調査研究成果データベース

[全文情報を閉じる]

全文情報
第1部 サービス業の経営革新と従業員福祉(調査結果の要約と結論)
 1 業界動向と経営課題
 2 従業員構成と労働条件管理
 3 従業員のキャリア形成
 4 従業員の能力開発
 5 福利厚生と労使コミュニケーション
 6 要約と結論

第2部 各論

 第1章 本調査の目的と方法及び調査対象

 第2章 業界動向と経営課題
  1 業界の動向と成長性
  2 業界・会社・職場生活の見通し
  3 経営の課題と労働条件
  4 団体所有

 第3章 サービス産業の雇用構造
  1 労働者数の変動
  2 労働市場の供給力
  3 サービス業で働く労働者の特性

 第4章 労働条件の管理と評価
  1 はじめに
  2 賃金制度
  3 退職制度
  4 労働時間制度
  5 労務管理に対する評価と満足度

 第5章 従業員のキャリア形成と労働市場
  1 はじめに
  2 労働市場・キャリア形成の類型とその特質
  3 年齢・性別別にみた転職経験者の特徴
  4 要約と含意

 第6章 従業員の職業能力開発
  1 正社員の人材育成
  2 基幹的職種の能力開発と職業資格
  3 職業資格と職業キャリア
  4 企業内教育訓練と職業能力開発

 第7章 福利厚生制度と労使コミュニケーション
  1 福利厚生制度の現状
  2 福利厚生制度に対する事業主・従業員の意識
  3 労働組合・従業員組織の有無
  4 従業員とのコミュニケーションの手段
  5 従業員の職場生活への満足度
  6 大企業従業員と比較した事業主の自己認識
  7 現在の勤め先に対する従業員の認識

 第8章 事業主のキャリアと雇用者の独立開業
  1 事業主のキャリア
  2 雇用者からの開業した事業主のキャリアと開業理由
  3 雇用者から開業した事業主の職業生活評価
  4 開業を希望する正社員と開業希望理由
  5 正社員が希望する開業業種
  6 雇用者の開業環境評価
  7 従業員の独立開業と開業支援

 参考資料
  1 業種別事業内容一覧
  2 従業員福祉の向上に対する意見・要望(企業・法人票)
  3 従業員福祉の向上に対する意見・要望(従業員票)
  4 調査票及び単純集計結果

第1部 サービス業の経営革新と従業員福祉(調査結果の要約と結論)

