つかったことの親の喜びを素直に子どもが受け取っているからかもしれない。同様に、経済の客観的な条件(離婚後収入、養育費があるかどうか)よりは、「楽になった」という親の認識が子どもの情緒、あるいは子どもの友人関係の改善を女親に認識させている。
また子どもの年齢が幼いほど、子どもと親の関係は離婚後に安定するようである。兄弟別れは情緒不安定の要因かと考えたが、そのようなことはなく(友人関係が悪くなったというケースのみ有意な場合があったが)、むしろ引き取った親子の関係は近くなったと親は認識している。
図表3-2-18で示したのは、「良くなった」の結果だけであるが、「悪くなった」も同じようにあまり説明力は高くなかった。しかし「良くなった」という認識をしている親は二桁台であり、「悪くなった」と認識している親は一桁台と前者がより多く、離婚は子どもの心を安定させたと親権者が考えていることがわかる。
図表3-2-18 子どもの心の状態の変化(女性)
8.おわりに
協議離婚女性の収入は協議離婚男性と比べて特に低い。なぜ離婚女性の収入がこれほど低いのだろうか。
<1> 協議離婚が出産後まもない時期に起こっているケースが多い。
<2> 出産を機に女性の半数は無業となっており、また安定した仕事に就いていない場合が多い。
<3> 一時金や養育費の支払いがなされているケースが少ない。もとの配偶者の経済力がこれを規定していると限らない。「取り決め」がなされている場合に、支払いは増えるが、取り決めがされることそのものがまだ多数とはなっていない。
<4> 新たに仕事に就く者も少なからずおり、「常勤」の仕事に移る者も少なからずいるが、賃金水準は高くはない。過去の仕事経験の長さが賃金を規定しているが、転居する者もおり、仕事をもっていても仕事を続けられると限らず、また仕事をもっていない者が多い。この中で、親族資源、これがない者も児童扶養手当は、離婚直後の変動期への対処にプラスの影響を与えている。
<5> 児童扶養手当の存在は、良く認識されている。離婚後3か月以内で既に受理されている者は、末子が幼い者、就業努力はしているが低収入な仕事に就いている者などに多い。
<6> 子どもが幼い場合、親同居に移り当面をしのぐ者が多い。また親同居の場合、家計赤字が減少する要因でもあり、家のスペースやその他の援助を受けとっているのだろう。しかし反面、子どもが一定年齢以上の場合、父子家庭に比べると母子家庭ほど親から独立している場合が多く、いつまでも頼れるものでもないのだろうと想像される。
長期で見るとより重要なのは、安定的な就業収入の確保だろう。離婚がまだ子どもが幼く、厚いケアが必要な時期に起こっていること、かつ、就業中断をしている女性が大多数であることなどから、職業技能形成には一定の援助が必要と考えられる。この点については、『母子世帯の母への就業支援に関する調査』を用いた分析に譲ることにしよう。
またもう一つ重要なのは、「定期金」「一時金」の支払いの「取り決め」を義務化することである。ただし末子が中学生となるまで続いた結婚が壊れる場合には、もと夫の収入の不安定も大きい要因と想像される。また子どもの年齢によらず、離別した夫の3割から5割は離別前の年収が200万円未満であることから、養育費の支払いが難しい父親も少なくない。いずれにせよ、子どもが幼く、ケアが必要な時期については経済的な補填の制度化が、中長期的には、仕事能力形成が重要であるだろう。
参考文献
厚生省大臣官房統計情報部(1997)『人口動態社会経済面調査報告 離婚家庭の子ども』
(注1)夫婦双方が日本人で、平成9年6月1日から30日までの間に協議離婚をした者のうち、平成9年1月以降に別居し、親権を行う子を有している者を調査対象としており、調査期間は平成9年10月1日から10月15日、保健所が人口動態調査離婚票をもとに調査客体の選定を行い、この名簿に基づき郵送配布、厚生省への直接郵送返却としてある。
(注2)人口動態統計によれば、子ありの離婚は離婚全体の6割である。また協議離婚が離婚全体の9割を占める。つまりこの統計は、「子有り離婚」についてはその9割をとらえていることになる。また離婚全体では5割強をとらえていることになる。
付 録
以下の箱ひげグラフの箱の中のラインは、中央値を表している。また箱の上は第3四分位点を、下は第1四分位点を表している。箱の横幅は、サンプル数に比例して幅広となっている。つまりA−1のグラフでは、離婚後の就業形態を見ると、常勤とパートアルバイトがほぼ同数くらいいることを示している。○ははずれ値である。図には、目安として100万、200万、男性は加えて500万で横線を入れてある。
A-1 離婚後の1年間の見込み年収(離婚後の就業形態別)