はじめに

1 問題関心
 総務庁の労働力調査によれば、日本の製造業の常用雇用者数は1992(平成4)年にピークに達し、そのあと減少しつづけている。これからの製造業雇用の見通しについて多少の違いはあっても、多くの将来推計が明らかにしているように、日本の産業構造は21世紀にむけてさらにサービス経済化していくものと予想される。
 ひとくちにサービス産業(産業大分類Lの狭義のサービス業)といっても、そこには多種多様な業種・業態が含まれる。衰退や停滞が見込まれるものもあれば、成長が期待されるものもある。小零細企業に特化した業種もあれば、平均的企業規模の大きな業種もある。高齢者あるいは高学歴女性が数多く働いている業種もあれば、多くのパートタイマーを雇用している業種もある。労働移動が活発なところもあれば、独立開業・新規参入が困難なサービス業もある。こうした多様性を内包しながらも、しかしサービス業は今後とも全体として成長していくものと見込まれている。
 本調査では、一方でサービス業のこうした高い成長性と今後の雇用吸収力に注目し、他方ではサービス業内部における上記のような多様性にも目配りしながら、経営パフォーマンスと将来展望、従業員構成と労働条件管理、従業員のキャリア形成と労働市場、従業員の能力開発、福利厚生と労使コミュニケーション、新規開業と事業主のキャリアといった諸項目にそってその実態を明らかにしようと試みた。
 それによって中小サービス業の経営と仕事の世界についての理解を深め、併せてあるべき公共政策にかんする貴重な検討素材を手にすることができるだろうと考えたからである。
2 調査の対象と方法
 調査対象業種は、原則として、「事業所統計調査(民営事業所)」の結果から見て、産業小分類レベルでの従業者数の伸び率(1986-94年)が高い業種及び94年時点において従業者数が相対的に多い業種を選定した。
 参考資料の2種類のアンケート調査票(企業・法人票と従業員票)を作成して配布・回収することとあわせて、これらの業種団体を訪問してヒアリング調査をおこなった。ちなみに企業・法人票の有効回収率は22.7%(n=5,307)、また従業員票は22.3%(n=9,467)であった。
第1節 業界動向と経営課題
1 業界動向
 サービス業もまた、いま厳しい経営環境に曝されている。調査対象企業はそれぞれの業界動向をどうみているか。
 全体としては、顧客ニーズが高度化している(複数回答で50.6%)、同じ料金でも内容・質にバラツキが大きい(50.3%)、価格が下がっている(44.4%)という3つに多くの回答が寄せられた。以下、新規参入が容易である(30.0%)、何かと政府等による規制が強い(24.1%)、アウトサイダーが多い(23.2%)、転廃業が多い(16.4%)、営業時間が長くなっている(12.1%)とつづく。いうまでもなく、これらの回答パターンは業種によってかなり違っている。
(1) 顧客ニーズが高度化しているという回答は情報処理業、情報提供業、法律事務所等で7~8割と高かった(以下すべて複数回答)。他方、廃棄物処理業では2割強、また建物サービス業等、各種学校、リース業、自動車整備業では4割前後の水準にとどまった。
(2) 同じ料金でもサービス内容・質にバラツキが大きいという指摘の多かったのは、理美容業がトップで6割弱、ついで葬儀業、個人教授所、法律事務所等、旅館、建物サービス業等、自動車整備業が6割以上の高い回答率を示した。これにたいして病院、リース業、各種学校などでは3割台であった。
(3) 価格が下がっているという回答が多かったのはリース業、旅館、映画・ビデオ制作業、自動車整備業、情報処理業、建物サービス業等といった業種であった(6~7割台)。しかし各種学校、老人福祉事業での回答は1割以下、また病院や法律事務所等でも2割強であった。
(4) 新規参入が容易であるという回答は理美容業、葬儀業、建物サービス業等、建築サービス業等、個人教授業、情報処理業、広告代理業などで多かった(4~5割台)。逆に、新規参入が容易でないとみなされているのが病院がトップ、老人福祉事業、法律事務所等、各種学校、機械修理業、旅館、情報提供業などでも1~2割強であった。
(5) 何かと政府等による規制が強いといった回答は病院と老人福祉事業で7~8割強と突出していた。
(6) アウトサイダーが多いという回答は理美容業と建物サービス業等で5割前後と多く、葬儀業、映画・ビデオ制作業、個人教授所でも3割台であった。他方、病院や法律事務所等、旅館、老人福祉事業、各種学校といった業種では1割台にとどまった。
(7) 転廃業が多いという回答は個人教授所、映画・ビデオ制作業、理美容業、情報処理業で3割以上となっており、したがって、個人教授所や理美容業、情報処理業などでは新規開業が容易であると同時に転廃業も多い(とみなされている)。その意味で、これらは新陳代謝の活発なサービス業である。
2 業種類型
 これら業界動向から、いくつかの類似業種の存在が浮かび上がる。
 第1に、新規開業が容易で(マーケットが拡大しているか、あるいは参入障壁が低い)、しかもアウトサイダーが多く、同じ料金でもサービス内容・質にバラツキが大きいといった業種がある。理美容業、葬儀業、個人教授所などがそれである。どちらかといえば、対個人サービス業としての性格が強い。
 第2に、新規開業が難しく(マーケットが安定あるいは縮小しているか、または参入障壁が高い)、アウトサイダーも少ない。したがって、価格が下がっているといったことのないあるいは少ない業種がある。たとえば病院、老人福祉事業、各種学校、法律事務所等がそれにあたる。このうち法律事務所等を除けば、いずれも何かと政府等による規制が強い業種とみなされている。同じ対個人サービスといっても、医療・福祉・職業教育関連のサービス業である。
 第3に、逆に価格が下がっているという業種にリース業、旅館、映画・ビデオ制作業、自動車整備業、情報処理業などがある。
 第4に、顧客ニーズが高度化しているというものに情報処理業、情報提供業、法律事務所等、広告代理業がある。いずれも情報化関連の対事業所サービス業である。
 このように、業界動向にかんする上位3つの回答(顧客ニーズの高度化、質にバラツキがある同一料金制、価格破壊)は一部の業種で重複はみられるものの、むしろそれぞれにその該当業種が異なっている。それを企業間競争あるいは競争力の形態という観点から整理してみると、第1に顧客ニーズの高度化がめだつ(その意味で品質競争力が問われている)情報化関連の対事業所サービス業、第2に価格破壊から相対的に自由であるが、それだけに公的規制の多い医療・福祉・職業教育関連の対個人サービス業、第3に質や内容にバラツキがありながらも業界内での価格平準化が浸透している(新規参入が容易でアウトサイダーも多い)その他の対個人サービス業、第4に価格破壊に直面しているマスプロ型の対事業所サービス業といった4つの業種類型を析出することができる(図表1)。
図表1 業界動向からみた業種類型
 したがってまた、価格形成という点では対個人サービス業での価格硬直性がめだつ。
3 業況判断と今後の成長性――活発な新陳代謝の構図
 ところで、いま企業はそれぞれの業況をどう判断しているか。全体では、低迷している(44.9%)がもっとも多く、安定的である(33.6%)、成長している(18.7%)となっている。
 もちろん、この判断も業種によって大きく分岐する。情報処理業、情報提供業、老人福祉事業、葬儀業はいずれも成長が低迷を上回っているが、逆に旅館、自動車整備業、各種学校、病院、理美容業などでは成長よりも低迷という見方がめだって多い。
 こうした業界にかんする景況判断は個別企業の3年後の事業総収入見通しとほぼ一致する。すなわち現在(1996年)=100としたとき、3年後の事業総収入見通しは情報処理業(平均指数158.1)、情報提供業(148.9)、老人福祉事業(140.7)の企業・法人で高い。しかし、こうした情報化・高齢化関連サービス業の成長見通しとは対照的に、各種学校(104.2)、病院(108.4)、自動車整備業(109.9)、旅館(112.6)などでは3年後の事業総収入の伸び率はかなり低いものと見込まれている(こうした見通しは従業員調査の結果とは必ずしも整合していない)。
 業種別のこうした成長・安定・低迷の分布から示唆されることのひとつは、サービス業における新陳代謝の構図についてである。たとえば、この10年ほどのうちに(1985年以降)創業した企業の割合をとってみると、情報提供業(59.1%)、情報処理業(54.1%)、老人福祉事業(36.9%)が上位3業種となり、これにたいして自動車整備業、旅館、各種学校、病院では85年以降の創業率が1~2割と低い。同語反復のうらみはあるが、前者のような情報化・高齢化関連のサービス業の創業時期はかなり最近に集中しているのにたいして、後者のようなサービス業では最近創業した企業の割合が低い。
 したがって、すでにこの10年ほどの新規開業率が低下し、しかもこれからの成長も期待しにくいとみられているようなサービス業が一方にあり(たとえば自動車整備業、各種学校、旅館、病院、機械修理業)、他方には今後の高い成長率が見込まれている新しいサービス業(たとえば情報処理業、情報提供業、老人福祉事業)が登場してきているといった動態的プロセスがここから浮かび上がる。
 こうしたサービス業全体としての新旧交代は、しかし同一業種の内部でも起こっている。たとえば情報処理業をとってみると、業況判断において成長している(51.8%)という見方が強い一方、低迷している(30.8%)という意見も少なくない。同じことは、これから3年後の事業総収入見通しについてもいうことができる。情報処理業に括られるほとんどの企業が高い成長率を見込んでいるというわけではなく、その成長見通しはいわば2極(現状維持と急成長)に分解している。それが示唆しているのは、同一業種内部での企業の盛衰と新陳代謝の構図についてである。
4 今後の経営方針――強い事業拡大意欲
 それでも、現状よりも事業規模を拡大したいという回答企業がめだって多い(全体で61.9%)。逆に現状よりも事業規模を縮小したいと答えた企業はわずかに1.8%にすぎない。そのほか、現状維持でいきたいという企業が29.4%あった。標本バイアスは無視できないが、全体として、サービス業の事業拡大意欲はかなり強い。
 これを業種別にみると、この拡大意欲が弱い業種としては旅館(42.3%)、自動車整備業(44.3%)、病院(50.6%)、各種学校(51.4%)などが挙げられる。この業種リストはほぼ上記の新旧交代の業種別分布と重なる。つまり現在の業況判断のみならず、3年後の事業総収入の伸び率見通しも低いような業種では、その事業規模拡大意欲もまた弱い。
 もっとも、老人福祉事業では拡大意欲(平均以下の58.0%)は強くない。また、3年後の事業総収入見通しが必ずしも高くない業種(広告代理業、建物サービス業等、廃棄物処理業など)で事業規模を拡大したいと答えている企業がそれぞれ7~8割に達した。こうした微妙なズレも観察される。
5 経営課題――マスプロ型サービス生産を超えて
 このように事業拡大意欲が強い以上、それにみあった経営革新が企図されているにちがいない。いったい、いま日本の中小サービス業はいかなる経営課題に直面しているのか。
 全体では、従業員の能力開発(複数回答で60.5%)、営業力の強化(51.2%)、人材の確保・定着化(49.0%)の3つがめだった。これらについて、サービスの高付加価値化、賃金水準の向上、受注の安定化、労働時間の短縮、財務体質の強化などを挙げた企業がいずれについても3割以上にのぼった。しかし他方では、営業時間の延長、業務の絞り込み、リースの活用、間接業務の合理化、サービスの低料金化、自動化・省力化投資の強化などについての回答はすべて1割以下の水準にとどまった。
 これら経営課題の優先順位は業種によって多少とも変化する。しかしそれにもまして従業員の能力開発、営業力の強化、人材の確保・定着化という3つの課題が業種を横断して共通に指摘されたという点が重要である。また、情報機器の活用(全体では30.0%)という回答は法律事務所等(52.1%)や広告代理業(42.5%)、建築サービス業等(41.4%)などで多かった。これらの4項目にたいして、たとえば標準化・マニュアル化の推進(20.0%:業種別では老人福祉事業の33.8%がトップ)、下請け・外注の活用(17.0%:建物サービス業等34.1%、建築サービス業等33.0%)、自動化・省力化投資の強化(10.9%:建築サービス業等で24.1%)、サービス料金の低料金化(10.7%:旅館23.8%、自動車整備業23.5%)といった経営課題をあげた中小サービス業は全体的にはむしろ少なかった。
 したがって、業種・業態による経営課題の違いはあるが、日本の中小サービス業はその基本的な方向として標準化されたサービスの大量生産システムの構築よりもむしろサービスの高付加価値化を展望しつつ、その担い手となる有能な人材の確保・定着化と従業員の能力開発を重要な経営課題としている(それなしに営業力を強化することはむずかしい)、ということができよう。
6 小括――業界動向と経営課題
(1) 日本のサービス業は顧客ニーズの高度化、価格破壊(価格が下がっている)、内容にバラツキのある同一料金制(同じ料金でもサービス内容・質にバラツキが大きい)といったいくつもの問題に直面している。
 しかし業種・業態によって、これら問題の分布と構成は大きく異なる。顧客ニーズの高度化は今後とも高い成長率が見込まれる情報化関連の対事業所サービス業において顕著であり、他方、価格破壊はリース業、旅館、映画・ビデオ制作業、自動車整備業、情報処理業、建物サービス業等などどちらかといえばマスプロ型の対事業所サービス業においてめだった。また新規参入が容易でないとみなされ、アウトサイダーも少ない病院や老人福祉事業、各種学校などではこの価格破壊の動きは弱い。さらに、理美容業、個人教授所、葬儀業など新規開業が容易でアウトサイダーが多いような対個人サービス業では質にバラツキのある同一料金制がとられている。
 このように、企業間競争や競争力の形態(品質競争力か価格競争か、価格破壊が起こったかどうか)という観点からみると、日本の中小サービス業はこれら4つの業種類型(図表1)に分けることができる。ちなみに、価格硬直性がめだつのは対個人サービス業においてである。
(2) いまの景況判断について、低迷が成長を大きく上回る。もちろん、その判断も業種によってかなり異なる。一方に情報処理業、情報提供業、老人福祉事業といった成長業種があり、他方には自動車整備業、各種学校、旅館、病院、機械修理業などの成熟業種がみとめられる。ここに示唆されていることのひとつは、サービス業の活発な新陳代謝の動態についてである。この新旧交代は同一業種の内部においても生じている。
(3) それでも、全体としてサービス業の事業拡大意欲は強い。それに関連する経営課題として強く意識されているのが従業員の能力開発、営業力の強化、人材の確保・定着化の3つである。これらの課題は広く業種横断的に共有されている。
 標準化・マニュアル化の推進やサービスの低料金化などの回答が少なかったことまで視野に収めていえば、業種別の差異はあるものの、マスプロ型サービス生産を超えて高付加価値化を志向する日本の中小サービス業は、これまでにもまして有能な人材の確保・定着、人的資源開発という重要な経営課題に直面している、ということができる。
第2節 従業員構成と労働条件管理
1 従業員規模と非正社員比率――大きい業種別の差異
 本調査は常用雇用者数が100人未満の中小サービス業を対象にしておこなったものであるが、1996年現在の正社員と非正社員(パート・アルバイト、嘱託、契約社員)の平均値はそれぞれ35.1人、14.1人、3年前(1993年)が32.4人と12.9人、また3年後(1999年)の見通しは正社員39.4人、非正社員18.3人となっている。したがって全業種平均でみるかぎり、第1に正社員、非正社員のいずれも漸増傾向にある。第2に、過去3年間と今後3年間の従業員総数の増加率はそれぞれ8.6%と17.3%であり、これからの従業員数の伸びがめだつ(この点は上記の事業拡大志向と符合する)。第3に、パート等の非正社員比率は1993年、96年、99年見通しでそれぞれ28.5%、28.7%、31.7%となっており、平均3割の水準にある。
 いうまでもなく、この従業員規模や非正社員比率は業種によってかなりのバラツキがある。おおまかにいえば、調査対象業種のうち、現在の正社員規模のもっとも大きいのが病院(96年で108.2人)、老人福祉事業(58.1人)や建物サービス業等(51.5人)のほか、各種学校、旅館、情報処理業なども中規模の業種に分類される。しかし他の多くの業種では正社員、非正社員ともに少ない(その意味で、上記の正社員・非正社員数の平均には一種の架空性がある)。たとえば、正社員数が1~9人に括られる企業の割合を業種別にとってみると、自動車整備業(65.1%)から広告代理業(41.9%)まで、全体18業種のうち10業種が含まれる(この比率の高い順に他の8業種を挙げると、法律事務所等、個人教授所、建築サービス業等、機械修理業、情報提供業、映画・ビデオ制作業、リース業、葬儀業となる)。これら小零細業種では、その非正社員数もせいぜい数名にとどまる。そのため従業員総数(1996年の全業種平均では48.6人)の多いほうからいえば病院(127.1人)、建物サービス業等(102.8人)、老人福祉事業(73.1人)が上記3業種、逆に自動車整備業(10.5人)、法律事務所等(15.3人)、機械修理業(24.6人)、広告代理業(25.2人)が下位4業種になり、正社員数のみにかぎってみた場合の業種オーダーと基本的に変わらない。
 したがって、本調査対象業種を非正社員を含む平均従業員数規模にもとづいて分類すると、大規模(病院と建物サービス業等)、中規模(老人福祉事業、各種学校、旅館、個人教授所など)、小零細(自動車整備業、法律事務所等、機械修理業、広告代理業、建築サービス業等、理美容業、葬儀業、映画・ビデオ制作業、リース業、情報提供業など)大きく3つに分けることができる。
 なお、パートなど非正社員が多いのは建物サービス業等(96年平均55.0人)のほか、個人教授所(38.9人)や各種学校(30.0人)、旅館(24.8人)、病院(19.4人)、老人福祉事業(15.4人)などにおいてである。しかも、正社員ベースで中規模以上に括られるような業種ほど、その非正社員比率もまた高い(個人教授所は例外)。この非正社員比率が高いのは個人教授所(59.2%)、建物サービス業等(49.5%)、旅館(48.5%)、各種学校(40.0%)においてである。
2 従業員構成の業種別バラエティ
 業種によって異なるのは、こうした平均的な従業員規模や非正社員比率ばかりではない。従業員の年齢や性別、学歴や職業資格のほか、派遣労働者や契約社員、あるいは他企業からの出向者や大企業の管理職経験者、さらには障害者や外国人の有無や比率といった観点からみても、それぞれの業種特性が浮かび上がる。
(1) 派遣労働者が働いている企業の割合は全業種平均で10.5%であったが、とくに多い業種としては旅館、病院、情報提供業(いずれも2割以上の回答率)があげられる。
(2) 契約社員が働いている企業の割合は全体で16.9%、業種別では映画・ビデオ制作業(44.5%)、各種学校、情報処理業、個人教授所(いずれも3割弱の回答率)でめだった。
(3) 他企業からの出向者が働いていると回答した企業の割合は全体で12.6%であった。その比率がとくに高かったのが情報提供業(38.2%)とリース業(28.9%)においてである。
(4) 大手企業で管理職をしていた人がいるという企業の割合は全業種平均で15.9%、情報提供業(37.2%)、建物サービス業等(27.3%)、各種学校(27.2%)でめだった。
(5) 定年後に再雇用した人がいるという企業の割合は全体で21.4%、とくにその比率が高い業種は病院(57.6%)、各種学校(40.9%)、建物サービス業等(39.4%)、老人福祉事業(36.3%)においてである。
(6) 4年制大卒女性正社員が働いていると回答した企業の割合は全業種平均で30.0%、その比率のもっとも高かったのが病院と各種学校(いずれも56.0%)、ついで老人福祉事業(54.8%)、個人教授所(53.1%)、情報提供業(52.9%)、さらに法律事務所等、映画・ビデオ制作業、情報処理業、広告代理業の回答も4割を超えた。
(7) 心身に障害のある人が働いていると答えた企業は平均で12.1%、とくに多いのは病院(37.9%)と老人福祉事業(26.8%)、建物サービス業等(25.6%)においてであった。
(8) 外国人が働いている企業は全体平均で7.6%、業種別では各種学校(20.6%)、個人教授所(16.9%)、建物サービス業等(14.1%)、情報処理業(13.2%)などでやや多かった。
 こういった従業員構成の業種別バラエティーは、より基本的ないくつかの指標、たとえば従業員のなかの男女比率、若年者あるいは中高年比率、大卒比率、職業資格の保有者比率(「仕事に義務づけられた職業資格の保有者」の比率、以下有資格者率と呼ぶ)などにそって分類してみると、業種別の差異が一層鮮明になる。
(1) 女性比率(全体平均が36.8%)がめだって高いのは病院(79.0%)、老人福祉事業(75.0%)、理美容業(64.8%)の3業種であるが、法律事務所等、個人教授所でも5割弱とかなり高い。
(2) 他業種に比べて、理美容業の若年者(25歳未満)比率はきわだって高い(全体平均が18.9%にたいして51.1%)。他にめだって高い業種はない。
(3) 45歳以上の中高年比率(平均32.4%)が高い業種に建物サービス業等(53.8%)、旅館(46.2%)、廃棄物処理業(45.9%)、葬儀業(45.7%)などがある。
(4) 大卒比率(平均25.6%)が高い業種には、情報提供業(51.8%)、個人教授所(50.5%)のほか、広告代理業、映画・ビデオ制作業、各種学校など(いずれも4割台)がある。
(5) 有資格者比率(平均29.3%)の高いものには病院(60.8%)、理美容業(58.1%)、各種学校(54.3%)、自動車整備業(48.9%)などがある。
 これらの比率は正社員に占めるそれぞれの従業員の割合を示したものであるが、非正社員まで含めてみても(その数値は違っても)、基本的な業種特性に変わりはない。
3 従業員構成からみた業種類型
 そこで、これら男女比率、若年・中高年比率、大卒比率、有資格者率にもとづいて業種別の労働力プロフィールをえがいてみよう。
 とくに学歴と職業資格に注目する。中小サービス業の仕事の世界、したがってまた労働市場の性格を理解するためには学歴(高低)と職業資格(有無)をそれぞれタテ軸とヨコ軸にとって、その4象限の空間に業種をプロットしてみるのがよいだろう(図表2)。
 すぐにも気づくように、高学歴(大卒)比率と有資格率とが逆相関する業種が少なくない一方で、いずれも高いあるいは低いといった業種も存在する。
 第1に、正社員中の大卒比率が高くかつ有資格者率が高いケースを高学歴-多資格者業種と呼ぶとすれば、建築サービス業等と各種学校がこれに該当する(類型I)。
 第2に、高学歴-少資格者業種には、情報提供業、広告代理業、法律事務所等、映画・ビデオ制作業、情報処理業といったものがあり、個人教授所をこれに含めることもできる(類型II)。
 第3に、正社員中の大卒比率もまた有資格者率も高くない低学歴-少資格者業種の典型は、葬儀業と旅館であるが(類型III-1)、もうすこし広くとれば廃棄物処理業や建物サービス業等、機械修理業、老人福祉事業、リース業(類型III-2)といったものをこれに含めることができる。
 第4に、本調査対象のうち、低学歴-多資格者業種には、病院、理美容業、自動車整備業がある(類型IV)。
 この類型化(注1)について、さらにつぎのように補足することができる。第II類型(高学歴-少資格者型)にはいくつかの成長業種が含まれており、すでに触れた図表1の類型区分にそっていえば、それらは顧客のニーズが高度化している情報化関連の対事業所サービス業とかなり重なる。また、第III類型(下位類型も含めて低学歴-少資格者型)に属する建物サービス業等、旅館、葬儀業、廃棄物処理業などの従業員構成は高齢化しており、しかも旅館を除けば男性比率が高い。つまり、中高年男性の多い低学歴-低資格型サービス業であり、価格破壊型の業種が少なくない(注2)。
(注1) この類型化に用いた指標(学歴と有資格者率)はあくまで業種平均の数値である。したがって、その業態が細分化されていれば、その平均値の意味は薄らぐ(場合がある)。しかしそうした細部にわたる業種分析は別途おこなった事例研究の課題であって、ここでの主題ではない。
(注2) このような形で、図表1と図表2は一部関連している。しかし両者の諸類型に機械的な対応関係を認めることはできない。
図表1 業界動向からみた業種類型
図表2 従業員構成と業種類型
4 業界の労働条件
 ところで、企業はそれぞれの業界の労働条件についてどうみているか。複数回答の結果はかなり分散しているが、全業種平均でもっとも多かったのが福利厚生制度が未整備である(40.3%)と労働時間が長い(39.0%)の2つ、以下、賃金水準が低い、従業員教育が遅れている、女性の活用が進んでいる、定着率が低い、業界に人が集まらないといった回答が3割強にのぼった。
(1) 福利厚生制度が未整備であるという回答は、とくに理美容業(62.6%)と映画・ビデオ制作業(56.3%)で多かった。逆に、各種学校や病院、リース業、情報提供業などでは3割前後の回答率であった。
(2) 労働時間が長いという指摘は、旅館(69.6%)と理美容業(69.4%)がトップ、他方、老人福祉事業(15.3%)のほか、廃棄物処理業、法律事務所等、各種学校、病院では2割強にとどまった。
(3) 賃金水準が低いという回答は自動車整備業(62.0%)や建物サービス業等(55.5%)でめだったが、映画・ビデオ制作業や理美容業でも5割を超えた。
(4) 従業員教育が遅れているという回答は廃棄物処理業(45.2%)でもっとも多かったが、業種別の分散は少なかった。もっとも指摘の少なかったのが各種学校(21.4%)、老人福祉事業(22.9%)、法律事務所等(23.1%)においてである。
(5) 定着率が低いという回答は理美容業(66.0%)、旅館(51.9%)、建物サービス業等(43.9%)などで多かった。逆に、各種学校、老人福祉事業、法律事務所等では1割前後の水準にとどまった。
(6) 業界に人が集まらないという回答は、自動車整備業(54.8%)、機械修理業(52.3%)、理美容業(51.9%)のほか、廃棄物処理業や建物サービス業等でも5割弱と多かった。これらとは対極的に、老人福祉事業(5.7%)や広告代理業(7.1%)をはじめ、各種学校、法律事務所等、情報提供業でも1割程度と少なかった。老人福祉事業を別にすれば、この分布はおよそ学歴水準に対応する。
 つまり、低学歴業種ほど業界に人が集まらない(前項(5)でいえば、定着率が悪い)。
(7) 人材の引き抜きが激しいという回答は情報提供業(29.4%)のほか、映画・ビデオ制作業、理美容業、病院でも2割にのぼった。
 このように、各業界の労働条件にかんする企業の見方は業種によってかなり異なっている。いいかえれば、業界が直面している労働問題は業種別に違っている。
 この理解を踏まえたうえで、合計11の選択肢のうち、女性の活用が進んでいる、中高年の活用が進んでいる、パート・アルバイトの活用が進んでいるという3つを除く残り8つの選択肢(従業員教育が遅れているとか賃金水準が低いなど、すべてマイナスに評価されうるもの)にどれほど回答が寄せられたか――、それを業種別に集計してみよう。平均が219.2%、最高が理美容業(357.9%)、ついで旅館(292.3%)と映画・ビデオ制作業(289.9%)、以下、建物サービス業等(268.5%)、建築サービス業等(251.5%)、自動車整備業(249.5%)となっている。逆に、最低は各種学校(131.5%)と老人福祉事業(139.4%)、そのほか、情報提供業(151.7%)、法律事務所等(153.2%)なども平均スコアを大きく下回った。
 この業種別のスコア・オーダーと図表1(業界動向からみた業種類型)とのあいだには多少の関連がみとめられる。すなわち、理美容業とリース業を別にすると、価格破壊型の業種においてこの負のスコアが高い(つまり、労働条件に問題があるという企業の見方が強い)。しかし、価格安定型の業種および顧客ニーズが高度化している(したがって品質競争力が問われるような)情報化関連の対事業所サービス業ではそのスコアが相対的に低い、といった結果になっている。
 なお、こういった業界の労働条件にかんする企業の評価は自社の労務管理にかんする評価とは必ずしも一致しない。業界の各労働条件について厳しい見方をしていても「ウチは違う」といった企業が少なくないためであろう。
5 正社員の過不足と必要な人材
 いまみたように、業界に人が集まらない、あるいは定着率が悪いといった指摘が多かったのは、図表2でいえば、老人福祉事業を別にしてほとんど低学歴業種に集中している。その逆に、高学歴業種ではそうした回答が少なかった。
 こうした傾向を念頭におきながら、正社員の過不足についてみてみよう。全体的に不足しているという回答は16.6%(業種別には情報処理業と理美容業で3割前後)、職種や年齢層によっては不足しているが42.5%(病院では7割弱の回答率)、また現有人員で適正と判断しているが31.7%(老人福祉事業と法律事務所等で5割弱)、さらに職種や年齢層によっては余剰であるという回答は4.5%、全体的に余剰であるという指摘は2.4%にとどまった。したがって、全体的にあるいは職種・年齢層によって不足しているという回答が全体の約6割を占め、反対に、全体的にあるいは職種・年齢層によって余剰であるという企業の割合は1割に満たなかった。
 では、どういう人材が不足しているのか。この点をこの約6割の企業に尋ねてみた。全体では、斬新で大胆な発想のできる人(33.6%)、職業資格の保有者(30.9%)、情報機器・ソフトに詳しい人(30.6%)の3つがめだったが、これらについて若年の高学歴者(23.3%)と社長の相談相手になってくれる経営幹部(21.4%)という回答が多かった。逆に、外国で働いた経験のある人(1.7%)、大学・研究機関などに知り合いのいる人(2.4%)、大企業の管理職経験者(4.2%)、中高年の熟練労働者(9.5%)、いろいろな業界で働いてきた人(12.9%)などの選択肢にたいする回答率は低かった。もちろん、この設問についても業種別に分岐する。しかも、その程度はとくに上位3つの回答にかんして顕著であった。
(1) 斬新で大胆な発想のできる人が不足しているという回答がとくに多かったのは広告代理業(61.2%)と映画・ビデオ制作業(59.7%)、逆に病院(11.9%)、法律事務所等(17.1%)では少なかった。
(2) 職業資格の保有者が不足しているという回答は病院(81.2%)をトップに、老人福祉事業(50.7%)・建築サービス業等(47.4%)のほか、法律事務所等や建物サービス業等でも4割前後にのぼった。しかし、数%台という業種が広告代理業、葬儀業、情報提供業など6業種におよんだ。
(3) 情報機器・ソフトに詳しい人が足りないという回答は情報処理業と情報提供業で6~7割近くに達した。また、法律事務所等でも5割強の回答があった。
 これらの業種別偏差はさきの図表2とよくみあっている。それにしても、大学・研究機関などに知り合いのいる人、外国で働いた経験のある人、大企業の管理職経験者、中高年の熟練労働者などの需要はすべて1割以下とかなり弱い。これらの人材への需要は業界に人が集まらないあるいは定着率の悪い低学歴業種のみならず、高学歴業種でも弱い。
6 賃金制度――賃金表・諸手当・中途採用者の賃金決定
 すでにみたように、業界の労働条件についての企業評価でも、賃金水準が低いという回答は福利厚生制度が未整備である、労働時間が長いといった指摘についで多かった。
 まず、賃金表(職能、等級などによって従業員の基本給を一覧表にしたもの)があるかどうかについて尋ねたところ、あるが55.9%、ないが42.4%と大きく二分された。あるという回答が多かったのは老人福祉事業(91.1%)がトップ、ついで各種学校、情報処理業、病院、情報提供業で7割弱の水準に達した。他方自動車整備業、法律事務所等では3割強と低かった。この賃金表の導入率はおよそ企業規模に比例しているが(従業員規模が大きいほど導入率が高い)、正社員ベースあるいは非正社員込みでも中規模に属する(しかし45歳以上の中高年従業員比率もパート等の非正社員比率も高い)建物サービス業等や旅館の場合、この賃金表の導入率は平均を下回る。
 諸手当の普及率についてはどうか。全体では、賞与・期末手当(91.7%)、残業手当(75.5%)、家族手当・扶養手当(67.3%)の3つの回答率がめだって多かった。以下、住宅手当(48.7%)、奨励手当あるいは精皆勤手当(36.0%)、公的資格取得者への手当(31.4%)、特殊勤務手当(27.2%)などとなっている。
(1) 賞与・期末手当の普及については業種別の格差は小さい。
(2) 残業手当については、映画・ビデオ制作業、個人教授所、広告代理業、法律事務所等、理美容業での普及率は6割前後の水準にとどまる。いずれも正社員ベースでは小零細企業に分類される業種である。
(3) 家族手当・扶養手当についても業種別の落差が大きい。若年労働力がめだって多い理美容業ではわずか3割強、そのほか法律事務所等、旅館、個人教授所などでの普及率も5割強でしかない。他方、老人福祉事業、各種学校、病院では8~9割に達する。
(4) 住宅手当については、老人福祉事業で9割、情報処理業、病院、情報提供業で6割以上の普及率となっている。
(5) 奨励手当が普及しているのは理美容業(65.5%)がトップ、ついで廃棄物処理業、自動車整備業、建物サービス業等、病院が5割以上の普及率となっている。
(6) 公的資格取得者への手当は病院、建築サービス業等、自動車整備業で5~6割近い普及率を示しているが、同じ資格業種でも理美容業の普及率は14.0%とめだって低い。
(7) 特殊勤務手当は老人福祉事業で9割のほか、病院や葬儀業で5割以上の普及率となっている。
 もうひとつ、退職金制度についてみてみよう。退職金制度がないところは全体の2割弱(理美容業では4割弱)、他方、7割が退職時に全額を退職一時金として支払うという制度になっている。退職金の一部を一時金で支払い、残りを年金として支払っているところは全体の7.3%(もっとも比率が高いリース業でも12.4%)、さらに全額を企業年金として支払っているという企業の比率は4.1%にすぎない(もっとも回答率が高かったのが葬儀業6.8%)。このように、これら後2者を合わせても1割程度にすぎない。
 ところで、中小サービス業の外部労働市場のありようを理解するために中途採用者の賃金決定の方法に注目しよう。つぎの4つの選択肢をあげ、重視している基準を第1位、第2位の順に答えてもらった。
 この第1位の回答結果にしぼっていえば、全業種平均でもっとも多かったのが学歴・年齢が同程度の従業員の賃金水準(年功基準)で40.8%、ついで職種や経験年数(職種基準)で23.9%、業界や地域の相場(同業地場基準)が15.9%、そして前の会社での賃金(前社基準)が8.3%というように分布した。このうち、年功基準と前社基準を合わせると、約5割ということになる(それは広義の年功基準といってよい)。これにたいして、職種基準と同業地場基準を合わせるとほぼ4割、したがって、後者は広義の年功基準とほぼ均等の比重をもっていることが知られる。
 試みに学歴・年齢準拠の狭義の年功基準に前社基準を加えた広義の年功基準を業種別に計算してみると、情報提供業(66.5%)、各種学校(62.3%)、広告代理業(62.2%)が上位3業種、ついでリース業(56.8%)、機械修理業(56.2%)、情報処理業(54.9%)などとなっている。逆に、その値が低いのは理美容業(25.5%)、老人福祉事業(35.0%)、病院(35.6%)、自動車整備業(35.8%)などである。また職種基準と同業地場基準を合わせた数値(外部労働市場の成熟度にかんする代理指標)でいうと、もっとも高いのが病院(61.4%)、以下、理美容業(54.9%)、老人福祉事業(50.4%)、自動車整備業(48.4%)とつづく。これらとは対照的に、情報提供業(19.3%)、広告代理業(27.6%)、各種学校(28.8%)はこの成熟度に劣る。
 したがって、さきの図表2でいえば、中途採用者の賃金を広義の年功基準によって決めている上位3業種(情報提供業、各種学校、広告代理業)はすべて類型IIに入り、また職種基準あるいは同業地場基準が重視されている(その意味で外部労働市場が成熟している)病院、理美容業、自動車整備業はことごとく類型IVに分類される。つまり、高学歴-少資格者業種では年功基準が、また低学歴-多資格者業種では職種あるいは同業地場基準が中途採用者の賃金決定の尺度として重視されており、他の業種はすべて両者の中間に位置づけることができる。
図表2 従業員構成と業種類型
7 労働時間制度
 労働時間が長いとみている企業が多いことについてはすでに触れた。
 第1に、週所定労働時間でみると、もっとも多かったのが40時間(26.4%)、ついで44時間(13.1%)、以下37.5~40時間(7.9%)、48時間(7.7%)などとなっている。このうち、週所定労働時間が40時間である企業の多い業種は、上から順に老人福祉事業(51.0%)、情報処理業(41.7%)、映画・ビデオ制作業(36.4%)、広告代理業(35.3%)、法律事務所等(31.6%)、情報提供業(31.4%)、個人教授所(31.0%)であって、老人福祉事業を除くと、いずれも図表2の高学歴-少資格者業種(類型II)に分類される。他方、週所定労働時間が48時間である企業の割合が高いのは葬儀業(21.1%)、自動車整備業(19.0%)、理美容業(17.9%)など小零細の低学歴業種に括られる(類型IIIまたはIV)。
 第2に、週休制については、全体では週休2日制が7割以上、以下、週休1日制、1日半制、その他がそれぞれ1割前後というように分布する。さらに、この週休2日制の中身を迫ってみると、完全週休2日制が上記7割のなかの5割強、隔週週休2日制が17.9%、月2回週休2日制が15.8%などという構成になっている。このうち、完全週休2日制が多い業種は情報処理業と情報提供業(全体の8割)、ついで法律事務所等(65.5%)、広告代理業(66.4%)、映画・ビデオ制作業(61.8%)などである。上記の週所定労働時間と同じように、いずれも図表2の高学歴-少資格者業種(類型II)に分類される。
 では、労働時間の短縮について中小サービス業はどう対処しようとしているのか。全体では、従業員の意識改革(43.5%)、業務の見直し(33.7%)、OA化による事務処理の効率化(30.1%)、業務のスケジュール(時間)管理の徹底(28.2%)といった回答のほか、労働時間制度の見直し(変形労働時間制、フレックスタイム制など)や繁閑に応じた柔軟な応援体制の確立、パートの戦力化、従業員の多能化の推進といった施策についての回答も2割前後あった。こうした施策についても、業種による違いがある。たとえば業務の見直しは老人福祉事業や廃棄物処理業で、またOA化による効率化は法律事務所等、建築サービス業等、情報提供業において、さらに繁閑に応じた柔軟な応援体制の確立は旅館で、変形労働時間制やフレックスタイム制など労働時間制度の見直しは老人福祉事業、旅館、病院において、そしてパートの戦力化という指摘は旅館、老人福祉事業、個人教授所、建物サービス業等などでそれぞれめだった。
8 小括――従業員構成と労働条件管理
(1) 本調査対象となった中小サービス業の平均従業員規模(非正社員を含む)を業種別にみてみると、大規模(病院や建物サービス業等)、中規模(老人福祉事業、各種学校、旅館、個人教授所など)、小零細規模(自動車整備業、法律事務所等、機械修理業、広告代理業、建築サービス業等、理美容業、葬儀業、映画・ビデオ制作業、リース業、情報提供業など)に大きく3分することができる。業種の数では、小零細規模に括られるものが多い。
 ちなみに、個人教授所を例外として、パート等の非正社員比率は正社員規模が大きいほど高い。非正社員比率のもっとも高いのが個人教授所、ついで建物サービス業等、旅館、各種学校などとなっている。その比率は4~6割にのぼる。
(2) こうした従業員規模や非正社員比率ばかりでなく、派遣労働者、契約社員、他企業からの出向者、大手企業の管理職経験者、4年制女性正社員、心身に障害のある人、外国人が働いているかといった点でも業種別の違いは大きい。
 正社員中の高学歴者比率および職業資格保有者比率にそって従業員構成の業種別バラエティーを分類してみると、<1>高学歴-多資格者業種(類型I:各種学校、建築サービス業等)、<2>高学歴-少資格者業種(類型II:情報提供業、広告代理業、法律事務所等、映画・ビデオ制作業、情報処理業、個人教授所)、<3>低学歴-少資格者業種(類型III:葬儀業、旅館、建物サービス業等、廃棄物処理業、機械修理業、リース業、老人福祉事業)、<4>低学歴-多資格者業種(類型IV:病院、理美容業、自動車整備業)という4つの類型が浮かび上がる(図表2)。
 このうち類型IIにはいくつかの成長業種が含まれており、内容的には図表1でいえば、顧客ニーズが高度化している情報化関連の対事業所サービス業と大きく重なる。また、類型IIIは中高年比率のみならず男性比率も高く、価格破壊型の業種が少なくない。
 なお、業界の労働条件にかんする企業の負の評価(たとえば福利厚生制度が未整備である、労働時間が長い、賃金水準が低い、従業員教育が遅れているなど)を業種別にたしあげてみると、図表1の顧客ニーズ高度化型の業種では総計スコアは低く、逆に価格破壊型で高くなっている。
図表1 業界動向からみた業種類型
(3) 従業員の過不足については、全体的にか職種・年齢層によってか不足しているという企業の割合は全体の6割、逆に余剰があるというところは1割弱にすぎなかった。不足しているのは、たとえば斬新で大胆な発想のできる人であり職業資格の保有者であり、また情報機器・ソフトに詳しい人であった。
 しかし、大学・研究機関などに知り合いのいる人、外国で働いた経験のある人、大企業の管理職経験者、中高年の熟練労働者などにたいする労働需要はおしなべて低い。
(4) 賃金制度のうち、賃金表の有無についての回答はほぼ半数ずつに分かれた。いくつかの例外もあるが、この賃金表の有無はおよそ企業規模に相関している。また、諸手当のなかでもっとも普及率の高いのが賞与・期末手当、しかし他の手当の導入状況はそれぞれの業態や労働実態、労働力構成にみあったものとなっている。
 退職金制度のないところが全体の2割弱、あっても全額一時金払いとなっているところが7割、一部あるいは全部を企業年金として支払っている企業の割合は全体の1割ほどにすぎなかった。
(5) 中途採用者の賃金をどうやって決めているか――、それは労働市場の性格を理解するための格好の手懸かりを与えてくれる。本調査結果によれば、<1>狭義の年功基準が4割、<2>職種基準が2割強、<3>同業地場基準が1割強、<4>前社基準が1割弱などとなっている(なお、中途採用はしていない企業が全体の4.6%あった)。したがって、広義の年功基準(<1>+<4>)と外部労働市場の成熟度を示す企業横断的基準(<2>+<3>)の比率は前者がやや多いとはいえ、ほぼ拮抗している。
 このうち、広義の年功基準は図表2の類型II(高学歴-少資格者業種)、また企業横断的基準は類型IV(低学歴-多資格者業種)でめだつ。
(6) 労働時間制度のうち、週所定労働時間が40時間(全体の約4分の1)と48時間(1割弱)となっている業種の分布をみてみると、前者には図表2の類型IIが、また後者には類型IIIあるいはIVがそれぞれ対応している。週休2日制の普及実態についてもほぼ同じことがいえる(類型IIでは完全週休2日制が高い割合で普及している)。
 なお、労働時間短縮の施策については、全体として従業員の意識改革、業務の見直し、OA化による事務業務の効率化、業務のスケジュール管理の徹底などの回答が多かった。
第3節 従業員のキャリア形成
1 入社年齢・転職者比率・平均年齢・勤続年数
 従業員調査によれば、第1に、入社時の平均年齢は全体で29.2歳、もっとも若いのが理美容業(22.6歳)、以下、情報処理業(25.2歳)、映画・ビデオ制作業(25.8歳)、建築サービス業等(26.5歳)などとなっている。逆に、この平均入社年齢の高いのが建物サービス業等(33.4歳)、廃棄物処理業(32.6歳)、葬儀業(31.8歳)、老人福祉事業(31.1歳)、旅館(30.8歳)などである。前者のうち、理美容業(中卒1割、高卒3割、専門学校卒5割を占める)を除けば、他はすべて図表2の大卒比率の高い業種である。それぞれに、直入者比率の高いことが推論される。
 第2に、実際、各業種の転職者比率をとってみると、低い順に理美容業(48.2%)、映画・ビデオ制作業(59.1%)、情報処理業(60.1%)、建築サービス業等(61.0%)と並ぶ。こうした直入者比率の高い業種とは対照的に、葬儀業(転職者比率85.2%)、廃棄物処理業(84.6%)、建物サービス業等(80.9%)ではその平均転職回数はすべて2.6回(全業種平均では2.2回)であり、もっとも多い。しかも、これら業種のいずれもが図表2の類型IV(低学歴-少資格者業種)に分類される。
 このように、平均入社年齢が25歳程度であるような直入者比率の相対的に高い業種が一方にあり、他方にはいまの勤め先への平均入社年齢が30歳台にかかる転職経験者の多い低学歴-少資格者業種がある。
 第3に、いまの平均年齢(全業種平均で37.9歳)でも葬儀業と廃棄物処理業が41.3歳、建物サービス業等が41.1歳となっており、もっとも高齢化している。反対に、平均年齢の若い業種には理美容業(31.3歳)、情報処理業(31.8歳)、映画・ビデオ制作業(34.4歳)などがある。
 第4に、現在の平均年齢から平均入社年齢を引いて業種別に勤続年数(全業種平均で8.9年)を計算してみると、もっとも勤続年数の長いのが自動車整備業(13.6年)、ついで機械修理業(11.1年)となっている。逆に情報処理業(6.6年)、情報提供業(7.2年)、建物サービス業等(7.7年)、旅館(8.0年)、老人福祉事業と個人教授所(ともに8.1年)などではその勤続年数が相対的に短い。
2 前の会社を辞めた理由
 いまみたように、従業員調査によれば、転職者の割合は全業種平均で68.4%にものぼる。10人のうち7人が転職した経験があると答えている。では、どういう理由で辞めたのか。
 その理由(複数回答)は実にさまざまである。<1>給料がよくなかったから、<2>会社に将来性が感じられなかったから、<3>自分の能力をいかせないと思ったからといった選択肢がそれぞれ2割、<4>労働時間が長かったから、<5>作業環境がよくなかったから、および仕事の中身がつまらなかったから(いずれも12.8%)、<6>上司や同僚との関係がきまずくなったから、<7>結婚・妊娠・出産のため、<8>自分の腕を磨く機会がなかったから、<9>休日・休暇が少なかったから、<10>倒産など会社の都合でやめなければならなかったから、<11>地元に帰らなければならなくなったからという回答がそれぞれ1割前後あった。定年になったから(2.6%)、とくにこれといった理由ではなく、軽い気持ちで辞めた(4.8%)、交代制など労働時間が不規則だったから(5.9%)などの回答率は低かった。
3 前の会社の業種・職種との異同
 前の会社はいまの勤め先と同じ業種か、またその会社での仕事はいまと同じか。
 まず業種については、いまの業種と違った業種(異業種)が全体の56.1%、いまと同じ業種(同業種)が25.5%、いまと類似した業種(類似業種)が16.0%となっている。異業種間移動がやや多いが、同業種あるいは類似業種間移動も4割を超える。いまの業種別にみると、同業種間移動が多いのは理美容業(65.3%)、病院(54.7%)、情報処理業(44.2%)においてであり、反対に異業種間移動は葬儀業(80.1%)、廃棄物処理業(75.5%)、建物サービス業等(73.5%)でめだった。後者はすべて図表2の類型IIIに分類される。
 仕事の中身でも、いまと同じ仕事(全体平均では23.8%)という回答がめだって多かったのは理美容業(62.0%)、病院(49.9%)、自動車整備業(35.3%)などであり、すべて図表2の類型IV(低学歴-多資格者業種)に括られる。他方いまと違った仕事という回答(全体では46.0%)が多かったのは異業種間移動の場合とまったく同じように、葬儀業(70.8%)、建物サービス業等(61.1%)、廃棄物処理業(58.8%)においてである。いずれも図表2の類型III(低学歴-少資格者業種)に入る。
 したがって、すでに触れたことまで含めていえば、第1に、全体としては、異業種間移動および異職種間移動が多いことが注目される。第2に、図表2の類型IIIの業種の場合、その平均入職年齢が高くかつ転職回数が多いだけでなく、その移動パターンにかんして異業種間移動および異職種間移動がめだつ。反対に、類型IVでは同業種間・同職種間移動が少なくない。
図表2 従業員構成と業種類型
4 移動にともなう賃金変動
 それでは、こうした企業間移動(転職)にともなってどれほどの賃金変動が生じたか。まず、全体としては、賃金が上がったという回答が40.4%、ほぼ同じが29.2%、そして下がったが27.1%というように分岐した。
 いまの業種別に、上がったと下がった者の比率の差を計算してみると葬儀業(39.7%)をトップにして、以下、理美容業(28.0%)、法律事務所等(26.4%)、リース業(24.2%)、機械修理業(24.0%)、建築サービス業等(23.6%)、広告代理業(22.0%)とつづく。他方、いまの業種が旅館(1.1%)、各種学校(2.2%)、病院(6.5%)、建物サービス業等(7.6%)、情報提供業(8.1%)であるような企業に移動した人の場合(その移動時点は分からないが)、賃金上昇と下降を経験した者の差がかなり小さい。
5 いまの勤め先への入社経路
 ところで、同じく従業員調査によれば、いまの勤め先に入社する経路について全業種平均でみると、友人や知人の紹介(29.7%)、新聞や就職情報誌などの広告(19.4%)、親兄弟(姉妹)など肉親の紹介(12.8%)、学校の紹介(12.2%)、職業安定所の紹介(9.9%)などとなっている。
 業種別の差異に注目していえば、
<1> 友人や知人の紹介が多いのは病院、映画・ビデオ制作業、老人福祉事業、葬儀業、廃棄物処理業など、どちらかといえば平均入職年齢が高く、学歴水準も低い業種が多い。
<2> 新聞や就職情報誌などの広告による者は、広告代理業、個人教授所、情報提供業、法律事務所等、高学歴業種でめだつ。
<3> 親兄弟(姉妹)などの肉親の紹介は自動車整備業、機械修理業、理美容業など小零細の低学歴業種で多い。
<4> 学校からの紹介が多いのは理美容業と建築サービス業等、情報処理業などにおいてであった。
<5> 職業安定所からの紹介は建物サービス業等、廃棄物処理業、建築サービス業等でやや多い。
 なお、従業員のこうした実際の入社経路と企業の基幹的職種にかんする求人行動との間には――後者が現在時点について尋ねていること、また基幹的職種にかぎって問うているといった両者の違いはあるが――、かなり大きなズレがみとめられる。というのも、企業調査によれば、職業安定所への求人(49.3%)、就職情報誌・新聞広告・チラシなどによる求人(46.8%)、学校への求人(37.7%)、経営者や従業員の親類縁者などへの口コミ(27.8%)などという回答結果になっているからである。
6 いまの職場に勤めようと思った理由
 なぜ、いまの企業に勤めることになったのか。この理由も前の会社を辞めた理由と同じように多様である。全体では、こういう仕事が好きだったから(38.3%)、将来性のある仕事だと思ったから(20.7%)、親・知人などに勧められたから(19.9%)のほか、労働条件がよかったから(14.8%)、自分の腕を磨きたかったから(13.6%)などとなっている。
(1) こういう仕事が好きだったからという回答は映画・ビデオ制作業、理美容業、老人福祉事業、個人教授所、自動車整備業などで5~6割と多かった。逆に廃棄物処理業、葬儀業、建物サービス業等ではめだって少なかった。これら後3者はいずれも入職時の平均年齢が高く、異業種間・異職種間移動の多い、低学歴・少資格者業種としての性格が強い。
(2) 将来性のある仕事だと思ったからという回答は理美容業で4割、老人福祉事業、情報処理業、情報提供業、法律事務所等などで3割前後にのぼった。
(3) 親・知人などに勧められたからという回答は業種間のバラツキが少なかった。
(4) 自分の腕を磨きたかったからという回答が理美容業(35.0%)、法律事務所等(26.6%)、建築サービス業等(20.4%)、情報処理業(19.1%)でめだった。これらの業種は新規開業の可能性が高いとみられている業種と一部重なるばかりでなく、将来独立開業したいと希望している従業員の多い業種(理美容業、法律事務所等、建築サービス業等、情報処理業)とも内容的にみごとに合致する。
7 キャリア志向
 これからの職業生活についてどういう展望をもっているか。全体では、これからもいまの会社でがんばりたい(47.4%)、他に良いところがあれば移りたい(15.5%)、成り行きにまかせる(15.4%)、将来のことはいま考えていない(8.8%)、将来独立開業したい(7.2%)などと分かれた。このように、従業員調査の平均年齢が38歳とはいえ、定着志向が5割にも達している。
 全業種を含めていえば、男女ともに若年期から50歳台にかけて、段階的に(とくに40歳台になると)これからもいまの会社でがんばりたいという定着性向が強まる。逆に、30歳台までは他に良いところがあれば移りたい、あるいは将来独立開業したいといった移動性向が強い(たとえばこの移動性向は20~30歳台で男女とも3割前後)。加齢にともなうこうしたキャリア志向の変化という見方によく符合するが、従業員の平均年齢が高い(たとえば、廃棄物処理業と葬儀業は41.3歳、建物サービス業等41.1歳、自動車整備業40.7歳、老人福祉事業39.2歳など)業種では、これからもいまの会社でがんばりたいという従業員の割合が高い。
 他に良いところがあれば移りたいという回答(全体の15.6%:男性40~50歳台では1割)は映画・ビデオ制作業や情報処理業、情報提供業、病院といった業種でやや多かったが、その理由としては、職場の賃金などの労働条件が悪いから(36.9%)、自分なりのライフスタイルを実現したいから(32.1%)、より高い所得が得られるから(31.5%)、自由に自分の能力を発揮したいから(29.3%)、自分の腕を磨くため(25.3%)などが挙げられた。そして、転職した場合の仕事の異同という点では、いまと同じ仕事が18.1%、いまと類似した仕事が37.0%、いまと違った仕事が25.0%というように分かれた。
 また、将来独立開業したい(全体では7.2%:男性10~20歳台で15.4%、30歳台で12.5%、40歳台で8.0%、50歳台で4.1%)という従業員の回答は理美容業(23.8%)、法律事務所等(15.3%)、建築サービス等(13.3%)などの業種で多かった。そしてその理由としては、自分なりのライフスタイルを実現したいから(60.5%)、自由に自分の能力を発揮したいから(49.6%)といったものがめだつ。また、開業したい業種という点では同業種が34.5%、類似業種が23.6%、異業種が25.7%となっている。このように転職でも独立開業でも、希望としては――転職の実態は上記のように異業種・異職種間移動が多いけれども――、同じかあるいは類似した業種・職種間で動きたいと考えている者が圧倒的に多い。
8 開業機会
 この独立開業の機会はどう変わったか。企業調査によれば、10年前と比べて開業機会は難しくなっている(47.8%)、どちらかといえば難しくなっている(26.7%)、変わらない(15.3%)、どちらかといえば容易になっている(4.7%)、容易になっている(1.5%)という結果であった。したがって、全体として、10年前に比べて開業(必ずしも独立開業にかぎらない)が難しくなってきているらしいことがうかがえる。とくに難しくなっているという回答が多かったのは病院(75.6%)、各種学校(62.6%)、法律事務所等(58.6%)、個人教授所(57.7%)、廃棄物処理業(57.3%)などである。その反対に位置しているのが老人福祉事業や葬儀業であるが(もっとも、容易になっている、どちらかといえば容易になっているを合わせてもいずれも2割弱でしかない)、この2業種ともに難しくなっている、あるいはどちらかといえば難しくなっている(合わせれば、いずれとも6割弱)ということに違いはない。
 なぜ、開業が難しくなったのか。その理由は、同業者間の競争が激しいから(60.0%)、市場の変化が激しく、予測や適応が難しいから(38.3%)、市場規模が縮小・停滞しているから(36.2%)、人件費が高額になったから(32.1%)、事業運営のノウハウが高度化したから(30.5%)などとなっている。これらの理由づけは業界によってかなり違っている。
(1) 同業者間の競争が激しいからという回答はリース業(81.7%)、葬儀業(80.9%)、広告代理業(77.7%)、法律事務所等(71.0%)、建物サービス業等(70.5%)でめだつ。逆の代表が老人福祉事業(21.7%)や病院(41.3%)、情報提供業(41.6%)である。
 このうち、前者のグループでは大企業や異業種からの参入が増えた(全体では17.5%:葬儀業44.5%、建物サービス業等39.8%、リース業29.5%)という回答もめだって多かった。
(2) 市場の変化が激しく、予測や適応が難しいからという回答は情報処理業(67.4%)と情報提供業(61.1%)のほか、映画・ビデオ制作業(55.0%)や広告代理業(53.3%)で多かった。これらは図表1の顧客ニーズが高度化している情報化関連の対事業所サービス業あるいは図表2の類型II(高学歴-少資格者業種)と大きく重なる。
図表1 業界動向からみた業種類型
図表2 従業員構成と業種類型
(3) 市場規模が縮小・停滞しているからという回答が多かった業種には各種学校(70.8%)と個人教授所(56.7%)、映画・ビデオ制作業(48.2%)、広告代理業(46.7%)、機械修理業(45.5%)、建築サービス業等(44.9%)などである。
(4) 人件費が高額になったからという回答は理美容業(67.5%)と病院(49.7%)、旅館(41.4%)でめだった。
(5) 事業運営のノウハウが高度化したからという回答は情報提供業(49.6%)、情報処理業(48.3%)、老人福祉事業(40.2%)などで多かった。
9 独立開業の実績と支援
 このように、業種によってその理由は違っていても、10年前に比べて開業が難しくなった。それでも、独立開業がなくなったというわけではない。企業調査によれば、過去3年間のうちに従業員で独立開業したものがいたという企業は全体の18.9%、いなかったが76.7%となっている。独立開業した従業員がいたという回答を業種別にみてみると、理美容業(54.5%)でめだって多く、以下、建築サービス業等(30.1%)、映画・ビデオ制作業(27.4%)、法律事務所等と病院(24.1%)とつづく。さらに建物サービス業等(22.0%)、広告代理業(21.4%)、個人教授所(19.2%)でも2割前後の数字になっている。逆に、こうした従業員の独立開業がきわめて少なかったのが老人福祉事業(1.9%)と旅館(4.2%)、自動車整備業(8.1%)、各種学校(8.6%)などである。過去3年間に独立開業した人数の合計は理美容業で3.3人、建築サービス業等で1.7人、映画・ビデオ制作業で2.0人であった。
 そうした従業員の独立開業にさいして、何らかの支援をしたか。支援したが14.8%、していないが70.2%であった(無回答が15.1%)。これを業種別にみても、従業員の独立開業の多いところほど支援率もまた高い、という関係がみとめられる。では、どういう支援をしたのか。開業後も親身に相談に乗っているという回答がもっとも多い(64.6%)。ついで顧客の斡旋(40.5%)、経営技術の指導(37.2%)などとなっている。
 このように、従業員の独立開業は10年前に比べて難しくなり、過去3年ほどのうちに実際に独立開業した従業員がいたという企業は調査対象企業全体の2割弱にすぎない。しかも、そうした独立開業者がいた場合でも、なんらかの支援をおこなったという企業はその1割強にとどまる。
10 定年制と60歳台以降の雇用機会
 ところで、企業調査によれば、定年制があるというところは全体の約7割、ないところが3割であった。業種別にみて、定年がないという比率が高いのは理美容業(68.9%)、自動車整備業(47.5%)、個人教授所(44.1%)、法律事務所等(43.6%)、映画・ビデオ制作業(43.0%)、建築サービス業等(42.2%)など小零細サービス業においてである。定年制がある場合、その定年は何歳か。全体では60歳が75.2%、65歳が8.4%、66歳以上が0.7%であった(なお定年が50~57歳という企業を合計すると11.1%になる)。
 定年制の有無やその年齢に関わりなく、実際に何歳まで働いているか(ただし男女合計の数字)。不明が4分の1あったが、60歳未満が合計で12.4%、60歳が25.4%(60~64歳までで31.8%)、65歳が19.8%(65~69歳までで23.0%)、70歳以上が9.0%となっている。したがって、定年後も実際に働いている人のかなり多いことがうかがえる。この実働年齢の平均を業種別にとってみると、年齢の高い順に建物サービス業等(65.8歳)、旅館(65.1歳)、廃棄物処理業(63.7歳)、葬儀業(63.6歳)、各種学校(63.3歳)、病院(63.2歳)というように並ぶ。逆に、若いのが理美容業(49.5歳)、情報処理業(55.8歳)、映画・ビデオ制作業と個人教授所(58.4歳)などである。
11 小括――従業員のキャリア形成
(1) 従業員調査によれば、いまの勤め先への平均入社年齢は全業種・男女計で29.2歳、現在の平均年齢が37.9歳、平均勤続年数は8.9年となっている。また正社員中の転職者比率は68.4%、転職回数は平均2.2回であった。
 しかし、多くの従業員がいまの勤め先に20歳台半ばまでに入社している直入者比率の高い業種(理美容業を除くとほとんどが高学歴業種)が一方にあり、他方にはその平均入社年齢が30歳台にかかるような転職経験者の多い、図表2でいえば類型III(低学歴-少資格者型)に括られるような業種がある。
(2) このように転職経験者が7割いるが、前の会社といまの会社を比べた場合、かれらの半分ほどは異業種移動および異職種間移動をおこなっている。この過去の実態とかれらの希望(同業種・同職種間移動への選好が強い)とのあいだにはかなりの隔たりがある。
 上記の類型IIIの業種の場合、その従業員の移動パターンにかんしては異業種・異職種間移動がめだつ。反対に、類型IV(低学歴-多資格者型)においては同業種・同職種間移動が少なくない。
(3) いまの会社への入社経路は多様であるが、友人や知人(3割)あるいは肉親(1割強)などインフォーマル・ネットワークと、新聞・就職情報誌(2割)、学校や職業安定所(いずれも1割前後)といったフォーマル・メディアとに2分される。この実態と企業の基幹的従業員にたいする求人行動(フォーマル・メディアに傾いている)とのあいだには大きなズレがある。
 いまの会社に勤めようと思った理由は、前の会社を辞めた理由と同じく多様である。もっとも多かった回答はこういった仕事が好きだったからというものであった。しかし、いまの職場が上記の類型IIIに括られるような業種である場合、こうした積極的な理由づけをする者はめだって少なかった。
(4) これからのキャリア志向については、回答者の平均年齢が38歳であるとはいえ、定着志向(これからもいまの会社でがんばりたい)が5割にのぼった。20~30歳台までは転職・独立開業志向が合わせて3割前後と高いが、40~50歳台になると定着志向が高まる。
 将来独立開業したいという者は年齢階層・男女計で7.2%(男性10~20歳台で15.4%、40歳台で8.0%と半減)いるが、企業調査によるかぎり、10年前に比べて開業は難しくなった。企業間競争の激化、環境適応力を含めた経営ノウハウの高度化、人件費の高騰、市場の縮小・停滞などがその主な理由にあげられている。
 実際、この3年間に独立開業した従業員がいたという企業は全体の2割に満たない。そうした企業が開業にさいして何らかの支援をおこなったかといえば、していないという回答が7割を占めた。
(5) 調査対象企業のうち定年制があるところは全体の7割、その4分の3の企業では60歳が定年年齢となっている。しかし、実際にはこの60歳を超えて働いている従業員が多い。さきの類型IIIの業種を中心にして、実働年齢は平均65歳を超えている。
第4節 従業員の能力開発
 さきにみたように、業界の労働条件にかんする企業評価のうち、従業員教育が遅れているという指摘が多かった。また、従業員の能力開発がこれからのもっとも重要な経営課題として挙げられていた。さらに、のちに触れるように、従業員のいまの職場生活にかんする不満のうち、教育訓練への不満が賃金へのそれに勝るとも劣らない。こうした調査結果からみるかぎり、従業員の能力開発が企業にとっても従業員にとってもいかに喫緊の課題になっているかがうかがえる。
1 1人前になるまでの期間
 企業の基幹的職種(「その他」をいれて合計で27種類:たとえば理美容業であれば「理容・美容の仕事」を基幹的職種として挙げたところが92.8%、老人福祉事業であれば「介護士・寮母」が64.3%などとなっている)にかんして、それぞれ1人前になるのにどのくらいの期間が必要か、それを企業にきいてみた。
 いうまでもなく、この期間は職業によって大きなバラツキがある。たとえば、医師は平均7.4年(一定の計算式にもとづいて算出)、ついでコック・板前など調理の仕事が6.6年、以下、設計技師が6.5年、公認会計士や税理士・弁理士が6.0年などとなっており、もっとも短いのが警備・保安が2.4年、運転・運搬2.7年、清掃・クリーニング2.9年、そして介護士・寮母、サービス・接客・窓口がそれぞれ3.4年などとなっている。こうした1人前になるまでの期間の職種別の長短を反映して、当然のことではあるが、それを業種別に集計してみると、廃棄物処理業(2.9年)、旅館や建物サービス業等(ともに3.2年)、老人福祉事業(3.5年)、リース業(3.7年)などでその期間が短く、反対に建築サービス業(6.6年)、法律事務所等や病院(いずれも5.8年)などの業種では1人前になるまでの期間が長くなっている。
 したがって図表2にそっていえば、ここでも類型IIIの低学歴-少資格者業種の場合、その基幹的職種で1人前になるまでの期間が一般的に短いことが知られる。
2 職業能力を身につけるうえで効果的なキャリア
 では、これら基幹的職種の職業能力を身につけるうえでいかなるキャリア形成が効果的だとみなされているか。<1>勤続型(ひとつの勤め先で長期にわたって働き続める)、<2>同職継続型(会社は変わっても同じ仕事を続ける)、<3>中間型(1人前になるまでは同じ勤め先で働き続け、その後は会社を変わって経験を積む)、<4>その他の方法という4つの選択肢のうち、全体としては勤続型(37.7%)と同職継続型(35.6%)が拮抗し、中間型の回答も18.7%にのぼった。それぞれの代表的な職種をあげれば、つぎのようになる。
<1> 勤続型がめだった職種は、たとえば葬儀・火葬の仕事(62.6%)、編集・出版の仕事(54.3%)、弁護士(53.6%)、運転・運搬の仕事(52.0%)などであった。そのほか、税理士・弁理士(50.2%)、外交・営業などのセールスの仕事(49.7%)、総務など事務の仕事(49.4%)、清掃・クリーニングの仕事(48.2%)などもこの勤続型が多い。反対に、医師(11.6%)、映像・ビデオ制作(16.7%)、コック・板前など調理の仕事(23.1%)などではその比率が低くなっている。
<2> 同職継続型は映像・ビデオ制作(52.6%)、デザイン・写真撮影などの仕事(50.5%)、医師(46.0%)、情報ソフト開発の仕事(45.7%)、警備・保安の仕事(45.2%)などでめだった。さらに、他の選択肢にたいしてこの<2>が有意に多かった職種をあげると、これら以外にもコック・板前の仕事(42.3%)、設計・技術の仕事(42.1%)、広告・調査・マーケティング(41.9%)、看護婦(42.6%)などがある。
<3> 中間型が多かった職種は、理容・美容の仕事とコック・板前の仕事(いずれも34.6%)、公認会計士(31.5%)であった。
3 実際の職業的キャリア
 こうした職業能力習得に効果的なキャリアと、現在それぞれの職種に就いている従業員のキャリアとのあいだに落差はないか。結論的にいえば、効果的キャリア(その意味で望ましいキャリア)と実際とのあいだには大きな乖離のみとめられる職種がいくつかある。
 上記の勤続型についてみてみると、たとえば葬儀・火葬の仕事の場合、転職経験ありが211人(転職率86.1%)、なしが34人、ある者のうち前職が違った仕事であった者の割合は81.5%にものぼる。つまり、いまこの仕事に就いている者には転職者がきわめて多く、かつ違った仕事から移ってきたケースが圧倒的に多い。これと定性的に同じことが運転・運搬の仕事についてもいえる。その転職率は90.2%、異職種からの移動率は56.7%であった。
 もちろん、効率的キャリア形成と実際とが比較的近いものもある、たとえば、いま看護婦で転職経験のある者378人のうち前職が同じ仕事であった者は273人(72.2%)ときわめて高い。また設計・技術の仕事あるいは情報ソフト開発の仕事をしている転職経験のある者のうち、その3割強は前の仕事もまたいまと変わらないものであった。それに類似の仕事という比率まで含めれば、情報ソフト開発で68.1%、設計・技術でも64.6%になる。
4 基幹的職種と職業資格
 これら基幹的職種には、<1>国や地方自治体が認める公的職業資格が必要であり、その資格がないと仕事ができないもの(全体の29.1%)、<2>国や地方自治体が認める公的資格になっているが、仕事をするうえで無資格でもできるもの(22.6%)、<3>業界団体・職能団体が認める職業資格で、資格がないと仕事ができないもの(3.5%)、<4>業界団体・職能団体が認める職業資格だが、仕事をするうえでは無資格でもできるもの(8.8%)、<5>職業資格がないもの(29.7%)など、いくつかの種類がある。したがって、<1>と<3>(いずれも要資格職種)を合わせると全体の3割強、<2>と<4>(ともに無資格でも可)の合計も3割強、<5>(無資格職種)も3割というように、3等分された。
 これらのうち、たとえば、医師や看護婦、公認会計士や弁護士が<1>の例であり、介護士・寮母、コック・板前、情報処理・ソフト開発などが<2>、また<3>には技能職・建設職や警備・保安の仕事の一部が該当する。<4>には葬儀・火葬、販売・レジ、清掃・クリーニングの仕事の一部が、さらに<5>のような職業資格がないものとして、映像・ビデオの制作、広告・調査・マーケティング、編集・出版、デザイン・写真撮影、外交・営業などセールスの仕事、サービス・接客・窓口の仕事などがある。
5 受験資格と見習い期間
 これら職業資格の取得にあって、受験資格として実務経験を要求しているケースが全体の66.2%、たとえば公認会計士や理容・美容の仕事、介護士・寮母などの場合である。他方、そうした実務経験を課していないものが全体の28.6%、たとえば弁護士、情報ソフト開発、臨床検査士・放射線技士などがそれにあたる。
 では、職業資格の取得要件として見習い期間が義務づけられているか。<1>受験資格として見習い期間(インターン制)が義務づけられているもの(全体の21.7%)、<2>資格取得後、一定期間の見習い期間が義務づけられているもの(6.4%)、<3>義務ではないが、一定期間の見習い期間が慣行化しているもの(14.1%)、<4>見習い期間は義務ではないし、慣行化もしていないもの(47.9%)などに分かれている。このうち、理容・美容の仕事が<1>の代表例、弁護士や公認会計士は<2>、また<3>は医師やコック・板前などでその比率が高い。
6 1人前になってからの職業的キャリア
 これら基幹的職種で1人前になったのち、いかなる職業的キャリアがひらかれているか。<1>より専門性を高められるような職業的キャリアが確立している(全体の22.2%:職能高度化型)、<2>基本的な仕事の内容は変わらないが、昇進して管理・監督職的な仕事が用意されている(30.2%:管理監督者型)、<3>基本的な仕事の内容は変わらないが、のれん分けなど独立開業の機会が多い(13.5%:独立開業型)、<4>1人前になった人はその先の仕事も質的にあまり変わらない(25.1%:不変型)というように分かれた。
 <1> 職能高度化型は医師や公認会計士、情報処理・ソフト開発、設計・技術の仕事に当てはまる。<2> 管理監督者型の多かったのは臨床検査士・放射線技士等、外交・営業などセールスの仕事、介護士・寮母などの場合である。また、<3>独立開業型は弁護士、理容・美容、税理士・弁理士でめだった。<4>不変型が多かったのは警備・保安の仕事、運転・運搬の仕事などである。
7 正社員の人材育成の方法
 ところで、中小サービス業のもっとも重要な経営課題のひとつが従業員の能力開発であることについてはすでに触れた。
 正社員の人材育成はどのようにおこなわれているか(複数回答)。全体では、<1>やさしい仕事から徐々に難しい仕事へと計画的に体験させながら覚える(64.0%:計画的OJT)がもっとも多く、ついで<2>上司や先輩の仕事を見よう見まねで覚える(50.6%:OJT)、<3>業界団体等の研修(39.4%:業界研修)、<4>社内の研修室などで研修(29.7%:社内研修)、<5>自己啓発の支援(18.9%:自己啓発支援)といった順序になっている。
<1>の計画的OJTの回答が多かった業種は理美容業(77.0%)や建築サービス業等(75.2%)などにおいてであり、逆に老人福祉事業(48.4%)では少なかった。
<2> OJTの比重がとくに高かったのは葬儀業(70.0%)、映画・ビデオ制作業(64.7%)であった。
<3> 業界研修が正社員の人材育成に大きな役割を果たしているのは老人福祉事業(76.4%)、自動車整備業(59.7%)、各種学校(59.1%)、病院(58.3%)、法律事務所等(45.9%)などにおいてであり、ほとんどがアウトサイダーが少ないといった意味で業界のまとまりがよいところである。
<4> 社内研修の比重が相対的に大きい業種には理美容業(55.3%)、老人福祉事業(54.1%)、病院(45.0%)、各種学校(41.2%)などがある。
<5> 自己啓発支援がめだつのは各種学校(30.4%)、情報提供業(28.3%)、情報処理業(27.2%)などである。
<6> 設備機器等のメーカーでの研修(全体では11.0%)がめだって多かった業種は機械修理業(30.8%)であるが、この機械修理業では<7>親会社やフランチャイズ本部で研修(全体で6.9%、機械修理業では28.1%)という回答もきわだって多かった。
<8> 通信教育という回答(全体では7.0%)が多かったのは理美容業(32.8%)と老人福祉事業(20.4%)である。
 このように、全体としては、正社員の人材育成にかんして業界研修がかなりの役割を担っているが(とくに有資格率の高い業種)、なおOJT(計画的OJTを含む)がもっとも重要な位置を占めている。これに社内研修まで加えれば、いかに職場での人材育成が大きな比重をもっているかが知られよう。
 これと基本的に同じことを同じような選択肢で、あなたはいまの仕事に必要な職業能力をどのようにして身につけましたか(複数回答)という形で従業員にもきいている。
 その結果は、基本的には上記の企業調査のそれと変わらない。つまり、計画的OJTを含めてOJTの役割がもっとも大きく(全職種計ではOJTが57.9%、計画的OJTが52.9%)、またどのような業種に勤めている従業員でその比率が高いかという点でも、企業調査の結果と類似している(すなわちOJTは葬儀業、広告代理業、映画・ビデオ制作業などで、また計画的OJTは理美容業、情報処理業、建築サービス業等で高かった)。企業調査と多少違っているのは業界団体研修の回答率(企業調査では参加人数とは別の研修実施率、しかし従業員調査では本人受講率になっているから)が従業員調査でかなり低くなっているのは当然としても、従業員調査では「自己負担で専門学校や講習会・セミナーに通った」割合をきいており(企業調査では「自己啓発の支援」の有無をきいているだけ)、その比率は従業員全体の14.8%(多かったのは理美容業の40.2%、法律事務所等の32.3%、病院の26.6%などであった)と必ずしも低くない。
8 業界研修
 この業界研修について、企業調査の結果をみてみよう。<1>業界団体の実施する資格取得のための教育訓練を受けさせている(36.2%:資格取得訓練)、<2>業界団体の教育訓練機関を卒業した人を採用している(5.1%:業界訓練機関卒業生採用)、<3>新入社員を業界団体が行う新人教育に参加させている(19.0%:新人教育)、<4>中途採用者を業界団体が行う導入教育に参加させている(8.3%:中途採用者導入訓練)、<5>業界団体の実施する在職者向けの専門研修に参加させている(29.8%:在職者専門研修)のほか、<6>業界団体で従業員向けの教育訓練を実施していない(11.9%)、<7>業界団体で従業員向けの教育訓練をやっているかどうかわからない(7.4%)というのが全体の回答結果であった。
<1> 資格取得訓練は自動車整備業、廃棄物処理業、老人福祉事業などで6~7割と高かった。その逆に映画・ビデオ制作業、広告代理業、情報提供業といった業種では1割に満たない。
<2> 業界訓練機関卒業生採用がみられるのは理美容業、老人福祉事業、病院(いずれも2割前後)などにおいてである。
<3> 新人教育の実施率が高いのは老人福祉事業(57.3%)のほか、病院や理美容業、各種学校(すべて3割弱)などにおいてである。
<4> 中途採用者導入訓練がめだったのは老人福祉事業や建物サービス業等(いずれも2割前後)である。
<5> 在職者専門研修は老人福祉事業(73.2%)、病院(57.1%)、各種学校(48.2%)で多かった。
 こうしたことの結果、業種別に上記の<1>~<5>までの実施率を合計してみると、トップは老人福祉事業(234.3%)、ついで病院(157.6%)、以下、各種学校(141.1%)、理美容業(139.2%)、自動車整備業(137.1%)となっており、映画・ビデオ制作業(37.8%)、情報提供業(48.1%)、広告代理業(52.2%)、旅館(62.7%)、情報処理業(63.5%)、葬儀業(64.2%)ではその実施率が低かった。したがって、この業種別のバラツキを図表2にそってみれば、タテ軸の有資格率と強く相関しているが知られよう。つまり、有資格率の高い業種では業界団体による人材育成が重視されており、逆に、有資格率の低い業種では業界団体による人材育成機能は弱い、ということができる。
図表2 従業員構成と業種類型
9 教育訓練をめぐる問題点
 いったい従業員の教育訓練実施上、企業はいかなる問題に直面しているか(複数回答)。全業種平均では、特に困っていることはない(23.0%)という企業が2割強あった。しかし、<1>教育訓練の時間が十分に確保できない(43.9%)、<2>従業員の学習意欲が弱い(29.2%)、<3>1人前に育てても、すぐにやめてしまう(23.4%)、<4>OJTの指導者がいない(16.0%)などの問題点が指摘された。
<1> 時間がないという回答は老人福祉事業(63.7%)、情報処理業(61.6%)、病院(57.4%)でめだった。
<2> 従業員の学習意欲が弱いという回答は理美容業(49.8%)や建物サービス業等(40.8%)のほか、自動車整備業、機械修理業、廃棄物処理業など低学歴業種でやや多かった。
<3> 1人前に育てても、すぐにやめてしまうという回答のめだって多かったのは理美容業(55.7%)、ついで病院(32.7%)、旅館(30.0%)などとなっている。逆に情報提供業(7.9%)、老人福祉事業(10.8%)、各種学校(10.9%)ではその回答率は低かった。
<4> OJTの指導者がいないという回答は業種別の偏差が少なかったが、病院や情報処理業、広告代理業で2割を超えた。
 では、従業員が仕事に必要な職業能力を身につけるうえで困っていることはなにか(複数回答)。全体では、特に困っていることはないという意見が4割あった。この割合は企業回答のおよそ2倍になる。それでも、<1>仕事が忙しすぎて学習する時間が確保できない(29.8%)という回答もかなり多い(なかでも情報処理業43.3%、老人福祉事業38.7%、情報提供業38.1%、建築サービス業等37.1%、各種学校36.4%など)。以下、<2>仕事を教えてくれる上司や先輩がまわりにいない(9.6%:広告代理業、情報提供業、映画・ビデオ制作業などでめだつ)、<3>会社・法人が従業員の教育訓練に熱心でない(9.1%:旅館、映画・ビデオ制作業、広告代理業、情報提供業でやや多い)、<4>管理監督者が部下育成に熱心でない(8.4%:情報提供業、映画・ビデオ制作業、旅館などでややめだつ)などとなっている。
10 コンピュータ・ネットワークと能力開発
 従業員の能力開発に関連して、コンピュータ・ネットワークをどの程度利用しているか。求職・求人情報の入手なども含めた利用率でみると、すでに利用しているという企業は全体の7.2%(多かったのは情報処理業22.1%、情報提供業16.2%)と少なかったが、いまは利用していないが今後利用したいという回答が33.0%にのぼった(病院41.0%、建築サービス業等38.3%、情報処理業38.1%など)。
 これらすでにコンピュータ・ネットワークを利用しているか、あるいは今後利用したいと回答した企業にその利用のしかたをきいてみたところ、<1>求職者情報の入手(49.0%)、<2>ネットワーク上の学習システム利用(31.2%:個人教授所47.8%、各種学校43.5%、老人福祉事業41.5%、法律事務所等40.6%、広告代理業39.6%)、<3>他企業の求人情報(25.3%)、<4>通信教育サービス利用(24.5%:自動車整備業33.3%、情報処理業30.4%、機械修理業29.7%)、<5>教育訓練の講師等の人材情報入手(21.8%:老人福祉事業、各種学校40.9%)、<6>公的資格の有資格者情報の入手(21.2%)などという回答結果がえられた。
 したがって、ここに示唆されているのは、ひとつにはこうした複数の用途にそったコンピュータ・ネットワークの利用ニーズの強さについてであり、いまひとつにはすでに触れたような教育訓練のための時間のなさや指導者等の人材不足を考えれば、コンピュータ・ネットワークを積極的に活用した従業員の能力開発の今後の可能性についてである。
11 小括――従業員の能力開発
(1) 1人前になるまでに必要な期間はもちろん職種によってかなり異なる。各業種の基幹的職種についてみても、たとえば、医師のように平均7年以上かかるものから2年強といった警備・保安の仕事までがある。
(2) その基幹的職種の職業能力を身につけるうえで効果的な職業的キャリアにかんして、少なくとも勤続型、同職継続型、中間型を区別することができる。本調査の対象となった基幹的職種の場合、その3者の構成比は(2:2:1)といった結果になっている。勤続型には葬儀・火葬、編集・出版、弁護士、運転・運搬、総務などの事務、清掃・クリーニングといったものがあげられ、また同職継続型には映像・ビデオ制作、デザイン・写真撮影、医師、情報処理・ソフト開発など、さらに中間型には理容・美容、コック・板前などが含まれる。
 しかし、この効果的なキャリアと転職経験者の実際のキャリアとはしばしば一致しない。勤続型の職種に就いている者の労働移動率がかなり高いとか、同職継続型の職種であるにもかかわらず異職種間移動をしているといった事例が数多くみいだせるからである。
(3) 基幹的職種の職業資格は、第1にそれがないと働くことができない要資格職種(たとえば医者や弁護士、警備・保安職の一部など)、第2に職業資格はあるが、なくても仕事ができる職種(介護士・寮母、コック・板前、情報処理・ソフト開発、製造・クリーニング職の一部など)、第3に職業資格のない職種(映像・ビデオ制作、広告・調査・マーケティング、デザイン・写真撮影、セールス職など)の3つに分けることができる。本調査の基幹的職種については、これらの構成比はほぼ3等分された。
 したがって、上記の効果的キャリア類型と対比してみると、要資格職種だからといって同職継続型のキャリア形成が効果的であるとか、あるいは無資格職種なので勤続型が望ましいといった一義的な対応関係があるわけではない――、つまり無資格職種でも同職継続が効果的なものもあれば、要資格職種でも勤続型のケースのあることがわかる。
(4) 職業資格の取得試験(受験)にあたって、実務経験を必要とするものが全体の7割弱、また資格取得の要件として一定の見習い期間を義務づけている職種が2割あった。
(5) 1人前になってからの職業的キャリアには、職能高度化型(全体の2割強:公認会計士、情報処理・ソフト開発、設計・技術など)、管理監督者型(3割:臨床検査士・放射線技士、セールス職、介護士・寮母など)、独立開業型(1割強:弁護士、税理士・弁理士、理容・美容)、それに不変型(全体の25%:警備・保安、運輸・運搬など)といった少なくとも4つの類型を区別することができる。
(6) ところで、正社員の人材育成の方法については、計画的OJTを含めてOJTの役割がきわめて大きい。同時に、図表2の有資格率の高い業種(たとえば病院、老人福祉事業、各種学校、理美容業、自動車整備業など)では、業界研修がかなり重要な役割を担っている。
 この業界研修の中身としては資格取得訓練、在職者専門研修、新人教育などの比重が高い。
(7) 教育訓練あるいは仕事に必要な職業能力の習得にかんして――いま特に問題はないという回答が企業で2割強、従業員では4割いたが――、双方から共通に指摘されたのが忙しくて教育訓練の時間がないという点であった。企業からは、そのほかにも従業員の学習意欲が弱い、1人前に育ててもすぐにやめてしまうといった苦情がきかれた。
 この従業員の教育訓練ニーズ充足のためにも、今後はコンピュータ・ネットワークを利用したいと考えている企業が全体の3割近くにのぼった。
第5節 福利厚生と労使コミュニケーション
1 福利厚生の現状と今後
 企業にたいしては17項目からなる福利厚生の実施状況などについて、また従業員にたいして福利厚生にかんする今後の希望をきいてみた。図表3(カッコ内は、現在の実施率+今後の実施予定率=合計、またカッコ外の数値は従業員に「今後、力を入れてほしい」福利厚生施策をきいたもの)がその結果である。
図表3 福利厚生施策の現状と今後――企業および従業員調査の結果
 これらの実施状況あるいは今後の導入予定は一方では従業員の諸属性(たとえば性・年齢階層の構成や学歴水準、パート等比率など)とその生活ニーズに、また他方では企業属性(たとえば従業員規模、成長性や収益力など)にも関連している。
 まず、企業調査によれば、現状についてこの図表3の表側の数字(<1>~<17>)の順番に実施率が高い。このうち、上位にランクされた施策にかんして業種別の差異はどれほどか。<1>健康保険と<2>厚生年金への加入率がきわだって低いのが理美容業(<1>64.7%、<2>46.0%)であった(ちなみに、これらいずれについても「今後実施したい」という割合はこの理美容業でめだって高く、<1>で16.2%、<2>で21.7%となっている。その意味で、これら施策について今後は他業界との格差縮小が期待される)。<3>慶弔見舞金制度でも理美容業(66.4%)のほか、自動車整備業(71.5%)、個人教授所と旅館(いずれも74.2%)、法律事務所等(75.9%)の低さがめだった。従業員の要望がもっとも強い<4>人間ドック・成人病検診についても、若年業種とはいえ理美容業(27.3%)が最低の実施率、ついで自動車整備業(49.8%)、旅館(50.4%)、個人教授所(53.1%)、葬儀業(53.2%)、廃棄物処理業(59.5%)などとなっている。これらのなかには、中高齢者比率がかなり高いにもかかわらずその実施率の低い業種(旅館、葬儀業、廃棄物処理業など図表2のIIIに分類される低学歴-少資格者業種)が含まれている。
 今後の導入予定はどうか。図表3の上位項目のうちには、すでに実施しているため今後の予定がない(あるいは少ない)といった回答が多い。たとえば、健康保険や厚生年金への加入、慶弔見舞金制度などがそれである。その例外が上記の人間ドック・成人病検診やスポーツ・レクリエーション活動である。それは従業員の希望も強ければ、導入を予定している企業も多い。似通ったことは、とは、レジャー施設の利用、休憩室・食堂・体育施設、文化教養活動、アスレチッククラブなど健康増進施設の利用補助、持ち家住宅の融資、介護休業制度などについてもいえる。従業員の希望が弱いということも踏まえて、今後ともその実施率が低いと見込まれているのは、たとえば社員寮・社宅や託児・保育施設などである。なお地域イベントへの参加については、今後の導入を予定している企業が少なくないが、逆に従業員の希望は弱い。
 こうした今後の導入予定まで視野に収めていえば、中小サービス業の福利厚生にかんして、ハードウエアの整備充実もさることながら地域のファシリティーや健康産業などを有効活用した健康づくりへの関心が企業・従業員ともに強いことがうかがえる。
 なお、従業員の希望の強い上記項目にかぎっていえば、たとえば人間ドック・成人病検診への希望は葬儀業(37.3%)でもっとも多かった。休憩室・食堂・体育施設については病院(37.7%)、アスレチッククラブなど健康増進施設の利用補助は情報提供業、映画・ビデオ制作業、個人教授所、法律事務所等などで、またレジャー施設の利用は情報提供業、情報処理業、映画・ビデオ制作業、老人福祉事業や病院などでそれぞれめだった。
2 従業員とのコミュニケーション
 全体では、<1>職場懇談会(51.3%)、<2>朝礼(47.1%)の2つが突出している。以下、<3>自己申告制度(19.4%)、<4>小集団活動・提案制度(15.5%)、<5>社内報等(12.9%)、<6>労使協議会・従業員代表との懇談(10.7%)などとなっている。
 業種別の差異では、<2>朝礼の比重が高いものに老人福祉事業や病院、理美容業、各種学校、葬儀業がある。<3>自己申告制度の普及率が高いのは情報処理業と情報提供業、また<4>小集団活動・提案制度の採用は病院、各種学校、個人教授所でややめだつ。<5>社内報等の比重が高いのは病院と老人福祉事業、<6>労使協議会・従業員代表との懇談は病院、各種学校、廃棄物処理業などであった。
3 労働組合と労使関係
 さらに、労働組合や従業員組織の有無についていえば、<1>組合のあるところが全体の4.7%(上位から各種学校13.6%、情報提供業8.9%、映画・ビデオ制作業7.7%、病院7.5%など)、<2>社員会・親睦会などの従業員組織のあるところが36.4%(めだつのは老人福祉事業73.9%、病院58.1%、各種学校50.6%、情報処理業49.7%など)、<3>いずれもないところが全体の57.4%にのぼった。とくに、この<3>の比率が高いのは法律事務所等(77.9%)、個人教授所(77.0%)、映画・ビデオ制作業(73.5%)、理美容業(72.8%)の4業種においてである。
 このうち、<2>のような従業員組織が賃上げの話し合いをおこなっているのが全体の20.3%(映画・ビデオ制作業では36.2%)、行っていないという回答が77.7%を占めた。
4 勤め先との関係
 従業員はいまの勤め先との関係をどのように捉えているか。<1>単に雇われているだけの関係である(全体では42.9%、そうは思わないが50.9%)、<2>腕を磨き、自分を鍛える場である(そう思うが63.3%)、<3>自分の私生活を多少犠牲にしてもやむをえない(そう思うが55.1%)、<4>社長さんも社会的には自分と変わらない立場にいる人だ(そう思うが35.0%)の4つについてきいてみた。
 このうち、<1>のような契約意識は病院(51.4%)、リース業(48.9%)、旅館(48.8%)、廃棄物処理業(46.0%)などで強かった。逆に、理美容業(そう思わないが67.8%)、個人教授所(同じく60.3%)ではそう思わないという意見が多かった。<2>の能力開発・訓練の場という意識は理美容業(83.3%)、建築サービス業等(76.0%)、情報処理業(73.4%)、法律事務所等(72.9%)などどちらかといえば独立開業の機会が相対的に多い業種でめだった。その対極にあるのが廃棄物処理業(44.4%)である。<3>私生活にたいする犠牲意識といったものは葬儀業(65.3%)、老人福祉事業(65.1%)、旅館(62.2%)、理美容業(61.7%)、個人教授所(60.7%)で多く、反対に情報処理業、情報提供業、廃棄物処理業(いずれも45%以上)などで弱かった。<4>の社長さんとの同類意識は自動車整備業(49.1%)、機械修理業(48.9%)、映画・ビデオ制作業(47.6%)、情報処理業(47.3%)などで強く、逆に病院(23.7%)のほか、各種学校、旅館、法律事務所等、老人福祉事業、建物サービス業等では弱かった。
5 従業員の満足度
 従業員調査によれば、8項目にわたる満足度のうち、その加重平均値(満足=+5、やや満足=+4、どちらともいえない=+3、やや不満=+2、不満=+1)が高い順に、<1>仕事の内容(3.6)、<2>労働時間(3.5)、第3位が3項目、つまり<3>職場の人間関係、<4>作業環境、<5>職場生活全体の評価(いずれも3.3)、第6位が2項目、すなわち<6>福利厚生と<7>賃金(ともに3.1)、そして<8>教育訓練の加重平均値がもっとも低くて2.9と並ぶ。このように、教育訓練にかんする従業員の満足度は低い。また、賃金とともに福利厚生についての満足度も他項目に比べてやや劣る。
 これら<1>から<8>までを加算して、業種別の従業員の満足度指数(総計)を比べてみると、もっとも高いスコアが理美容業(3.55)と法律事務所等(3.51)、ついで自動車整備業(3.44)、廃棄物処理業とリース業(ともに3.35)となっており、反対にもっとも低いのが映画・ビデオ制作業(3.05)と情報処理業(3.08)、旅館(3.11)、病院(3.18)などで、平均よりも満足度が低い。したがって、この分布は図表2の諸類型とはランダムな関係を示している。つまり第II象限(高い法律事務所等と低い映画・ビデオ制作業)にもまた第IV象限(高い理美容業と低い病院)にも、それぞれ従業員満足度スコアのもっとも高い業種もあれば、もっとも低いものも含まれる。
図表2 従業員構成と業種類型
 さらに立ち入ってみると、満足度(総計)のもっとも高い業種では従業員の満足度はどの項目についても高いことがわかる。しかも上記のように、福利厚生施策に実施率ではめだって劣る理美容業や自動車整備業で従業員の満足度がきわだって高い。その意味では、福利厚生水準と従業員満足度との相関関係は薄い。それはまた、企業評価による業界の賃金水準とも関係しない(企業調査によれば、従業員満足度の高い自動車整備業や理美容業は、逆に従業員満足度がもっとも低い映画・ビデオ制作業と同じく、賃金水準が低いとみなされている)。この高い満足度はむしろ独立開業の機会とか、労働における内在的報酬志向(自分の腕を磨きたかったからとか、こういう仕事が好きだったから)とか、あるいは事業主を含む職場の人間関係とかとの関連が強いように推察される(注3)。
(注3) 従業員の満足度が必ずしも福祉水準や賃金水準と関連していないというこの事実認識はそれ自体意味がある。しかし、それは満足度と福祉あるいは賃金水準との相関関係が弱いといっているのであって、たとえば福祉・賃金水準を下げれば満足度が上がるなどと曲解してはならない。
6 事業主の諸層性と社会的自己評価
 それでは、事業主のほうはいまの仕事の世界や生活をどうみているか。
 それに先立って、調査対象となった事業主(男性が9割以上)のいくつかの属性に触れておけば――、<1>平均年齢は54.6歳、<2>最終学歴は高卒が24.3%、大卒以上が55.3%であった。<3>事業主となった経緯については、雇用者からの新規の独立開業が38.3%(法律事務所等65.8%、建築サービス業等61.4%、理美容業54.0%など)、家業継承が18.5%(葬儀業47.9%、旅館45.8%、病院36.1%など)、親会社の関連会社や子会社として開業したが10.7%(リース業25.4%、機械修理業22.3%、情報提供業19.9%など)、家業とは別に新たに開業したが9.9%(老人福祉事業29.3%、旅館18.1%など)、会社・法人内で昇進したが9.5%(老人福祉事業24.2%、映画・ビデオ制作業14.3%、建築サービス業等14.2%)などとなっている。<4>開業あるいは継承年齢の平均は39.4歳(30歳台33.5%、40歳台22.1%、50歳台12.8%)、<5>開業あるいは事業継承した理由では、自由に自分の能力を発揮したかったから(44.3%)、自分の技能や知識を生かせるから(35.3%)、事業継承を頼まれたから(30.0%)などとなっている。なお、<6>後継者のいる企業は全体の49.8%、いないところが18.5%(法律事務所等33.9%、情報処理業30.8%など)、わからないと答えた企業が28.8%あった。
 ところで、いま事業主である人々は「大企業に勤めている同年輩の人達と比べて」、自らの仕事や生活をどうみているか――、それをつぎの6項目にそってきいてみた(選択肢は、大企業に勤めている人の方がよい、どちらともいえない、自分の方がよいの3つ)。
 すべての項目について、「大企業の人の方がよい」という選択肢がトップになることはなかった。つまり、6項目のいずれについても「自分の方がよい」か、あるいは「どちらともいえない」という回答結果になっている。
 自分の方がよいという回答がめだったのは、<1>仕事のやりがい(69.6%)、<2>自分らしく生きられる(69.3%)の2つ(これらいずれの項目の場合も、どちらともいえないの回答率は22.2%)、さらに、<3>老後の生活設計・生き甲斐についても自分の方がよい(47.2%)という意見がもっとも多かった(大企業に勤めている人の方がよいが9.3%、どちらともいえないが36.8%)。これらとは対照的に、<4>仕事のつらさ(自分の方がよいが21.2%、大企業に勤めている人の方がよいが18.3%、どちらともいえないが53.9%)、<5>収入の面(自分の方がよいが32.7%、大企業に勤めている人の方がよいが24.6%、どちらともいえないが36.6%)、<6>社会的地位(自分の方がよいが36.4%、大企業に勤めている人の方がよいが13.2%、どちらともいえないが44.1%)という3項目については見方が分かれ、どちらともいえないという意見がもっとも多かった。
 業種別にみたとき、これら6項目のうちでバラツキがめだったのは<5>収入の面にかんしてである。いいかえれば、<1>仕事のやりがい、<2>自分らしく生きられるといった点で業種別の格差は小さかった。
7 小括――福利厚生と労使コミュニケーション
(1) 従業員の福利厚生の現状については、健康保険や厚生年金への加入、慶弔見舞金などの実施率が高く、逆に託児・保育施設、介護休業制度、持ち家住宅の融資などの普及率がめだって低い。従業員の希望がもっとも強い人間ドック・成人病検診について、中高齢従業員が多いにもかかわらず、未実施である業種(廃棄物処理業、旅館、葬儀業など)があった。
 労使双方の希望および導入予定の割合が高いものとして、この人間ドック・成人病検診のほか、スポーツ・レクリエーション活動、レジャー施設の利用、アスレチッククラブなど健康増進施設の利用補助、休憩室・食堂・体育施設、介護休業制度などがある。
 従業員の希望も含めた今後の福利厚生施策の方向についていえば、地域ファシリティーや健康産業などを積極的に有効活用したよりソフトで健康志向的なものにそのニーズが傾いているようにうかがえる。
(2) 調査対象の中小サービス業のうち、労働組合があるところは全体の4.7%とどまった。社員会・親睦会などの従業員組織があるところが3分の1強、そのうち賃金について話し合っているケースが2割あった。
(3) 従業員調査によれば、いまの勤め先との関係意識にかんして、単に雇われているだけとは思わないという従業員が全体の5割、したがってまた、自分の私生活を多少犠牲にすることもやむをえないという者が5割強いた。もっとも多かった意見として、いまの勤め先を腕を磨き自分を鍛える場であると捉えている者が6割強おり、さらに社長さんも社会的には自分と変わらない立場の人だとみている従業員が全体の3分の1強いた。
(4) 従業員の満足度では、項目別にみると教育訓練への不満がもっとも強く、逆に仕事の内容や労働時間についての不満は相対的に弱い。
 業種別にみると、理美容業、法律事務所等、自動車整備業などでは賃金や福利厚生、教育訓練などの個別項目だけでなく総合的にみてもその従業員の満足度は高く、反対に映画・ビデオ制作業、情報処理業、旅館、病院といった業種で従業員の満足度は低かった。
 こうした従業員の満足度は、したがって福利厚生や賃金水準といったものよりも(本調査の結果によれば、従業員の満足度は福利厚生・賃金水準と逆相関または無相関している)、むしろ独立開業の機会とか労働意識における内在的報酬志向やその充足度、あるいは事業主を含む職場の人間関係といった諸要因とより強い関係があるかもしれない。
(5) 大企業に勤めている同年輩の人達と比べて、事業主は自分の仕事の世界と生活をどうみているか。
 仕事のやりがい、自分らしく生きられるといった点での自己評価はきわめて高く、自分の方がよいとみている者が圧倒的に多い。老後の生活設計や生き甲斐についても基本的に同じことがいえる。それでも、仕事のきつさや収入といった点になると、その積極的自己評価は多少とも揺らぐ。仕事のきつさや収入だけでなく社会的地位についても、どちらともいえないという意見がもっとも多かった。
 そういう「社長さんも社会的には自分と変わらない立場にいる人だ」とみている従業員が全体の3分の1強にのぼった。そうした従業員はたとえば自動車整備業、機械修理業、映画・ビデオ制作業、情報処理業などで多かった。
第6節 要約と結論
 すでに、各節の末尾にそれぞれその主題にそった要約(小括)を記しておいた。ここでは、それらを踏まえて、いくつかの基本的な事実発見を整理しておこう。
1 ひとくちに日本の中小サービス産業といっても、その業種・業態といい経営環境といい今後の成長性といい、まことに多様である。最近の業界動向を競争力パターンという観点から類型化した図表1からでも、そのことは容易に読み取れる。顧客ニーズが高度化している情報化関連の対事業所サービス業、価格破壊に曝された対事業所サービス業、アウトサイダーこそ少ないが公的規制が多い(かぎりで)価格安定的な医療・福祉・職業教育関連の対個人サービス業、質的なバラツキがありながらも同一価格制になっている対個人サービス業といったように、いくつかの業種類型を区別することができる。
 当面の景況判断については多くの業界で低迷が成長を大きく上回っている。しかし、そのことはサービス業が活発に新陳代謝していることを否定しない。それはサービス産業全体についてもまた特定業種についてもいうことができる。
 ともあれ、企業の今後の事業拡大意欲は旺盛である。それもあって斬新で大胆な発想のできる人、職業資格のある人、情報機器・ソフトに詳しい人などを中心に、従業員の不足感は強い。
 これからの中小サービス業の戦略ヴェクトルにかんして、企業調査が示唆しているのは、マスプロ型から高付加価値型サービス業へ、あるいは価格競争力から品質競争力へといった動きであるように思われる。そうした文脈にそって、その戦略を担うべき有能な人材の確保・定着と能力開発がいまあらためて喫緊な経営課題となっている。
図表1 業界動向からみた業種類型
2 中小サービス産業の多様性はこうした経営面ばかりでなく、仕事の世界についてもいうことができる。まず従業員規模については、大規模(病院や建物サービス業等)、中規模(老人福祉事業、各種学校、旅館など)、小零細規模(理美容業、自動車整備業、広告代理業など)に分けることができる。
 業種別の労働力プロフィールを理解するために、正社員中の職業資格保有者比率と高学歴者比率をとって2軸をクロスしてみると、<1>高学歴-多資格者業種(類型I:建築サービス業等、各種学校)、<2>高学歴-少資格者業種(類型II:情報提供業、法律事務所等、広告代理業など)、<3>低学歴-少資格者業種(類型III:葬儀業、旅館、建物サービス業等、廃棄物処理業など)、<4>低学歴-多資格者業種(類型IV:理美容業、病院、自動車整備業)という4つの類型が浮かび上がる。
 この類型化によれば、第1に、中途採用者の賃金決定の方法にかんして、類型IIでは広義の年功基準が、類型IIIでは企業横断的な職種基準あるいは同業地場基準が重視されている。第2に、週所定労働時間あるいは週休2日制に関連していえば、類型IIでは時短が「進んでいる」が、類型IIIやIVでは「遅れている」。第3に、従業員のキャリアに結びつけていえば、いまの勤め先への平均入社年齢が30歳台にかかるような従業員が類型IIIで多いのにたいして、類型IIでは学卒後の直入者比率が一般的に高い。第4に、類型IIIでは職業能力習得に効果的なキャリア類型が(同職継続型や中間型でなく)勤続型に傾いているにもかかわらず、実際には異業種間・異職種間移動がめだつ。一般的に移動率も高い。他方、類型IVでは同業間・同職種間移動が少なくない。第5に、1人前になるのに必要な期間は類型IIIの諸業種で一般的に短い。第6に、入社経路にかんして、類型IIIでは一般的にインフォーマル・ネットワークヘの依存度が高く、しかも入社理由からみるかぎり積極的労働移動という性格が弱い。第7に、高齢期の雇用機会という点でいえば、類型IIIの諸業種では実働年齢がしばしば平均65歳を超えている。実際、この類型IIIでは男性比率だけでなく、中高年比率も高い。
3 従業員のキャリア志向は、その平均年齢が38歳ということもあるが、定着志向が5割にのぼった。将来独立開業したいと考えている者は理美容業、建築サービス業等、法律事務所等などを中心に40歳台男性従業員のなかでも8%のぼる。しかし企業調査によるかぎり、この10年ほどのうちに開業(独立開業にかぎらない)は明らかに難しくなった。企業間競争の激化、環境適応力を含めた経営ノウハウの高度化、市場の縮小や停滞、人件費の高騰などのためである。
 この3年間のうちに実際に独立開業した従業員のいる企業は全体の2割に満たないし、またその独立開業にさいして何らかの支援をおこなった企業は1割強にとどまる。
4 中小サービス業における職業能力の習得に効果的なキャリアはけっして一様ではない。勤続型(葬儀等、編集・出版、運転・運搬、総務などの事務、清掃・クリーニングなど)、同職継続型(映像・ビデオ制作、デザイン等、医師、情報処理・ソフト開発など)、中間型(理美容、コック・板前など)などを区別することができ、その相対比重は(2:2:1)となっている。この分布は――上記のような定着志向の浸透と独立開業機会の減少からイメージされる状況とは異なって――、さきにみた中途採用者の賃金決定の方法(広義の年功基準と職種・同業地場基準の併存)とともに、外部労働市場の所在を強く示唆している。
 もっとも、この効果的なキャリア・パターンと転職経験のある従業員の実際のキャリアとの間にはしばしば大きなズレがある。
 この効果的なキャリア・パターンの違いは、1人前になってからの職業的キャリアの分岐ともよく共鳴している。というのも、この後者について職能高度化型、管理監督者型、独立開業型、不変型などを区別することができ、しかも効果的キャリア・パターンとの対応関係でいえば、職能高度化型はその同職継続型に、また管理監督者型および不変型は勤続型に、さらに独立開業型は中間型に、それぞれ一定の結びつきをもっているからである。
 なお、基幹的職種と職業資格との関連については、要資格職種、未資格-就業可能職種、無資格職種の3つを区別することができる。企業調査によれば、その比重はほぼ3等分される。
5 大きな経営課題ともなっている正社員の人材育成・能力開発の方法についていえば、中小サービス業においても、計画的OJTを含めてOJTがきわめて大きな役割を果たしている。しかし図表2の有資格率が高い業種(類型I・IV)では、同時に業界研修が重要な機能を担っている。とくに資格取得訓練、在職者専門研修、新人教育においてその役割が大きい。
 こうした従業員の教育訓練(従業員については仕事に必要な職業能力の習得)にかんして、とくに問題はないという企業が2割(従業員では4割)あったが、忙しくて教育訓練の時間がない、従業員の学習意欲が弱い(逆に会社や管理監督者が教育訓練に熱心でない)、OJTの指導者がいない(仕事を教えてくれる上司や先輩がまわりにいない)、1人前に育ててもすぐに辞めてしまう、などの苦情や問題点が指摘された。
 他方、従業員の教育訓練ニーズ充足のためにも、今後コンピュータ・ネットワークを利用したいと考えている企業が3割にのぼった。ここに、ひとつの政策的示唆が与えられている。
図表2 従業員構成と業種類型
6 中小サービス業の福利厚生施策のうち、従業員の希望が強く、しかも企業が導入予定している割合の高いものに、人間ドック・成人病検診、スポーツ・レクリエーション活動、レジャー施設の利用、アスレチッククラブなど健康増進施設の利用補助、休憩室・食堂・体育施設、介護休業制度などがある。
 このように、基本的な方向としては、地域ファシリティーや健康産業などを有効活用した健康ニーズの充足に大きく傾いている。
7 従業員の職業生活にかんする満足度については、教育訓練への不満がもっとも強く、仕事の内容や労働時間の不満は相対的に弱い。業種別にみると、理美容業、法律事務所等、自動車整備業ではどの項目についても従業員の満足度は高く、逆に映画・ビデオ制作業、情報処理業、旅館、病院といった業種では満足度が総じて低かった。
 注目すべきことに、この従業員の満足度は上記の福利厚生水準や賃金などの労働条件とは無相関あるいは逆相関しており、むしろ独立開業の機会、入社動機、労働の内在的報酬、事業主を含めた職場の人間関係といったものとの結びつきが強いように推察される。
8 従業員調査によれば、いまの勤め先との関係意識にかんして、単に雇われているだけの関係とは思わない、(したがってまた)会社のために自分の私生活を多少犠牲にすることもやむをえないと考えている者がいずれも5割いた。もっとも多かったのが、腕を磨き自分を鍛える場であるとみている者で、全体の6割強にのぼった。また、社長さんも社会的には自分と変わらない立場の人だとみている者も3人のうち1人いた。
 では、大企業に勤めている同年輩の人と比べて、中小サービス業の事業主はいかなる社会的自己評価を下しているか。仕事のやりがい、自分らしく生きられるといったことのほか、老後の生活設計や生き甲斐といった点でも、自分のほうがよいとみている。これにたいして、仕事のきつさや収入、社会的地位といった項目についてはどちらともいえないという評価がめだった。


第2部 各論


第1章 本調査の目的と方法及び調査対象

第1節 調査の目的と方法
1 調査の目的
 産業構造の変化によりサービス経済化が進む中で、1994年には就業者数においてサービス業が製造業を上回る状態となっている(図表1-1)。製造業においては、国際競争が今後とも続くと予想され、雇用機会という点では大幅な増加は期待できない。一方で、高度情報化の進展、余暇活動に関するニーズの高まり、少子化・高齢化の進展などを背景に、様々なサービス業の開業が見込まれる。今後の雇用の吸収先として、このような、新たに生まれ成長してゆくサービス業に対して寄せられる期待は大きい。
図表1-1 産業別就業者数の推移
 こうしたことから、現在、既に雇用規模の大きな業種、今後、さらに雇用規模の拡大が見込まれる業種を取り上げ、経営課題、雇用管理の課題、労働条件、職種別労働市場の構造などを企業・法人調査で明らかにし、就業意識、労務管理の満足度、能力開発ニーズなどを従業員調査で明らかにする。
2 調査の方法
(1) 質問紙調査
 上記の問題意識を明らかにするために、質問紙調査と事例調査を実施した。質問紙調査では、帝国データバンクの企業情報ファイル(COSMOS2)をもとに、全国の中小サービス業の企業・法人、23,702を標本抽出した。郵送によって2種類の調査票を事業主に配布した。
 それはすなわち、
ア. 企業・法人に対する企業・法人調査票
イ. 従業員に対する従業員調査票
の2種類である。
 企業・法人調査票は事業主が回答するように、従業員調査票は事業主を通じて従業員に配布・記入・個別の郵送を依頼した。従業員調査票の配布教は42,846票である。配布には3つのタイプを設定した(注1)。
ア. Aタイプ:50人未満の規模の企業・法人で、従業員票を2票同封するタイプ
イ. Bタイプ:50人以上の規模の企業・法人で、従業員票を5票同封するタイプ
ウ. Cタイプ:50人以上の規模の企業・法人で、従業員票を同封しないタイプ
 業種によっては従業員票の配布数が多くなり過ぎるために、50人以上の一部の企業・法人で、従業員票を同封しなかった。AとBのタイプについては、分析の際にデータの接合を目的として、個々の事業主に配布した企業・法人票と従業員票に、同一の番号を打った。
(注1) 業種ごとのA、B、Cタイプのそれぞれのサンプル数は、図表1-12の通り。
図表1-12 タイプ別企業・法人数
(2) 事例調査
 調査対象として選定した18業種の中で、業界団体が存在する15業種の業界団体を訪問し、聞き取り調査を実施した(注2)。また業界団体での事例調査を進めていく中で、企業・法人での事例調査を実施する必要があった6業種に限り、企業・法人での聞き取り調査を9社実施した。
(注2) 聞き取り調査を実施した業界団体は以下の通り。
(社)全国建設機械器具リース業協会、(社)日本建築士事務所協会連合会、(財)全国環境衛生営業指導センター、全日本葬祭業協同組合連合会、(社)日本映像ソフト協会、(社)全国ビルメンテナンス協会、日本自動車整備商工組合連合会、全国ソフトウエア業協同組合連合会、日本データベース協会、(社)日本広告業協会、(社)全日本病院協会、(社)全国産業廃棄物連合会、全国専修学校・各種学校総連合会、(社)全国有料老人ホーム協会、(社)建設コンサルタント協会
(3) 調査時期
 以上の実施時期は以下のとおりである。
ア. 質問紙調査
 配布期間 1996年8月12日~8月14日
 回収期限 1996年10月15日
 調査基準日 1996年8月20日
イ. 事例調査
 業界団体 1996年7月~8月
 企業・法人 1996年12月~1997年1月
第2節 調査対象の選定と回収状況
1 調査対象の業種の選定基準
 調査対象業種は、原則として、「事業所統計調査(民営事業所)」の結果から見て、産業小分類レベルでの従業者数の伸び率(1986-94年)が高い業種及び、94年時点において従業者数が相対的に多い業種とし、図表1-2のクロス票に基づき業種を選定した。さらに選定した業種を、帝国データバンクの業種分類に照らし合わせて、18業種に統合し、名称を簡略化した(図表1-3)。
図表1-2 従業者数及び従業者数の伸び率
図表1-3 調査対象業種
2 調査標本の抽出法
 サンプル台帳は、帝国データバンクに依頼し、全国に立地する従業員規模1~299人の中小サービス業を、業種別に企業・法人ベースで抽出して作成した。帝国データバンクの企業情報ファイル(COSMOS2)の1~4人、5~9人、10~29人、30~49人、50~99人、100~299人の従業員規模の分布に合わせて、合計で業種ごとに1,500件を目標に抽出した(注3)。ただし葬儀業、情報提供業、法律事務所等、各種学校、老人福祉事業の5業種は、それぞれ帝国データの企業情報ファイルが1,500件に満たなかったため、サンプル数が1,500件を切った。
(注3) 帝国データバンクの企業情報ファイルの規模別分布は図表1-13の通りである。
図表1-13 企業情報ファイルの規模別分布
3 回収状況
 最終的に有効票として得られたものは、企業・法人票が5,307票(図表1-4)、従業員票が9,467票(図表1-5)であった。廃業等による住所不明を除外した有効配布教(企業・法人票の23,417票、従業員票の42,404票)をもとに、有効回答率を算出すると、企業・法人票で22.6%、従業員票で22.3%であった。企業・法人票と従業員票ともに、老人福祉事業、病院、各種学校で回収率がよく、自動車整備業、理美容業は低かった。
図表1-4 企業・法人票の回収率
図表1-5 従業員票の回収率
第3節 集計対象企業・法人の特徴
1 設立時期(図表1-6)
図表1-6 設立時期
 設立時期は、1980年代が30.8%と最も多く、ついで1970年代の26.3%、1960年代の15.4%の順であった。また、設立の比較的新しい「1990年以降」の法人が10.1%、反対に設立の古い「1959年以前」の法人が14.5%とそれぞれ1割以上を占めた。
 設立時期のピークは業種によって大きく異なった。個人教授所、病院、リース業、旅館、情報処理業、映画業、葬儀業、情報提供業、各種学校、老人福祉事業では、1985~1989年が最も多かった。このうち情報処理業と情報提供業では、1990年以降の比較的設立時期の新しい法人も2割程度と比較的多かった。広告代理業は1980~1984年、機械修理業、建築サービス業等、法律事務所等では1975~1979年、理美容業、清掃業、建物サービス業、自動車整備業では1970~1974年がそれぞれ最も多かった。
 従業員規模別に見ると、規模が小さくなるにつれて、設立時期が新しくなる傾向にあった。
2 企業形態(図表1-7)
図表1-7 企業形態
 企業形態は株式会社が59%と最も多かった。ついで有限会社が16.2%、会社以外の法人(社会福祉法人、学校法人、医療法人等)が13%、法人組織になっていない個人企業が9.1%の順であった。
 ほとんどの業種で、株式会社が過半数を占め最も多かった。例外は、理美容業で株式会社(34.9%)よりも有限会社(47.7%)が多かった。そして、病院(76.8%)、各種学校(70.8%)、老人福祉事業(82.8%)では、会社以外の法人が最も多かった。
 いずれの規模でも、株式会社が過半数を占め最も多かった。規模別の特徴は、1~9人の規模で、有限会社が26.9%、法人組織になっていない個人企業が16.8%と最も多かった。また51人以上の規模で、会社以外の法人が34.1%となった。
第4節 集計対象従業員の特徴
1 性別(図表1-8)
図表1-8 性別
 男性(51.7%)と女性(48.1%)の人員はほぼ半分ずつであった。業種別では男女比率に違いが見られた。男性が過半数を占める業種は、広告代理業、清掃業、機械修理業、建物サービス業、リース業、情報処理業、建築サービス業等、自動車整備業、映画業、葬儀業、情報提供業、各種学校であった。女性が過半数を占める業種は、個人教授所、理美容業、病院、老人福祉事業であった。男女がほぼ同数であった業種は、旅館、法律事務所等であった。規模別では、いずれも、男女の人数はほぼ半分ずつであり、大きな違いは見られなかった。
2 年齢別構成(図表1-9)
図表1-9 年齢別構成
 平均年齢は37.9歳(標準偏差:11.2)であった。分布を見ると、30代(29.9%)が最も多く、ついで20代(28.1%)、40代(24.4%)の順であった。業種別で平均年齢を見ると、理美容業(31.3歳)が最も低く、ついで情報処理業(31.8歳)、映画業(34.4歳)、個人教授所(35.2歳)、情報提供業(35.4歳)、建築サービス業等(35.5歳)の順であった。反対に葬儀業と清掃業が41.3歳と最も平均年齢が高く、ついで建物サービス業(41.1歳)、自動車整備業(40.7歳)の順であった。規模別ではほとんど差がなかった。
3 結婚の有無(図表1-10)
図表1-10 結婚の有無
 既婚者が57.4%と過半数を占めた。未婚は35.8%であった。業種別に見ると、ほとんどの業種で既婚者が過半数を占めた。例外として、未婚者が過半数を占める業種は、理美容業(57.9%)、映画業(57.4%)、情報処理業(51.8%)であった。また、個人教授所と情報提供業では、既婚者と未婚者がほぼ同数であった。これらの業種は平均年齢の低い業種であった。
 既婚者がいる5,426人の従業員に対して、配偶者が働いているかどうかを尋ねた。正社員として働いている(52.9%)が過半数を占め、ついで働いていない(29%)、パート・アルバイトとして働いている(29%)の順であった。業種別に見ると、個人教授所(63.2%)、理美容業(73.4%)、病院(70.9%)、旅館(60%)、老人福祉事業(71.5%)では、配偶者が正社員として働く従業員が圧倒的に多かった。
4 学歴別構成(図表1-11)
図表1-11 学歴別構成
 高校卒が35.5%と最も多かった。ついで大学卒以上(28%)、専門学校卒(20.4%)、高専・短大卒(11.5%)の順であった。業種別ではかなり大きな違いが見られた。大学卒以上が多い業種は、個人教授所(53.2%)、公告代理業(45.7%)、情報提供業(54.6%)、法律事務所等(50.3%)、各種学校(42.6%)であった。高校卒が多い業種は、清掃業(56.2%)、機械修理業(55.9%)、建物サービス業(54.1%)、リース業(48.9%)、旅館(51.7%)、自動車整備業(65.7%)、葬儀業(57.4%)であった。専門学校卒が多い業種は、理美容業のみであった。その他の業種では学齢別構成比が割れた。病院、情報処理業、老人福祉事業では、高校卒と専門学校卒と大学卒以上に割れた。映画・ビデオ制作業は専門学校卒と大学卒以上に割れた。建築サービス業等は高校卒と大学卒以上に割れた。
 規模別に見ると、1~9人と10~50人では高校卒が最も多いが、51人以上では、高校卒、大学卒以上、専門学校卒に割れた。
第5節 集計上の諸注意
 全体を通して使用したクロス集計の基軸のうち、新たに作成した変数とカテゴリーを中心に説明する。
1 企業・法人票
(1) ケースの除外
 有効回答数の5,307票を総数として分析した。総数と従業員規模0人以外のクロスでは、以下のケースを除外した。
ア. 従業員規模が0人(1996年の正社員数が0人かつパート・アルバイト、嘱託・契約社員数が0人)。
イ. 正社員の人数が0人。かつパート・アルバイト、嘱託・契約社員が未記入。
ウ. 正社員が未記入。かつパート・アルバイト、嘱託・契約社員の人数が0人。
エ. 正社員が未記入。かつパート・アルバイト、嘱託・契約社員が未記入。
 これらのア~エのケースを、総数の5,307票から除外すると、5,104票が残った。
(2) 変数の定義
ア. 従業員規模0人
  問12から、1996年の正社員数が0人かつパート・アルバイト、嘱託・契約社員数が0人と回答した企業・法人票を、従業員規模0人と定義した。
イ. 従業員規模
  問12をもとに、1996年の正社員数とパート・アルバイト、嘱託・契約社員数を足し、1~9人、10~50人、51人以上に3区分した。
ウ. 設立年別
  問1から、1959年以前、1960~1974年、1975~1984年、1985~1989年、1990年以降に5区分した。
エ. 労使関係類型
  問31は、「労働組合や従業員組織がりますか。あてはまるものにすべて○をつけてください。」となっている。そして選択肢として以下の3つが用意されている。

   1 労働組合
   2 社員会、親睦会などの従業員組織
   3 どちらもない

 2と回答すると、さらに付問があり、賃上げの話し合いの有無について尋ねている。これらの反応をもとに、労使関係を4類型に分類した。
   (ア) 労働組合あり(組合と従業員組織の両方があるものは、「組合あり」に含める)
   (イ) 発言型従業員組織(従業員組織があり、賃上げの話し合いがある)
   (ウ) 親睦型従業員組織(従業員組織はあるが、賃上げの話し合いはない)
   (エ) どちらもない
オ. 従業員数の伸び率
 問12では、1993年4月と1996年8月の正社員数およびパート・アルバイト、嘱託・契約社員などの人数を尋ねた。これらをもとに、1993年から1996年にかけての従業員数の伸び率を、以下の計算式で算出した。

 そして、120%以上、80~120%未満、80%未満に3区分した。
2 従業員票
(1) ケースの除外
 有効回答数の9,468票から、従業員規模が0人の従業員票を削除し、9,451票を総数として分析した。さらに、問6で現在の働き方について、正社員、パート・アルバイトの2つの選択肢で聞いているが、現在の働き方別のクロス以外では、パート・アルバイトを除外した8,905票を分析対象とした。
 また規模別のクロスでは、企業・法人票の分析と同じく、以下のケースを除外した。
ア. 従業員規模が0人(1996年の正社員数が0人かつパート・アルバイト、嘱託・契約社員数が0人)。
イ. 正社員の人数が0人。かつパート・アルバイト、嘱託・契約社員が未記入。
ウ. 正社員が未記入。かつパート・アルバイト、嘱託・契約社員の人数が0人。
エ. 正社員が未記入。かつパート・アルバイト、嘱託・契約社員が未記入。
 その結果、7,837票を分析対象とした。
(2) 変数の定義
ア. 年齢
 問2から、現在の年齢を10~20代、30代、40代、50代、60代以降に5区分した。
イ. 勤続年数
 問2から、0~3年、4~6年、7~9年、10~12年、13年以上に5区分した。
ウ. 転職のタイプ
 問23の(3)から、同じ仕事で転職経験あり、類似した仕事で転職経験あり、違った仕事で転職経験あり、転職経験なしに4区分した。
3 企業・法人票と従業員票のデータの接合
(1) ケースの除外
 企業・法人票、従業員票と同じ方法で除外。
(2) 変数の定義
ア. 労務管理自己評価総合得点
 企業・法人票の問33の7つの指標について、それぞれ改善の余地が大きい(1点)からよい(5点)に対応させ、7点から35点までの総合得点を算出した。そして、28~35点、21~27点、14~20点、7~13点に4区分した。それらの4カテゴリーに基づく分類を、従業員票のデータに接合した。
イ. 転職のタイプ
 転職経験ありのうち、従業員規模が大きくなった、変わらない、小さくなったの3区分と、転職経験なしに4区分した。従業員規模の推移については以下の手順を踏んだ。まず、企業・法人票の問12から従業員規模を算出し、その値を従業員票の問23の(2)の5つのカテゴリー、つまり1~9人、10~99人、100~299人、300~999人、1,000人以上に5区分した。さらにそれらの5カテゴリーに基づく分類を、従業員票のデータに接合した。そして転職する直前の勤め先の従業員規模である問23の(2)と比較し、カテゴリーがより大規模に推移した場合(ex.1~9人から10~99人)、「従業員規模が大きくなった」に、反対の場合を「従業員規模が小さくなった」に、変化がなかった場合、「変わらない」に分類した。
ウ. 従業員の職場生活全体の評価
 従業員票の職場生活全体の評価を、不満(1点)から満足(5点)に対応させ得点化した。企業・法人によっては、従業員票の返却が2~5人と散らばっているため、企業・法人ごとに平均値を算出し、企業・法人票のデータに接合した。そして、1~1.9点、2~2.9点、3~3.9点、4~5点に4区分した。