女性全体の離婚後の1年間の見込み年収の中位数は約150万円である。
女性は常勤であっても中位数が220万円程度で、第3四分位が約300万円、第1四分位が160万円程度である。
男性の場合は、常勤がほとんどであり、中位数が約400万円である。常勤の離婚後収入の中位数は約400万円であるが、全体でみても中位数が約400万円と変わらない。女性の150万円よりはるかに高い。
子ども年齢の上昇につれて年収は増加している。子どもが幼い時点での離婚が女性に大きい経済不安をもたらすことがわかる。しかし離婚女性の中で0−2歳児を持つ女性がもっとも多い。
男性も子ども年齢に依存して年収が上がっている。ただし男性は年収が高い子どもが中学以上での離婚が多く、女性は、子どもが幼い時点での離婚が多い。つまり女性が主に幼い子どものケア負担を担い、結果として低年収となっている。
A-2 一番幼い子どもの年齢と離婚後1年間の見込み年収
女性は賃貸が多く、また年収は、親同居と母子寮、賃貸、給与住宅、持ち家の順に低い。持ち家では第3四分位が350万円近くと高い。大多数を占める賃貸住宅居住者については、低年収の中、家賃負担は重いと想像される。
男性も年収が低い順番はほぼ女性と同じである。ただしもっとも割合が高いのが、賃貸住宅ではなく、持ち家、ついで親の家である。持ち家では第3四分位は600万円を超えている。
A-3 離婚後の住居の状況と1年間の見込み年収
続いてB−1以降は、離婚前の年収から離婚後年収(見込み)を差し引いた離婚前後の収入の変化を縦軸にとってある。これは女性は目盛りを幅広にするため、離婚前の年収が700万円未満(これ以上の者が9名いる)の者に限っている。図には目安として収入変化0円と100万円とに横線を入れてある。
B-1 離婚前の収入と離婚後収入の変化(予想)
箱の大きさは人口に応じて幅広にしてあるが、女性は離婚前は年収0の者が多く、次いで年収51万円〜100万円までの者が多い。
年収0、50万以下だった女性については、100万以上年収増が見込まれている。しかしもともと50−150万年収があったものは、第3四分位でようやく100万程度年収増を予想。第1四分位は年収変化がない。年収151〜200万円以上の者は、下落は少ないが、中位数では年収変化の予想はほとんどなく、第3四分位で年収増がある程度である。つまり200万以上に子持ちの女性が年収を増やすことの困難が伺われる。
これに対して男性は、もっとも多いのは、年収301万から400万の層、ついで年収501万から1000万以上も12名いるが、これを含む501万以上の層である。男性の場合、年収変化はほとんどない。あるのは、0だった者の変化だが、中位数で200万円以上上がっている。
所得確保がどれだけ母子世帯に難しいかということであるだろう。
離婚後3ヶ月までに既に児童扶養手当を受けている者が右の図である。児童扶養手当を受けていない者(左の図)よりも、年収が0だった者など低所得層を中心に年収の上昇幅は大きい。
B-2 女性 児童扶養手当有無 離婚前収入と離婚後の収入変化(予想)
どの子ども年齢でも母親の見込み年収は100万円近く上昇しているが、子ども年齢が上昇するほど、第3四分位が上昇している。子どものケア負担が少ないだけ、本格的に働くことが年収増を可能とするからではないだろうか。(中央値は逆に子ども年齢が上がると大きくは上昇していない。これは離婚前からフルタイムで働いている者も多いからではないか)。一方、年収増の中央値が高いのは、子ども年齢が幼い者である。これは、おそらく年収0の者が多かったためだろう。
B-3 女性 一番幼い子ども年齢別に見た離婚前収入と離婚後の収入変化(予想)
常勤者がもっとも変化の幅が大きい。これは、もともと常勤の仕事を持っていた者は変化額が0の者が多く、一方、無職から常勤にうまく移れた者などでは、増加分が大きいからだろう。
B-4 女性 離婚後の就業形態別に見た離婚前収入と離婚後の収入変化(予想)
もともと常勤だった者は上昇の余地が少ないが、無職者は100万の上昇が中央値である。
B-5 女性 離婚前の就業形態別(女性、年収700万円未満)
転職者の見込み年収は、特に常勤の者で上がっている。
B-6 転職した女性(離婚前年収700万円未満)の年収変化
常勤は上昇の余地が少ない点は同じ。児童扶養手当を支給されていない無職者であって、年収変化をゼロと見通している者が4分の1ほどいる。児童扶養手当の支給がない場合、自力では離婚後の1年では「年収変化の見通しなし」が全体で4分の1ほどいるということだろうか。
B-7 離婚前の就業形態別(女性、年収700万円未満)、児童扶養手当なし