第2章 業界動向と経営課題

はじめに
 産業空洞化の論議に並行して、比較劣位産業に代わる新産業分野として、また新たな雇用創出の場としても、「サービス業」に対する関心と期待はきわめて大きい。実際、円高不況(1985年のプラザ合意を契機)に喘ぐ製造業の縮小をサービス業が補完し、雇用の面でも大きな吸収力を発揮してきた。また中小企業の開業率が全般に低下するなかで、サービス業だけが堅調な開業率を持続的に示しており、中小企業の新成長分野(ニューサービス業)としても新たな関心を集めている。こうして、新産業の創造、雇用創出、さらには中小企業の新成長分野などの面で、サービス業によせられる関心と期待は依然大きなものがある。
 しかし、バブル経済の崩壊とリストラクチャリングの拡大を契機に露呈してきた経済社会構造の変化や、東アジア経済圏を射程に入れた国際分業再構築の奔流を背景に、サービス業を取り巻く経営環境もまた大きく変化してきている。はたして、過去の産業変動のトレンドをバックデータとする「サービス業神話」は、今日でもなお健在で、今後とも過去の「常識」が通用するものなのか、どうか。
 このような問題意識にもとづき、以下では、経営環境の変化と業界の動向をとおしてサービス業の成長性とその要因が検証される一方、成長性を軸にしてサービス業の直面する経営課題と人的資源をめぐる諸問題が分析される。そして、サービス業の成長格差の拡大とサービス労働の光と陰が浮き彫りにされ、サービス業トータルとしてみる限りでは、「サービス業神話」は崩壊している事実があきらかにされる。
第1節 業界の動向と成長性
1 業界の動向
 近年の業界動向については、「顧客ニーズが高度化している(50.6%)」とか「サービス内容・質にバラツキが大きい(50.3%)」「価格が下がっている(44.4%)」など、高度化(多様化・個性化)、バラツキ(企業間格差)、低価格化(価格破壊)を挙げる企業が多数を占めている。このうち、高度化と低価格化は市場構造の質的変化を反映したものであり、サービス業も製造業と同様、量的な成長拡大には一定の限界がみえてきたようである。このほかでは、サービス業の開業率の高さに符号して、「新規参入が容易である(30.0%)」とか「アウトサイダーが多い(23.2%)」とする回答も目立っている。また医療・福祉関連の業種が調査の対象にふくまれていることもあって、「政府等による規制が強い(24.1%)」とする回答も少なくない。(図表2-1)
図表2-1 業界動向(MA)
 これを業種別にみると、「顧客ニーズの高度化」を指摘するのは、情報処理業や情報提供業、法律事務所等、広告代理業、理美容業などに多く、企業ニーズの高度化や消費者ニーズの多様化・個性化などを反映している。また「サービスの内容・質にバラツキが大きい」とするのは、理美容業をはじめ葬祭業、個人教授所、法律事務所等、旅館、建物サービス業等、自動車整備業などであり、個人企業の比率が相対的に高く、業界内部でのサービスの標準化(統一基準の作成)が遅れている一方、サービスの生産が個人の技能や知識に依存する割合が大きく、その価値評価も顧客の感応に依存する度合いが強い業種に偏在している。さらに「低価格化(価格破壊)」の指摘は、リース業、旅館、映画・ビデオ制作業、自動車整備業、情報処理業、建物サービス業等、機械修理業などで高い比率を示していることから、事業所関連サービスを中心にして企業の経費削減や設備投資の抑制に伴う価格競争の激化、業界の重層型下請構造に起因する利益率の低下、あるいは規制緩和などが背景とみられる。生活関連サービスでは、個人消費の伸び悩みが低価格化の大きな要因と推測される。(図表2-2)
図表2-2 業界の動向(業種別・上位3位)
 このように、サービス業全般としては、市場構造の変化を背景にサービスの高度化(多様化・個性化)と低価格化(価格破壊)が同時に進行しており、とくに情報処理業など事業所関連サービスを中心に、顧客の品質・価格をめぐる厳しい要求に応える企業活動が求められている。一方、理美容業や葬祭業など生活関連サービスの分野では、サービスの生産・供給の主体による品質・価格をめぐる格差(バラツキ)といった、古典的ではあるが、しかしサービス業にとって本質的な問題を抱えている。
2 業界の成長性
 ところで、市場構造の変化は従来のサービス市場を成熟化させる一方、新たなサービス需要を市場にもたらす。この変化には、適応のコストと発展のチャンスとが背中合わせとなっており、これが業種間の、あるいは企業間の成長格差を拡大したり、新旧企業の社会的交代を加速する要因ともなる。実際、調査結果でも成長性の評価をめぐって、業種間の開差は予想以上に大きく出ている。
 業界の成長性に対する評価をみると、「成長している」とする回答は全体の18.7%に止まり、「安定的である」が33.6%、「低迷している」が44.9%を占めている。全体としては、成長2:安定3:低迷4の割合で分散している。業界全般としてみれば、企業のアウトソーシングの流れや社会構造の変化を商機として成長を遂げている業種が存在する一方で、バブルの後遺症や規制緩和、消費の成熟化、あるいは経営資源の陳腐化などにより低迷している業種も少なくない。サービス業も景気の回復軌道に乗ってきており、95年度の売上高は前年度比5.9%の増加との報告もあるが(日本経済新聞社「95年度・第14回サービス業総合調査」)、業種別にブレークダウンしてみると成長性の格差が決して小さくない。(図表2-3)
図表2-3 業界の成長性について(SA)
(1) 業種別の成長性
 まず「成長」とする回答率をみると、いま述べたように、企業のアウトソーシングの流れや社会構造の変化(高齢化)を背景に、情報処理業はじめ情報提供業、老人福祉事業、葬祭業、リース業、建物サービス業等、広告代理業などで高い比率を占めている。とりわけ、情報・福祉関連サービスの成長が著しい。ちなみに事業総収入(現在を100とする3年前→3年後の収入指数)の推移と予想をみると、全業種の平均が103.1→123.7であるのに比して、情報処理業100.4→158.1、情報提供業95.2→148.9、老人福祉事業104.7→140.7となっている。これら3業種は、近年の経済・社会構造の変化を背景に成長し、今後も急成長が予想される業種といえよう。
 一方、個人消費の伸び悩みやバブルの後遺症、設備投資の抑制、あるいは規制緩和などが要因となって、低迷している業種も少なくない。「低迷」とする回答率が高いのは、旅館はじめ自動車整備業、各種学校、理美容業、病院、映画・ビデオ制作業、個人教授所、建築サービス業等、機械修理業などであり、生活関連サービスが中心で、また成熟化した業種が多く含まれている。ちなみに、低迷とする上位3業種の事業総収入の推移と予想をみると、旅館108.0→112.6、自動車整備業101.7→109.9、各種学校115.0→104.2で、今後も業績の好転を期待するのが難しい状況にある。(図表2-4)
図表2-4 成長性の評価(業種別)
 また成長性DI指数でみると、老人福祉事業、情報処理業、情報提供業および葬祭業の4業種だけがプラスで、残り14業種はいずれもマイナスを示しており、とくに総計値(-26.2)を下回る低迷系業種が9業種、全体の1/2を占めている。これらの業種のうちでも、とくに旅館、自動車整備業、各種学校、病院の4業種の低迷が著しい。こうした業種間の格差に、建物サービス業等など安定系の業種を中心とする企業間格差もくわわり、業界全体としては異質多次元的な様相を示している。(図表2-5)
図表2-5 成長性DI指数(業種別)
 このように、サービス業の内部では近年の経済・社会構造の変化を背景にして業種間の成長格差、さらには企業間の格差が拡大してきており、量的な縮小が予想される業界も一部に存在する。そして、そうした低迷系業種の多くが生活関連サービスに属しているのに比して、成長系・安定系業種の多くは事業所関連サービスの分野に集中している。このようなことから、今後は益々、成長するサービス業のセンターは製造業における「ものづくりシステム」の高度化(頭脳集約化)とも相まって、「都市型サービス業」に傾斜していくものと推測される。
(2) 企業属性別の成長性
 成長系の業種を従業員規模別にみると、従業員10-50人規模が21.2%、51人以上が20.1%で、中規模以上の占める比率が高いことから、成長するサービス業では企業規模の上位集中化が進行している。また設立年別では、1985年以降に開設された業歴の浅い企業が多いことから、経済社会の構造変化が生み出す新たなビジネス・チャンスを捕らえて市場参入してきた新興企業が少なくない。さらに、こうした新興企業の担い手である経営者のキャリアをみると、雇用者からのスピン・オフや家業の後継者といった独立開業型の個人企業は少なく、「金融機関・親会社等から派遣」「関連会社や子会社として開業」といったように、分社型のキャリアをそなえた経営者が高い比率を占めている。このことは、成長サービス分野に向けた既存・異業種企業からの新規参入(分社化など)の活発化を示唆している。今後の経営方針も、好調な業績と成長予想を背景に、事業規模の拡大を志向する積極的な企業が高い比率を占めている。
 一方、低迷系の業種には従業員規模10人未満の小規模企業が多く、設立年次も1975年以前にまで遡及する業歴の古い企業が高率を占めている。経営者(事業主)のキャリアをみても、家業の後継者の比率が高いことから、伝統的な独立自営業・個人企業が主流を構成している。また業績の不振からか、今後は事業規模の縮小や廃業などを考えている企業も散見される。(図表2-6)
図表2-6 成長性の評価(企業属性別)
 このように、成長系業種と低迷系業種の企業属性別にみた特徴はきわめて対照的な関係を示している。このことは、サービス業でも構造変化を背景に「範囲の経済」や「連結の論理」が徐々に浸透してきており、これに対応して企業規模(小規模-中・大規模)と企業類型(家業型-企業型)を軸とする成長性の格差(生産性格差)が拡大する傾向を示唆している。とくに家業型の小規模企業の存立分野である生活関連サービスの低迷は、個人消費の伸び悩みという外部環境の変化にくわえて、後述するように、人手不足や人的経営資源の陳腐化など内部要因が重なっている。このため今後は、小売業のCVS化と同様にサービス業の分野でも、小規模企業や労働集約性の高い業種を中心にして、業態転換(個人教授所や理美容業に代表されるような協業化やチェーン化など)などが一層加速されるものと予想される。
(3) 雇用属性別の成長性
 一方、雇用・労働の面に焦点を当ててみると、次のようになる。まず従業員数の伸び率別にみると、成長系業種では従業員数が増えたとする企業が30.6%を占めており、正社員過不足状況別でも、「全体的に不足している(25.5%)」「職種や年齢層によっては不足している(21.7%)」とする企業が少なくない。このことは、あらためて指摘するまでもなく、情報・福祉関連サービスを中心とする成長系の業種には、経済・社会構造の変化を背景に新市場を開拓し、新たな雇用機会を創出している企業が少なくないことを示唆している。また今後の成長予想の高さを考慮するならば、雇用機会の面でも持続的な拡大が見込まれる。しかし成長系の業種には、雇用の量的拡大に大きく貢献している反面、従業員の職場生活に対する満足度が相対的にみて低いことから(成長系業種の加重平均値の総計3.2/低迷系業種3.3)、新たに創出・提供される「雇用の質」という面ではなお課題を残している企業も少なくない。この点は、経営者による労務管理の自己評価の高さと対照的であり、労使の間での食い違いがみられる。
 低迷系の業種については前述したとおりであり(減少→余剰)、労働集約的な性格の強い生活関連サービスにあっても、すでに余剰人員を抱えている企業が少なくなく、実質的な雇用拡大の余地はほとんど残されてはいない。雇用の量に限れば、生活関連サービスの企業単位当たりの雇用吸収力は飽和水準に近づいている。ただし、理美容業や旅館に代表されるように、低迷系の業種には労務管理上の問題のほか、業界に人が集まらないとか定着率が低いなど構造的な要因もあって、慢性的な労働力不足に直面している企業も少なくない。このため、成長系業種とは異なる内容の質的問題をふくみながらも、労働力需要の潜在的な圧力は決して低くはない。(図表2-7)
図表2-7 成長性の評価(企業属性別)
 このようにみると、サービス業全般が「雇用の安全弁」として機能している状況ではもはやなく、サービス業における雇用の拡大は情報・福祉関連サービスを中心とする成長系業種に偏在している。しかし、成長系の業種が良質な雇用の場を創出しているとは必ずしも断言できず、従業員の職場生活に対する満足度といった課題が残されている。一方、雇用の絶対量で高い比重を占めている生活関連サービスにおいては、労務管理の改善や業態転換による雇用の維持のほか、理美容業に典型的であるが、新規開業=独立自営の形態をとった「自己雇用」の存在を無視することができない。
第2節 業界・会社・職場生活の見通し
 ところで、サービス業に従事する従業員自身は、自己の労働世界を形成している業界や会社の将来性をどのように評価し、自身の職場生活についてどのような見通しを抱いているのであろうか。次に、分析の視点を換えて、従業員の立場からみた業界や会社の成長性など、今後の労働世界の見通しを探ってみることにしよう。すなわち、サービス系従業者の職業的キャリアのフレームをめぐる将来に向けた展望である。
1 業界の見通し
 まず業界の見通しをめぐる回答結果をみると、「明るい」とする者が32.9%(「やや明るい」21.6%を含む)、「どちらともいえない」が45.1%であるが、「暗い」とする者も20.5%(「やや暗い」16.5%を含む)と少なくない。しかし、各々の回答率を加重平均すると3.2(中央値3.0)となり、業界全般としてみるならば、やや明るい方に重心がよっている。業界の成長性判断とは単純には比較できないが、経営者の回答(成長18.7%)と比較した場合、従業員の将来展望はより楽観的である。(図表2-8)
図表2-8 今後の見通しについて(各SA)
 業種別にみると(加重平均値)、老人福祉事業はじめ理美容業、葬祭業、情報処理業、建物サービス業等、廃棄物処理業、情報提供業、法律事務所等などでは明るい見通しを抱く従業員が多い一方、各種学校や個人教授所、旅館、自動車整備業、映画・ビデオ制作業などでは暗い見通しを抱いている従業員が少なくない。また労働力類型別にみると、正社員よりもパートタイマーで、男性20歳代、女性の20歳代・60歳以上で、男女とも勤続年数の短い階層で、さらには転職により企業規模・賃金が上がった従業員などで、業界の将来性に明るい見通しを描く者が多くみられる。くわえて、経営者による労務管理自己評価得点が高い企業ほど、また従業員の職場生活全体の評価が高い企業ほど、業界の将来に明るい見通しを描く従業員が高い比率を占めている。(図表2-9)
図表2-9 業界の見通し(業種別)
 このように、「企業・法人調査」の結果と比較すると多少の異同はあるものの(理美容業と広告代理業)、大筋としては、成長系・安定系の業種に属する従業員は業界の将来を明るく見通しており、低迷系の業種に属する従業員は見通しも暗い傾向にある。しかし労働力類型別の特徴を逆に読み取ると、同じく成長系の業種に属していても、正社員、長期勤続者、中高年層(女性の60歳以上を除く)の抱く見通しにはやや「陰り」がみられ、パートタイマー、短期勤続者、若年層、あるいは転職者と比較して業界の将来性を厳しく判断する者が少なくないことは注目される。
2 会社の将来性
 それでは、自己が所属する会社の将来性については、どのような見通しを抱いているであろうか。会社の将来性を「明るい」とする者が31.7%、「どちらともいえない」が45.8%、「暗い」が20.9%となっており、回答率は業界の見通しとほぼ同様の割合で分散している。しかし加重平均値は3.1で、業界の見通しと比べると、会社の将来性に関してはやや厳しい評価をする従業員が少なくない。(図表2-10)
図表2-10 今後の見通しについて(各SA)
 業種別では、理美容業や老人福祉事業をはじめ、建物サービス業等、葬祭業、廃棄物処理業、法律事務所等、病院、リース業などで、会社の将来に対して明るい見通しを描く従業員が多い一方、映画・ビデオ制作業や各種学校などでは、会社の将来性を暗いとする従業員が少なくない。労働力類型別では、正社員よりもパートタイマー、男性の20歳代・40歳代・60歳以上、女性の50歳代・60歳以上、勤続年数3年以下、転職の経験者、転職により賃金が上がった従業員、さらに従業員10-50人規模などで、会社の将来性を明るく展望する割合が高くなっている。また会社の見通しも、業界の見通しと同様、労務管理自己評価得点と職場生活全体の評価いずれとも、正の相関関係を示している。(図表2-11)
図表2-11 会社の将来性(業種別)
 業界・会社の見通しを比較すると、成長系業種である情報処理業や情報提供業では、会社よりも業界の方に明るい見通しを抱く従業員が多い一方、病院やリース業では、業界よりも会社の方に明るい見通しを抱く従業員が高い比率を占めている。このことは、この4業種における業界内部での企業間格差の大きさや、今後の格差拡大を推測させるものであるが、この4業種を除くと、業界と会社の見通しはほぼ相関関係を示している。
3 職場生活の見通し
 自己の職場生活に関しては、今後の見通しは「明るい」とする者が24.2%、「どちらともいえない」が56.6%、「暗い」とする者が17.1%で、加重平均値では会社の見通しと同水準(3.1)となっている。(図表2-12)
図表2-12 今後の見通しについて(各SA)
 業種別にみると、理美容業や老人福祉事業はじめ、廃棄物処理業、建物サービス業等、葬祭業、法律事務所等などでは明るさが感じられる一方、旅館や映画・ビデオ制作業などでは見通しの暗さが目立っている。労働力類型別にみると、今後の職場生活に明るい見通しを抱く従業員が多いのは、これまでと同様、正社員よりもパートタイマーで、男性20歳・60歳以上、女性60歳以上、勤続年数3年以下の男性、転職によって賃金が上がった従業員などである。また、業界・会社の見通しと同様に、労務管理自己評価得点と職場生活全体の評価とも正の相関関係にある。(図表2-13)
図表2-13 職業生活の見通し(業種別)
 会社の見通しと職場生活のそれとは、病院、リース業、自動車整備業を除くと、正と負どちらの評価とも相関している。したがって、業界の動向よりは会社の盛衰が、自己の職場生活の明暗を直接左右する制度的な枠組みとして観念されている。しかし、ここでも正社員、中高年層、長期勤続者の今後の見通しにはやはり「陰り」がみとめられる。こうしたサービス業における従業員、とりわけ長期勤続型正規雇用者のキャリア意識に刻印されている一種の「沈殿化」傾向は、サービス労働市場の流動性の高さと転職によるキャリア・アップの可能性を逆照射したものとみられる。
4 業界の成長性と従業員の見通し比較
 ここで、業界の成長性(企業・法人調査)と従業員の将来展望(従業員調査)とを重ね合わせてみると、以下のごとくとなる。
 企業・法人調査の成長系業種に属する一方、業界・会社・職場のいずれにも明るい見通しを抱く従業員の比率が高いのは、葬祭業と老人福祉事業の2業種のみである。情報処理業、情報提供業、リース業、広告代理業の4業種は、成長系業種に属しながらも、従業員の抱く今後の見通しにはやや陰りがみられ、とくに広告代理業における業界の成長性と従業員の将来展望との乖離は大きい。一方、広告代理業と対照を成すのが理美容業である。すなわち、理美容業は低迷系業種に属しながらも、業界・会社・職場のいずれにも明るい見通しを抱く従業員の比率が高い。また理美容業は、広告代理業と比較して、労働時間が長く、賃金水準も低く、福利厚生も低水準であるにもかかわらず、従業員の職業的キャリア創造に明るい見通しを与えている。
 成長系の広告代理業と低迷系の理美容業を比較すると、広告代理業は、労働時間、賃金水準、福利厚生いずれの面でも、理美容業を圧倒的に上回る水準を示している。したがって、両者の明暗を分ける決定的な要因は労働条件ではなく、むしろ定着率の高低に潜んでいるものと推測される。ちなみに、「定着率が低い」とする回答は広告代理業では27.6%に止まるのに比して、理美容業では66.0%(全業種最高)にも達している。これに、「新規参入が容易である」とする回答率の高さ(57.9%で全業種最高/広告代理業42.7%)を重ね合わせてみると、理美容業界における従業員の職業的キャリア創造の「明るさ」の背景が推察される。すなわち、「離職→転職/独立開業によるキャリア・アップ」の可能性の存在であり、予期的社会化による意識の上での未来の先取り効果である。そうであるとすれば、長期勤続型正規雇用者の意識にみる業界・会社・職場に対する一種の「陰り」とは、転職・独立の選択肢をもふくめて、キャリア・アップの方途を見出せないでいる従業員の、職業的キャリア創造をめぐる閉塞感(負の予期的社会化効果)の投影にほかならないと推測される。(図表2-14)
図表2-14 広告代理業と理美容業
第3節 経営の課題と労働条件
1 経営方針
 さて、サービス業の経営環境が構造的に変化し、低迷を余儀なくされている業種が少なくない一方、成長系の業種でも高度化・低価格化を求められている現状において、企業の経営は今後どのような方向を志向しているのであろうか。回答結果をみると、厳しい経営環境にもかかわらず、今後の経営方針としては「事業規模を拡大したい」とする企業が6割強と過半数を占めており、事業意欲に積極的な企業が少なくない。一方、3割程度の企業は「現状維持でいきたい」としており、一部の企業では業況の厳しさも伺われる。しかし、事業規模の縮小や廃業を予定している企業は3.3%に止まることから、業界全般としては、環境変化に向けて再適応に努める企業が大勢とみてよい。(図表2-15)
図表2-15 今後の経営方針について(SA)
 しかし事業規模の拡大を志向しているのは、情報処理業はじめ広告代理業、建物サービス業等、廃棄物処理業、映画制作供給、情報提供業、葬祭業などで、事業所関連サービスを中心にして、成長系・安定系の業種が過半を占めている。もちろん成長系業種といっても、先に述べたように品質・価格の両面で厳しい競争環境に置かれてはいるが、しかし今後とも市場の量的な拡大を予想していることから、これが旺盛な拡大意欲を支えていると推測される(例外は政府の規制が強くはたらく老人福祉事業のみである)、また企業属性の面でも成長系業種の特徴とほぼ共通しており、すなわち1985年以降に設立された新興企業で、分社型のキャリアを有する経営者が多い一方、雇用の面でも従業員数が増加しており、正社員が不足している企業が多数を占めている。(図表2-16)
図表2-16 経営方針(業種別)
 このように、規模拡大を志向する業種の多くは事業所関連サービスに属しており、とくに今後とも市場の成長が見込まれる情報関連業種がその中核を占めている。これに比して生活関連サービスの分野では、葬祭業を除くと、現状維持とする企業が3~4割を占めている。しかし、現状維持の企業比率が高い自動車整備業を例にとってみても、尚4割強の企業が事業規模の拡大を志向している。このため生活関連サービスでは、経営環境の変化に対する適応力をめぐって企業間格差が大きく、これが業界内部における経営方針の二極化を鮮明化させる要因とみられる。
2 経営課題
 サービス業が直面する経営課題としては、「従業員の能力開発」を挙げる企業が60.5%でもっとも多く、次いで「営業力の強化(51.2%)」「人材の確保・定着(49.0%)」などが上位を占めている。このほか、「サービスの高付加価値化(36.2%)」や「賃金水準の向上(35.6%)」「受注の安定化(35.4%)」「労働時間の短縮(34.0%)」「財務体質の改善(33.2%)」などを挙げる企業も少なくない。このように、サービス業が直面している経営課題は異質多元的であるが、課題の上位には「人」に関連する事項が並んでおり、「人が全て」の時代を直截に反映している。(図表2-17)
図表2-17 現在直面している経営課題について(MA)
 業種別にみると、「能力開発」を挙げる業種は多いが、中でも情報処理業や法律事務所等、老人福祉事業、理美容業などでは、とくに高い比率を占めている。大規模企業を中心にして、高度化する顧客ニーズに対応するために専門的な知識技能をそなえた人材の育成が迫られている。これに比して「人材の確保」を挙げる企業は、大規模企業が中心であるが、病院や理美容業、旅館、建物サービス業等、情報処理業などで、高い比率を占めている。これには、人材の構造的な供給不足(病院)や独立開業をふくむ労働市場の流動化(理美容業、情報処理業)、あるいは基本的な労働条件の未整備(旅館、建物サービス業等)など、業界により異なる要因が背景にある。他方、「営業力の強化」を指摘する企業は、広告代理業はじめ映画・ビデオ制作業、リース業、旅館、情報提供業、葬祭業、建物サービス業等、自動車整備業、情報処理業など、広範囲の業種にわたっている。低価格化に伴う企業間競争の激化とか、規制緩和による事業機会の縮小、重層型下請構造からの脱却(脱下請け化)など、経営環境の変化に伴う受注確保をめぐる競争条件の変化が営業力の強化による積極経営への転換を促している。また従業員数が減少傾向にあり、部分的に過剰人員を抱えている企業を中心にして、営業力の強化を指摘する比率が高くなっている。このほかでは、建築サービス業等や映画・ビデオ制作業などで「受注の安定化」を挙げる企業が多いのが特徴として挙げられる。(図表2-18)
図表2-18 経営課題(業種別・上位3位)
 このように、サービス業の経営課題は多様な業種構成を反映して、全般的にみれば異質多元的であるが、焦点は「人材」と「営業」をめぐる問題にある。前者、すなわち人材をめぐる問題は、人材の質的向上(能力開発)と労働力の量的充足(人材確保)の両面があり、問題の所在と背景は互いに異質である。すなわち、市場の高度化に対応して高度の専門性をそなえた人材が求められている一方(高度化対応)、資格職や単純技能職の構造的な供給不足が深刻化している(流動化対策)。したがって、今後事業規模の拡大をはかるにしても、能力増強に向けた教育訓練の充実や省力化投資・職場環境の改善による人材の確保が、経営上の課題として浮上してきている。しかし、その労働費用を価格に転嫁できない現状では受注量の確保が必須であり、このため営業力の優劣が大きな鍵を握るようになる。とくに、受注産業として「待ち」の経営姿勢にあった業界では、企画・提案能力をふくむ営業力の強化が殊更に問われている。
3 労働条件
 ところで、人的資源の問題が中心的な経営課題として意識されている反面、従業員の職場生活に対する満足度は必ずしも高くなく、会社・職場をめぐる今後の見通しも決して明るくはない。教育訓練をふくむ広義の労働条件をみると、「福利厚生制度が未整備」とする回答が40.3%でもっとも多く、次いで「労働時間が長い39.0%」「賃金水準が低い33.9%」「従業員教育が遅れている33.5%」「女性の活用が進んでいる31.0%」など、基本的労働条件を構成する諸制度が上位に並んでいる。このほかでは、労働市場の流動化を反映して、「定着率が低い30.4%」とか「業界に人が集まらない29.3%」とする回答も少なくない。労働条件の基本となる賃金、労働時間、福利厚生が上位を占めており、基本的な労働条件に問題を抱えている業界が少なくない。(図表2-19)
図表2-19 業界の労働条件について(MA)
 業種別にみると、「福利厚生」を問題視する企業は理美容業が突出して多く、映画・ビデオ制作業、建物サービス業等、法律事務所等、建築サービス業等、旅館などでも、高い比率を占めている。企業規模は小規模で、独立自営型の個人企業が中心であり、従業員数は減少傾向にある一方、理美容業や旅館に代表されるように、正社員の定着率が低く、慢性的な人手不足に直面している企業が少なくない。「労働時間」の問題については、旅館や理美容業で高い比率を占めているほか、映画・ビデオ制作業、建築サービス業等、情報処理業、情報提供業、葬祭業、広告代理業などでも、問題を抱えている企業が少なくない。企業属性としては、85年以降に開設された、独立自営型の個人企業での比率が高い。また「賃金水準」に関しては、自動車整備業で突出して高いほか、建物サービス業等、映画・ビデオ制作業、理美容業、旅館、建築サービス業等など、低迷している業界での比率が高く、しかも従業員数の減少と正社員の部分的余剰を抱えている企業が多くを占めている。さらに「従業員教育」をめぐっては、廃棄物処理業はじめ建物サービス業等、葬祭業、旅館、情報処理業、自動車整備、理美容業の各業種で比率が高く、企業属性としては、大規模企業を中心に、従業員数の減少や、正社員の不足に直面している企業の比率が高い。このほか、「女性の活用が進んでいる」とする回答も少なくないが、その中心は老人福祉事業や病院であり、法律事務所等、個人教授所、各種学校、広告代理業、理美容業、情報提供業、葬祭業などが続いている。敷衍すれば、女性の活用が進んでいるとする業種では、職場生活の満足度も比較的高い企業が少なくない。また、理美容業では「定着率」が問題視されており、自動車整備業や機械修理業などでは3Kイメージのためか、「業界に人があつまらない」とする回答も少なくない。(図表2-20)
図表2-20 業界の労働条件(業種別・上位6位)
 このように、サービス業の労働条件は業界全般としてみると、賃金、労働時間、福利厚生を中心にして、基本的な部分で問題を抱えている業種が少なくない。この背景としては企業規模の零細性や業績の低迷(賃金・福利厚生)とか、伝統的な営業形態や顧客のニーズに合わせた柔軟な営業時間(労働時間)、サービス生産の属人的性格や従業員の資質能力(従業員教育)などといった、企業規模や業種・業態、労働市場の構造、業界イメージなどに応じて、相互に異なる多様な要因が挙げられよう。労働条件の評価で例外と目されるのは、女性の活用が進んでいる老人福祉事業や病院などであり、比較的良好な職場環境が整備されているようである。
4 労務管理の自己評価
 それでは、経営者自身は、自社の労務管理の現状をどのように評価しているのであろうか。経営者の回答結果を整理すると、以下のようになる(回答率は「よい」+「どちらかといえばよい」の合計/数値は加重平均値)。業界全般としては、「従業員の定着」に対する評価が42.4%(3.4)でもっとも高く、次いで「作業環境」36.5%(3.3)や「職場の人間関係」35.4%(3.3)などが、比較的高く評価されている。しかし、労働条件の基本となる「賃金水準」34.5%(3.2)や「労働時間」32.1%(3.2)、「福利厚生」20.5%(2.9)などについては、相対的には低い評価となっている。また「従業員の能力」に対しても27.7%(3.0)で、決して高く評価している訳ではない。以下では、先にみた労働条件との関連で、賃金水準、労働時間、福利厚生および従業員の能力をめぐる評価を探ってみよう。(図表2-21~27)
図表2-21 労務管理の現状(各SA)
図表2-22
図表2-23
図表2-24
図表2-25
図表2-26
図表2-27
 業種別にみると、まず「賃金水準」に関しては、葬祭業と法律事務所等での評価が突出しており、次いで理美容業、廃棄物処理業、リース業、機械修理業、建築サービス業等などが続いている一方、旅館や映画・ビデオ制作業、各種学校などでは評価が低い。「労働時間」については、法律事務所等の評価が突出して高いほか、老人福祉事業や広告代理業、病院、情報提供業、廃棄物処理業、情報処理業、各種学校などでも、高い評価となっている。評価が低いのは、旅館や映画・ビデオ制作業、葬祭業などである。「福利厚生」面に関しては、全般的に評価が低く、業種別の偏差も小さいことから、評価が突出して高い業種は存在しない。ただし、個人教授所、建物サービス業等、旅館、映画・ビデオ制作業などでは、全体と比較してとくに評価が低いことから、福利厚生が最も立ち後れている業種といえよう。また「従業員の能力」に関しては、法律事務所等の評価が突出しており、このほか個人教授所、理美容業、情報提供業などでも高く評価されている。他方、建物サービス業等や旅館、廃棄物処理業などでは評価は低く、(能力開発の前提条件となる)基本的な従業員教育の必要性がすこぶる高い業界と推測される。(図表2-28)
図表2-28 企業の労務管理の評価(業種別)
 以上の結果に、先にみた「業界の労働条件」と「従業員の職場生活の満足度」の分析結果を重ね合わせてみるると、図表2-29のごとくとなる。この図表から、サービス業の労働条件をめぐる典型的な課題業種として、「旅館」と「映画・ビデオ制作業」の2業種を摘出することができる。ちなみに、この2業種の従業員調査における「職場生活の見通し」をみてみると、「暗い」とする回答が全業種の平均で17.1%(3.1)であるのに比して、映画・ビデオ制作業では25.6%(2.9)、旅館でも23.6%(2.9)となっており、労働条件の問題もさることながら、職業的キャリアそのものの展望をすでに失いかけている従業員も少なくない。ここには、サービス経済化が進展する中での、伝統的な生活関連サービス業の閉塞感と先端的なマルチメディア産業の陰が凝縮されている。(図表2-29)
図表2-29 労働条件をめぐる課題3業種の比較
第4節 団体所属
 ところで、サービス業はアウトサイダー(非組合員)の比率が高く(23.2%)、とくに理美容業(53.2%)や建物サービス業等(45.6%)では、アウトサイダーの企業が少なくない模様である。しかし、団体所属の回答結果をみる限りでは、団体未加入の企業は全業種の平均で12.2%を占めるに止まっており、サービス業にまつわりつく「アウトサイダー」のイメージは必ずしも当てはまらないようである。(図表2-30)
図表2-30 所属している団体(MA)
 団体別では、商工会・商工会議所が55.2%、同業者組合・事業協同組合が50.7%となっており、2社に1社がいずれかの団体に加入している。このほか、経営者協会12.0%、協力会10.0%、KSD中小企業経営者福祉事業団8.7%などが続いている。このうち、同業者組合・事業協同組合の加入状況をみると、旅館や廃棄物処理業、自動車整備業、葬祭業、理美容業、法律事務所等といった、歴史のある業界や資格職を擁する業界、または専門的職能集団において高い比率を占めている。逆にいえば、情報処理業や情報提供業など、新興派の成長系業種では、組合加入率が低くなっている。また、KSD中小企業経営者福祉事業団は小規模企業の加入率が高いのが特徴である。
 ちなみに、成長系業種である情報処理業や情報提供業では、いずれの団体にも加入していないとする企業が2割超にも達している。サービス業全般と比較すると成長途上の業界では「アウトサイダー」も少なくない。
小括:本章の要点
 最後に、これまでの分析結果より抽出される幾つかの論点を提示すると、以下のごとくとなる。
 まず、第1には、サービス業全体としては成長に陰りがみえている一方、サービスの高度化・低価格化の要請が強まっており、市場・消費の持続的な拡大には限界が画されつつある。しかし、第2には、そうした量的縮小=質的転換の局面においても、経済社会構造の変化の波を背景に成長する業種と低迷を余儀なくされる業種とがより鮮明化してきており、今後、業種間の成長格差が企業間格差を一部伴いながら、一層拡大することが予想される。本章の分析によれば、情報・福祉関連サービス業を中心とする成長系業種と生活関連サービス業を中心とする低迷系業種との格差、さらに低迷系業種における企業間格差の拡大、といった構図を描くことができる。このことは、サービス業をトータルとしてみれば、「サービス業神話」の崩壊を示唆している。
 そして第3には、成長系業種の多くは、85年以降活発化してきた既存企業の分社化などにより新規に開設されたものであり、これに対応して企業規模の上位集中化が進行している。これに比して低迷系業種では、創業が75年以前にまで逆上る独立自営・家業後継型の企業が主流であり、したがって企業規模も零細性を濃厚にしている。第4には、今後とも成長系業種の雇用拡大は期待されるが、創出される「雇用の質」にはなお課題が残されている。とくに従業員の能力に対する経営者の評価と教育訓練に対する従業員の不満との乖離が大きく(情報系2業種と広告代理業)、このようなミスマッチと知的不満を解消する人事・労務対策が求められており、その中心は長期勤続型正規社員の能力開発の機会創造と社内における業績の公正な評価にある。これに比して、低迷系業種における雇用の拡大は当面困難と予想されるが、従業員の定着率が低く、労働市場の流動性が比較的高いことから、構造的な労働力不足に直面している業界も少なくない。このため、労働条件等に質的な問題をふくみながらも、一定の労働需要が常に潜在している。
 第5としては、能力開発や営業力、人材確保が経営課題の上位3位を占めていることからも示唆されるように、企業活動の高度化に対応した人材の質的向上(高度化対応)と労働市場の流動化に対応した労働力の量的確保(流動化対策)が、経営上の重要問題化してきている。しかし第6には、賃金、労働時間、福利厚生といった基本的な労働条件の整備が全般的に立ち遅れており、意識化されてはいても対応が困難で、これが従業員の、とりわけ長期勤続型正規社員の職業的キャリアの見通しにも投影されている(業界・会社・職場生活の見通しに対する相対的な低評価)。これに関連して、第7には、成長系業種に属する広告代理業の従業員がみせる職業的キャリアをめぐる「陰り」と、低迷系の業種に属しながらも将来を明るく展望する従業員が少なくない理美容業の「光り」との対照的な関係について、キャリア・アップとしての「転職→独立自営」の視点からその機能的な意義に慎重な注意を払う必要がある。しかし、第8として、サービス業を全般的にとらえるならば、経営課題とも連携する労働条件改善の焦点が、小規模企業を中心に福利厚生、また大規模企業では能力開発(従業員教育)にあることから、差し当たりは、これを切り口に従業員の職場満足度を高める方策が検討されてよい。
 そして、最後に、旅館と映画・ビデオ制作業の2業種が、伝統的な生活関連サービス業の閉塞状況と先端的なマルチメディア産業の疎外状況を凝縮しているという意味で、サービス業の労働条件改善をめぐる典型的な課題業種であることが指摘できる。


第3章 サービス産業の雇用構造

 本章の目的は、サービス業(18業種)がもと労働力の需要構造と需要状況、就業者の労務構成の特徴を明らかにする。具体的な分析の手順は以下のようになる。第1に、サービス業を構成する業種の雇用構造の特徴を、主に需要構造の面から明らかにする。第2に、第1で明らかにされた労働需要に対する市場の供給力を「人手不足感」等で測定する。第3に、こうした労働需要に対応して、どのような労働者がサービス業で働いているのかを明らかにする。
第1節 労働者数の変動
1 正社員数の変動
 サービス業を構成する業種の雇用構造の特徴を、主に需要構造の面から明らかにするために、労働力に対する需要総量の変動について正社員と非正社員(パート・アルバイト、嘱託・契約社員)に分けてみよう。1993~96年の過去3年間における正社員数の伸び率は、平均108.3%である(図表3-1)。これを増加業種(労働者数の増加率が15%以上の業種)、微増業種(同5%~15%)、停滞業種(同5%未満)の3つの類型に分けると、次のような構成になる。
図表3-1 正社員の伸び率(1993-96年)
 ・増加業種 建築サービス業等、老人福祉事業、病院(とくに増加率が大きいのは、建築サービス業等)
 ・停滞業種 広告代理業、情報処理業、各種学校、旅館、法律事務所等、自動車整備業、映画・ビデオ制作業、個人教授所(とくに増加率が低いのは、広告代理業、情報処理業、各種学校)
 ・微増業種 その他の7業種
 従業員規模別の特徴をみると、従業員規模が大きくなるにつれて、過去3年間における正社員数の伸び率は高くなる。同様に、業界の成長別にみると特徴が見られ、当然であるが、成長している業界ほど正社員数の伸び率は高くなる。
 つぎに、今後の動向について、1996年~99年の3年間における正社員数の伸び率をみると、平均で112.1%になり、過去3年間と比べて少しだけ増える(図表3-2)。上記と同様に、これを増加業種(労働者数の増加率が15%以上の業種)、微増業種(同5%~15%)、停滞業種(同5%未満)の3つの類型に分けると、次のような構成になる。
 ・増加業種 情報処理業、理美容業、個人教授所、建築サービス業等、広告代理業(とくに増加率が今後大きいのは、情報処理業)
 ・停滞業種 自動車整備業、各種学校、旅館、機械修理業(とくに増加率が今後低いのは、自動車整備業)
 ・微増業種 その他の9業種
図表3-2 正社員の伸び率(1996-99年)
 過去3年間(1993年~96)と今後3年間(96~99年)を比較すると特徴的な点は3つある。第1に、過去3年間で、停滞業種であった広告代理業と情報処理業が、今後3年間では反対に増加業種になる。第2に、過去3年間で、増加業種であった建築サービス業等は、今後3年間でも増加業種になる。第3に、過去3年間で、停滞業種であった自動車整備と各種学校、旅館は、今後3年間でも停滞業種になる。
 今後の動向について、従業員規模別の特徴をみると、従業員規模が小さくなるにつれて、今後3年間における正社員数の伸び率は高くなる。この傾向は過去3年間の傾向と反対の傾向を示している。同様に、業界の成長別にみると特徴が見られる。当然であるが、成長している業界ほど今後も正社員数の伸び率が高くなるが、安定的である業界と低迷している業界との差はほとんどない。
2 非正社員数の変動
 非正社員数の変動について、過去3年間(1993年~96年)と今後3年間(96年~99年)の2つに分けてみてみよう。過去3年間の非正社員数の伸び率は、平均109.3%であり、正社員の伸び率とほぼ同じである(図表3-3)。これを増加業種(労働者数の増加率が15%以上の業種)、微増業種(同5%~15%)、停滞業種(同5%未満)の3つの類型に分けると、次のような構成になる。
 ・増加業種 老人福祉事業、建築サービス業等、リース業、病院、法律事務所等、広告代理業(とくに増加率が大きいのは、老人福祉事業)
 ・停滞業種 旅館、個人教授所、理美容業、各種学校(とくに増加率が低いのは、旅館)
 ・微増業種 その他の8業種
図表3-3 パートの伸び率(1993-96年)
 過去3年間の正社員の伸び率と比較すると、増加業種及び停滞業種の傾向はかなり似ている。
 従業員規模別の特徴をみると、正社員の伸び率と同様に、従業員規模が大きくなるにつれて、過去3年間における非正社員数の伸び率は高くなる。同様に、業界の成長別にみると特徴が見られ、成長している業界ほど非正社員数の伸び率は高くなる。
 つぎに、今後の動向について、1996年~99年の3年間における非正社員数の伸び率をみると、平均で129.6%になり、過去3年間と比べると伸び率はかなり高くなる(図表3-4)。また、今後の正社員の伸び率と比較しても、非正社員の伸び率の方が高くなる。上記と同様に、これを増加業種(労働者数の増加率が15%以上の業種)、微増業種(同5%~15%)、停滞業種(同5%未満)の3つの類型に分けると、次のような構成になる。
 ・増加業種 自動車整備業、法律事務所等、建築サービス業等、広告代理業、機械修理業、情報処理業、リース業、理美容業、映画・ビデオ制作業、情報提供業、個人教授所、廃棄物処理業、建物サービス業等、葬儀業(とくに増加率が今後大きいのは、自動車整備業)
 ・停滞業種 病院
 ・微増業種 その他の3業種
図表3-4 パートの伸び率(1996-99年)
 過去3年間(1993年~96)と今後3年間(96~99年)を比較すると特徴的な点は2つある。第1に、自動車整備業及び法律事務所等、建築サービス業等で今後の伸び率が非常に高くなる。第2に、過去3年間で、増加業種であった老人福祉事業及び病院の今後3年間の伸び率はあまり高くない。
 今後の動向について、従業員規模別の特徴をみると、従業員規模が小さくなるにつれて、今後3年間における正社員数の伸び率は高くなり、とくに、10人未満の企業での伸び率が非常に高くなる。この傾向は正社員と同様に、過去3年間の傾向と反対の傾向を示している。同様に、業界の成長別にみると2つの特徴が見られる。第1に、当然であるが、成長している業界ほど今後も非正社員数の伸び率が高くなる。第2に、安定的である業界よりも低迷している業界の方が伸び率が高くなる。
第2節 労働市場の供給力
 前節で明らかにされた労働需要に対する市場の供給力を「人手不足感」等で測定する。具体的な分析の手順は以下のようになる。第一に、最近3年間の正社員の採用状況を明らかにする。第2に、正社員の過不足状況を明らかにする。
1 正社員の採用状況
 最近3年間の正社員の採用状況は、図表3-5から明らかなように、「予定していた人数を採用できた」が55.6%を占めている。これに対して、「予定数に満たなかった」(11.5%)と「募集したが採用できなかった」(7.5%)を合計しても2割には満たない。また、「募集しなかった」も19.7%存在している。
図表3-5 この3年間の正社員の採用状況
 これを業種別にみると、「予定数に満たなかった」と「募集したが採用できなかった」の合計が高い業種は病院と情報処理業の2業種であり、この2業種は、需要に対して労働力を供給できていない程度が大きい業種である。他方、合計が低い業種は老人福祉事業、各種学校、法律事務所等の3業種であり、この3業種は、需要に対して労働力を供給できていない程度が小さい業種である(図表3-6)。
図表3-6 この3年間の正社員の採用状況
 規模別にみると2つの特徴が見られる。第1に、「予定数に満たなかった」と「募集したが採用できなかった」の合計は規模が大きくなるにつれて、その比率は高くなる。第2に、「募集しなかった」は規模が小さくなるにつれて、その比率は低くなる。また、業界の成長性別にみると、低迷している業界ほど「募集しなかった」が高くなる。
2 正社員の過不足状況
 正社員の過不足状況については、図表3-7から明かなように、不足している企業(「全体的に不足している」(16.6%)+「職種や年齢によっては不足している」(42.5%))が余剰である企業(「全体的に余剰である」(2.4%)+「職種や年齢によっては余剰である」(4.5%))を大きく上回っており、正社員の不足感は強い状況にある。
図表3-7 正社員の過不足状況
 これを業種別にみると、「全体的に不足している」と「職種や年齢によって不足している」の合計が高い業種は病院と情報処理業、映画・ビデオ制作業の3業種であり、この3業種は、需要に対して労働力を供給できていない程度が大きい業種である。ただし、病院については、職種や年齢によって不足しているが7割近くを占めており、他の2業種とは異なった性格を有している。他方、合計が低い業種は老人福祉事業、各種学校、法律事務所等の3業種であり、この3業種は、需要に対して労働力を供給できていない程度が小さい業種である(図表3-8)。
図表3-8 正社員の過不足状況
 規模別にみると特徴が見られる。「全体的に不足している」と「職種や年齢によって不足している」の合計は規模が大きくなるにつれて、その比率は高くなり、その傾向は「職種や年齢によって不足している」で強まっている。また、業界の成長性別にみると2つの特徴が見られる。第1に、当然ながら、成長している業界ほど不足感は強く、とくに、職種や年齢によって不足している比率は高い。第2に、低迷している業界でも、余剰感はあまり強くなく、不足感については、安定している業界とほぼ同じ程度である。
3 不足している人材
 「全体的に不足している」と「職種や年齢によって不足している」と回答した企業について、どのような人材について不足を感じているかを尋ねてみた。その結果は図表3-9に示されている。同表から明らかなように、「斬新で大胆な発想ができる人」(33.6%)と「職業資格の保有者」(30.9%)、「情報機器に詳しい人」(30.6%)の3タイプの人材が不足していることがわかる。こうした不足している人材は業種ごとで大きく異なる(図表3-10)。第1に、「斬新で大胆な発想ができる人」については、広告代理業と映画・ビデオ制作業で不足感が強い。第2に、「職業資格の保有者」については、病院と老人福祉事業、建築サービス業等で不足感が強い。第3に、「情報機器に詳しい人」については、情報処理業と情報提供業、法律事務所等で不足感が強い。第4に、「中高年の熟練労働者」については、機械修理業と建物サービス業等で不足感が強い。第5に、「社長の相談相手になれる経営幹部」については、廃棄物処理業と葬儀業、個人教授所で不足感が強い。
図表3-9 不足している人材
図表3-10 不足している人材
 規模別にみると2つの特徴が見られる。第1に、「斬新で大胆な発想ができる人」及び「情報機器に詳しい人」については、規模に関わらず不足感はほぼ同じである。第2に、「職業資格の保有者」については、規模が大きくなるにつれて、不足感は強くなる。なお、業界の成長性と不足している人材との関係には有意な関係が見られない。
第3節 サービス業で働く労働者の特性
 第1節で明らかにした労働需要に対応して、どのような労働者がサービス業の中で働いているのであろうか。以上のことを明らかにするために、この節では、大きく2つの点に注目する。第1に、全従業員(1996年の正社員+非正社員)に占める非正社員の比率(以下、パート比率と略す)及び全従業員に占める25歳未満の若年者(正社員+非正社員)の比率(以下、若年者比率と略す)、全従業員に占める45歳以上の中高年齢者(正社員+非正社員)の比率(以下、中高年齢者比率と略す)、全従業員に占める大卒以上の最終学歴者(正社員+非正社員)の比率(以下、大卒者比率と略す)、全従業員に占める仕事に義務づけられた職業資格の保有者(正社員+非正社員)の比率(以下、職業資格保有者比率と略す)、全従業員に占める女性(正社員+非正社員)の比率(以下、女性比率と略す)の6つの比率を使い量的にサービス業で働く労働者の特性を明らかにする。第2に、働いている労働者の個人属性に注目しサービス業で働く労働者の特性を明らかにする。
1 パート比率
 パート比率の平均は33.1%である。これを業種ごとにみると(図表3-11)、パート比率が高い業種は、個人教授所をはじめ建物サービス業等、旅館、各種学校、映画・ビデオ制作業の5業種であり、これらの業種はフロー型労働力依存型の業種と呼ぶことができる。これに対して、比率が低い業種は、病院と廃棄物処理業の2業種であり、これらの業種は正社員中心型の業種と呼ぶことができる。残った業種は上の2つの類型の中間的な位置にある。
図表3-11 平均パート比率
 規模別にみると大きな特徴がみられ、規模が大きくなるにつれて、パート比率が低くなり、規模が小さい企業ほどフロー型の労働力に依存している。同様に、業界の成長性別にみると、低迷している業界ほどパート比率が高いが、成長している業界と安定的である業界との差は大きくない。
2 若年者比率
 若年者比率の平均は18.7%である。これを業種ごとにみると(図表3-12)、若年者比率が高い業種は、理美容業と個人教授所の2業種であり、とくに理美容業の比率が非常に高くなっている。これらの業種は若年労働力依存型の業種と呼ぶことができる。これに対して、比率が低い業種は、建物サービス業等と各種学校、廃棄物処理業、葬儀業の4業種である。残った業種は上の2つの類型の中間的な位置にある。
図表3-12 平均若年者比率
 規模別にみると特徴がみられ、規模が大きくなるにつれて、若年者比率が高くなるが、その比率の差はあまり大きくない。同様に、業界の成長性別にみると、成長している業界ほど若年者比率が高くなっている。
3 中高年者比率
 中高年齢者比率の平均は33.4%である。これを業種ごとにみると(図表3-13)、中高年齢者比率が高い業種は、建物サービス業等をはじめ旅館、葬儀業、廃棄物処理業、老人福祉事業、各種学校、機械修理業の7業種であり、とくに建物サービス業等の比率が高くなっている。これらの業種は中高年齢労働力依存型の業種と呼ぶことができる。これに対して、比率が低い業種は、情報処理業をはじめ理美容業、個人教授所、映画・ビデオ制作業の4業種である。残った業種は上の2つの類型の中間的な位置にある。
図表3-13 平均中高年齢者比率(1996年)
 規模別にみると特徴がみられ、規模が大きくなるにつれて、中高年齢者比率が高くなるが、その比率の差はあまり大きくない。同様に、業界の成長性別にみると、成長している業界ほど中高年齢者比率が低くなっているが、低迷している業界と安定的な業界の比率はほぼ同じである。
4 大卒者比率
 大卒者比率の平均は23.2%である。これを業種ごとにみると(図表3-14)、大卒者比率が高い業種は、情報提供業をはじめ各種学校、広告代理業、法律事務所等、個人教授所の5業種であり、これらの業種は高学歴労働力依存型の業種と呼ぶことができる。これに対して、比率が低い業種は、理美容業をはじめ自動車整備業、旅館、廃棄物処理業、建物サービス業等、機械修理業、葬儀業の7業種である。残った業種は上の2つの類型の中間的な位置にある。
図表3-14 平均大卒以上の最終学歴者比率(1996年)
 規模別にみると特徴がみられ、規模が大きくなるにつれて、大卒者比率が低くなるが、その比率の差はあまり大きくない。同様に、業界の成長性別にみると、成長している業界ほど大卒者比率が高くなっているが、低迷している業界と安定的な業界の比率はほぼ同じである。
5 職業資格保有者比率
 職業資格保有者比率の平均は25.8%である。これを業種ごとにみると(図表3-15)、職業資格保有者比率が高い職業は、病院をはじめ各種学校、理美容業、自動車整備業の4業種であり、これらの業種は資格保有労働力依存型の業種と呼ぶことができる。これに対して、比率が低い業種は、映画・ビデオ制作業をはじめ葬儀業、広告代理業、旅館、情報提供業の5業種である。残った業種は上の2つの類型の中間的な位置にある。
図表3-15 平均職業資格の保有者比率(1996年)
 規模別にみると、規模が大きくなるにつれて、職業資格保有者比率が高くなる。同様に、業界の成長性別にみると、低迷している業界ほど職業資格保有者比率が高くなっている反面で、成長している業界ほどその比率は低くなっている。
6 女性比率
 女性比率の平均は40.0%である。これを業種ごとにみると(図表3-16)、女性比率が高い業種は、病院をはじめ老人福祉事業、理美容業、旅館、法律事務所等、個人教授所の6業種であり、これらの業種は女性労働力依存型の業種と呼ぶことができる。これに対して、比率が低い業種は、廃棄物処理業をはじめ機械修理業、自動車整備業の3業種であり、これらの業種は男性労働力依存型の業種と呼ぶことができる。残った業種は上の2つの類型の中間的な位置にある。
図表3-16 平均女性比率(1996年)
 また、業界の成長性別にみると、業界の成長性に関わらず女性比率はほぼ同じであり、規模と女性比率の間には有意な結果は見られない。
7 業種別にみた各比率の特徴
 つぎに、18業種ごとに各比率の特徴をみると以下のようになる(図表3-17)。
図表3-17 業種別従業員の特徴の比率
<1> 個人教授所では、パート比率と女性比率が高い反面、中高年齢者比率が低いことが大きな特徴である。
<2> 理美容業では、女性比率と職業資格保有者比率が非常に高い反面、大卒者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<3> 広告代理業では、大卒者比率が高い反面、職業資格保有者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<4> 廃棄物処理業では、中高年齢者比率が高い反面、大卒者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<5> 機械修理業では、廃棄物処理業と同様に中高年齢者比率が高い反面、大卒者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<6> 病院では、理美容業と同様に女性比率と職業資格保有者比率が非常に高い反面、大卒者比率が低いことが大きな特徴である。
<7> 建物サービス業等では、廃棄物処理業と機械修理業と同様に中高年齢者比率が非常に高い反面、大卒者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<8> リース業では、中高年齢者比率が高いことが大きな特徴である。
<9> 旅館では、女性比率と中高年齢者比率とパート比率が非常に高い反面、大卒者比率と職業資格保有者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<10> 情報処理業では、大卒者比率が高い反面、中高年齢者比率と職業資格保有者比率が低いことが大きな特徴である。
<11> 建築サービス業等では、職業資格保有者比率が高いことが大きな特徴である。
<12> 自動車整備業では、中高年齢者比率と職業資格保有者比率が高い反面、大卒者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<13> 映画・ビデオ制作業では、大卒者比率とパート比率が高い反面、職業資格保有者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<14> 葬儀業では、中高年齢者比率が非常に高い反面、職業資格保有者比率と大卒者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<15> 情報提供業では、大卒者比率が高い反面、職業資格保有者比率が非常に低いことが大きな特徴である。
<16> 法律事務所等では、女性比率と大卒者比率が高い反面、職業資格保有者比率が低いことが大きな特徴である。
<17> 各種学校では、職業資格保有者比率が高い反面、若年者比率が低いことが大きな特徴である。
<18> 老人福祉事業では、女性比率が非常に高い反面、大卒者比率が低いことが大きな特徴である。
8 働いている労働者の個人属性
 さらに、労働者の個人属性に注目して、具体的にどのような人がサービス業で働いているかをみてみよう。図表3-18から明らかなように、「4年生大学卒の女子正社員」がいるとする企業の割合が30.0%で最も多く、ついで、「定年後に再雇用となった人」(21.4%)と「契約社員」(16.9%)、「大手企業で管理職をしていた人」(15.9%)がこれに続いている。
図表3-18 従業員の内訳
 これを業種別にみると、業種ごとに大きく異なる(図表3-19)。第1に、「4年生大学卒の女子正社員」については、病院をはじめ各種学校、老人福祉事業、個人教授所、法律事務所等で比率が高い。第2に、「定年後に再雇用となった人」については、病院をはじめ各種学校、建物サービス業等、老人福祉事業で比率が高い。第3に、「契約社員」については、映画・ビデオ制作業をはじめ各種学校、情報処理業で比率が高い。第4に、「大手企業で管理職をしていた人」については、情報提供業と建物サービス業等、各種学校で比率が高い。第5に、「他企業からの出向者」については、情報提供業とリース業で比率が高い。第6に、「4年制大学卒パート」については、個人教授所と各種学校で比率が高く、個人教授所でその比率は非常に高い。第7に、「公的資格を有するパート」については、圧倒的に病院で比率が高い。
図表3-19 従業員の内訳
 規模別にみると特徴が見られ、ほぼすべてについて規模が大きくなるにつれて比率が高くなる。同様に、業界の成長性別にみると、成長している業界ほど、4年制大卒女子正社員、出向者、大手管理職が働いている比率が高い。
第4節 小括
 この章では、サービス業(18業種)がもつ労働力の需要構造と需給状況、就業者の労務構成の特徴を明らかした。明らかになったことはっぎのようなことである。
1 1993年~96年の過去3年間の正社員数の伸び率は、平均108.3%であり、これを増加業種と微増業種、停滞業種の3つの類型に分けると、<1>増加業種:建築サービス業等、老人福祉事業、病院(とくに増加率が大きいのは、建築サービス業等)<2>停滞業種:広告代理業、情報処理業、各種学校、旅館、法律事務所等、自動車整備業、映画・ビデオ制作業、個人教授所(とくに増加率が低いのは、広告代理業、情報処理業、各種学校)、<3>微増業種:その他の7業種、のようになる。
2 過去3年間と今後3年間(96~99年)の正社員の伸び率を比較するとつぎのようになる。第1に、過去3年間で、停滞業種であった広告代理業と情報処理業が、今後3年間では反対に増加業種になる。第2に、過去3年間で、増加業種であった建築サービス業等は、今後3年間でも増加業種になる。第3に、過去3年間で、停滞業種であった自動車整備と各種学校、旅館は、今後3年間でも停滞業種になる。
3 過去3年間の非正社員数の伸び率は、平均109.3%であり、正社員の伸び率とほぼ同じである。また、過去3年間の正社員の伸び率と比較すると、増加業種及び停滞業種の傾向はかなり似ている。
4 過去3年間と今後3年間の非正社員の伸び率を比較するとつぎのようになる。第1に、自動車整備業及び法律事務所等、建築サービス業等で今後の伸び率が非常に高くなる。第2に、過去3年間で、増加業種であった老人福祉事業及び病院の今後3年間の伸び率はあまり高くない。
5 最近3年間の正社員の採用状況は、「予定していた人数を採用できた」が6割強を占めている。これに対して、「予定数に満たなかった」と「募集したが採用できなかった」を合計しても2割に満たない。業種別には、「予定数に満たなかった」と「募集したが採用できなかった」の合計が高い業種は病院と情報処理業の2業種である。他方、合計が低い業種は老人福祉事業、各種学校、法律事務所等の3業種である。
6 正社員の過不足状況については、不足している企業が余剰である企業を大きく上回っており、正社員の不足感は強い状況にある。業種別には、「全体的に不足している」と「職種や年齢によって不足している」の合計が高い業種は病院と情報処理業、映画・ビデオ制作業の3業種である。ただし、病院については、職種や年齢によって不足しているが7割近くを占めており、他の2業種とは異なった性格を有している。他方、合計が低い業種は老人福祉事業、各種学校、法律事務所等の3業種である。
7 不足している人材は、「斬新で大胆な発想ができる人」と「職業資格の保有者」、「情報機器に詳しい人」の3つが中心である。業種別には、「斬新で大胆な発想ができる人」については、広告代理業と映画・ビデオ制作業で不足感が強く、「職業資格の保有者」については、病院と老人福祉事業、建築サービス業等で不足感が強い。また、「情報機器に詳しい人」については、情報処理業と情報提供業、法律事務所等で不足感が強い。
8 パート比率が高い業種は、個人教授所をはじめ建物サービス業等、旅館、各種学校、映画・ビデオ制作業の5業種であり、これに対して、比率が低い業種は、病院と廃棄物処理業の2業種である。
9 若年者比率が高い業種は、理美容業と個人教授所の2業種であり、とくに理美容業の比率が非常に高くなっている。これに対して、比率が低い業種は、建物サービス業等と各種学校、廃棄物処理業、葬儀業の4業種である。
10 中高年齢者比率が高い業種は、建物サービス業等をはじめ旅館、葬儀業、廃棄物処理業、老人福祉事業、各種学校、機械修理業の7業種であり、とくに建物サービス業等の比率が高くなっている。これに対して、比率が低い業種は、情報処理業をはじめ理美容業、個人教授所、映画・ビデオ制作業の4業種である。
11 大卒者比率が高い業種は、情報提供業をはじめ各種学校、広告代理業、法律事務所等、個人教授所の5業種であり、これに対して、比率が低い業種は、理美容業をはじめ自動車整備業、旅館、廃棄物処理業、建物サービス業等、機械修理業、葬儀業の7業種である。
12 職業資格保有者比率が高い業種は、病院をはじめ各種学校、理美容業、自動車整備業の4業種であり、これに対して、比率が低い業種は、映画・ビデオ制作業をはじめ葬儀業、広告代理業、旅館、情報提供業の5業種である。
13 女性比率が高い業種は、病院をはじめ老人福祉事業、理美容業、旅館、法律事務所等、個人教授所の6業種であり、これに対して、比率が低い業種は、廃棄物処理業をはじめ機械修理業、自動車整備業の3業種である。
14 特定の個人属性を持つ労働者がいるかどうかについてみると、「4年制大学卒の女子正社員」が最も多く、ついで、「定年後に再雇用となった人」と「契約社員」がこれに続いている。業種別には、「4年生大学卒の女子正社員」については、病院をはじめ各種学校、老人福祉事業、個人教授所、法律事務所等で比率が高く、「定年後に再雇用となった人」については、病院をはじめ各種学校、建物サービス業等、老人福祉事業で比率が高い。また、「契約社員」については、映画・ビデオ制作業をはじめ各種学校、情報処理業で比率が高い。


第4章 労働条件の管理と評価

第1節 はじめに
 この章では、労務管理諸制度の整備状況、労務管理の現状に対する事業主の評価と従業員の満足度について、業種と従業員規模の特性に焦点を当てながら分析する。課題は大きく分けて2つに大別できる。
 第1に中小企業の労働条件や労務管理諸制度の普及状況は、主の大企業との比較から規模間格差の問題として、その水準が相対的に位置づけられてきた。またサービス業については、これまで多くの調査研究が業種や業態の違いに着目し、その多様性が指摘されてきた。これまではこういった規模と業種や業態の問題は、それぞれ別々に扱われることが多かった。しかしながら、業種や業態の違いが規模による影響を強く受けている場合もあれば(ある業種は小規模企業が集中しており、その結果全体的傾向として、小規模企業の性格が強く顕れるなど)、あるいは同じ業種の中で規模の違いが大きく顕れる場合も考えられる。
 今回の調査では、法人調査でサービス業の18業種5,104件、従業員調査で18業種8,309件と大規模であった。業種間の比較と併せて、業種ごとに規模による違いを検討することが可能であった。
 ただし、基本集計での従業員の分類は、1~9人、10~50人、51人以上の3分類であったが、業種によってサンプルに偏りが生じた。たとえば老人福祉事業、病院、各種学校では、1~9人の規模でサンプルが少なく、それぞれ2社、8社、14社であった。反対に自動車整備業では、50人以上の規模でサンプルが5社と少なかった。よって業種ごとに規模の差異を検討する場合にのみ、サンプルが確保できる30人未満と30人以上で規模の比較をすることにした(図表4-1)。
図表4-1 規模別業種別サンプル数
 第2に大企業と比較して、中小企業の事業主は労務管理施策を大きく左右する存在にあり、また心理的にも物理的にも従業員の職場に非常に近い場所にいる。よって事業主が現状をどのように評価し、何を問題視しているかを把握することが、今後の労務管理制度や労働条件改善の方向性を探る上で重要である。また、ある意味で「受け手」の立場にいる従業員の満足度についても併せて検討する。その際に今回の分析では、上述した問題意識と同様に、やはり業種と規模の違いを中心にみる。性別、年齢、職種などの個人的要因については、業種や規模と関わりのある限り触れることにする。
第2節 賃金制度
1 賃金表
 賃金表がある法人では、賃金体系が公的に整備されており、従業員に対して明解で公正な賃金決定が可能である。賃金表(注1)がある法人は55.9%、ない法人は42.4%、無回答は1.8%であった。30~99人の規模で賃金表がある法人は1,315社中、70.8%であり、『平成6年 賃金労働時間制度等総合調査報告』の67.9%と比較して格段に多かった(注2)。
 規模別では、賃金表がある法人は51人以上で72.7%であり、10~50人が59.1%、1~9人では36.6%であった。制度調査と同じく、規模が大きくなるにつれ、賃金表を整備する傾向にあった。
 図表4-2では、賃金表がある法人を、業種ごとに多い順に並べた。老人福祉事業が91.1%と最も多く、各種学校(72.8%)、情報処理業(69.5%)、病院(68.6%)、情報提供業(67.0%)、理美容業(60.4%)の順であった。反対に少ない業種は、自動車整備業(33.5%)、法律事務所等(34.5%)、旅館(45.4%)、建築サービス業等(49.4%)であり、これらの業種では半数以上の法人に賃金表がなかった。
図表4-2 賃金表の有無
 では、同じ業種の中で規模間の違いはあるだろうか。縦軸に賃金表のある法人比率を、横軸に30人以上から30人未満を引いた値をとり、18業種をプロットした(図表4-3)。これをみると4つのタイプに分類できる。<1>規模に関わらず賃金表がある業種に、老人福祉事業、各種学校、病院。<2>規模に関わらず賃金表がない業種に、建物サービス業等、廃棄物処理業。<3>全体として賃金表はあるが規模間の違いが大きい業種に、情報提供業、情報処理業、理美容業。これらの3業種は、30人以上の規模で賃金表のある法人が目立って多かった。<4>全体として賃金表がなく、規模間の違いが大きい業種に、自動車整備業、旅館、法律事務所等。これらの3業種は30人未満の規模で、賃金表がある法人比率が3割前後と顕著に少なかった。
図表4-3 業種別賃金表のある法人比率
(注1) 質問紙票では、賃金表について、「職能、等級などによって従業員の基本給を一覧表にしたもの」という説明を加えた。
(注2) 労働大臣官房政策調査部、1996、『平成6年 賃金労働時間制度等総合調査報告』(以降「制度調査」と略称)では、サービス業で賃金表を採用している法人が、30~99人の従業員規模で45.5%、100~299人で60.8%、300~999人で67.9%、1,000人以上で68.1%であり、規模が大きくなるほど多くなっていた。
2 支給している手当
 サービス業法人はどのような手当を支給しているであろうか。支給している手当は、平均して4.3種類(注3)であった。手当ごとに支給している法人比率を見ると、賞与、期末手当は91.7%であり、ほとんどの法人が支給していた。ついで、残業手当(75.5%)、家族、扶養手当(67.3%)、住宅手当(48.7%)であり、ここまでほぼは半数以上の法人が支給していた。奨励、精皆勤手当(36.0%)、公的資格取得者への手当(31.4%)、特殊勤務手当(27.2%)、その他の手当(22.5%)、食事手当(21.4%)は3割前後であり、地域、都市手当(6.0%)、単身赴任手当(4.9%)は1割にも満たなかった。手当が全くない法人は2.7%であった。
 規模別にみると、支給している手当は、1~9人で3.3種類、10~50人で4.4種類、51人以上で5.3種類であり、規模が大きくなるにつれて種類も多くなった。また規模が大きくなるにつれて、全ての手当で支給する法人が多くなった(図表4-4)。
図表4-4 規模別支給している手当
 業種別にみると、老人福祉事業(5.8種類)と病院(5.7種類)が5種類以上の手当を支給しており、他の業種と比較して格段に多かった(図表4-5)。ついで、廃棄物処理業(4.7種類)、情報処理業、建物サービス業等が4.6種類、リース業、機械修理業、葬祭業が4.5種類の順であった。反対に個人教授所と映画・ビデオ制作業が3.4種類と最も少なく、ついで法律事務所等(3.5種類)、広告代理業(3.6種類)、理美容業(3.6種類)の順であった。
図表4-5 業種別手当の平均採用数
 業種別によく採用している手当を6位まで順位づけすると、図表4-6になった。いずれの業種でも、賞与、期末手当、家族、扶養手当、住宅手当の順位が高かった。
図表4-6 業種別採用の多い手当
 業種によって特徴的な手当を整理する。<1>特殊勤務手当の順位が高い業種に、葬祭業(4位)、映画・ビデオ制作業と老人福祉事業の5位。<2>公的資格取得への手当では、建物サービス業等と法律事務所等の4位、病院、建物サービス業等、情報処理業、自動車整備業、情報提供業の5位。<3>奨励、精皆勤手当では、理美容業(2位)、廃棄物処理業、建物サービス業等、自動車整備業の4位、個人教授所、広告代理業、機械修理業、葬祭業の5位。<4>食事手当では旅館(3位)。
 支給している手当の種類に、業種の中で規模間の違いはあるだろうか(図表4-7)。業種ごとに支給している手当の種類について、30人以上から30人未満を引いた値を算出すると、<1>規模間の違いが大きい業種は、映画・ビデオ制作業と建築サービス業等が1.6と最も大きく、ついで機械修理業と情報処理業の1.5の順であった。規模間の違いがあまりない業種は、老人福祉事業(0.2)、葬祭業(0.6)、理美容業(0.7)、各種学校(0.9)、建物サービス業等(0.9)であった。そのうち、<2>老人福祉事業は手当の種類が多く、反対に<3>理美容業、各種学校は手当の種類が少なかった。<4>特に少なかったのは、30人未満の規模の個人教授所(2.8種類)、映画・ビデオ制作業(3.0種類)、旅館(3.2種類)であり、3種類前後の手当しか支給していなかった。
図表4-7 業種別・規模別手当の種類
 ではどのような手当の支給について、業種の中で規模間の違いがあるだろうか。手当の種類が多く分析が煩雑になるため、因子分析によって手当を3種類に分類して検討する。
ア. 第一因子 生活給的手当
 「家族、扶養手当」、「残業手当」、「住宅手当」、「賞与、期末手当」の順に負荷が高かった。「家族、扶養手当」、「住宅手当」は生活給的性格が強い手当である。また、「賞与、期末手当」と「残業手当」は、全ての業種で支給されている一般的な手当である。これらの手当は仕事給よりも生活給の側面が強い。よって生活給的手当と命名した。
イ. 第二因子 勤務地関連手当
 「地域、都市手当」、「単身赴任手当」の順に負荷が高かった。いずれも勤務地に関連することから、勤務地関連手当と命名した。
ウ. 第三因子 出勤奨励的手当
 「食事手当」、「奨励(精皆勤)手当」の順に負荷が高かった。いずれも出勤奨励としての性格が強いことから命名した。
 これらの因子ごとに負荷の高い手当について、「支給している」に1点、「支給してない」に0点を付与して合計し、それらを手当数で割って得点を算出した。さらに業種ごとに規模別で平均値を算出し、それぞれの因子の支給得点とした。得点の範囲は、0点(支給しない)から1点(支給している)までである。
 生活給的手当の支給得点は全体的に高く、多くの法人が支給する傾向にあった(図表4-8)。30人以上から30人未満を引いた値を見ると、まず<1>規模間の違いが大きい業種に、映画・ビデオ制作業(0.24)、旅館(0.23)、情報処理業と法律事務所等の0.20、建築サービス業等と個人教授所の0.19、情報提供業(0.18)、いずれも規模の大きい方がより支給していた。規模間の違いが小さい業種に、建物サービス業等(0.05)、葬祭業(0.06)、廃棄物処理業(0.10)、各種学校、病院、老人福祉事業の0.11。このうち、<2>各種学校、病院、老人福祉事業は規模に関わりなく多く、反対に<3>建物サービス業等、葬祭業、廃棄物処理業は少なかった。<4>特に得点が低かったのは、30人未満の規模で、旅館(0.49)、個人教授所(0.51)、理美容業(0.54)、映画・ビデオ制作業(0.55)であった。
図表4-8 生活給的手当支給得点
 勤務地関連手当の支給得点は全体的に低かった(図表4-9)。まず、<1>30人未満の規模で自動車整備業、理美容業、病院、葬祭業、法律事務所等が0点であり、これらは勤務地関連手当を全く支給していなかった。<2>規模間の違いが大きい業種は、機械修理業(0.23)、情報提供業(0.21)、情報処理業と建築サービス業等の0.17、リース業(0.14)であった。<3>これら以外の13業種は、どの規模でも勤務地関連手当がほとんど支給されていなかった。
図表4-9 勤務地関連手当支給得点
 出勤奨励的手当の採用得点は、業種内での規模間の違いが比較的小さかった(図表4-10)。<1>規模間の違いが大きい業種は、葬祭業とリース業の0.12、法律事務所等(0.11)、老人福祉事業等(-0.11)であった。老人福祉事業だけは規模の小さい方がより多く支給していた。これら4業種以外はほとんど規模間の違いがなかった。その中でも、<2>旅館、自動車整備業、廃棄物処理業、理美容業は、出勤奨励的手当を支給する傾向にあり、反対に、<3>情報処理業、情報提供業、広告代理業、個人教授所、映画・ビデオ制作業、各種学校、建築サービス業等は支給しない傾向にあった。
図表4-10 出勤奨励的手当支給得点
(注3) サンプル数は無回答を外した5,067件。選択肢の中から「いずれの手当もない」を外した11種類の手当から、採用している平均手当数を算出。
3 賃金基準
 中途採用者の賃金は何を基準に決めているだろうか。選択肢の中から、重視している基準を上位2位まで回答してもらった。第1位と第2位を合わせて集計すると、学歴、年齢が同程度の従業員の賃金水準(以下「学歴、年齢」と略称)が58.4%と最も多く、ついで職種の経験年数(52.0%)、業界や地域の相場(36.6%)、前の会社での賃金(26.0%)、その他(6.1%)、中途採用はしていない(4.7%)、不明(2.4%)の順であった。学歴、年齢と職種の経験年数はほぼ同じぐらい多かった。しかし、第1位と第2位を分けて集計すると(図表4-11)、第1位では学歴、年齢が40.8%と最も多く、職種の経験年数の23.9%と比較して格段に多かった。第2位では職種の経験年数が28.2%と最も多く、学歴、年齢は17.6%と少なかった。基準として最も重視するのは学歴、年齢であり、その次に職種や経験年数を重視する傾向にあった。
図表4-11 中途採用者の賃金基準
 規模間の違いを見ると(図表4-12)、どの基準を重視するかといった傾向は全体と変わらなかった。ただ規模が大きくなるにつれ、学歴、年齢と職種の経験年数が多くなる傾向にあり、反対に前の会社での賃金と業界や地域の相場が少なくなる傾向にあった。
図表4-12 規模別中途採用者の賃金基準(第1位+第2位)
 業種別に見ると(図表4-13)、一つの基準だけが過半数を超える単独型、複数の基準が過半数を超える複合型に大別された。単独型には2つのタイプがある。まず、<1>学歴、年齢の多い業種に、個人教授所、広告代理業、リース業、情報提供業。そして、<2>職種や経験年数の多い業種に理美容業。
図表4-13 業種別中途採用者の賃金基準(第1位+第2位)
 複合型には3つのタイプがある。<1>学歴、年齢と職種や経験年数の両方が多い業種に、機械修理業、病院、情報処理業、建築サービス業等、映画・ビデオ制作業、法律事務所等、各種学校、老人福祉事業。このうち病院と老人福祉事業だけは、学歴、年齢よりも職種や経験年数の方が多かった。また<2>学歴、年齢と業界や地域相場の両方が多い業種に、廃棄物処理業、建物サービス業等、旅館、映画・ビデオ制作業、このうち旅館のみで、業界や地域相場が学歴、年齢よりも多かった。<3>自動車整備業は過半数を超える基準がなく、職種や経験年数(49.3%)、業界や地域相場(43.4%)、学歴、年齢(38.5%)に分散した。
 同じ業種の中で規模の違いはあるだろうか。選択肢にある4つの基準ごとに、縦軸にその基準を重視している法人の比率を、横軸には30人以上から30人未満を引いた値をとり、業種ごとにプロットした。以下、4つの基準ごとに説明する。
 学歴、年齢については、業種によって規模間の違いが異なる傾向にあり、4つのタイプに分類できた(図表4-14)。規模間の違いが小さい業種に、病院(3.1%)、建物サービス業等(3.2%)、理美容業(5.7%)、廃棄物処理業(11.0%)、各種学校(11.9%)、情報提供業(12.3%)。このうち、<1>病院、建物サービス業等、廃棄物処理業、各種学校、情報提供業は学歴、年齢を基準とする法人が多く、<2>反対に理美容業は少なかった。規模間の違いが大きい業種に、旅館(45.4%)、自動車整備業(35.2%)、機械修理業(34.7%)、広告代理業(27.9%)、老人福祉事業(27.3%)、法律事務所等(25.7%)、このうち、<3>旅館、自動車整備業、老人福祉事業は、30人未満で学歴、年齢を基準とする法人がそれぞれ36.2%、25.0%、39.1%と目立って少なかった。<4>その他の機械修理業、広告代理業、法律事務所等は、30人以上でそれぞれ90.0%、82.1%、87.5%と目立って多かった。
図表4-14 学歴、年齢が同程度の従業員の水準
 前の会社での賃金については、業種内の規模の違いは、全ての業種で+10%から-10%の間に収まり、規模間の違いは全体的に小さかった(図表4-15)。
図表4-15 前の会社での賃金
 業界や地域の相場は、業種によって規模間の違いが異なる傾向にあり、4つのタイプに分類できた(図表4-16)。規模間の違いが小さい業種に、理美容業(1.8%)、各種学校(3.5%)、個人教授所(-4.5%)、廃棄物処理業(-4.6%)、建物サービス業等(5.5%)。このうち<1>廃棄物処理業と建物サービス業等では、業界や地域の相場を基準とする法人が多く、反対に<2>各種学校は少なかった。
図表4-16 業界や地域の相場
 規模間の違いが大きい業種に、老人福祉事業、情報提供業、情報処理業、旅館、葬祭業、自動車整備業、病院。このうち、<3>旅館、葬祭業は、30人未満で業界や地域の相場を基準とする法人がそれぞれ73.1%、56.3%と目立って多く、<4>老人福祉事業、情報提供業、情報処理業では30人以上で20.9%、14.0%、12.5%と目立って少なかった。<5>病院は30人以上で、業界や地域の相場を基準とする法人が非常に多く、30人未満で11.5%と極端に少なかったため、規模の違いが最も顕著になった。
 職種の経験年数を重視する法人は、規模間の違いはいずれの業種でもほぼ-10%から+20%までの範囲に収まり、全体的に小さかった(図表4-17)。むしろ業種による違いが大きかった。病院、老人福祉事業、理美容業は職種の経験年数を基準とする法人が多く、広告代理業、葬祭業は少なかった。
図表4-17 職種の経験年数
4 賃金水準
 サービス産業に従事する従業員の賃金は、どの程度の水準だろうか。従業員調査では、税込み、残業込みで、ボーナス分を取り除いた前月の賃金について尋ねた。平均賃金は28.6万円、標準偏差は12.6とかなり分散が大きかった。ちなみに労働大臣官房政策調査部、1996、『毎月勤労統計調査月報-全国調査-平成8年7月分』(以降『毎勤』と略称)によると、サービス業における「きまって支給する給与」(注4)は、事業所規模5人以上で284,598円であった。
 規模別に見ると(図表4-18)、1~9人では27.1万円、10~50人では29.8万円、51人以上では28.7万円であり、10~50人の法人の平均賃金が最も高かった(注5)。しかし標準偏差は12.2、13.1、12.5とかなり分散が大きく、規模の要因が明瞭に効いているわけではなかった。
図表4-18 先月の賃金
 業種別に見ると、平均賃金が高い業種に、葬祭業が33.1万円と最も高く、ついで法律事務所等(32.1万円)、情報提供業とリース業の31.2万円であった。反対に平均賃金が低い業種に、旅館が23.6万円と最も低く、ついで理美容業(23.8万円)、老人福祉事業(23.9万円)の順であった。老人福祉事業を除いて、いずれの業種でも分散が10以上あり、業種以外の要因が強く働いていると思われる。
 以上、業種、規模いずれの場合でも分散が大きかった。これは回答する従業員の性別、学歴、従業上地位、職種、勤続年数等の個人的要因が働いていると推測できる。またこれらの要因は相互に影響を及ぼし合い、賃金水準に影響を与えている。学歴別の賃金水準を例にあげると、大学卒以上よりも中学卒の賃金水準が高かったが、これは中学卒の勤続年数が長いことによる。個人的要因は検討すべき課題ではあるが、本章の趣旨から離れるために、ここでは詳細に検討しない。ただ業種の特徴として、賃金がどの程度年功的であるかを見るために、従業員の年齢と平均賃金との関係を業種別にまとめた(図表4-19)。また参考資料として、職種ごとの平均賃金を算出し、高い順に並べ替えた(図表4-20)(注6)。
図表4-19 年齢別平均賃金(P1)
図表4-19 年齢別平均賃金(P2)
図表4-19 年齢別平均賃金(P3)
図表4-20 職種別平均賃金
 図表4-19では、業種ごとに20歳代、30歳代、40歳代、50歳代の平均賃金をプロットした(注7)。これを見ると、年齢が大きくなるにつれ平均賃金が上がる業種と、年齢にあまり影響を受けない業種の2つに大別できた。前者のうち、<1>年功的傾向が強く見られる業種として、個人教授所、各種学校、情報提供業、広告代理業、映画・ビデオ制作業、リース業、法律事務所等、<2>年功的傾向は見られるが、40歳代の平均賃金があまり伸びない業種に、葬祭業、廃棄物処理業、<3>40歳代でピークになる業種に、機械修理業、理美容業であった。
<4>年齢にあまり影響を受けない業種は、老人福祉事業、自動車整備業、建物サービス業等、旅館、病院であり、これらの業種はいずれも20歳代から30歳代にかけて賃金が上昇するが、その後はあまり伸びなかった。
(注4) 毎月勤労統計調査月報では、「きまって支給する給与」とは、労働契約、団体協約あるいは事業所の給与規則等によってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって支給される給与であって、超過労働給与を含む、と定義している。
(注5) 従業員規模に関連する分析では、法人調査と同じく、従業員規模0人を除外した9,451ケースから、さらに以下の3つの条件に当てはまるケースを除外し、その結果残った7,837ケースを分析対象とした。<1>正社員数が0人、かつパート数が欠損値、<2>正社員数が欠損値、かつパート数が0人、<3>正社員とパート数ともに欠損値。
(注6) 医師、公認会計士、弁護士は、サンプル数が10人未満である。
(注7) 10歳代、60歳代、70歳代は、業種によってサンプルが少ない場合があったので除外した。
5 退職金制度
 退職時に全額を退職一時金として支払う制度のある法人(以下「全額一時金型」と略称)が69.8%と過半数を占め、ついで退職金制度のない法人(以下「制度なし」と略称)が17.2%、退職時に退職金の一部を一時金として支払い、残りを年金として支払う制度のある法人(以下「複合型」と略称)が7.3%、退職時に退職一時金は支払わずに、全額を企業年金として支払う制度のある法人(以下「年金型」と略称)が4.1%の順であった(図表4-21)。
図表4-21 退職金制度
 規模が大きくなると、全額一時金型が1~9人で57.6%から51人以上で77.8%へと増加した。また、複合型も同じく4.5%から11.0%へと増加した。反対に、退職金制度なしは、1~9人の33.1%から51人以上の5.1%へと、規模が大きくなるにつれて減少した。
 業種別にみると、<1>全額一時金型は全ての業種で過半数を占めた。全額一時金型は、老人福祉事業で88.5%と最も高く、ついで各種学校(87.5%)、病院(83.1%)の順であった。<2>退職金制度なしは、理美容業で38.7%と最も高く、ついで個人教授所(27.2%)、映画・ビデオ制作業(26.1%)、旅館(25.4%)であった。<3>複合型は、リース業(12.4%)、病院(11.2%)、広告代理業(10.3%)で全体の1割を超えた。
 では、どのような制度を利用しているだろうか(図表4-22)。全額一時金型、複合型、年金型に属する法人のうち、自社の退職一時金制度を利用する法人が47.6%と最も多く、ついで中小企業退職金共済制度が28.6%、厚生年金基金が19.6%、商工会議所等の特定退職金共済制度が15.7%、適格年金が9.9%、その他が7.6%であった。
図表4-22 利用している制度
 規模別では1~9人から51人以上と規模が大きくなるにつれ、自社の退職一時金制度を利用する企業が36.9%から57.0%へと増加し、同じく適格年金も1.9%から20.3%へと増加した。反対に商工会議所等の特定退職金共済制度は19.8%から9.2%へと減少し、同じく中小企業退職金共済制度も37.6%から14.5%へと減少した。厚生年金基金はどの規模でも2割前後であった。
 業種別では4つのタイプに分かれた。まず、<1>自社の退職一時金制度を利用する法人が多い業種であり、理美容業、病院、建物サービス業等、旅館、情報処理業、映画・ビデオ制作業、情報提供業、各種学校、リース業の9業種であった。また、<2>自社の退職一時金制度と中小企業退職金共済制度を利用する法人がどちらも多い業種であり、個人教授所、広告代理業、廃棄物処理業、機械修理業、建築サービス業等、法律事務所等の6業種であった。これらのうち、機械修理業、建築サービス業等、法律事務所等は、中小企業退職金共済制度を利用する法人の方が多かった。<3>利用している制度が割れている業種であり、葬祭業、自動車整備業であった。葬祭業では自社の退職一時金制度、中小企業退職金共済制度、厚生年金基金、自動車整備業では商工会議所等の特定退職金共済制度、中小企業退職金共済制度、厚生年金基金に割れた。<4>老人福祉事業はいずれのタイプにも属さず、その他が51.3%と過半数を越えた。
 退職金制度の有無について業種ごとに規模間の違いをみる。縦軸に退職金制度がある法人の比率を、横軸に30人以上から30人未満の法人比率を引いた値をとり、業種を配置した。これを見ると4つのタイプに分かれた(図表4-23)。<1>全体的には退職金制度のある法人が多く、規模間の違いがあまり見られない業種に、病院、老人福祉事業、各種学校、情報提供業、葬祭業、廃棄物処理業、法律事務所等、リース業。このうち老人福祉事業、各種学校は9割以上の法人に退職金制度があり、かつ規模間の違いがほとんど無かった。<2>全体的には退職金制度のある法人が多く、規模間の違いが見られる業種に、情報処理業、自動車整備業、機械修理業、広告代理業、建物サービス業等、建築サービス業等。<3>全体的に退職金制度のある法人が少なく、かつ規模間の違いがあまり見られない業種に理美容業、<4>全体的には退職金制度のある法人が少なく、規模間の違いが見られる業種に、映画・ビデオ制作業、旅館、個人教授所。特に旅館では、30人以上でも84.9%と少なかったが、さらに30人未満の規模でも52.8%と著しく少なかった。
図表4-23 退職金制度の有無
第3節 退職制度
1 定年制度
 定年制度のある法人は7割近くに達した(図表4-24)。規模別に見ると、1~9人では、60.4%の法人に定年制度がなかったのに対し、51人以上では93.6%の法人に定年制度があった。
図表4-24 定年制の有無
 業種別に見ると、老人福祉事業(97.5%)、病院(95.6%)、各種学校(89.9%)でほぼ9割以上の法人に定年制度があった。ついで情報処理業(79.0%)、情報提供業(77.0%)、廃棄物処理業(76.0%)、リース業(75.9%)、建物サービス業等(74.9%)の順であった。反対に定年制度のない法人は理美容業が68.9%と最も多く、この業種だけ、ない法人がある法人を上回った。ついで自動車整備業(47.5%)、個人教授所(44.1%)、法律事務所等(43.6%)、映画・ビデオ制作業(43.0%)、建築サービス業等(42.2%)の順に多かった。
 では、同一業種の中で規模によって定年制の導入に違いはあるだろうか。縦軸に定年制度のある法人比率を、横軸に30人以上から30人未満を引いた値をとり、業種をプロットした(図表4-25)。
図表4-25 定年制度の有無
 これを見て分かるように、全体として定年制度がある業種には規模の違いがあまりなく、反対に定年制度があまりない業種には規模の違いが大きく顕れた。<1>前者の業種に、老人福祉事業、病院、各種学校、情報処理業、情報提供業、廃棄物処理業、リース業。特に老人福祉事業、病院、各種学校は、30人未満の規模でも定年制度のある法人比率が7割を超えた。
 後者の業種に、理美容業、自動車整備業、個人教授所、法律事務所等、建築サービス業等、映画・ビデオ制作業、旅館、機械修理業。このうち、<2>30人以上の規模でほとんどの法人に定年制度があった業種に、自動車整備業(100%)、機械修理業(98%)、法律事務所等(90.6%)、建築サービス業等(93.5%)、これらの業種は30人未満になると、定年制度のある法人が5割前後と大幅に少なくなった。また、<3>個人教授所、旅館の2業種は30人以上で定年制度のある法人が8割前後であったが、30人未満では4割を切って大幅に少なくなった。<4>理美容業は30人以上の規模でも定年制度のある法人は58%と少なく、さらに30人未満では18.1%と2割を切った。
2 定年制の年齢
 定年制度がある法人では、その年齢は何歳だろうか。定年制度がある3,658法人のうち、平均年齢は59.9歳(標準偏差=2.6)であった。分布をみると、60歳が75.2%と最も多かった。ちなみに65歳は8.4%であった。
 定年制の年齢と実際に働いている年齢の分布を見ると、図表4-26になる(注8)。定年制の年齢は60歳が76.1%と最も多かった。65歳は9.0%であった。実働年齢は定年制の年齢よりも高齢化し、60歳が37%であり、65歳が26.9%であった。
図表4-26 定年制と実働の年齢
 規模別にみると、1~9人と10~50人で平均年齢が59.7歳と同じであり、51人以上では60.2歳と高齢化する傾向にあった。標準偏差を見ると、1~9人が3.39、10~50人が2.68、51人以上が2.04であり、規模が大きくなるにつれて、年齢の分散が小さくなる傾向にあった。分布を見ると、いずれの規模でも60歳が7割を超えて最も多かった。
 業種別に平均年齢をみると、建物サービス業等が61.2歳と最も高齢であり、ついで旅館(60.8歳)、廃棄物処理業(60.6歳)、葬祭業(60.5歳)、各種学校(60.3歳)、病院(60.0歳)の順であった。平均年齢の若い業種は、理美容業が57.3歳と最も若く、ついで映画・ビデオ制作業(58.9歳)、情報処理業(59.2歳)、自動車整備業(59.3歳)、広告代理業(59.5歳)、個人教授所と機械修理業の59.6歳の順であった。また年齢の分散が大きかった業種は、理美容業と機械修理業であり、標準偏差が前者で4.2、後者で3.9であった。反対に分散の小さい業種は、リース業(1.6)と建物サービス業等(1.6)であった。分布をみると、全ての業種で60歳を定年制の年齢とする法人が過半数を越えた。65歳を定年制の年齢とする法人が1割以上あった業種では、建物サービス業等が21.8%と最も多く、ついで旅館(18.2%)、廃棄物処理業(14.8%)、葬祭業(12.3%)の順であった。
 では、定年制の年齢は業種によって規模間の違いがあるだろうか。縦軸に全体としての平均年齢を、横軸に30人以上の平均年齢から30人未満のそれを引いた値をとり、業種をプロットした(図表4-27)。規模の違いによって平均年齢がほぼ1歳以上開いた業種は、個人教授所(1.86歳)、理美容業(1.51歳)、建物サービス業等(1.09歳)、機械修理業(0.84歳)、旅館(-0.94歳)の6業種であった。規模が大きくなるにつれ、建物サービス業等、機械修理業、個人教授所、理美容業は定年制の年齢が高齢化したが、旅館だけは若くなった。その他の12業種は、定年制の年齢が60歳程度であり、規模間の違いもあまりなかった。
図表4-27 定年制度の平均年齢
(注8) 定年制度のある法人のうち、定年制度と実働の年齢の両方に回答があった2,832法人を対象としている。
3 実働年齢
 従業員が実際に働いている平均年齢は61.3歳であった。標準偏差は7.7であり、定年制の平均年齢と比較して分散の幅が大きかった。分布をみると、60歳が25.4%と最も多く、ついで無回答(23.6%)、65歳(19.8%)の順であった。
 規模別にみると、平均年齢は、1~9人が59.3歳、10~50人が61.0歳、51人以上が63歳であった。標準偏差は規模が大きくなるにつれて、9.38、7.65、5.60と小さくなり、分散の幅が小さくなる傾向にあった。
 業種別では、建物サービス業等が65.8歳と最も高齢であり、ついで旅館(65.1歳)、廃棄物処理業(63.7歳)、葬祭業(63.6歳)、各種学校(63.3歳)、病院(63.2歳)の順であった。反対に平均実働年齢の若い業種は、理美容業が49.5歳と最も若く、ついで情報処理業(55.8歳)、映画・ビデオ制作業と個人教授所の58.4歳の順であった。
 標準偏差は、理美容業が13.1と最も大きく、個人教授所(10.0)、情報処理業(9.04)の順であり、これらの業種は実働年齢の分散の幅がかなり大きかった。反対に、廃棄物処理業(3.95)と老人福祉事業(3.97)は実働年齢の分散が小さかった。
 業種ごとに規模間の違いをみる。縦軸に平均実働年齢をとり、横軸に30人以上の規模での平均実働年齢から30人未満のそれを引いた値をとり、業種をプロットした(図表4-28)。これを見ると、<1>規模に関わりなく実働年齢が高齢化している業種として、建物サービス業等、旅館、廃棄物処理業、葬祭業、各種学校の5業種があった。また、<2>規模に関わりなく実働年齢が若い業種には理美容業があり、30人以上で49.2歳、30人未満で49.6歳と平均実働年齢がいずれも50歳を切った。規模間の違いが大きい業種には、個人教授所、情報処理業、法律事務所等、病院、建築サービス業等、映画・ビデオ制作業の6業種があった。このうち、<3>30人以上の規模で、実働年齢が目立って高齢化している業種として、法律事務所等(63.5歳)、病院(63.3歳)、建物サービス業(62.3歳)であった。これらの業種は30人未満になると、平均実働年齢が60歳程度になり、急激に下がった。また、<4>情報処理業は30人以上の規模で58.7歳と60歳を切り、さらに30人未満では53.5歳と一段と低年齢化した。
図表4-28 平均実働年齢
第4節 労働時間制度
1 所定労働時間
 1週間の平均所定労働時間は全体で41.5時間(標準偏差=3.65)であった。分布をみると、所定労働時間を40時間とする法人が26.4%と最も多く、ついで44時間(13.1%)であった(図表4-29)。
図表4-29 1週間の所定労働時間
 規模別では1~9人が42時間と最も長く、ついで10~50人の41.7時間、51人以上の40.6時間であった。つまり規模が大きくなるほど、所定労働時間が短縮される傾向にあった。分布を見ると、いずれの規模でも40時間が25%を超えて最も多かった。規模が大きくなるにつれて、37.5~40時間未満と44時間を所定労働時間と回答する法人が多くなったが、48時間のところでは少なくなった。業種別に平均所定労働時間を見ると、最も長い業種は理美容業で44.8時間であった。ついで自動車整備業(44.2時間)、葬祭業(43.9時間)、旅館(43.8時間)、リース業(42.2時間)、建物サービス業等と個人教授所の41.9時間の順であった。反対に短い業種は情報提供業で38.8時間であった。ついで法律事務所等(39.0時間)、情報提供業(39.8時間)、広告代理業(40時間)、病院(40.2時間)、老人福祉事業(40.4時間)の順であった。上位3業種は40時間を切った。
 分布をみると、40時間と回答する比率が最も多い業種が12業種、44時間が4業種、48時間が2業種と分かれた。<1>40時間では、老人福祉事業(51%)、情報処理業(41.7%)、映画・ビデオ制作業(36.4%)、広告代理業(35.3%)、建築サービス業等(32%)、法律事務所等(31.6%)、情報提供業(31.4%)、個人教授所(31%)、病院(26.7%)、各種学校(25.3%)、建物サービス業等(22.5%)、機械修理業(20%)であった。<2>44時間では、旅館(29.2%)、廃棄物処理業(26.2%)、自動車整備業(24.9%)、リース業(20.3%)であった。<3>48時間では、葬祭業(21.1%)、理美容業(17.9%)であった。
 平均所定労働時間について、業種ごとに規模間の違いをみる。縦軸に平均所定労働時間をとり、横軸に30人以上から30人未満の平均所定労働時間を引いた値をとり、業種をプロットした(図表4-30)。これを見ると4つのタイプに大別できる。<1>規模の違いがあまりなくて、平均所定労働時間が短い業種である。これらは情報提供業、法律事務所等、情報処理業、広告代理業、病院、老人福祉事業、各種学校の7業種が属する。<2>規模の違いがあまりなくて、平均所定労働時間が長い業種である。これらは理美容業、旅館、廃棄物処理業、建物サービス業等、個人教授所の5業種が属する。そして規模の違いが顕著な業種である。これらは自動車整備業、葬祭業、機械修理業、リース業、建築サービス業等、映画・ビデオ制作業の6業種が属する。いずれの業種も規模の大きい方が所定労働時間が短かった。このうち、<3>30人未満の規模で所定労働時間が目立って長い業種に、自動車整備業(44.2時間)、葬祭業(44.3時間)、機械修理業(43.0時間)、リース業(42.7時間)。<4>30人以上の規模で所定労働時間が目立って短い業種に、映画・ビデオ制作業(39.4時間)、建築サービス業等(40.2時間)。
図表4-30 平均所定労働時間
2 残業時間
 先月の一人当たりの平均残業時間は10.1時間であった。標準偏差は13.0と非常に大きかった。分布をみると、1~9時間が30.8%と最も多く、ついで0時間が21.7%、10~19時間が17.1%の順であった(図表4-31)。
図表4-31 1ヶ月の平均残業時間
 規模別に平均残業時間をみると、10~50人が10.9時間と最も長く、ついで51人以上が10時間、1~9人が9.2時間であった。
 分布をみると、1~9人の規模では0時間が31.7%と最も多く、10~50人と51人以上の規模では1~9時間が3割を超えて最も多かった。また、0時間のところでは、1~9人の31.7%、10~50人の19.2%、51人以上の15.1%と、規模が大きくなるにつれて少なくなった。反対に、1~9時間のところでは、1~9人の25.4%、10~50人の30.3%、51人以上の37.6%と、規模が大きくなるにつれて多くなった。10時間以上のところでは、10~50人の規模が最も多くなる傾向にあった。
 業種別にみると、平均残業時間は、映画・ビデオ制作業が17.9時間と最も長く、ついで建築サービス業等(16.3時間)、機械修理業(14.7時間)、リース業(14.1時間)、各種学校(13.8時間)、広告代理業(13.2時間)、情報提供業(13.1時間)、情報処理業(12.9時間)の順であった。反対に病院は6.9時間と最も短く、ついで老人福祉事業(7.3時間)、個人教授所(9時間)、廃棄物処理業(9.4時間)、理美容業(9.6時間)の順であった。
 分布をみると、<1>残業時間を0時間と回答する法人が最も多い業種が個人教授所、法律事務所等、各種学校の3業種、<2>1~9時間では広告代理業、廃棄物処理業、機械修理業、病院、建物サービス業等、リース業、旅館、自動車整備業、映画・ビデオ制作業、葬祭業、老人福祉事業の11業種、<3>理美容業は0時間と1~9時間が同数で最も多かった。<4>10~19時間では情報処理業、建築サービス業等、情報提供業の3業種が最も多かった。
 平均残業時間について業種別に規模間の違いをみる。縦軸に平均残業時間をとり、横軸に30人以上から30人未満の平均残業時間を引いた値をとって、業種をプロットした(図表4-32)。これを見ると4つに大別できる。<1>規模間の違いがあまりなく、平均残業時間の長い業種に、建築サービス業等、機械修理業、情報提供業、葬祭業、リース業。<2>規模間の違いがあまりなく、平均残業時間の短い業種に、老人福祉事業、病院、理美容業、個人教授所、廃棄物処理業、建物サービス業等。そして規模間の違いが大きい業種に、映画・ビデオ制作業、情報処理業、広告代理業、各種学校、自動車整備業、旅館、法律事務所等。いずれも規模の大きい方が平均残業時間が長かった。このうち、<3>30人以上の規模で残業時間が目立って長い業種に、映画・ビデオ制作業(22.5時間)、情報処理業(18.7時間)、広告代理業(16.9時間)。<4>30人未満の規模で目立って短い業種に、各種学校(5.8時間)、自動車整備業(7.9時間)、旅館(4.6時間)、法律事務所等(5.4時間)。
図表4-32 平均残業時間
3 週休制
 週休制については(図表4-33)、週休2日制を採用している法人が71.4%と最も多かった。ついで週休1日制(11.1%)、週休1日半制(8.0%)、その他(7.9%)の順であった。
図表4-33 週休制のタイプ
 いずれの規模でも週休2日制が過半数を超えて多かった。また規模が大きくなるにつれて、週休1日半制とその他が多くなり、反対に週休1日制と週休2日制が少なくなった。
 業種別にみると、葬祭業と旅館を除いて週休2日制がいずれの業種でも最も多かった。そのうち情報処理業(95.8%)、情報提供業(94.8%)、広告代理業(93.7%)、法律事務所等(91.9%)、建築サービス業等(88.7%)では、9割近くの法人が週休2日制を採用した。旅館と葬祭業は他の業種と違い週休1日制、週休2日制、その他に割れた。
 では週休2日制はどのようなタイプだろうか。週休2日制を採用する3,787法人の中で、完全週休2日制が51.6%と最も多く、ついで隔週休2日制(17.9%)、月2回週休2日制(15.8%)の順であった(図表4-34)。
図表4-34 週休2日制の形態
 いずれの規模でも完全週休2日制が最も多かった。完全週休2日制は1~9人(54.5%)で最も多く、ついで51人以上(51.8%)、10~50人(49,8%)の順であった。反対に月2回週休2日制は10~50人で18.8%と最も多く、ついで1~9人(15.7%)、51人以上(14.3%)の順であった。隔週週休2日制は、規模が大きくなるにつれて、1~9人の15.4%から51人以上の19.2%へと多くなった。
 業種別でみると、<1>完全週休2日制を採用する法人が多かった業種は、情報処理業(84.2%)、情報提供業(83.4%)、映画・ビデオ制作業(74%)、法律事務所等(71.3%)、広告代理業(70.8%)、老人福祉事業(57.7%)、個人教授所(53%)、建築サービス業等(49.7%)であった。これらの他の業種では、<2>旅館、建物サービス業等、リース業、病院、機械修理業、廃棄物処理業、理美容業では、完全週休2日制、隔週週休2日制、月2回週休2日制がほぼ均等に多かった。<3>葬祭業では、完全週休2日制、隔週週休2日制、月2回週休2日制、月1回週休2日制がほぼ均等に多かった。<4>自動車整備業は月1回週休2日制が43.3%と最も多かった。
 週休制のタイプに業種の中で規模間の違いがあるだろうか。ここでは便宜的に、完全週休2日制について業種ごとにに規模間の違いをみる。
 まず、問24の(3)と付問をもとに、全体の中で完全週休2日制を採用する法人の比率を算出した。完全週休2日制を採用する法人は1,888法人で全体の37%であった。完全週休2日制でない法人は2,748法人であり、53.8%であった。その他の週休制が7.8%、不明が1.4%であった。
 そして、縦軸に完全週休2日制を採用する法人比率をとり、横軸に30人以上から30人未満の比率を引いた値をとり、業種をプロットした(図表4-35)。これをみると4つのタイプに分かれた。<1>規模の違いに関わらず、完全週休2日制を採用する法人が6割以上と過半数を占めるタイプであり、情報提供業、広告代理業、映画・ビデオ制作業が属する。<2>規模の違いに関わらず、完全週休2日制を採用する法人が少ないタイプであり、自動車整備業、旅館、葬祭業、廃棄物処理業、病院、建物サービス業等、リース業、各種学校、個人教授所が属する。そして規模間の違いが大きいタイプであり、機械修理業、法律事務所等、老人福祉事業、理美容業、情報処理業、建築サービス業等が属する。いずれの業種でも、規模の大きい方が完全週休2日制をより多く採用していた。そのうち、<3>30人未満の規模で完全週休2日制の採用が目立って少ない業種に、理美容業(10.8%)、機械修理業(16.7%)、老人福祉事業(26.1%)。<4>30人以上の規模で完全週休2日制の採用が目立って多い業種に、情報処理業(89%)、法律事務所等(81.3%)。
図表4-35 完全週休2日制の採用
4 労働時間短縮への対応
 労働時間短縮への対応は、1法人当たり平均して2.3の対応策を選択した(標準偏差=1.7)(注9)。最も多くの法人がとった対応策は、従業員の意識改革であり、43.5%であった。ついで、業務の見直し(33.7%)、OA化による事務処理の効率化(30.1%)、業務のスケジュール管理の徹底(28.2%)、労働時間制度の見直し(21.0%)、繁閑に応じた柔軟な応援体制の確立(20.9%)、パートの戦力化(16.7%)、従業員の多能化の推進(16.4%)、何もしていない(13.6%)、分業化、専業化の徹底(7.0%)、契約社員制度の導入(5.6%)、ノー残業デーの設定(4.9%)、その他(2.4%)、時短推進委員会の設置(1.2%)の順であった。
 規模別に見ると、1法人当たりの対応策の平均選択数は、1~9人の1.7(標準偏差=1.5)、10~50人の2.4(標準偏差=1.6)、51人以上の2.9(標準偏差=1.8)と増加し、規模が大きいほど労働時間短縮に積極的であった。採用している方策は、いずれの規模でも従業員の意識改革が最も多かった。また1~9人から51人以上へと規模が大きくなるに従って、従業員の意識改革、業務の見直し、OA化による事務処理の効率化、業務のスケジュール管理の徹底、労働時間制度の見直し、パートの戦力化を採用する法人が多くなった。その反対に規模が小さくなると、何もしていない法人が多くなった。
 業種別に見ると、1法人当たりの対応策の平均選択数は、旅館が3.0と最も多く、ついで老人福祉事業(2.9)、情報提供業(2.7)、建物サービス業等(2.5)、病院と各種学校の2.4の順であった。反対に自動車整備業(1.7)と理美容業(1.8)は少なかった。
 対応策の中身をみると、いずれの業種でも従業員の意識改革は30%以上と多かった。特定の業種に多かった対応策は、<1>業務の見直しが多い業種に、老人福祉事業(60.5%)、廃棄物処理業(43.9%)、病院(42.6%)。<2>OA化による事務処理の効率化に、法律事務所等(65.5%)、建築サービス業等(53.7%)、情報提供業(52.9%)、<3>繁閑に応じて柔軟な応援体制の確立に旅館(45%)。<4>労働時間制度の見直しに、病院(33.7%)、旅館(33.8%)、老人福祉事業(34%)。<5>パートの戦力化に、旅館(53.1%)、老人福祉事業(36.3%)、個人教授所(31.5%)、建物サービス業等(30.7%)。<6>従業員の多能化の推進に機械修理業(28.8%)。
 ではどのような対応策で、どういった業種に規模間の違いがあるだろうか。このことを明らかにする前に、対応策の種類が多く、分析が煩雑になるため、因子分析によって対応策を3種類に大別した。
第一因子 業務効率化因子
 「従業員の意識改革」、「事務処理の効率化」、「業務の見直し」、「スケジュール管理」、「従業員の多能化」、「分業化、専業化」等に負荷が高かった。これらは一般業務の中で労働時間短縮に取り組む対応策であり、業務効率化因子と命名した。
第二因子 非正規従業員活用因子
 「パート戦力化」、「契約社員制度導入」、「労働時間制度見直し」に負荷が高かった。これらは、正規従業員ではないパートや契約社員の活用によって、業務の繁閑に対応し時短を進めると考え、非正規従業員活用因子と命名した。
第三因子 制度的対応
 「ノー残業デー」、「時短推進委員会の設置」等に正の負荷が高く、いずれも時短を直接目的とした制度の設置に関わることから、制度的対応と命名した。
 これらの因子ごとに負荷の高い対応策について、「している」に1点、「していない」に0点を付与して合計し、それらを項目数で割って得点を算出した。さらに業種ごとに規模別で平均値を算出し、それぞれの因子の得点とした。得点の範囲は、0点(していない)から1点(している)までである。この3因子の得点を算出し、業種ごとの30人未満と30人以上の規模間による違いを検討した。このうち、制度的対応についてはいずれの業種でも実施している法人が少なく、分類が不可能であった。
 業務効率化については(図表4-36)、<1>規模の違いに関わりなく、実施している法人が多い業種に、情報提供業、老人福祉事業、建物サービス業等、各種学校、廃棄物処理業。また、<2>規模の違いに関わりなく、実施している法人が少ない業種に、理美容業、葬祭業、自動車整備業、そして規模間の違いが大きい業種に、旅館、個人教授所、リース業、法律事務所等、リース業。そのうち、<3>30人未満で目立って少ない業種に、旅館、個人教授所。<4>30人以上で目立って多い業種に法律事務所等。非正規従業員活用については(図表4-37)、旅館と老人福祉事業を除けば全体的に実施している法人が少なかった。旅館は規模間の違いが大きい業種であり、30人以上で実施している法人が多かった。老人福祉事業は規模間の違いがほとんどなく、全体的に実施している法人が多かった。
図表4-36 業務効率化
図表4-37 非正規従業員活用
(注9) 選択肢のうち、「何もしていない」、「その他」といった労働時間短縮の具体的な方策を示さない選択肢を削除し、12の選択肢の中で選択数を算出した。
第5節 労務管理に対する評価と満足度
1 事業主の評価
 事業主は、労務管理の現状に対して、どのような点を改善しようと考えているだろうか。賃金水準、労働時間、福利厚生、従業員の能力、職場の人間関係、従業員の定着、作業環境の7つの基準(側面)に対して、よい(5点)から改善の余地が大きい(1点)までの5段階で、事業主の方に評価して頂いた。7つの基準ごとに平均値と評価DI(注10)を算出すると、従業員の定着、職場の人間関係、作業環境に対する評価は特によく、ついで賃金水準、労働時間もよく、従業員の能力に対してはほぼ中立的であった。反対に福利厚生については、改善の余地があると評価する法人が多かった(図表4-38)。
図表4-38 労務管理の現状に対する評価
 規模別に評価得点の平均値を見ると(図表4-39)、規模が大きいほど評価が良かったのは福利厚生だけであった。しかしいずれの規模でも、3点を切っており改善の余地があった。規模が小さいほど評価が良かったのは、従業員の能力、職場の人間関係、従業員の定着、作業環境であった。賃金水準は10~50人で評価が最も高く、反対に労働時間では10~50人で評価が最も低かった。DIもほぼ同様な傾向を示した。
図表4-39 規模別労務管理の現状に対する評価
 業種ごとの特徴は、7つの基準ごとに見ていく。(図表4-40)
図表4-40 労務管理の現状評価についての業種別ランキング
(1) 賃金水準
 評価得点とDIの両方で、葬祭業、法律事務所等、理美容業、廃棄物処理業、リース業では賃金水準に対する評価がよかった。反対に旅館、映画・ビデオ制作業、各種学校では評価得点が低く、かつDIもマイナスであった。
(2) 労働時間
 評価得点とDIで、法律事務所等、老人福祉事業、広告代理業、病院、情報提供業では、労働時間に対する評価がよかった。反対に個人教授所、理美容業、機械修理業、建築サービス業等、自動車整備業、映画・ビデオ制作業、葬祭業、旅館では評価得点が低く、かつDIもマイナスであった。
(3) 福利厚生
 全ての業種で評価得点が低く、かつDIはマイナスであった。特に情報提供業、建物サービス業等、旅館、映画・ビデオ制作業、個人教授所ではDIで20%以上の差が開いた。
(4) 従業員の能力
 評価得点とDIで、法律事務所等、個人教授所、理美容業、情報提供業では、従業員の能力に対する評価がよかった。反対に広告代理業、建築サービス業等、映画・ビデオ制作業、老人福祉事業、機械修理業、病院、葬祭業、廃棄物処理業、建物サービス業等、旅館では評価得点が低く、かつ老人福祉事業を除いた全ての業種で、DIがマイナスであった。
(5) 職場の人間関係
 職場の人間関係に対する評価はほとんどの業種でよかった。その中でも個人教授所、理美容業、法律事務所等では、評価が特によかった。ただ旅館だけは評価得点が低く、かつDIがマイナスであった。
(6) 従業員の定着
 従業員の定着に対する評価はほとんどの業種でよかった。その中でも法律事務所等、自動車整備業、各種学校では、評価が特によかった。ただ旅館だけは評価得点が低く、かつDIがマイナスであった。
(7) 作業環境
 評価得点とDIで、法律事務所等、理美容業、各種学校、個人教授所、広告代理業、情報提供業、情報処理業、建築サービス業等、老人福祉事業では、作業環境に対する評価がよかった。その中でも法律事務所等、理美容業、各種学校では、評価が特によかった。反対に廃棄物処理業、建物サービス業等、旅館、機械修理業では評価得点が低く、かつDIがマイナスであった。
 では労務管理の評価について、業種内で規模間の違いはあるだろうか。業種ごとに7つの指標について、30人以上と30人未満の評価得点を図表4-41に示した。
図表4-41 業種別労務管理評価(P1)
図表4-41 業種別労務管理評価(P2)
図表4-41 業種別労務管理評価(P3)
 まず、規模の差が大きい業種には4つのタイプがある。<1>30人未満よりも30人以上の方で、全般的に評価がよかった業種に、機械修理業、映画・ビデオ制作業、建築サービス業等、情報処理業、理美容業、特に福利厚生と賃金水準で、規模の違いが大きかった。<2>30人以上よりも30人未満の方で、全般的に評価がよかった業種に、建物サービス業等、自動車整備業、葬祭業、病院、リース業。このうち葬祭業、病院、リース業では、従業員の定着、職場の人間関係、従業員の能力で、規模の違いが大きく、賃金水準、労働時間、福利厚生はほとんど同じであった。<3>評価基準によって、規模別の評価が変わる業種に、各種学校、老人福祉事業、情報提供業、個人教授所、広告代理業、旅館、全般的な特徴としては、従業員の定着、職場の人間関係、従業員能力、労働時間で、30人未満の規模の方で評価が高かった。しかし賃金水準や福利厚生では、30人以上の規模の方で評価が高かった。<4>規模間の差が小さい業種に、廃棄物処理業、法律事務所等。
(注10) 「よい」と「どちらかといえばよい」を足した回答比率から、「改善の余地がある」と「改善の余地が大きい」を足した回答比率を引いた値。
2 従業員の満足度
 従業員は職場生活に対して満足しているだろうか。仕事の内容、賃金、労働時間、福利厚生、教育訓練、職場の人間関係、作業環境の7つの基準(側面)に対して、満足(5点)から不満(1点)までの5段階で、従業員の方に評価して頂いた。
 7つの基準ごとに平均値と満足度DI(注11)を算出すると、仕事の内容に対する満足度は非常に高く、ついで労働時間、職場の人間関係、作業環境の順に満足度が高かった。賃金、福利厚生に対してはほぼ中立的であった。反対に教育訓練に対しては、満足していない従業員が多かった(図表4-42)。
図表4-42 職場生活に対する満足度
 規模別に満足度得点の平均値をみると(図表4-43)、全ての基準で、規模が小さいほど従業員の満足度は高くなった。DIを見ると、51人以上の規模で賃金(-5.1)、福利厚生(-0.3)、教育訓練(-15.1)に対して、10~50人の規模で教育訓練(-5.9)に対して、満足しない従業員が多かった。1~9人の規模では、全ての基準でDIがプラスであり、満足している従業員の方が多かった。
図表4-43 規模別職場生活に対する満足度
 業種ごとの特徴は、7つの基準ごとに見ていく(図表4-45)。職場生活全体の満足度については、職種別に平均得点を算出し、高い順に並び替えた(図表4-44)。
図表4-44 職種別職場生活全体の満足度
図表4-45 職場生活満足度についての業種別ランキング
(1) 仕事の内容
 全ての業種で仕事の内容に対する満足度は高かった。特に理美容業、法律事務所等、個人教授所、各種学校ではDIが50以上であり、満足している人が非常に多かった。
(2) 賃金
 満足度得点とDIの両方で、法律事務所等、葬祭業、理美容業、廃棄物処理業、リース業では、賃金に対してとても満足していた。反対に広告代理業、病院、旅館、情報処理業、映画・ビデオ制作業では、満足度得点が低く、かつDIがマイナスであり、不満を持っている従業員の方が多かった。
(3) 労働時間
 全ての業種で、労働時間に対する満足度は比較的高かった。特に法律事務所等、広告代理業、廃棄物処理業、建物サービス業等、自動車整備業、病院、リース業ではDIが30以上であり、満足している人が多かった。例外として、情報処理業は満足度得点が3.1とやや低かった。DIも7.7であり、満足している人としていない人が拮抗した。
(4) 福利厚生
 満足度得点が比較的高かった業種は、理美容業と自動車整備業だけであり、全般的に満足度得点は低かった。DIを見ると、個人教授所、病院、旅館、葬祭業、情報提供業、情報処理業、映画・ビデオ制作業ではマイナスであり、不満を持っている従業員の方が多かった。
(5) 教育訓練
 満足度得点が特に高かった業種は理美容業であり、ついで自動車整備業も比較的高かった。これら2業種以外は満足度得点が低く、DIも全てマイナスであった。特に映画・ビデオ制作業、情報処理業、広告代理業では、DIがマイナス20と大きく、不満を持っている従業員の方が非常に多かった。
(6) 人間関係
 全ての業種で人間関係に対する満足度は高かった。特に理美容業ではDIが50以上、ついで個人教授所、自動車整備業、リース業、法律事務所等、各種学校、広告代理業では30以上であり、満足している人が多かった。
(7) 作業環境
 全ての業種で作業環境に対する満足度は高かった。特に理美容業、法律事務所等ではDIが50程度であり、満足している人が非常に多かった。例外として、映画・ビデオ制作業は満足度得点が3.1とやや低かった。DIも6.5であり、満足している人としていない人が拮抗した。
 では職業生活の満足度について、業種内で規模間の違いはあるだろうか。業種ごとに7つの指標について、30人以上と30人未満の満足度得点を図表4-46に示した。
図表4-46 業種別従業員の満足度(P1)
図表4-46 業種別従業員の満足度(P2)
図表4-46 業種別従業員の満足度(P3)
 全体的な傾向として、いずれの業種でも規模の小さい方で満足度が高かった。しかし業種によって若干の違いが見られた。
<1>全ての基準において、規模の小さい方で満足度が高かった業種に、各種学校、情報処理業、リース業、廃棄物処理業、広告代理業。またほとんどの基準で、規模の小さい方で満足度の高かった業種が7あった。そのうち、<2>労働時間への満足度に差がない業種に葬祭業。<3>仕事の内容への満足度に差がない業種に建物サービス業。<4>作業環境、労働時間、福利厚生への満足度にいずれも差がない業種に、建物サービス業等と映画・ビデオ制作業。<5>作業環境、労働時間、福利厚生への満足度にいずれも差がない業種に個人教授所。<6>職場の人間関係と教育訓練への満足度のどちらにも差がない業種に、機械修理業と理美容業。そして少数ではあるが、全体的に規模の大きい方で満足度の高かった業種が6あった。そのうち、<7>賃金への満足度で差があった業種に、法律事務所等、老人福祉事業、病院。<8>仕事の内容への満足度で差があった業種に自動車整備業。<9>福利厚生への満足度で差があった業種に情報提供業。<10>教育訓練の満足度で差があった業種に旅館。
(注11) 「満足」と「やや満足」を足した回答比率から、「やや不満」と「不満」を足した回答比率を引いた値。
第6節 小括
図表4-47 業種別規模間の同質性
 本調査で明らかにされた事実について、(1)労働条件管理、(2)事業主の評価、(3)従業員の満足度の3つに整理して説明する。
1 労働条件管理
 一見すると、従業員規模や業種の違いがそれぞれ単独で、労務管理制度の普及状況や労働条件の水準に影響を及ぼしているかのように見える。しかしながら実態は複雑であり、業種によっては規模間の違いが大きくなったり、反対に小さくなったりすることが分かった。
 図表4-45では、本章で分析した賃金制度、退職制度、労働時間制度の普及状況、定年と実働の平均年齢、平均所定労働時間、平均残業時間について、規模間の同質性と業種全体としての水準をまとめた。このうち賃金表、生活給的手当(注12)、退職金制度、定年制度、完全週休2日制などの指標を中心に、それらの整備状況と規模間の同質性の程度から、18業種を2つのタイプに大別する。
 第一に規模間の違いが比較的小さい業種である。このタイプには、廃棄物処理業、病院、建物サービス業等、リース業、葬祭業、各種学校、老人福祉事業が属する。このうち整備状況の程度で3つに分かれる。
<1> 賃金制度と退職制度が整備されている業種に、老人福祉事業、各種学校、病院。これらの業種は、完全週休2日制を採用する法人は少なかったが、所定労働時間と残業時間はともに短かった。
<2> 賃金制度は整備されていないが、退職制度が整備されている業種に、廃棄物処理業、建物サービス業等。これらの業種は、完全週休2日制を採用する法人が少なく、かつ所定労働時間も長かった。しかし残業時間は短かった。
<3> 労働時間管理が整備されていない業種に、リース業と葬祭業。これらの業種は、完全週休2日制を採用する法人が少なく、さらに所定労働時間と残業時間が長かった。
 第二に規模間の違いが比較的大きい業種である。もちろん規模の大きい方で、労務管理諸制度が整備されている。このタイプには、個人教授所、理美容業、機械修理業、旅館、情報処理業、建築サービス業等、自動車整備業、映画・ビデオ制作業、法律事務所等、情報提供業が属する。このうち規模別の整備状況の程度で3つに分かれる。
<1> 特に30人未満の法人で整備されていない業種に、旅館、個人教授所、理美容業。30人未満の法人で生活給的手当の支給が特に少なく、定年制度も整備されていなかった。さらにそれらの業種の中で、旅館は最も整備されていなかった。
 労働時間管理については、比較的規模の違いがなかった。どの業種でも、完全週休2日制を採用する法人が少なく、所定労働時間が長かった。しかし残業時間は短かった。また平均実働年齢では、規模の違いに関わらず、理美容業では49歳程度と若年傾向にあり、反対に旅館は高齢化していた。
<2> 整備されている法人は全体的に多いが、30人以上の法人で整備されている法人が非常に多い業種に、情報処理業、情報提供業、建築サービス業等が属する。これらの業種では、所定労働時間が短く、完全週休2日制を採用する法人が多かった。しかし残業時間は非常に長かった。
<3> 賃金制度は整備されていないが、定年制度は整備されている業種に、法律事務所等と自動車整備業。法律事務所等は、週休2日制を採用する法人が多く、所定労働時間も残業時間も短かった。
(注12) 「家族、扶養手当」、「残業手当」、「住宅手当」、「賞与、期末手当」など生活給的側面の強い、基本的な手当を「生活給的手当」と命名した。詳しくは、「(2)手当」のところを参照。
2 事業主の評価
 従業員の定着、職場の人間関係、作業環境、賃金水準、労働時間に対する評価は高かった。従業員の能力に対しては中立的であり、福利厚生については改善の余地があった。
 規模別に見ると、規模が大きいほど評価が高くなったのは、福利厚生だけであった。しかし、いずれの規模でも改善の余地があった。規模が小さいほど評価が高かったのは、従業員の能力、職場の人間関係、従業員の定着、作業環境であった。10~50人の規模では、賃金水準に対する評価は最も高かったが、反対に労働時間では最も低かった。
 業種別に見ると、賃金水準は葬祭業、法律事務所等、理美容業、廃棄物処理業、リース業で評価が高く、反対に旅館、映画・ビデオ制作業、各種学校では改善の余地があった。業種別の平均賃金と比較すると、葬祭業、法律事務所等の非常に平均賃金が高い業種や、反対に旅館のような非常に低い業種では、事業主の評価と対応関係があった。しかし、それら以外の業種では、評価と平均賃金の間に明確な対応関係はなかった。
 労働時間は、法律事務所等、老人福祉事業、広告代理業、病院、情報提供業では、評価が高かった。反対に個人教授所、理美容業、機械修理業、建築サービス業等、自動車整備業、映画・ビデオ制作業、葬祭業、旅館では改善の余地があった。
 従業員の能力は、法律事務所等、個人教授所、理美容業、情報提供業では、評価が高かった。反対に広告代理業、建築サービス業等、映画・ビデオ制作業、老人福祉事業、機械修理業、病院、葬祭業、廃棄物処理業、建物サービス業等、旅館では改善の余地があった。
 作業環境は、法律事務所等、理美容業、各種学校、個人教授所、広告代理業、情報提供業、情報処理業、建築サービス業等、老人福祉事業で、評価が高かった。反対に廃棄物処理業、建物サービス業等、旅館、機械修理業では改善の余地があった。
 その他の指標は業種の違いがあまりなかった。全般的に福利厚生に対して改善の余地があり、職場の人間関係と従業員の定着に対しては評価が高かった。
3 従業員の満足度
 仕事の内容に対する満足度は非常に高く、ついで労働時間、職場の人間関係、作業環境の順に満足度が高かった。賃金、福利厚生に対してはほぼ中立的であった。反対に教育訓練に対しては、満足していない従業員が多かった。
 規模別に見ると、全ての基準で、規模が小さいほど従業員の満足度は高くなった。51人以上の規模で賃金、福利厚生、教育訓練に対して、10~50人の規模で教育訓練に対して、満足していない従業員が多かった。1~9人の規模では、全ての基準で、満足している従業員が多かった。
 業種別に見ると、賃金については、法律事務所等、葬祭業、理美容業、廃棄物処理業、リース業で、満足している従業員が多かった。反対に広告代理業、病院、旅館、情報処理業、映画・ビデオ制作業では、不満を持っている従業員の方が多かった。
 福利厚生については、理美容業と自動車整備業のみで満足している従業員が多かった。個人教授所、病院、旅館、葬祭業、情報提供業、情報処理業、映画・ビデオ制作業では、不満を持っている従業員の方が多かった。
 教育訓練については、理美容業と自動車整備業のみで満足している従業員が多かった。これら2業種以外では、満足度が低かった。特に映画・ビデオ制作業、情報処理業、広告代理業では、不満を持っている従業員が非常に多かった。
 労働時間、人間関係、作業環境については、全ての業種で満足度が比較的高かった。


第5章 サービス業従業員のキャリア形成と労働市場

第1節 はじめに
 この章の目的は、サービス業に従事する労働者のキャリア形成の実態に注目しながら、サービス業の労働市場を明らかにすることにある。一般に労働市場は内部労働市場と外部労働市場に大別することができる。また労働者のキャリアには<1>学校卒業後ただちに新卒者として特定企業に就職し長く勤め続けるタイプと<2>特定企業に長く定着せず何度か転職を繰り返すタイプがあるといわれている。後者<2>はさらに<3>職種横断的なものと<4>そうでないもの(いわばアドホック的な転職とでも呼ぶことができる)に分けることができる。
 以下ではこのような区別を念頭において分析していくこととするが、転職経験者についてはいかなる年齢層で転職を経験したのか、またその労働力銘柄がいかなるものか、また彼らの労働意識はどのようなものか、といった点にも注目する必要があるだろう。
第2節 労働市場・キャリア形成の類型とその特質
1 三つの類型(内部型、職種横断型、外部型)とその属性
(1) 類型と類別基準
 今回の調査ではサービス業の従業員から9,451件の有効票を得た。このうち転職を経験した者は64.9%(6,131人)を占める。従って転職を経験していない直入者の割合を大きく上回っている。
 さて冒頭にふれた問題意識を明らかにするのは容易なことではない。とりあえず関連する設問の組み合わせを暫定的な指標とせざるを得ない。そうしたことから以下では従業員のキャリアを次の三つのタイプに分けて分析することにしたい。
 類型1:これまで転職を経験していない直入者であり、しかも今後も今の勤め先を変える意志のない者を指す。この類型の者はいわゆる内部労働市場に含まれるとみなせよう。
 類型2:転職を経験した者で、(少なくとも直前勤務先と今の勤め先とを比べてみる限り)職種を変えず賃金も上昇した者を指す。職種が以前と類似である者や賃金が以前と比べてほぼ同じであった者はこの類型から除外してあることから、この類型の者はほぼ職種横断的キャリア形成者に対応するとみてよい。
 類型3:転職を経験した者で、(少なくとも直前勤務先と今の勤め先とを比べてみる限り)職種を変えて賃金が下降した者を指す。賃金が以前と同じであったり、賃金が低下しても職種が同じか類似である者はこの類型から除外してあることから、いわゆるアドホックな外部型を構成する層とみなせよう。
(2) 基本属性
 類型別の分析に先だって、それぞれの従業員類型のプロフィールを描いておこう(図表5-1)。
図表5-1 従業員類型のプロフィール
以下、順にみていこう。
 まず性別構成についてみると、従業員全体の51.7%が男性、48.1%が女性であることから男女比はほぼ半々といってよい。これを類型別にみると、類型1では男性54.2%、女性45.8%、類型2では男性56.9%、女性43.1%と性別構成はあまり違いはないが、類型3では男性60.7%、女性39.3%と男性がやや多くなっている。
 つぎに年齢についてみると、従業員全体の平均年齢は37.9歳。年齢構成の内訳は30歳代が最も多く29.9%、ついで20歳代が28.1%、40歳代が24.4%となっている。平均年齢を類型別にみると、類型1が35.5歳と最も若いが、類型2が39.5歳、類型3は40.9歳となっており類型2と類型3で大きな違いはない。また年齢構成をみると、類型1が20歳代が37.8%とやや若年層に偏っていること、これに対して類型2は30歳代35.0%、40歳代32.9%と中堅層が厚いこと、類型3は20歳代~40歳代までほぼ均等に分布していること、などを指摘することができる。
 最終学歴を従業員全体についてみると、中卒が4.2%、高卒が35.5%、専門学校卒が20.4%、高専・短大卒が11.5%、大学卒以上が28.0%となっている。これを類型別にみると、高卒が類型1、類型2、類型3の順に多くなること、また専門学校卒が類型2で30.0%と極めて多いことなど、を特徴として指摘することができる。
 雇用形態を従業員全体についてみると、正社員が94.2%、パートタイマーやアルバイトが4.8%となっており、圧倒的に正社員が多い。類型別にみると、いずれの類型でも正社員が9割近くかそれ以上を占めており大きな差はないが、類型3ではパートタイマーやアルバイトの割合が10.2%とやや多くなっている。
 役職構成を従業員全体でみると、一般従業員は57.7%、現場監督者が7.6%、管理職が20.5%、役員が3.9%となっている。この構成は類型別にみても大きな相違はないが、類型2で管理職が32.6%とやや多くなっている。
 今の勤務先に就職した年齢は全体では29.2%であるが、当然のことながら転職経験のない類型1で23.1歳と若く、類型2が30.9歳とこれにつぎ、類型3が34.4歳と入職年齢がやや高くなっている。
2 今の勤務先や仕事の属性
 これまでそれぞれの類型を構成する従業員の基本属性をみてきた。ここでは今の勤務先の属性を概観してみよう。
(1) 業種
 まず従業員がいかなる業種に勤務しているかをみよう(ちなみに今回の調査ではサービス業18業種が選ばれた)。勤務先業種を類型別にみると、いずれの業種も病院が多いが、その割合は異なっており、類型2が25.2%とこの類型の約4分の1を占めていること、これに対して類型1と類型2では、各種学校の占める割合がそれぞれ11.0%、10.5%と病院についで多いこと、などを指摘できる(図表5-2)。
図表5-2 業種
(2) 今の仕事
 つぎに従業員の現在の職種をみたものが図表5-3である。類型別に現在の仕事をみると、類型1では総務・事務が32.8%と多く、これに続くのが教員・講師8.7%となっており、総務・事務の割合が多い。同じ傾向が類型3でも認められ、総務・事務が39.2%と4割近くを占めている。これに対して、やはり総務・事務が多いものの21.2%にとどまり、代わって看護婦12.8%がこれに続いている。
図表5-3 現在の仕事
(3) 職業資格
 職業資格には大きく分けて法律などで特定の資格をとることが義務づけられているもの(例えば医師、弁護士など)と一定の技能・知識を修得したことを示すもの(例えば危険物取扱主任、宅地建物取扱主任など)とがある。
 まず特定の資格を取得することが義務づけられたものについてみると、従業員全体では「既に資格を持っている」が24.2%、「見習い中で、まだ取っていない」が3.7%と少ないが、「資格をとることは義務づけられていない」は70.6%と最も多くなっている。これを業種別にみると、理美容業(77.2%)や病院(57.0%)、さらには自動車整備業(44.3%)、各種学校(34.1%)などで義務づけられた職業資格取得者が多くなっている(図表5-4)。
図表5-4 職業資格の義務づけについて
 一方「既に資格を保有」している者の割合を類型別にみると類型1では25.1%、類型2では42.7%、類型3では13.3%となっており、義務付けられた資格の保有者割合は類型2で相当に多い。これに対して類型3では資格取得義務はない職種が81.3%と大半を占めている(図表5-5)。
図表5-5 就業資格の義務付けと保有状況
 一方、義務付けられてはいないが、「仕事に役立つ資格を持っている」者の割合をみると、従業員全体は46.8%、「持っていない」が47.8%となっておりほぼ半々といってよい。またこれを類型別にみても資格保有者割合は類型1で46.6%、類型2で49.2%、類型3で46.1%となっておりほとんど相違はない(図表5-5)。
(4) 今の仕事で1人前になる期間
 今の仕事で1人前になる期間をみると、従業員全体では「1年未満」が11.1%、「1~2年」が21.9%、「3~6年」が48.8%、「7~10年」が12.4%、「11~15年」が1.7%、「16年以上」が1.7%となっており、「3~6年」が最も多い。
 これを類型別にみると、類型1と類型2とでは大きな相違はないが、類型3では「1年未満」と「1~2年」がそれぞれ15.6%、26.7%とほかの類型よりも多く、代わりに「7年以上」の割合が少なくなっている(図表5-6)。このことは類型3の仕事は類型1や2の仕事と比べ易しい仕事が多いことを示唆する。
図表5-6 一人前になるまでの期間
3 今の職場に勤務したキッカケ
 それでは従業員が今の勤務先に勤務するようになった契機はどのようなものであろうか。従業員全体で上位5つをとりあげると以下のようになる。

 「こういう仕事が好きだったから」 38.4%
 「将来性のある仕事だったから」  20.7%
 「親、知人などに勧められたから」 19.9%
 「労働条件がよかったから」    14.8%
 「自分の腕をみがきたかったから」 13.6%

 サービス業に就職した契機は、サービス業の仕事が好きで、またサービス業に将来性があるものと思って入職してくるものが多いといえる。また労働条件に魅力を感じたり、自分の技能を高めるという動機も少なくない。
 図表5-7は今の勤務先に勤務したきっかけを業種別にみたものである。業種別にみると「こいう仕事が好きだった」は映画・ビデオ制作業(60.6%)や理美容業(56.6%)などで多く、また「自分の腕をみがきたかった」は理美容業(35.0%)、法律事務所(26.6%)、建築サービス業等(20.4%)などで多い。
図表5-7 今の職場に勤めるきっかけ(MA)
 さらに就職動機を従業員類型別にみたものが図表5-8である。「こういう仕事が好きだった」や「将来性のある仕事だった」はともに類型3、類型2、類型1の順で多くなること、これに対して「自分の腕を磨きたかった」や「労働条件が良かった」は類型2で相対的に多いという特徴がみられる。このことは類型2の労働市場に職種横断的な性格のあることを示唆しているといえよう。
図表5-8 今の職場に就職した契機(MA)
4 仕事の希望の充足度
 サービス業に就職してきた従業員は今の仕事をどのように評価しているのか。たとえば今従事している仕事は彼・彼女らの希望に合致したものなのだろうか。従業員全体で希望充足度をみると、「希望通り」が28.9%、「ほぼ希望通り」が55.3%、「希望どおりの仕事ではない」が14.7%となり、程度の差はあれ希望が充足されている者が84.2%と大半を占める。
 しかしこれを従業員類型別にみると、類型による違いが大きいことがわかる(図表5-9)。「希望通りの仕事」と回答した者は類型2で47.1%と多く、類型1が38.6%とこれにつぎ、類型3では21.7%と少なくなる。
図表5-9 今の仕事が希望の仕事かどうか
 なお、仕事の希望充足度を男女別、勤続年数別にみると、男子では勤続年数が長くなると「希望していた仕事」が徐々に低下するが、女子ではその割合が徐々に高まるという傾向がみられる。
5 今の勤め先の探し方
 サービス業従業員は今の勤務先をどのように探したのか。従業員全体でみると、「友人や知人の紹介」が29.7%と最も多く、「新聞や就職情報誌の広告」が19.4%とこれにつぎ、以下「親兄弟などの紹介」12.8%、「学校からの紹介」12.2%などとなっている。なお「職業安定所からの紹介」は9.9%と比較的少ない。
 これを類型別にみると、類型1は直入者であることから当然のことながら「学校からの紹介」が最も多く31.0%を占める。これにたいして転職して入職してきた類型2は「友人・知人の紹介」が最も多く40.8%となる。しかし同じ転職入職者でも「外部型」の類型3では「友人・知人の紹介」が多いが、その割合は類型2より低下し29.8%、代わって「新聞や就職情報誌などの広告」が25.3%と多くなる(図表5-10)。
図表5-10 今の勤め先の探し方(SA)
 なお勤務先の探し方を業種別にみると、つぎのような特徴を指摘できる。
 「新聞や就職情報誌などの広告」は個人教授所(32.2%)、広告代理業(32.4%)、情報提供業(31.2%)、法律事務所(30.1%)などでやや多い。
 「職業安定所の紹介」は映画・ビデオ制作業(2.9%)や理美容業(4.2%)、情報提供業(4.9%)、各種学校(3.8%)で少ない。
 「学校からの紹介」は理美容(27.7%)、情報処理業(20.6%)、情報提供業(22.5%)などで多い。
6 今後の職業生活についての希望
 サービス業の従業員は今後の職業生活についてどのような希望を持っているのだろうか。従業員全体では以下のような結果になった。

  「これからも今の会社で頑張りたい」   47.4%
  「ほかに良いところあれば移りたい」   15.5%
  「成り行きにまかせる」         15.4%
  「適当な時期に退職して家庭に戻りたい」 4.9%
  「将来独立したい」           7.2%
  「将来のことはいま考えていない」    8.8%

 「これからも今の会社で頑張りたい」という者が47.4%と全体のほぼ半数を占める。この結果をみる限り定着指向の者が、転職指向(15.5%)や独立指向の者(7.2%)を大きく上回っている。
 しかし従業員の年齢、勤続別や性別にみると違いがみられる(図表5-11)。年齢別では、若い年齢層では「転職指向」(他に良いところがあれば移りたい)の者がやや多く、男子の10、20歳代では17.3%、女子10、20歳代では25.0%に達する。これに対して「勤め続けたい」と考えるものは60歳代までは加齢にともなって増加する。たとえば男子についてみると、20歳代40.7%、30歳代47.0%、40歳代59.2%、50歳代61.3%、60歳以降47.9%となる。60歳代になって「勤め続けたい」が減少するのは「引退したい」と考える者が多くなることによる。
図表5-11 今後の職業生活についての希望
 最後に従業員類型別にみると、「これからも今の会社で頑張りたい」は類型3(44.6%)より類型2(55.4%)で多く、「ほかに条件のよいところがあれば移りたい」は類型2(11.9%)より類型3(17.2%)で多くなる(図表5-12)。類型2で今後も勤め続けようと考える者が多いのは、職種横断的に労働条件がよい勤務先に移ってきた者がこの層に多いからだと考えられる。
図表5-12 今後の職業生活の希望
 なお、職業生活の満足度が低い者ほど当然のことながら転職指向の者が増加する。
7 転職したい理由
(1) 理由
 転職希望者のうち転職したい理由をみたものが図表5-13である。転職希望者全員についてみると「今の労働条件が悪いから」36.9%が最も多く、「自分のライフスタイルを実現したいから」32.1%、「より高い所得を得たいから」31.5%、「能力発揮をしたいから」29.3%、「自分の腕を磨きたいから」25.3%などがこれに続いている。
図表5-13 転職したい理由(MA)
 これを年齢別にみると「自分のライフスタイルを実現するため」や「自分の腕を磨くため」に転職を希望する者が男女とも年齢が若い層ほど多くなる傾向にある。たとえば10代・20代の男子では「自分のライフスタイルを実現したい」が41.0%、女子では32.6%と高い。また「自分の腕を磨きたい」は10代・20代の男子で41.5%、女子でも30.5%になる。
 転職希望者の転職希望理由を類型別にみたものが図表5-14である。類型1は定義上転職指向の者は含まれていないので除いて、類型2と類型3を比べてみると、類型2の方が「より高い所得が得られる」22.5%と類型3(14.5%)に比べ多いが、逆に「労働条件が悪いから」は類型3が20.6%、類型2が11.2%と類型3が多くなる。
図表5-14 転職したい理由(MA)
 つまり仕事を変えずに賃金が上昇した類型2のうち転職を希望する者はさらに高い所得をもとめて転職したいと考えている一方で、賃金を低下させた者(類型3)はいまの労働条件が悪いが故に転職したいと考える傾向にある。
(2) 希望する仕事
 それでは転職する場合、どのような仕事を希望するのか。転職希望者全体では「今と同じ仕事」18.1%、「今と類似した仕事」37.0%、「今と違う仕事」25.0%、「内容までは考えてない」14.0%となっている。今の仕事と同じ仕事もしくは類似した仕事を希望する者が多く転職希望者の半数以上を占める点が注目される。今と違う仕事を希望する者は4分の1にすぎない。
 しかしこれを類型別にみると、類型2では「今の仕事と同じ仕事」が48.7%、「今の仕事と類似した仕事」が28.2%、「今の仕事と違う仕事」が9.0%であるのに対して、類型3では「今の仕事と同じ仕事」が10.3%、「今の仕事と類似の仕事」が31.6%、「今の仕事と違う仕事」が31.6%である(図表5-15)。転職によって仕事を変えず、かつ賃金も上昇した従業員(類型2)のうち、今後も転職したいと考える者は、将来とも今と同じ仕事を続けることを希望している者が多いといえる。これに対して転職によって仕事を変え、かつ賃金も下降した従業員(類型3)のうち、転職を希望している者は、今後も仕事を変えようとする者が少なくなく約3分の1程度存在する。このことは類型2は今後も職種横断的な転職を、また類型3は今後もアドホック的転職をする可能性が高いことを示唆する。
図表5-15 どのような仕事に転職したいか
8 独立開業したい理由
(1) 理由
 従業員全体のうち独立開業を希望する者は7.2%である。転職希望者よりも少ない。独立開業を希望する者が独立開業を希望する理由をみると「自分のライフスタイルを実現したい」が60.4%と最も多く、「自分の能力を発揮できる」49.6%、「自分のペースで仕事できる」36.8%、「自分の技能や知識を生かせるから」35.2%、「より高い所得が得られるから」31.1%などがこれに続いている(図表5-16)。
図表5-16 独立開業したい理由(MA)
 これを性別・年齢別にみると、年齢の若い層では「自由に能力発揮をしたい」「より高い所得が得られる」「事業のおもしろさを味わいたい」などの理由が多いが、40代、50代の中高年層になるとそういった理由は低下し、かわりに「定年がなくなるから」といった理由が増加する傾向にある。また男女別では女子のほうが「自分のライフスタイルを実現したい」を理由にあげるものがやや多い。
 独立開業理由を類型別にみると、類型2と類型3でそれほど大きな違いはみられないが、類型3のほうが「自分のライフスタイル実現」が類型2よりやや多くなる(図表5-17)。
図表5-17 独立開業したい理由(MA)
 むしろ類型間の違いが明確なのはどのような事業分野で開業したいかのほうである。
(2) 希望事業分野
 そこで独立開業希望者がどのような事業分野で開業をしようとしているかについてみると、希望者全体では「今と同じ業種」34.6%、「今と類似業種」23.7%、「今と違う業種」25.8%、「業種まで考えてない」8.8%となる。今と同じもしくは類似分野が全体の58.3%と6割弱を占める。
 これを類型別にみると、図表5-18にあるように類型2では「同じ業種」が59.6%と約6割であるのに対し、類型3では12.5%と少ない。逆に「今と違う業種」は類型2ではわずか5.8%であるのに対し、類型3では31.3%と多くなる。このことから、転職によって仕事をかえず賃金も上昇した者(類型2)では、独立開業する場合でも今と同じ事業分野を希望するものが極めて多いこと、これとは逆に仕事を変えた類型3では独立開業する場合でもアドホックな分野選択をする可能性が高いことがわかる。
図表5-18 どの業種で独立開業したいか
9 出世や昇進についての考え方
 サービス業の従業員は出世や昇進についてどのような考え方を持っているのだろうか。
 従業員全体でみると「出世や昇進には全く興味がない」が35.9%と最も多く、「人並みに出世や昇進ができたら満足」32.9%、「人並み以上に出世や昇進をしたい」10.1%、「ゆくゆくは経営者になりたい」9.5%、「仕事が増えるので出世はしたくない」3.2%がこれに続く(図表5-19)。
図表5-19 出世や昇進について
 これを性・年齢別にみると、男子の若年層では「経営者になりたい」が多く、10、20歳代では23.8%、30歳代では17.2%、40歳代では10.4%、50歳代では6.5%となり加齢に伴って確実に低下する。逆に「出世や昇進には興味がない」は加齢に伴って確実に増加する傾向にある。
 出世や昇進についての考え方を類型別にみると、つぎの点が指摘できる(図表5-20)。
図表5-20 出世や昇進についての考え方
 第1に、「経営者になりたい」は類型2が14.1%とほかの類型よりも多い。
 第2に「人並み以上に出世や昇進をしたい」は類型1が最も多く15.2%、類型2がこれにつぎ11.6%、類型3では9.5%と少なくなる。同様の傾向は「人並み以上に出世や昇進ができたら満足」にもあてはまる(類型1が42.4%、類型2が31.2%、類型3が32.8%)。
 第3に、これとは逆に、「出世や昇進には興味がない」は類型1(24.4%)、類型2(34.7%)、類型3(38.0%)の順で多くなる。
10 転職経験者の直前勤務先
 すでに触れたように今回の従業員サンプルのうち転職経験者は従業員票全体の6割強(64.9%)を占める。中小企業を多く含むサービス業の従業員には転職経験者が多いといえる。それでは転職経験者が直前に勤務していた勤務先の属性はどのようなものか。
(1) 直前勤務先業種
 まず直前勤務先の業種からみよう。転職経験者全体でみると、「今と同じ業種」が25.5%、「今と類似の業種」が16.1%、「今と違った業種」が56.1%となっており、今と異なった業種を経験してきた者が多い。しかし現勤務先の業種によって相違がみられ、「今と同じ」が理美容業(65.3%)、病院(54.7%)、情報処理業(44.2%)などで多く、「今と異なる」は葬儀業(80.1%)、廃棄物処理業(75.5%)、個人教授所(70.9%)などで多い。
 直前勤務先業種を類型別にみると、類型2と類型3で大きく異なる(図表5-21)。つまり類型2では「今と同じ」が83.5%と大半を占めるのに対し、類型3では「今と異なる」が93.8%と大半を占めるのである。転職によって仕事を変えなかった類型2では業種も変えなかったというこの結果は、ある意味で当然であるが、業種と仕事が密接に結びついていることを示唆している。
図表5-21 直前勤務先業種、規模
(2) 直前勤務先規模
 つぎに直前勤務先の従業員規模をみると、転職経験者全体では、「1~9人」18.6%、「10~99人」36.0%、「100~299人」15.8%、「300~999人」10.2%、「1,000人以上」13.1%、官公庁が3.3%、事業主が0.7%であった。100人以下の中小企業が全体の54.6%と半数を超える(300人未満まで広げると約7割に及ぶ)が、1000人以上の大企業経験者も1割強存在している点が見落とせない。
 これを類型別にみると、図表5-21にあるように、類型2に比べ類型3が概して企業規模が大きいといってよい。類型2では100人未満の割合が71.3%と7割以上を占めるのに対して、類型3では35.0%にすぎない。代わって類型3では1,000人以上の大企業経験者が27.9%と3割弱を占めている点が注目される。
(3) 直前勤務先職種
 直前勤務先職種はどうか。転職経験者全体では「今と同じ仕事」が23.8%、「今と類似の仕事」が27.9%、「今と違った仕事」が46.0%となっており、仕事を変えた者が多い。
 これを業種別にみると、「今と同じ仕事」は理美容業62.0%、病院49.9%、自動車整備業35.3%、情報処理業31.0%などで多く、「今と違った仕事」は葬儀業70.8%、建物サービス業等61.1%、廃棄物処理業58.8%などで多い(図表5-22)。理美容業、病院、自動車整備業、情報処理業などでは職種横断的移動者が、また葬儀業、建物サービス業等、廃棄物処理業などでは外部型移動者がそれぞれ多いことが示唆される。
図表5-22 転職前の勤め先について仕事の内容
(4) 辞めた理由
 転職経験者が直前勤務先を辞めた理由をみると、「給料よくなかった」が20.0%、「会社に将来性が感じられなかった」19.4%、「自分の能力がいかせない」19.3%が僅少差で上位にあがっており、「仕事の中味がつまらない」12.8%、「作業環境がよくない」12.8%などがこれに続いている(図表5-23)。
図表5-23 転職前の勤め先を辞めた理由(MA)
 これを性・年齢別にみると、おしなべて年齢が若い層のほうが、中高年層に比べ「自分の能力を生かせなかった」とか「給料がよくなかった」とか「労働時間が長かった」とか「仕事の中身がつまらなかった」といった指摘が多く、逆に中高年層では「倒産などの会社都合」とか「定年」などに理由がやや多くなる。つまり若い年齢層でより高い労働条件やよりやりがいのある仕事を求めて辞めた者が多いが、その割合は加齢に伴って減少していくという傾向が読みとれる。
 直前勤務先を辞めた理由を類型別にみると、類型2は類型3に比べ「給料がよくなかった」17.1%(類型3は2.3%)、「会社に将来性がなかった」14.1%(類型3は8.8%)、「自分の能力が生かせなかった」11.9%(類型3は9.8%)、「自分の腕を磨く機会がなかった」7.4%(類型3は4.0%)が多い(図表5-24)。
図表5-24 直前勤務先を辞めた理由(MA)
(5) 転職回数
 転職経験者は何回くらい転職を経験してきたのだろうか。転職経験者全体では平均2.2回である。転職回数の内訳をみると、1回が39.8%、2回が24.4%、3回が19.1%、4回が7.7%、5回が3.2%、6回が1.2%、7回が0.7%、8回~15回が0.7%となっている。
 転職平均回数を類型別にみると、類型2が2.25回(標準偏差1.3722)、類型3が1.98回(標準偏差1.3723)である。標準偏差がほぼ同じことからバラツキはほぼ同じであるが、回数は類型2の方が多くなっている。ちなみに転職回数の内訳をみると、類型2では1回が37.1%、2回が26.3%、3回が22.5%、4回が7.9%、5回以上が6.3%である。また類型3では1回が49.5%、2回が23.8%、3回が16.3%、4回が6.4%、5回以上が0.4%である。
(6) 直前勤務先と比較した賃金変動
 最後に直前勤務先と比べた賃金変化をみると、転職経験者全体では、「上がった」が40.5%と多く、「ほぼ同じ」が29.2%、「下がった」が27.1%となっている。
 転職経験者全体で賃金変動の幅をみると、つぎのようになる。

       賃金上昇  賃金下降
       (n=2664)  (n=1786)
  0~1割   20.5%    21.4%
    2割   27.8%    30.5%
    3割   17.4%    18.4%
    4割   4.2%     7.8%
    5割   11.4%    10.0%
  6~8割   2.4%     2.5%
   平均   2.6割    2.6割

 転職者で賃金が増加した者全体では賃金上昇の幅は2.6割、低下した者全体では2.6割であり、上昇、下降とも「1割以内の賃金変動幅」で転職した層の割合はそれぞれ2割程度であると推察される。
第3節 年齢・性別別にみた転職経験者の特徴
1 分析のねらいと転職者類型
 サービス業従業員には転職経験者が多いことはすでにみたが、ここではいかなる年齢層で転職を経験したのか、さらに男女別にみるとどのような相違があるのか、といった転職経験者の属性に注目した分析を行う。
 以下では転職経験者をつぎの4つの類型に区分し分析を行う。またもっぱら正社員に注目し、パートタイマーやアルバイトは集計から除外する。
 男子若年転職者:男子転職経験者で現勤務先への入職年齢が25歳未満で現年齢が30歳未満の者(n=331)
 女子若年転職者:女子転職経験者で現勤務先への入職年齢が25歳未満で現年齢が30歳未満の者(n=481)
 男子中高年転職者:男子転職経験者で現年齢にかかわらず現勤務先への入職年齢が45歳以上の者(n=444)
 女子中高年転職者:女子転職経験者で現年齢にかかわらず現勤務先への入職年齢が45歳以上の者(n=235)
 分析に先立ってこれらのプロフィールを概観しておこう。
(1) 年齢
 平均年齢は男子若年が26.1歳、女子若年が25.4歳、男子中高年が57.4歳、女子中高年が54.6歳である。
(2) 学歴
 最終学歴をみると、いずれの類型とも中卒が少なく高卒が多いという共通点があるが、若年女子で高専・短大卒が多く(21.2%)、男子中高年では専門学校卒が少なく(2.5%)、大卒以上が多い(34.0%)という特徴がある。
(3) 役職
 役職構成は男女とも若年では一般が多く(男子では82.1%、女子では94.1%)、中高年男子では管理職(50.6%)、中高年女子では一般が多い(72.3%)。
(4) 勤務先業種と今の職種
 図表5-25は勤務先業種をみたものである。若年男子は建物サービス業等(11.8%)および情報処理業(10.3%)がやや多く、若年女子は病院が多い(16.8%)。これに対し中高年男子は建物サービス業等(19.8%)が、また中高年女子は病院が多い(27.2%)。
図表5-25 業種
 図表5-26は勤務先での今の職種をみたものである。若年男子は情報処理・ソフト開発(13.0%)、保全・整備(10.9%)、総務・事務(10.3%)に分散しているが、若年女子、中高年男子、中高年女子はいずれも総務・事務が極めて多い(若年女子で53.0%、中高年男子41.0%、中高年女子42.1%)。また中高年女子には看護婦が多い(21.3%)。
図表5-26 現在の仕事
(5) 職業資格
 図表5-27は職業資格の取得状況をみたものである。職業資格のうち義務付けられた資格の取得状況をみると、若年男子25.1%と中高年女子29.8%に多く、若年女子が19.3%、中高年男子には少ない(17.6%)。しかし現在の仕事に役立つ資格の取得状況をみると、あまり大きな違いはない(「持っている」は若年男子48.3%、若年女子43.0%、中高年男子47.1%、中高年女子49.8%)。
図表5-27 職業資格の取得義務と保有状況
(6) 仕事で1人前になるまでの期間
 図表5-28は今の仕事で1人前になるまでの期間をみたものである。若年男子に比べ中高年男子では「1年未満」が少なく、「3年以上」が多い。また男子に比べて女子では「1年未満」が多く、3年以上が少ない。
図表5-28 一人前になるまでの期間
2 職業経歴
(1) 今の勤務先に勤める契機
 今の勤務先に勤める契機をみたものが図表5-29である。若年男子では「自分の腕を磨きたかったから」13.2%、「将来性のある仕事だった」16.3%がやや多く、若年女子や中高年女子は「労働条件がよかった」(若年女子13.9%、中高年女子11.0%)がやや多い。また中高年男子は「経営者の理念に共鳴」(10.0%)や「特にこれといった理由無し」(11.2%)がやや多い。
図表5-29 今の職場に転職した契機(MA)
(2) 今の仕事の希望充足度
 今の仕事の希望充足度をみると、「希望通りの仕事」は若年男子が27.8%(「ほぼ希望通り」は56.5%、以下括弧は「ほぼ希望通り」)、若年女子が29.5%(55.5%)、中高年男子が33.6%(50.5%)、中高年女子が37.4%(51.5%)となっている。概して若年より中高年の方が希望通りの仕事に就いているといえるが、中高年男子には「希望通りの仕事でない」者も16.0%いる(図表5-30)。
図表5-30 今の仕事が希望の仕事かどうか
(3) 今の仕事の探し方
 今の仕事の探し方をみたものが図表5-31である。若年男子で「親兄弟など肉親の紹介」がやや多く(18.7%)、若年女子では「職業安定所の紹介」がやや多い(25.6%)。これに対して中高年男子や女子は「友人や知人の紹介」が多い(男子34.0%、女子41.7%)。また中高年男子では「今の会社からのスカウト」も多い(16.7%)。
図表5-31 今の勤め先の探し方
(4) 今後の職業生活の希望
 今後の職業生活の希望をみたものが図表5-32である。男女とも若年より中高年で「今の会社で頑張る」が多く、若年ではその割合が減少し、かわって「他によいところあれば移りたい」がやや増える。「他によいところあれば移りたい」の割合は若年男子で13.3%、若年女子で22.0%、中高年男子で11.3%、中高年女子で9.4%である。また若年男子では「独立開業したい」(16.9%)が、また若年女子では「成り行きにまかせる」(12.6%)がやや多い。
図表5-32 今後の職業生活の希望
(5) 転職したい理由とその職種
 転職を希望するものの理由とその職種はどのようなものか。図表5-33は転職理由を類型別にみたものであるが、若年男子では「より高い所得が得られる」が最も多く、若年女子や中高年女子では「自分のライフスタイルを実現したい」が最も多い。これに対して中高年男子は「労働条件が悪いから」が最も多い。中高年男子のうち転職を希望する者はよりよい労働条件を求めて転職したいと考える者が多いといえる。
図表5-33 転職したい理由(MA)
 それではどのような仕事を希望しているか。図5-34は転職する際の希望職種をみたものである。概して若年よりも中高年では「今と同じ仕事」を希望する者が増える傾向にある。
図表5-34 どのような仕事に転職したいか
(6) 独立開業したい理由とその事業分野
 図表5-35は独立開業したい者を転職者類型別にみたものである。サンプルが少なく傾向を探るのは難しいが、女子では「ライフスタイル実現」が多いこと、また男子に限っていえば若年に比べ中高年では「自分のペースで仕事ができる」「定年がなくなる」などの理由がやや多くなる。
図表5-35 独立開業したい理由(MA)
 図表5-36は開業分野をみたものであるが、若年男子に比べ中高年男子では「業種までは考えていない」という回答が多いことが特徴的である。
図表5-36 どの業種で独立開業したいか
(7) 出世や昇進についての考え方
 出世や昇進についての考え方についてみたものが図表5-37である。「経営者になりたい」は若年男子で多い(25.1%)。「人並み以上に出世や昇進をしたい」は男子と女子で違いがある。若年女子、中高年女子とも男子に比べその希望は弱い。代わって「出世や昇進には興味がない」が男子よりも多くなる。また同じ男子でも中高年より若年のほうが出世・昇進指向は強い。
図表5-37 出世や昇進についての考え
3 直前勤務先属性
(1) 図表5-38は直前勤務先の属性を要約したものである。前勤務先の業種は中高年女子で「同じ」が多く、中高年男子で「違う」が多い。また以前の仕事は中高年女子で「同じ」が多く、若年男子で「違う」が多い。従業員規模は中高年男子で1,000人以上の大企業からの転職者割合が多く官公庁と合わせ32.9%と3割以上になる。
図表5-38 直前勤務先業種・規模・種類
(2) 平均転職回数は男子若年1.68回(標準偏差1.2398)、女子若年1.49回(標準偏差0.9444)、中高年男子2.58回(標準偏差1.8103)、中高年女子3.12回(標準偏差1.7930)である。中高年女子が最も多い。転職回数の内訳をみると、若年男子では1回が64.2%、2回が19.5%、3回以上が16.4%、若年女子では1回68.0%、2回20.4%、3回以上11.6%である。これに対し中高年男子では1回が36.6%、2回が21.1%、3回以上が42.3%、中高年女子が1回が16.5%、2回が20.2%、3回以上が63.3%となる(図表5-39)。
図表5-39 転職回数
(3) 直前勤務先を辞めた理由をみたものが図表5-40である。男女とも若年では「給料が良くなかった」がやや多く、さらに男子では「仕事の内容がつまらない」「会社に将来性がなかった」「自分の能力を生かせなかった」も少なくない。これに対し中高年男子は「定年になった」19.2%が最も多く、「倒産など会社都合」も13.0%と多いことが特徴的である。
図表5-40 直前勤務先を辞めた理由(MA)
(4) 直前勤務先と比べた賃金変化をみると、若年では「上がった」者が多いが(男子で49.5%、女子で43.9%)に比べ中高年では「下がった」者が多い(男子で57.9%、女子で34.9%)(図表5-41)。
図表5-41 直前勤務先と比べた賃金変化の有無
 さらに変動幅をみると、若年男子や女子に比べ、中高年男子では「3割以上の下降」が54.1%とその下降度合いが大きい(図表5-42)。中高年男子には60歳代以降の者が3割以上含まれているとはいえ(正確には60歳代が32.7%、70歳以降4.1%である)見逃せない落差といってよい。
図表5-42 直前勤務先と比べた賃金変動
第4節 要約と含意
 ここでは冒頭に提示した分析視点に即して明らかにされたことを簡単にまとめておこう。
(1) 第2節ではサービス率従業員のキャリアを<1>直入者で定着指向の者<2>仕事を変えずに転職しかつ賃金が上昇した転職経験者<3>仕事を変えた転職をしかつ賃金が下降した転職経験者の三つの類型を構成し分析を加えた。便宜上<1>を内部型労働市場の構成者(内部型と略)<2>を職種横断型市場の構成者(職種横断型と略)<3>をアドホックな外部市場の構成者(外部型と略)とみなせよう。各類型の基本属性をみると、内部型で男性がやや多く、年齢は内部型、職種横断型、外部型の順に高くなる。最終学歴は職種横断型で専門学校卒が多い。なお雇用形態は外部型に1割程度パート、アルバイトが含まれているが大半はいずれの類型とも正社員が中心である。
(2) ところで今の仕事や勤務先の性格、さらには今後の職業生活の希望をみると、職種横断型と外部型では大きな違いが認められる。まず、業種別では、理美容業、病院、自動車整備業、情報処理業などでは横断型が、また葬祭業、建物サービス業等、廃棄物処理業などでは外部型がそれぞれ多いと推察される。また職種構成をみると、総務、事務が外部型でやや多く、看護婦や臨床検査技師などの専門・技術職は職種横断型で多い。また職業資格についても義務づけられた資格を取得する者はやはり職種横断型で多い。職種横断型の就職動機は「自分の腕を磨きたかった」「労働条件がよかった」の指摘が多く、仕事の希望充足度も高い。さらに今後の職業生活の希望も職種横断型では「定着指向」が強く、出世や昇進についての考え方も概して積極的であるが、外部型では出世や昇進にはあまり興味を持っていない。
(3) 直前勤務先の属性についてみると、職種横断型では今と同じ業界を経験してきたものが8割以上であるが、外部型では異なった業界経験者が9割を超える。
 さらに従業員規模をみると興味深いことに職種横断型では、中小企業が多く7割以上を占めるが、外部型では35.0%程度にすぎない。むしろ外部型では1,000人以上の大企業経験者が3割弱を占めている。アドホックな転職をしたこの外部型に比較的大企業経験者が多いというこの事実発見は、今後の中高年の転職市場のあり方を考える上で見落とせない。
(4) ちなみに今後の職業生活についてみると類型2では転職を希望する場合でも「今と同じ仕事」、独立開業を希望する場合でも「今と同じ業種」が多く、将来にわたって職種横断的なキャリアを形成する可能性が高いが、類型3では「異なった仕事」や「異なった業種」を希望する者が少なくない。将来もまたアドホックな転職や開業をする可能性がある。
(5) 図表5-43は参考までに職業能力を獲得する上で今困っていることをみたものであるが、類型3では「教えてくれる先輩・上司がいない」「管理・監督者が熱心でない」「会社が教育訓練に不熱心」などの指摘がわずかであれ他の類型を上回っている。
図表5-43 職業能力獲得上困っていること(MA)
(6) 3節では転職経験者を年齢と性によって区分し分析してきた。転職経験者類型によって業種と職種にやや偏りがみられ、中高年男子では建物サービス業等などが多く、中高年女子では病院が多かった。中高年女子の病院比重の大きさは職種構成にも反映しており、看護婦の割合を高めている(約2割)。一方中高年男子の場合、約4割が総務・事務などの事務系ホワイトカラーである。
(7) 文脈上、問題となりそうなのは男子中高年転職者である。他類型と比較した彼らの特徴に注目してみよう。まず直前勤務先をみると、業種は今の業種と異なっている者が多く、仕事も今の仕事と違っているものが50.2%、従業員規模は大きい場合が多く1,000人以上の大企業と官公庁を合わせ3割以上になる。平均転職回数は2.58回と中高年女子よりやや少ないが、3回以上の者も42.3%存在する。直前勤務先を辞めた理由をみても「定年になった」(19.2%)「倒産など会社都合」(13.0%)が多い。そういったことから賃金変化も「下降した」が57.9%と多く、その度合いも「3割以上の下降」が54.1%と半数を超えている。
(8) それでは就職動機はどうか。「腕を磨きたい」や「こういう仕事が好きだった」は少なく、「特にこれといった理由はない」がやや多くなっている。就職先の探し方は「友人知人の紹介」や「スカウト」「職業安定所」などであるが、仕事の希望はほぼ満たされている(8割強)。今後の職業生活の展望は「今の会社で頑張りたい」が52.3%と半数以上を占めるが、「引退したい」や、「成り行きに任せる」、「他に移りたい」もそれぞれ1割強存在する。
(9) なお参考までに図表5-44は仕事を覚える上で困っていることをみたものである。これをみてもわかるように性、年齢による大きな相違はない。また中高年転職者は仕事を覚える上で「特に困っていること」はそれほど多いとはいえない。
図表5-44 職業能力獲得上困っていること(MA)


第6章 従業員の職業能力開発

 サービスの質は人材の質におおいに左右される。また、サービス業の仕事には労働集約的なものが多いが、高付加価値化や労働生産性の向上を考えると対応力のある優秀な人材を内部にどれだけ抱えているかによって、競争力に大きな影響を与えるし、それが他社との差別化の源泉でもある。したがって、人に依存する度合いの高いサービス業では従業員の能力開発が非常に重要な課題でもある。とはいえ、全てのサービス業が基幹的労働力を内部育成で育てなくてはならないわけではなく、仕事によっては経験者の採用という形での対応や横断的な労働市場を前提として転職しながらキャリア・アップしてゆくような仕事も少なくないと思われる。
 そこでここでは、サービス業ではどのような人材育成を行っており、また、特定の基幹的職種の求人方法、一人前になるまでに必要とされる習熟期間、職業資格の必要度、職業的キャリアの展望などがどのようであるか、さらに、職業能力の開発での問題点がどのようなことにあるのかなどについて整理することにする。
第1節 正社員の人材育成
1 人材育成の方法
 すでに述べたようにサービス業ではパートタイマーに依存する部分も少なくないが、ここでは基幹的労働力として主要な部分を占める正社員の人材育成がどのように行われているかを明らかにすることにしよう。
 図表6-1のように、「やさしい仕事から徐々に難しい仕事へと計画的に体験させながら覚える」が64.0%と計画的なOJTによって育成するのが最も多い。これに続くのが「上司や先輩の仕事を見よう見真似で覚える」が50.6%で、サービス業でもOJTが人材育成の基本である。これに「業界団体等の研修」(39.4%)や「社内の研修室等での研修」(29.7%)といったOff-JTが続いでいる。これらに続くのが「教育訓練休暇の付与や費用の援助などの自己啓発の支援」(18.9%)である。「通信教育を受けさせる」とか、「フランチャイズ本部で研修を受けさせる」とか、「専門学校・各種学校」、「公共職業訓練校」などに通わせる企業は少ない。
図表6-1 正社員の人材育成方法
 業種別では図表6-2のように、「計画的に体験させながら」は理美容業(77.0%)、建築サービス業等(75.2%)、情報処理業(70.9%)、映画・ビデオ制作業(70.2%)で多い。また、「上司や先輩の仕事を見て」は葬儀業(70.0%)、映画・ビデオ制作業(64.7%)で多くなっている。
図表6-2 正社員の人材育成方法(MA)
 「業界団体等の研修」は理美容業(45.5%)、病院(58.3%)、自動車整備業(59.7%)、老人福祉事業(76.4%)、各種学校(59.1%)で多く、「社内の研修室など」は理美容業(55.3%)、病院(45.0%)、老人福祉事業(54.1%)、各種学校(41.2%)が多い。「設備機器メーカでの研修」は機械修理業(30.8%)、情報処理業(19.6%)で多く、「専門学校、各種学校など」は理美容業(26.0%)、病院(27.6%)、法律事務所等(15.6%)で多い。
 また、従業員規模が大きいほど正社員の人材育成に力を入れており、「社内の研修室などでの研修」、「業界団体等の研修」あるいは「自己啓発の支援」といった施策では特に規模の大きな法人で指摘率が高くなっており、規模間の格差が目立つ。さらに、「計画的に体験させながら」は職場生活全体の評価が2点未満が55.6%、2点~3点未満が62.2%、3点~4点未満が65.6%、4点以上が67.8%と、得点の高い企業ほど計画的にOJTを展開している企業が多い。
 この設問は重複回答であるので、のべ指摘数でもって業種ごとの「正社員の人材育成」の教育重視度を表すと考えて、のべ指摘数を整理してみると図表6-3のようになる。教育重視度の高い業種は理美容業>病院>老人福祉事業>各種学校>情報処理業>法律事務所等>機械修理業等の順になっている。Off-JTを重視する業種では教育重視度が高くなる傾向にある。
図表6-3 「正社員の人材育成」重視度
 つまり、構造的には以下の3つの類型に分けられる。
<1> OJTを中心に正社員の人材育成を行う業種
 映画・ビデオ制作業、葬儀業、旅館、広告代理業、廃棄物処理業、個人教授所、建築サービス業等
<2> Off-JTを中心としている業種
 病院、老人福祉事業、各種学校、理美容業、リース業、建物サービス業等
<3> OJTとOff-JTとの併用傾向の強い業種
 機械修理業、自動車整備業、法律事務所等
2 業界団体の行う教育訓練の利用
 業界団体の行う教育訓練をサービス業法人ではどのように利用しているであろうか。図表6-4のように「資格取得のため」が36.2%と最も多く、「在職者の専門研修に参加」29.8%、「新入社員の新人教育に参加」が19.0%と続いている。
図表6-4 業界団体の行う教育訓練の利用について
 さらに、業種別に比較してみると図表6-5のように「資格取得のために利用している」は自動車整備業(72.9%)、廃棄物処理業(61.7%)、老人福祉事業(60.5%)、建物サービス業等(58.6%)、機械修理業(53.8%)、理美容業(52.8%)、リース業(52.1%)などに多い。「在職者の専門研修に利用している」は老人福祉事業(73.2%)、病院(57.1%)、各種学校(48.2%)で多い。「新入社員の新人教育に利用している」は老人福祉事業(57.3%)、病院(29.3%)、理美容業(28.5%)、各種学校(27.2%)などである。
図表6-5 業界団体の行う教育訓練の利用について(MA)
 規模の大きな法人ほど業界団体主催の教育訓練を利用の理由として多いのは「資格取得のため」、「在職者の専門研修に参加」、「新入社員の新人教育に参加」などであり、例えば「資格取得のため」を理由とするのは、1~9人の法人が27.9%、10~50人が36.3%、51人以上が46.1%といった具合である。「在職者の専門研修に参加」は1~9人が19.8%、10~50人が28.1%、51人以上が44.7%、「新入社員の新人教育に参加」が1~9人が10.1%、10~50人が19.3%、51人以上が28.3%となっている。
 このように業界団体等への依存度が高いのは規模の大きな法人ということになり、規模の小さな法人では一人前になった人材を中途採用することで対応している可能性が高い。
第2節 基幹的職種の能力開発と職業資格
1 業種別に見た基幹的職種
 業種別の基幹的職種がどのようなものであるのかを整理すると図表6-6のようになっている。各業種で指摘率の高いものをそれぞれ要約的に以下に示す。複数の職種が基幹的職種であると判断されている業種が少なくない。理美容業、葬儀業、情報処理業、建築サービス業等、各種学校、旅館、広告代理業などへの特定職種に集中しているのに対し、リース業、映画・ビデオ制作業等のように特定職種に絞るのが難しい業種もある。
図表6-6 基幹的職種(SA)

 理美容業     :理容・美容(92.8%)
 葬儀業      :葬儀(89.5%)
 情報処理業    :情報処理・ソフト開発(89.4%)
 建築サービス業等 :設計・技術(87.2%)
 各種学校     :教員・教師・指導員(86.4%)
 旅館       :サービス・接客(83.1%)
 広告代理業    :広告・調査(76.1%)
 法律事務所等   :税理士・弁理士(74.9%)、弁護士(8.5%)、公認会計士(5.2%)
 自動車整備業   :保全・整備(72.4%)、サービス・接客(7.7%)
 個人教授所    :教員・講師・指導員(71.8%)、サービス・接客(11.7%)
 機械修理業    :保全・整備(64.6%)、技能職・建設職(14.2%)
 老人福祉事業   :介護士・寮母(64.3%)、サービス・接客(19.7%)
 建物サービス業等 :清掃・クリーニング(60.0%)、保全・整備(11.3%)
 病院       :看護婦(52.5%)、医師(43.3%)
 情報提供業    :情報処理・ソフト開発(42.4%)、広告・調査(22.0%)
 廃棄物処理業   :清掃(40.2%)、運転・運搬(34.3%)
 映画・ビデオ制作業:映像・ビデオ制作(39.7%)、デザイン・写真撮影(20.6%)、広告・調査(12.1%)
 リース業      :外交・セールス(23.8%)、運転・運搬(13.7%)、総務(11,4%)、保全・整備(11.1%)、サービス・接客(11.1%)

2 基幹的職種の求人方法
 これら基幹的職種の求人は図表6-7のように「公共職業安定所への求人」が49.3%と最も多く、「就職情報誌、新聞広告、チラシ」が46.8%で続いており、この2つの求人方法が主要なものである。これらに続くのが「学校への求人」で37.7%、「経営者や従業員の親類縁者への口コミ」が27.8%となっており、全体的にはこれら以外の求人手段はきわめて少ない。
図表6-7 求人方法
 業種による基幹職種の求人方法の違いは図表6-8のようになっている。指摘率の最も高い公共職業安定所の利用度が高い上位5業種は建物サービス業等(72.7%)、老人福祉事業(67.5%)、廃棄物処理業(66.4%)、旅館(61.5%)、機械修理業(57.7%)である。また、就職情報誌などの媒体の利用も第1位は建物サービス業等(67.9%)で、以下広告代理業(66.7%)、情報処理業(58.0%)、旅館(56.9%)、葬儀業(55.8%)の順に多い。これらの採用方式に重点を置く業種では労働力の量的確保に悩む業種が少なくない。口コミでの採用に力を入れている業種には葬儀業(40.5%)、廃棄物処理業(37.4%)、各種学校(32.7%)、建物サービス業等(30.4%)、情報処理業(30.3%)などがあげられる。
図表6-8 求人方法(MA)
 また、学校への求人は建築サービス業等(63.9%)、理美容業(63.8%)、老人福祉事業(62.4%)、情報処理業(56.6%)、映画・ビデオ制作業(55.9%)が上位を占めている。一定程度の専門基礎的職業能力を身につけた新人の採用ルートはこの学校になるのであろう。なお、業界団体からの斡旋は病院(18.0%)、老人福祉事業(15.3%)、法律事務所等(10.1%)などで多くなっている。
 このように、業種別に基幹職種の採用方式を整理すると、一定程度の特徴が見られるが、病院のように多様な専門的職種で構成されている場合は求人方法も分散が大きく、一定の方式に集中していない。そこで、以下では基幹的職種別にどのような求人方法が採られているのかに注目してみよう。
3 求人方法による基幹的職種の類型
 図表6-9は求人方法の特徴から職種を類型化した結果である。同表の求人方法の延べ指摘率は公共職業安定所、就職情報誌・新聞広告・チラシ、学校への求人、口コミ、民間職業紹介機関や業界団体などの斡旋といった求人方法の延べ指摘率を示しており、この比率が高くなることは求人方法の多様な選択と人材の逼迫度を表している。看護婦(277.5)、介護士・寮母(228.4)、理容・美容(207.6)、情報処理ソフト開発(205.2)、清掃・クリーニング(196.7)、設計・技術(194.4)、警備・保安(193.5)などが採用に力を入れている職種である。一方、販売・レジ(88.0)、弁護士(110.7)、総務など事務(144.7)、編集・出版(148.6)、運転・運搬(154.9)、医師(153.6)などは募集の範囲が限られているか、比較的応募者が多く、採用しやすい職種である。
図表6-9 求人方法による類型
 述べ指摘率を100として、各採用方法ごとの構成比率を求めて整理してみると、大まかに4つほどのタイプに類型化できる。つまり、第Iタイプは公共職業安定所への求人もしくは就職情報誌等の媒体への依存度が高い職種で、警備・保安、清掃・クリーニング、運転・運搬、サービス・接客、外交・営業など、総務など事務、技能職・建設職、販売・レジ、葬儀、保全・整備などの職種が該当し、一人前になるまでの期間も比較的短い職種が多い。
 第IIタイプは公共職業安定所と学校への求人を中心として、就職情報誌等の媒体あるいは口コミ、民間職業紹介機関など広範な採用ルートをもっている職種で、弁護士・寮母、看護婦、コック・板前、理容・美容、設計・技術、情報処理ソフト開発、税理士・弁理士など、専門学校などで初期の職業能力を身につけており、卒業後に労働市場に参入してくるような職業である。弁護士・寮母を除いて一人前になるまでの機関が比較的長い職業が多いのが特徴である。第IIIタイプは公共職業安定所への求人は少なく、就職情報誌などの媒体を中心に学校への求人、口コミなどを主体とする求人方式を採っている職種で、広告・調査、編集・出版、教員・講師・指導員、デザイン・写真撮影、映像・ビデオ制作などの職種がこれにあたる。専門性やセンスが問われる仕事が多く、広く人材を求めやすい就職情報誌などの媒体への依存度が高くなっているものと思われる。
 第IVタイプは高度なプロフェッショナル職種であって、民営職業紹介機関、業界団体等からの斡旋に依存している。これに該当する職種は医師と弁護士である。
4 基幹的職種で一人前になるまでの期間
 一人前になるまでの期間の平均値を業種別に比較してみると図表6-10のように、建築サービス業等(6.12年)、法律事務所等(6.34年)、病院(5.27年)、自動車整備業(5.17年)、機械修理業(5.03年)、理美容業(4.95年)などの順になっており、これらの業種は職業能力の獲得までに時間のかかる人材に依存している。
図表6-10 一人前になるまでの期間
 一方、廃棄物処理業(2.57年)、旅館(2.81年)、建物サービス業等(2.84年)、老人福祉事業(3.01年)、リース業(3.24年)、個人教授所(3.41年)などでは、比較的短期間内で職業能力の獲得が可能な人材に依存している。
 図表6-11は基幹的職種ごとに一人前になるまでの期間の平均値を求めた結果である。医師(6.91年)、コック・板前(6.08年)、設計・技術(6.01年)、税理士・弁理士(5.46年)、映像・ビデオ制作(5.05年)、弁護士(4.96年)など経験の求められるプロフェッショナル的な仕事が多い。一方、警備・保安(2.17年)、運転・運搬(2.33年)、清掃・クリーニング(2.52年)、介護士・寮母(2.96年)、サービス・接客(2.97年)などの仕事は比較的短期で一人前になれると事業主に判断されている。
図表6-11 一人前になるまでの期間
5 職業能力の効果的な開発方法
 職業能力の効果的開発方法は「一つの勤め先で長期にわたり働く」(37.7%)、「会社は変わっても同じ仕事を続ける」(35.6%)、「一人前まで働き、後は会社を変える」(18.7%)、「その他の方法」(2.6%)となっている(なお、無回答は5.4%)。一つの勤め先で勤め上げようとの指向は4割弱とかなり弱い。むしろ、勤め先は変えるが、同じ仕事を続けるとか、修業期間が過ぎたらむしろ他の勤め先に変わるといった、職種指向の強い働き方を支持する声が高い。サービス業の仕事の性格が製造業とはかなり様相が異なるものが多いと言えよう。
 図表6-12は業種別に職業能力の効果的な開発方法を整理したものである。「一つの勤め先で長期に働く」のが職業能力開発に最も効果的であるとし、労働力の内部化指向が最も強いのは葬儀業(61.6%)であり、廃棄物処理業(57.6%)、リース業(48.9%)、個人教授所(47.9%)、法律事務所等(47.6%)の順に続いている。一方、「会社は変わっても同じ仕事を続ける」は映画・ビデオ制作業(49.6%)、自動車整備業(46.6%)、情報処理業(44.3%)、建築サービス業等(43.6%)、病院(43.3%)、広告代理業(43.0%)などである。「一人前までになった後は、会社を変える」は理美容業(32.3%)、建築サービス業等(25.5%)、情報処理業(24.6%)、広告代理業(22.5%)、病院(21.5%)などに多い。徒弟養成的な性格を備えている業種にそのような考え方を支持する傾向が強い。
図表6-12 職業能力の効果的な開発方法(業種別)
6 職業能力の効果的な開発方法の職種による類型
 図表6-13は職種別に見た職業能力の効果的な開発方法である。「一つの勤め先で長期に働く」は葬儀(62.6)、編集・出版(54.6)、弁護士(53.6%)、運転・運搬(52.0%)、税理士・弁理士(50.2%)などの職種が上位を占め、医師(11.6%)、映画・ビデオ制作(16.7%)、コック・板前(23.1%)、情報処理・ソフト開発(26.1%)などの職種ではその傾向がきわめて弱い。
図表6-13 職業能力の効果的な開発方法(職種別)
 「会社は変わっても同じ仕事を続ける」は映像・ビデオ制作(52.6%)、デザイン・写真撮影(50.5)、医師(46.0%)、情報処理・ソフト開発(45.7%)、警備・保安(45.2%)、技能職・建築職(42.8%)、看護婦(42.6%)、コック・板前(42.3%)などに多い。また、「一人前までになった後は、会社を変える」は理美容(34.6%)、コック・板前(34.6%)、弁護士(25.0%)、設計技術(24.4%)などが上位を占めている。
 一つの勤め先で長期にわたり勤めあげる内部労働市場型の程度の高い職種か、会社は変わっても同じ仕事を続ける職種横断的な労働市場型の職種か、一人前になるまで修業を積んだ後に会社を変わる徒弟的な見習養成型職種かによって、タイプ分けをすると図表6-14のようにおおまかに整理できる。
図表6-14 職業能力の効果的な開発方法の職種による類型
 内部化タイプの職種には葬儀、編集・出版、清掃・クリーニング、運転・運搬、外交・営業など、販売・レジ、総務など事務、税理士・弁理士などが含まれる。また、職種横断タイプの典型職種はコック・板前、映像・ビデオ制作、医師である。さらに、弁護士、理容・美容の2職種は見習養成型の傾向が強い。なお、残る職種は内部化の程度が強く、なおかつ職種横断的な性格も兼ね備えているのが介護士・寮母、サービス・接客、教員・講師・指導員、保全・整備、技能職・建設職などである。これらに比べて、より職種横断的な性格が強い職種に警備・保安、看護婦、設計・技術、広告・調査、デザイン・写真撮影、情報処理ソフト開発があげられる。
 このように、職業能力の効果的な開発方法との観点から職種を類型化すると内部化型、見習型、職種横断型の3つに大別されるが、内部化型と職種横断型とでそれぞれの性格の強弱によってさらにもう一段分けられ、5つのタイプ分けが可能である。
第3節 職業資格と職業キャリア
1 職業資格の有無
 職業能力の開発にとって重要な意味を持つ職業資格はサービス業の場合、どのようであろうか。図表6-15のように、「職業資格はない」(29.7%)が最も指摘率が高く、「公的資格があり、無資格では仕事が禁止されている」(29.1%)がこれに続く、「公的資格があるが、無資格でもできる」は22.6%であり、公的資格があるとする法人は過半数を超える。一方、「業界団体等の資格があるが、無資格でもできる」は8.8%、「業界団体等の資格があり、無資格では難しい」が3.5%となっている。つまり、公的資格や業界団体の資格が無ければ仕事が難しいのは32.6%、公的資格や業界団体の資格があるが仕事をする上では義務化されていないのが31.4%となり、全く職業資格がないのとそれぞれほぼ3分の1ずつを占めている。
図表6-15 職業資格の有無
 図表6-16は業種別に整理したものであるが、病院、法律事務所等、理美容業、各種学校などで「公的資格があり、無資格では仕事が禁止されている」との回答が多くなっており、「公的資格があるが、無資格でもできる」は老人福祉事業、情報処理業、建築サービス業等、自動車整備業等での指摘率が高くなっている。また、「職業資格はない」は映画・ビデオ制作業、広告代理業、情報提供業、旅館、個人教授所などでの指摘率が高い。
図表6-16 職業資格の有無(SA)
 そして、「公的資格があり、無資格では仕事が禁止されている」との回答は一人前になるまでの期間が長くなるほど指摘率が高くなっており、熟練形成までに時間がかかる仕事が公的資格職業になっている側面が強い。これは無資格でもできるが公的資格がある仕事でも一人前になるまでの期間が長いほどその指摘率が高まるとの特徴がみられる。これらに対して、「職業資格はない」との指摘は一人前になるまでの期間が短いほど指摘率が高く、その意味では職業資格が労働市場の中で熟練度の程度や社会的通用性の目印として機能していることを示しているとも言えよう。ところが、職能団体や業界団体が認める職業資格は一人前になるまでの期間との対応があまり明確でなく、無資格でも仕事はできるものが多いので、社会的な参入規制の機能もほとんど果たしていない。
 社会的な通用性を考えると、職業に対する認識を高めるためにも職業資格は公的に認めてゆくようなシステムの方が効果的である。その際、経験年数に応じて、一定程度の熟練度の段階を明確にする作業が前提として必要だろう。
2 職業資格の取得条件
 公的あるいは職能団体や業界団体の職業資格があり、その職業資格を取得しようとした場合に講習の義務づけはどのような状況にあるだろうか。図表6-17のように、最も多いのは「特に講習を受ける必要はない」(34.5%)であって、サービス業の職業資格の3分の1は、講習が義務づけられているわけではなく、講習を受けなくても取得可能である。「国や地方自治体の行う講習を受けなくてはならない」(24.4%)、「業界団体の講習を受けなくてはならない」(20.5%)はあわせて44.9%、「専門学校などの実施する特定コースを受ける必要がある」は15.3%となっている。
図表6-17 資格取得のための講習
 図表6-18のように職種によって義務づけられている講習の程度が異なる。弁護士は最も「国や地方自治体が行う講習」への指摘率が高いが司法研修生として講習と考えれば100%求められる性格のものであろうが、ここではそれを除いて回答している方もいるためか、「特別に講習を受ける必要はない」が22.7%となっている。このように定義がやや不明確であったので厳密な回答となっていない可能性もあるが、参考までに「国や地方自治体が行う講習」が義務づけられているとする上位職種を示せば、運転・運搬、コック・板前、保全・整備、医師、技能職・建設職などとなっている。
図表6-18 資格取得のために義務づけられている講習
 さらに受験資格として実務経験が問われるかどうかであるが、図表6-19のように、66.2%の法人が「一定期間の実務経験を必要」としており、「実務経験は必要ない」との指摘は28.6%と少ない。受験資格として実務経験が求められる職種を上位から示せば、理容・美容、介護士・寮母、保全・整備、コック・板前、設計技術、清掃・クリーニングなどとなっている。同じ職種群にくくられていても、業種や仕事の内容によって求められる職業資格は異なり、当然、受験資格として求められる実務経験の重要さも意味するところは違ってくるであろう。一方、受験に際して実務経験が問われない職業資格の職種の代表は情報処理・ソフト開発と弁護士である。
図表6-19 受検資格としての実務経験
 また、職業資格を取得する要件として、見習い期間が義務づけられているかどうかに注目してみると、図表6-20のように「義務でもないし、慣行化もしていない」が47.9%と最も多く、「受験資格として義務づけられている」21.7%、「取得後一定期間が義務づけられている」6.4%、「義務ではないが慣行化している」14.1%などとなっており、見習い期間が義務化しているのは28.1%である。「義務でもないし、慣行化もしていない」職種は情報処理・ソフト開発、介護士・寮母、設計技術、外交・営業などが上位を占めている。
図表6-20 見習い期間の義務づけ(SA)
3 職業的キャリアコース
 サービス業での仕事には一人前になってから、さらに職業経験を積むことでより高度な仕事に挑戦できるようなキャリアコースがどのように用意されているだろうか。図表6-21のように「基本的な仕事の内容は変わらないが、昇進して管理・監督的な仕事が用意されている」が30.2%と最も指摘率が高い。サービス業の作業組織はフラットな構造が多いのであるが、その中で管理・監督層への昇進の道は用意されているとする法人が3分の1ほどをしめる。一方、「一人前になった人は、その先の仕事も質的にあまり変わらない」とより高度な仕事へのキャリアラダーが用意されていないとする法人も25.1%と4分の1もある。「より専門性を高められるような職業的なキャリアが確立している」とプロフェッショナル的なキャリアに展開できる可能性があるとするのは22.2%、「基本的な仕事の内容は変わらないが、のれん分けなどの独立・開業の機会が用意されている」のが13.5%となっている。
図表6-21 職業的キャリアコースの用意
 このように、管理・監督的な仕事や独立・開業によって経営者として活躍するようなキャリア・ルートが4割強、専門職として極めるのが2割、特定の仕事で熟練してもその先が見えないのが4分の1ということになる。
 図表6-22に業種別、一人前になるまでの期間別、従業員のパート比率別のクロス集計結果を示してある。病院(46.1%)、情報処理業(38.9%)、建築サービス業等(33.5%)などで「より専門性を高められるようなキャリアが確立している」との指摘が多い。「管理・監督的な仕事が用意されている」は老人福祉事業(42.7%)、広告代理業(40.7%)、旅館(40.4%)などで指摘が多く、「独立・開業の機会が多い」は理美容業(46.4%)と法律事務所等(40.1%)での指摘率が高い。
図表6-22 職業的キャリアの用意について
 一方、「より専門性を高められるようなキャリアが確立している」との指摘は、一人前になる期間が長いほど指摘率は上昇し、逆に「その先の仕事もあまり変わらない」は一人前になるまでの期間が短いほど指摘率が高くなっている。当然のことであろうが、養成に時間のかかる職種ほど専門性を高められるキャリア・ルートが用意されている。
 また、パート比率が高いほど「より専門性を高められる」の指摘率は少なく、「その先の仕事もあまり変わらない」の指摘率が高くなる傾向を示している。
 図表6-23に職種別の集計結果を示してある。「より専門性を高められる」は専門医としてのキャリアが幅広く用意されている医師が64.1%と最も指摘率が高く、これに続くのがプログラマー、システムエンジニア、システムアナリスト等の高度な仕事へのキャリアルートのある情報処理・ソフト開発が38.5%と多い。また、専門性としては深いものがある設計技術の仕事が32.6%、看護婦が32.0%などで続いている。「管理・監督的な仕事が用意されている」は外交・営業(50.8%)、介護士・寮母(46.2%)、看護婦(44.7%)、サービス・接客(38.8%)、広告・調査(37.4%)、編集・出版(37.1%)、教員・講師・指導員(36.9%)などが上位を占める。「独立開業の機会が多い」は弁護士(50.0%)、理容・美容(48.1%)、税理士・弁理士(44.0%)で指摘率が高くなっている。
図表6-23 職業キャリアの用意について
第4節 企業内教育訓練と職業能力開発
1 企業内教育訓練の実施上の問題点
 サービス業での教育訓練の実施上の最大の問題点は図表6-24のように、「教育訓練の時間が十分確保できない」(43.9%)である。また、2番目に多いのは「従業員の学習意欲が弱い」であって、29.2%もの法人が指摘している。また、「一人前に育ててもやめてしまう」も23.4%とほぼ4分の1を占めている。一方で、「特に困っていることはない」という企業も23.0%ある。「OJTの指導者がいない」(16.0%)、「管理・監督者が部下育成に熱心でない」(9.7%)、「適切なコースのある教育機関がない」(8.9%)などが問題点として続いている。
図表6-24 教育訓練の実施上の問題点
 図表6-25のように「教育訓練の時間が十分確保できない」は老人福祉事業(63.7%)、情報処理業(61.6%)、病院(57.4%)、情報提供業(50.3%)などで指摘が多く、従業員規模が大きいほどその傾向が強い。
図表6-25 教育訓練の実施上の問題点(MA)
 また、「従業員の学習意欲が弱い」は理美容業(49.8%)、建物サービス業等(40.6%)、自動車整備業(37.6%)で指摘率が高くなっており、労務管理の自己評価得点の高い企業でこれを指摘する企業が多い。
 「一人前に育ててもやめてしまう」は理美容業(55.7%)、病院(32.8%)、旅館(30.0%)などに多い。これも労務管理の自己評価得点の高い企業ほどこれを問題とする企業が多くなっている。労務管理の自己評価得点が低い企業は「従業員の学習意欲が弱い」、「OJTの指導者がいない」、「管理監督者が部下の育成に熱心でない」、「育ててもすぐに辞めてしまう」といった指摘が多くなっており、人材育成面でも悪循環に陥っている企業が多い。
2 従業員の職業能力の身に付け方
 従業員調査の結果から職業能力をどのようにして身に付けたかに注目してみると、図表6-26のように「上司や先輩の仕事を見よう見真似で覚えた」(57.6%)や「やさしい仕事から徐々に難しい仕事へと上司や先輩の指導のもとに体験しながら覚えた」(52.9%)といったOJTが圧倒的に多い。
図表6-26 従業員の職業能力の身に付け方
 図表6-27のように、職種によってOJT依存の高いものと、Off-JT依存の高いものとがある。「上司や先輩の仕事を見よう見真似で覚えた」との徒弟的な成り行き任せのOJTは映像・ビデオ制作(80.0%)、葬儀(78.8%)、デザイン・写真撮影(76.3%)、編集・出版(72.3%)、外交・営業(70.8%)、広告調査(70.4%)などである。伝統的な職種として確立しているものではなく、新しい職種や職域が広く非定型的な仕事が多い営業職とか、地域性の強い葬儀の仕事などである。
図表6-27 職業能力の身につけ方(MA)
 「やさしい仕事から徐々に難しい仕事へと上司や先輩の指導のもとに体験しながら覚えた」と計画的な要素の強い養成訓練的なOJTは理容・美容(78.8%)、設計技術(69.0%)、情報処理ソフト開発(63.4%)、サービス・接客(58.3%)などの職種で高率の指摘率になっている。テクニカル・スキルを必要とするような職種でかつ、困難度の段階付けがしやすいような職種が中心である。
 なお、「自己負担で専門学校や講習会、セミナーに通った」と外部教育機関でスキルを身につける傾向の強い職種は税理士・弁理士(49.0%)、理容・美容(44.2%)、臨床検査技師・放射線技師など(35.4%)、看護婦(34.4%)など公的職業資格が明確に位置づけられている職種である。
 「上司や先輩の仕事を見よう見真似で覚えた」とか、「やさしい仕事から徐々に難しい仕事へと上司や先輩の指導のもとに体験しながら覚えた」といった入職口でのトレーニングがOJTによって展開されるのは多くの職種に共通している。そして、年齢別では入職口での訓練が中心であるので若年層ほどこのような訓練方式が多くなっている。一方、指摘率こそ少ないが、「業界団体での研修」、「自己負担で専門学校や講習会、セミナーに通った」、「通信教育を受けている」といったものは30歳代以上の層で指摘率が高くなっている。これらは在職者向けの職能別研修とか、テーマ別研修が多いものと思われるが、業務命令で専門学校や各種学校、公共職業訓練校、設備機器等のメーカー、フランチャイズ本部などに出向いて受講しているケースが製造業に比べると意外に少なく、このようなサービス業職種での教育・研修についてはより詳しく検討してゆく必要があるだろう。
3 職業能力を身につける上で困っていること
 従業員から見て、職業能力を身につける上で困っていることは図表6-28のように、「特に困っていることはない」が39.6%と最も多い。これに次ぐのが「忙しすぎて学習時間がない」(29.8%)である。勉強したいのだが日常の業務に追われて時間を確保するのが難しいということだろう。「教えてくれる先輩・上司がいない」(9.6%)、「会社が教育熱心でない」(9.1%)、「管理者が教育熱心でない」(8.4%)など会社や職場に問題を感じている人も少なくない。
図表6-28 職業能力を身につける上で困っていること
 図表6-29に業種別の結果を示してある。「仕事が忙しすぎて学習時間がない」は情報処理業(43.3%)、老人福祉事業(38.7%)、情報提供業(38.1%)、建築サービス業等(37.1%)、各種学校(36.4%)などが上位を占めている。成長している業種や業態を含め事業内容の変化の激しい業種が含まれている
図表6-29 職業能力を見につける上で困っていること(MA)
 職種別では「仕事が忙しすぎて学習時間がない」の指摘率が高いのは「情報処理ソフト開発」(48.2%)、「介護士・寮母」(47.4%)、「教員・講師・指導員」(43.9%)、「設計・技術」(42.1%)、「看護婦」(37.8%)などの職種で、どちらかといえばOff-JTに依存する傾向の強い職種が多い。
 「教えてくれる先輩・上司がいない」は広告代理業(14.8%)、情報提供業(14.4%)、映画・ビデオ制作業(14.1%)などでの指摘が多く、職種ではデザイン・写真撮影(23.7%)、臨床検査・放射線技師(21.5%)、編集・出版(16.9%)、コック・板前(15.3%)、販売・レジ(15.2%)などでの指摘が多い。
 なお、紙面の都合で省略したが「仕事が忙しすぎて学習時間がない」は男女とも30歳代で指摘率が最も高くなっている。つまり、実務面では最も基幹的に活躍している年齢層であるが、職業能力開発への意欲も高い層である。この年齢層の人たちが「学習時間の確保」が最も大きな課題になっている。
4 職場生活満足度(教育訓練)と勤め先に対する意識
 職場生活の満足度を「満足」(5点)、「やや満足」(4点)、「どちらともいえない」(3点)、「やや不満」(2点)、「不満」(1点)と得点化して、職種別に平均得点を求めてみると、理容・美容(3.5点)、税理士・弁理士(3.2点)、保全・整備(3.0点)、運転・運搬(3.0点)、警備・保安(3.0点)、清掃・クリーニング(3.0点)、技能職・建設職(3.0点)、介護士・寮母(3.0点)などが平均以上の満足度を示している。これらに対してデザイン・写真撮影(2.5点)、映像・ビデオ制作(2.7点)、編集・出版(2.7点)、広告・調査(2.7点)、情報処理・ソフト(2.7点)などの職種で相対的に教育訓練に対する満足度が低くなっている。
 一方、今の勤め先との関係で、「腕を磨き、自分を鍛える場である」との意識はどの程度強いであろう。つまり、一時的に修練を積み、いずれは独立あるいは専門性を生かしたキャリアによってよりよい就業機会を求めるような考え方はどの程度強いであろうか。
 「そう思う」との回答は理容・美容(92.9%)、税理士・弁理士(88.9%)、設計・技術(83.2%)、教員・講師・指導員(83.2%)、デザイン・写真撮影(82.6)、介護士・寮母(80.8%)、編集・出版(78.3%)、情報処理ソフト開発(77.3%)などの職種で多く、これらの職種でそのような意識が強かった。
 両者の関係を散布図に示せば図表6-30のようになる。教育訓練の満足度が低くて、職場は腕を磨く場であるとの意識の強い職種群はデザイン・写真撮影、編集・出版、情報処理ソフト開発、映像・ビデオ制作、教員・講師・指導員、営業・外交・セールス、葬儀、看護婦、臨床検査・放射線技師などである。一定程度専門性があり、一企業だけの経験だけでは深く幅広い経験を積みきれないような職種で、かつ、専門職意識も強い職種であろう。
図表6-30 腕を磨く場と教育訓練満足度
 これらの職種は図表6-31のように大学卒者の比率も高い職種群であって、高学歴者向けの効率的な教育訓練コースが社会的に不備であることも考えあわせると、サービス職種の教育訓練の問題を考えるとこれらの職種群に対しての支援は社会的にも歓迎されるであろう。
図表6-31 職種別の最終学歴
第5節 小括
 サービス業では、その仕事の性質から他産業に比べても人材に依存する部分が大きい。とはいえ、全てのサービス業が基幹労働力を内部要請して、高度な仕事までキャリア・ラダーを用意しているわけでもない。むしろ、企業間移動を繰り返しながら特定の仕事を続け、キャリアを積み重ねてゆく職種もある。「正社員の人材育成」を重視している業種は理美容業>病院>老人福祉事業>各種学校>情報処理業>法律事務所等>機械修理業等の順になり、このような業種ではOff-JTを重視している。つまり、OJTに比重をおく業界は映画・ビデオ制作業、葬儀業、旅館、広告代理業、廃棄物処理業、個人教授所、建築サービス業等などであり、Off-JTに重点をおく業種は病院、老人福祉事業、各種学校、理美容業、リース業、建物サービス業等である。また、その中間的でOJTとOff-JTとを併用する業種は機械修理業、自動車整備業、法律事務所等である。
 また、採用方法ごとに基幹的職種を4類型に整理すると、第I類型が公共職業安定所や就職情報誌等の媒体への依存度の高い職種で、警備・保安、清掃・クリーニング、運転・運搬、サービス・接客、外交・営業など、総務など事務、技能職・建設職、販売・レジ、葬儀、保全・整備などの職種が該当し、一人前になるまでの期間も比較的短い職種が多い。第II類型は公共職業安定所と学校への求人を中心に、就職情報誌、民間職業紹介機関など広範な採用ルートをもつ職種で、介護士・寮母、看護婦、コック・板前、理容・美容、設計・技術、情報処理ソフト開発、税理士・弁理士など、専門学校などで初期の職業能力を身につけており、卒業後に労働市場に参入してくる職業である。
 第IIタイプは就職情報誌などの媒体を中心に学校への求人、口コミなどを主体としている広告・調査、編集・出版、教員・講師・指導員、デザイン・写真撮影、映像・ビデオ制作などの職種がこれにあたる。専門性やセンスが問われる仕事が多く、広く人材を求めやすい就職情報誌などの媒体への依存度が高くなっている。
 IVタイプは高度なプロフェッショナル職種であって、民営職業紹介機関、業界団体等からの斡旋に依存している。これに該当する職種は医師と弁護士である。
 一つの勤め先で長期にわたり勤めあげる内部労働市場型の程度の高い職種か、会社は変わっても同じ仕事を続ける職種横断的な労働市場型の職種か、一人前になるまで修業を積んだ後に会社を変わる徒弟的な見習養成型職種かによっての職種の類型化も可能である。
 内部化タイプの職種には葬儀、編集・出版、清掃・クリーニング、運転・運搬、外交・営業など、販売・レジ、総務など事務、税理士・弁理士などが含まれ、職種横断タイプの典型職種はコック・板前、映像・ビデオ制作、医師である。さらに、弁護士、理容・美容の2職種は見習養成型の傾向が強い。なお、残る職種は内部化の程度が強く、なおかつ職種横断的な性格も兼ね備えているのが介護士・寮母、サービス・接客、教員・講師・指導員、保全・整備、技能職・建設職などである。これらに比べて、より職種横断的な性格が強い職種に警備・保安、看護婦、設計・技術、広告・調査、デザイン・写真撮影、情報処理ソフト開発があげられる。
 一人前になるまでの期間が長くかかる職種では公的な職業資格があり、無資格では仕事が禁止されている職種が少なくない。つまり、熟練形成に時間のかかる仕事が公的に職業資格が認められている。それに対して、公的職業資格がない職業の多くが、一人前になるまでの期間も短い傾向があり、職業資格が労働市場の中で熟練度の程度や社会的通用性の目印として機能していることを示している。ところが、職能団体や業界団体が認める職業資格は一人前になるまでの期間との対応があまり明確でなく、無資格でも仕事はできるものが多いので、社会的な参入規制の機能もほとんど果たしていない。社会的な通用性を考えると、職業に対する認識を高めるためにも職業資格は公的に認めてゆくようなシステムの方が効果的であると思われる。その際、経験年数に応じて、一定程度の熟練度の段階(キャリア・ラダー)を明確にする作業が前提として必要となるだろう。
 サービス業での職業的なキャリア・コースは、管理・監督的な仕事や独立・開業によって経営者として活躍するようなものが4割強、専門職として極めるのが2割、特定の仕事で熟練してもその先が見えないのが4分の1という状況にある。一方、「より専門性を高められるようなキャリアが確立している」との指摘は、一人前になる期間が長いほど指摘率は上昇し、逆に「その先の仕事もあまり変わらない」は一人前になるまでの期間が短いほど指摘率が高くなっている。当然のことであろうが、養成に時間のかかる職種ほど専門性を高められるキャリア・ルートが用意されている。
 従業員調査の結果によれば、教育訓練の満足度が低くて、職場は腕を磨く場であるとの意識の強い職種群はデザイン・写真撮影、編集・出版、情報処理ソフト開発、映像・ビデオ制作、教員・講師・指導員、営業・外交・セールス、葬儀、看護婦、臨床検査・放射線技師などがあげられる。一定程度専門性があり、一企業だけの経験だけでは深く幅広い経験を積みきれないような職種で、かつ、専門職意識も強い職種である。これらの職種は大学卒者の比率も高い職種群であって、高学歴者向けの効率的な教育訓練コースが社会的に不備であることも考えあわせると、サービス職種の教育訓練の問題を考えるとこれらの職種群に対しての支援することが社会的にも歓迎されるのではないだろうか。
 一企業にとどまらずにキャリアを積んでゆくような職種が比較的学歴水準が高く、熟練形成の期間も長い職種に多かったことは、サービス職種に対する職業能力開発の社会的機能の強化が大きな課題になっていることを示している。それらの職種の中には成長著しく、職業キャリアが成熟していないような職種も少なくない。産業特性として企業規模の比較的小さなサービス業の世界での職業能力開発の課題は大きい。


第7章 福利厚生制度と労使コミュニケーション

 本章では、中小サービス業における従業員福祉の推進にとって重要な役割を担っていると考えられる福利厚生制度と労使コミュニケーションについての、データ分析の結果を示す。様々な福利厚生制度が充実していること、また労使関係が制度化されて従業員の要求が経営に反映されていることが、当該企業の労働福祉の「現実」の推進にとって非常に積極的な意味を持つことは、当然のことである。他方で、中小サービス業の従業員が職場生活から満足を感じるということの中には、福利厚生や労使関係における制度的な拡充の度合いだけでは測り得ないような「主観的」要素が含まれていることにもまた、注意を向けなければならない。さらに、福利厚生や労使コミュニケーションの充実度の格差には、業種や企業規模等の企業そのものの特性の違いのほかに、事業主のキャリア特性等からくる福利厚生や労使コミュニケーションに対する考え方の違いも、大きく影響していると思われる。
第1節 福利厚生制度の現状
 まず、企業・法人票の集計結果から、福利厚生制度の実際の実施状況を俯瞰してみよう。
 図表7-1において中小サービス業全体でみると、実施率の高いのは「厚生年金への加入」「健康保険への加入」「慶弔見舞金制度」で、80%強の企業で実施されている。逆に低いのは、「託児・保育施設」「持ち家住宅の融資」「介護休業制度」で、実施率は10%にも満たない。特に、今後も中小サービス業界への参入が増えていくと予想される女性の労働福祉推進にあたっては、託児所や介護休業制度の早期の充実が求められていると言えよう。
図表7-1 福利厚生制度の実施状況(各単数回答)
図表7-1 (承前)
 業種ごとの違いをみると、福利厚生制度ごとの実施率のばらつきも大きいのだが、大ざっぱに括れば、福利厚生制度の充実している業種は病院・各種学校・老人福祉事業など比較的従業員規模の大きいと思われる業種で、逆に充実していないのは理美容業・機械修理業・旅館・自動車整備業などである。ただし、「社員寮・社宅」については例外で、理美容業・旅館のようないわば“住み込み"の業種が高い設備率を示しているといえる。
 従業員規模別(正社員+パート)に福利厚生制度の実施状況をみると、従業員規模0人の企業ではいずれの制度も実施率がきわめて低く、以下、規模が大きくなるごとに実施率が高くなっていく傾向が出ている。次に設立年別では、「厚生年金への加入」を除き、おしなべて設立年の古い企業ほど制度実施率が高いようである。労使関係の類型別にみると、これも「厚生年金への加入」を除き、労働組合や従業員組織のある企業の方がどちらもない企業よりも実施率が高い。労働組合のある企業と従業員組織(発言型・親睦型)のある企業のあいだで比較した場合には、制度実施率は全般的には、労働組合>親睦型組織>発言型組織の順で高くなっている。従業員数の伸び率別では、伸び率の増えた企業では既に実施中である割合が高く、逆に伸び率の減った企業では今後も実施の予定のない割合が高い。
 事業主の開業(継承)の経緯別に、福利厚生制度の実施状況を調べると、「託児所・保育制度」「厚生年金への加入」を除くほぼ全ての制度において、関連会社や子会社として開業した事業主、および金融機関・親会社から派遣された事業主の企業では、実施率が高い。後で見る労使関係制度の場合にも言えることであるが、これは事業主が開業以前に勤務していた恐らくは大手企業の制度が移入されてくることに起因しているものと思われる。反対に実施率がおしなべて低いのは、新規の独立開業をした事業主の企業である。
 次に、労働への報酬を規定する本質的な要因であると考えられる熟練及び専門性が、実際に高い福利厚生と結び付いているかどうか、調べてみよう。必要とされる熟練度や専門性を測る指標は様々に考えられるが、表では、従業員として一人前になるまでの期間をとってみた。推測でしかないが、一人前になるまでの期間が長いほどその仕事の熟練度・専門性は高いと見做すことにする。すると、「厚生年金への加入」「健康保険への加入」を除くどの福利厚生制度においても、期間1年未満の仕事では実施率が最も低く、以下、一人前になるまでの期間が長い仕事ほど、実施率が高くなる傾向みられた。このように、熟練度・専門性を要する仕事をもつ企業ほど、福利厚生制度の充実度も高くなっていると考えることができる。ただし、絶対数は多くないが期間16年以上を要する仕事においては、実施率が低くなっている制度もある。
 さらに、1996年におけるパート比率と福利厚生制度の充実度の関係をみてみよう。従業員に占めるパート比率が高くなればなるほど制度の実施率が低くなる傾向が、どの制度においてもはっきりと窺われる。特に、全従業員がパートタイマーの企業では、福利厚生制度の実施率は著しく低いのである。
第2節 福利厚生制度に対する事業主・従業員の意識
 福利厚生制度の現状の概略は上記の通りであったが、それでは事業主や従業員は自企業の福利厚生制度について、どのような認識を持っているのであろうか。
 まず図表7-2は、事業主による自分の会社(法人)の福利厚生に対する評価を問うたものである。一目見て、実際の福利厚生制度よりもその評価の方が、業種ごとのばらつきが極めて小さくなっていることが分かる。これは評価の基準(準拠枠)として、日本の中小サービス業全体や産業界全体よりも、会社の属する業種(業界)が選ばれているからであると思われる。例えば、前節では福利厚生制度の実施率が低い業種として理美容業が挙がったわけであるが、ここでは理美容業の事業主のうちで自分の会社の福利厚生を「よい」と答えた人は、全体平均よりもかなり多くなっているのである(13%)。
図表7-2,図表7-3,図表7-4
 それでは事業主は、自分の属する業界(業種)の福利厚生の水準については、どう考えているのか。それを見たのが図表7-3であるが、自分の業界の「福利厚生制度が未整備である」と答えた事業主が平均よりもかなり多いのは理美容業、建物サービス業等、旅館、建築サービス業等、法律事務所等である(45%以上)。したがって、例えば理美容業や旅館の事業主の場合、自分の業界の福利厚生が低水準であることを比較的正確に認識していると言える。しかし、同じように整備率の低い機械修理業や自動車整備業では、業界の福利厚生制度が未整備であるとする事業主の割合は平均よりも低く(35%前後)、現実と認識との間に少なからぬギャップのあることが分かるのである。
 このように、中小サービス業における福利厚生制度の整備・拡充を支援していくうえでは、まず事業主に対して、個々の業界の置かれた現状を正確に認識してもらうことが先決であると思われるのである。
 次に図表7-4には、従業員の福利厚生に対する満足度が業種別に示されている。ここでも事業主の場合と同様に、現実の制度整備率の業種ごとのばらつきに比べると、従業員の認識の業種ごとのばらつきは非常に小さい。また、現実の福利厚生の水準は低い理美容業・自動車整備業であるが、従業員の満足度は比較的高いことがわかる。ここでも、現実と認識のあいだのギャップが存在しているのである。
 図表7-5では、より細かく、個々の福利厚生制度について、従業員が何に今後力を入れてほしいと思っているかを調べたものである。理美容業の従業員は、「人間ドック、成人病検診の実施」「厚生年金への加入」「健康保険への加入」への要望が特に強い。また、相対的に福利厚生制度の充実している病院・老人福祉事業ではあるが、従業員の間では「託児・保育施設」「介護休業制度」への要望が共通して強い。それは、これらの業種の従業員の大半が女性フルタイム労働者で構成されていることと関係があろう。正社員・パート別では、正社員の方がパートタイマーよりも全般的に要望している人の割合が高いが、パートタイム従業員においては「厚生年金への加入」「健康保険への加入」「慶弔見舞金制度」など、既に正社員においては大部分達成されていると思われる項目への要望が高くなっている。性別および年齢別でみると、男性・女性いずれにおいても若年層の方が全般的に要望が強いが、年配の従業員の方が要望が強い項目は、男女いずれも「人間ドック、成人病検診の実施」「文化教養活動」である。性別および勤続年数別にみた表では、男女ともに、勤続年数の短い人ほど「社員寮・社宅」への要求が強く、勤続年数が長いほど「文化教養活動」「持ち家住宅の融資」「介護休業制度」への要求が強い。その他、特に女性従業員においては、勤続年数が短いほど「健康増進施設の利用補助」「レジャー施設の利用補助」「財形制度」「教育・結婚等の生活関連融資」への要求が強い。
図表7-5 福利厚生施策の中で今後、力を入れてほしいこと(複数回答)
第3節 労側組合・従業員組織の有無
 企業・法人票の集計結果から、労使コミュニケーションの現状を俯瞰してみたのが、図表7-6である。
図表7-6 労働組合や従業員組織の有無(単数回答)
 労働組合や従業員組織の有無を、業種ごとにみると、「労働組合」のある企業は全体でも4.7%と低いが、その中では老人福祉事業は14%と高く、個人教授所、理美容業、建築サービス業等、自動車整備業、各種学校は1%前後で全体平均よりもさらに低くなっている。「社員会、親睦会などの従業員組織」を持っている企業は全体では36%であり、その中で従業員組織を持つ割合の高いのは廃棄物処理業、病院、情報処理業、各種学校、老人福祉事業で(50%以上)、低いのは個人教授所、理美容業、旅館、葬祭業、法律事務所等である。ここから、労働組合と従業員組織をともに高い割合で有しているのが各種学校、労働組合を高い割合で有しているのが情報提供業、従業員組織を高い割合で有しているのが廃棄物処理業、病院、というように大まかに分類できる。逆に、「どちらもない」企業の割合が高いのは、個人教授所、理美容業、映画・ビデオ制作業、葬祭業、法律事務所等である(70%以上の企業がどちらも持っていない)。
 従業員規模別にみると、労組・従業員組織のいずれにおいても規模が大きいほど組織率が高くなる。だが興味深いことに、この傾向とは逆に、いずれかの組織がある場合、規模が小さいほど賃上げの話し合いのある企業が多くなるのである。次に設立年別では、労働組合は設立年が古い企業ほど多く組織されており、逆に設立年が新しいほど労組も従業員組織も「どちらもない」という企業が増える。
 労働組合や従業員組織の有無を決める要因として、如上の企業特性に勝るとも劣らず重要なのが、事業主のキャリア特性である。関連会社や子会社として開業した事業主や、金融機関・親会社等から派遣した事業主、会社内で昇進した事業主の経営する企業においては、労働組合・従業員組織の結成されている比率が極めて高い。こうした分社・派遣型の企業では、事業主が以前に勤務していた企業の「近代的」労使関係制度がいわば「移植」されてくるのであり、事業主も労働組合などの存在に対してかなりの理解を示しているものと思われるのである。これとは対照的に、雇用者・主婦・学生などから新規開業した事業主の企業では、労働組合・従業員組織の「どちらもない」ものがかなり多い(70%弱)。このことは、これらの新規開業型の事業主がもともとキャリアからして労働組合等の経験を持たず、またそうしたフォーマルな制度の頼らない形での従業員福祉を行っているからだと想像される。
 パート比率の違いによる労働組合・従業員組織の有無を調べると、容易に予想されるように、パート比率が高くなるほど、労組・従業員組織の「どちらもない」企業の割合も高くなる。ただし、そうした組織率の低下とは無関係に、つまりパート比率の違いにかかわりなく、労組・従業員組織をもつ企業において賃上げの話し合いは20%前後の企業で行われている。
第4節 従業員とのコミュニケーションの手段
 企業・法人票から、図表7-7のように、従業員とのコミュニケーションの手段として行っている制度・施策の現状をとりあげてみよう。
図表7-7 従業員とのコミュニケーションの手段(複数回答)
 業種ごとの違いをみると、「朝礼」を行っている企業が多いのは理美容業、自動車整備業、葬祭業、各種学校、老人福祉事業で(60%前後)、少ないのは個人教授所、旅館、建築サービス業等、映画・ビデオ制作業、情報提供業、法律事務所等である(40%未満)。「職場懇談会」を行っている企業が多いのは老人福祉事業(64%)、少ないのは広告代理業、法律事務所等である(45%程度)。「小集団活動・提案制度」を持っている企業が多いのは個人教授所、病院、各種学校(20%以上)、少ないのは建築サービス業等、自動車整備業、葬祭業である(10%未満)。「苦情処理担当者の配置」が行われている企業が多いのは理美容業、廃棄物処理業、病院であり(8%前後)、少ないのは広告代理業、機械修理業、映画・ビデオ制作業、情報提供業である(2%未満)。「自己申告制度」を採用している企業が多いのは情報処理業、情報提供業であり(30%前後)、少ないのは病院、自動車整備業、老人福祉事業である(10%前後)。「従業員意識調査」を行っている企業が多いのは理美容業、各種学校で(10%以上)、少ないのはリース業である(2.5%)。「社内報等」を発行している企業が多いのは病院、情報処理業で(20%以上)、少ないのは機械修理業、自動車整備業、法律事務所等である(8%未満)。「労使協議会・従業員代表との懇談」を行っている企業が多いのは廃棄物処理業、病院、各種学校で(15%前後)、少ないのは個人教授所、広告代理業、旅館である(6%程度)。
 従業員規模別にみると、「朝礼」「小集団活動・提案制度」「苦情処理担当者の配置」「従業員意識調査」「社内報等」「労使協議会・従業員代表との懇談」において規模が大きくなるほど実施率が高い。特に「社内報等」の発行は、51人以上の企業において飛び抜けて多くなる。労使関係類型別にみると、やはり労働組合・従業員組織のいずれかを持っている企業において、どのコミュニケーション手段の導入率も高くなっている。従業員数の伸び率別では、「朝礼」「職場懇談会」「小集団活動・提案制度」「社内報等」において、伸び率の増えた企業の実施率が高くなっている。
第5節 従業員の職場生活への満足度
 従業員票に目を転じて、職場生活への満足度について調べてみよう。仕事の内容、賃金、労働時間、福利厚生、教育訓練、職場の人間関係という7つの評価項目のうち、職場生活全体の評価に大きな影響を与えているのは何であろうか。それぞれの項目の評価には1点から5点までの点数が与えられているので、それをもとにして重回帰分析を行った。その結果は、下記のとおりである。

 h(職場生活全体での評価)=0.175530a(仕事の内容)
             +0.139812b(賃金)
             +0.074501c(労働時間)
             +0.074396d(福利厚生)
             +0.076832e(教育訓練)
             +0.251240f(職場の人間関係)
             +0.234337g(作業環境)
             -0.066632

 ここから分かるように、従業員の職場生活全体での評価に最も大きな影響を与えているのは、意外なことに、「職場の人間関係」と「作業環境」である。それに次ぐのが「仕事の内容」「賃金」であり、「労働時間」「福利厚生」「教育訓練」などは残念ながら職場生活全体の満足度にほとんど影響を与えていない。
 中小サービス業の従業員の満足度に特に重要な役割を果たしているのが職場の人間関係や作業環境などであるとすると、そうしたものは賃金や労働時間などに比べると、労働組合などのフォーマルな制度によっては充足しにくい性質をもっている。したがって、従業員の満足度は、職場の人間関係や作業環境に影響を与えるインフォーマルな要因、とりわけ事業主の人格や面倒見の良さなどによっても強く規定されているとみるべきであろう。
第6節 大企業従業員と比較した事業主の自己認識
 中小サービス業の事業主は、何らかの理由・動機・意志を持ってそれぞれの業界に参入してきたはずである。事業主となった現在、自らの達成度や社会的地位をどのように見ているのであろうか。ここでは図表7-8のように、大企業の同年輩の従業員と比較した事業主の自己評価について、とりあげる。
図表7-8 どちらが恵まれていると思いますか(各単数回答)
 全体としては、「収入の面」において大企業従業員の方がよいと答えた人の割合が比較的多く、「仕事のやりがい」「自分らしく生きられる」「老後の生活設計、生き甲斐」の点では自分の方がよいと考えている人の多いことが分かった。
 業種別の自己評価をみると、「収入の面」では、「大企業に勤めている人の方がよい」と答えた人は、情報処理業、建築サービス業等、老人福祉事業において多く、「自分の方がよい」と答えた人は廃棄物処理業、病院、葬祭業、法律事務所等において多い。「仕事のやりがい」については、大企業がよいと答えた人はおしなべて少なく、自分の仕事の方がよいと答えた人がきわめて多いが、情報提供業においてはその比率がやや低くなっている。「自分らしく生きられる」かどうかについても、自分のほうがよいと答える事業主が圧倒的に多いが、なかでも個人教授所、法律事務所等においてその比率が高くなっている。「仕事のつらさ」については、大企業の方がよい(つらくない)と答えた人は病院・情報処理業において多く、自分の方がよい(つらくない)と答えた人は廃棄物処理業、法律事務所等において多い。「社会的地位」については、大企業の方がよい(高い)と答えた人は機械修理業、映画・ビデオ制作業において多く、自分の方がよい(地位が高い)と答えた人は廃棄物処理業、病院、法律事務所等、各種学校、老人福祉事業において多い。「老後の生活設計、生き甲斐」については、大企業の方がよいと答えた人は機械修理業、映画・ビデオ制作業で多く、自分の方がよいと答えた人は廃棄物処理業、法律事務所等、老人福祉事業で多い。大ざっぱにまとめれば、廃棄物処理業と法律事務所等という互いにかなり性質の異なる2つの業種において、全般的に自分の方がよいと答える人が多いようである。
 従業員規模別にみると、収入・つらさ・地位・老後の4つの指標において、規模が小さくなるほど大企業のほうがよいと答える人の割合が高くなっている。従業員の伸び率別では、伸び率が増えた企業の事業主ほど、どの指標においても自分の方がよいと答える割合が高くなっている。
 自己と同年輩の大企業従業員とを比較するという場合、同年輩の大企業従業員の労働生活がどういうものかを経験として知っているかどうかによって、比較が現実的なものであるか想像上のものであるかに大きな開きが生じると考えられる。すなわち、事業主が現在の地位に就く前のキャリアによって、比較のあり方に違いがでてくると考えられるのである。それを事業主になった経緯別に調べると、やりがい・自分らしさ・つらさ・老後の指標において、雇用者・主婦・学生からの独立開業型の事業主は高い割合で自分の方がよいと考えているのに対して、分社・派遣型の事業主は、大企業の方がよいと答えている人の割合が相対的に高くなっている。特に、「金融機関・親会社から派遣された」事業主においては、いずれの指標においても、自分の方がよいと答えている人の比率が極端に低くなっている。これは、同輩の大企業従業員との比較がかなり具体的な真実味を帯びているからであろう。
第7節 現在の勤め先に対する従業員の認識
 最後に、従業員票から、図表7-9のように、現在の勤め先に対する従業員の認識をみておく。現在の勤め先を自己のキャリア形成過程の中にどう位置付けているかに応じて、労働意欲や職場に対する満足度にも、大きな違いが出てくると考えられる。そこからは、労働条件や福利厚生などの「客観的」指標だけでは測ることのできない、従業員の仕事への「主観的」コミットメントの度合いが知られるのであろう。
図表7-9 今の勤め先との関係について(各単数回答)
 まず、勤め先に対して「雇われているだけの関係である」というドライな認識をしている人は、正社員よりもパートでかなり多くなっている。次に、性別・年齢別では、女性で勤続年数が短いほど多いことがわかる。業種別に見た表では、病院で多く、個人教授所、理美容業、建築サービス業等・自動車整備業、各種学校、老人福祉事業で少なくなっている。さらに、転職による賃金の変化別では、転職によって賃金が下がってしまった人にそういう認識をする人が多いことが分かる。職場生活全体の評価別では、満足度が高いほど少ないという関係が見られる。
 勤め先を「腕を磨き、自分を鍛える場である」と捉えている人は、パートよりも正社員でかなり多くなっている。性別・年齢別では、男女とも年齢が低いほど鍛練の場と考えている人が多い。また、性別・勤続年数別では、当然とも言えるが男女とも勤続年数が短いほど、そう考える人が多い。業種別では、個人教授所、理美容業、情報処理業、建築サービス業等、法律事務所等で多く、廃棄物処理業で少なくなっている。転職による賃金の変化別では、転職によって賃金上昇を経験した人に多い。職場生活全体の評価別では、満足度が大きい人ほど多い。
 「自分の私生活を多少犠牲にすることもやむを得ない」とまで現在の仕事に労力を費やしている人は、やはりパートよりも正社員で多い。性別・年齢別では、男女とも年齢が高いほど多い。また、性別・勤続年数別では、男女とも勤続年数が長いほど多い。業種別では、葬祭業・老人福祉事業で多く、廃棄物処理業・情報提供業で少なくなっている。転職による賃金の変化別では、転職によって賃金上昇を経験した人に多い。職場生活全体の評価別では、満足度が高いほど多く、因果関係は明確ではないが、仕事に打ち込んでいる人ほど満足度も高いことが分かるのである。
 「社長さんも社会的には自分と変わらない立場にいる人だ」という、ある種の労使平等主義的な価値観をもっている人は、パートよりも正社員で若干多くなっている。性別・年齢別では、男女とも年齢が高いほど多いが、それは事業主と従業員の年齢的距離が縮まっていくことも影響していよう。業種別では、機械修理業、情報処理業、自動車整備業、映画・ビデオ制作業で多く、病院、旅館、各種学校、老人福祉事業で少なくなっている。従業員と事業主とがキャリア的に連続しているか、あるいは少なくとも従業員の意識の中でそのように描きやすい業種、つまり現在の事業主に未来の自分の姿を見ることのできる業種において、こうした認識は芽生えやすいと考えられる。従業員規模別では、規模が小さいほどそういう認識をする人の割合が多い。すなわち、事業体が小さくて労使が日常的に接触する機会が多い場合に、立場が変わらないと認識しやすいと思われる。
 以上より、勤め先に対して積極的なコミットメントをする従業員の多い職場というのは、現実に賃金や労働条件がよいということだけでなく、その場所を自分のキャリア形成や、より大袈裟には世界観に重要なものとして位置付けていることにも規定されているのである。特に理美容業の場合、従業員は職場を自分の腕を磨く場として捉えているために、「客観的」には福利厚生等の条件が良くなくても、耐えられるというだけでなく勤め先に積極的なコミットメントまで行うことが出来ているのである。
第8節 まとめ
 福利厚生制度において、従業員の要望などの点から見て今後実施が特に求められていくのは、託児所・保育施設や介護休業制度など、女性フルタイマーに対する設備であろう。特に、事業主は自分の属する業種における福利厚生の標準のことを認識していない場合もあり、正確な認識をしてもらうことも必要である。従業員の方でも福利厚生に関する現実と認識のギャップが少なからず見られるが、これは福利厚生以外の要因によって職場への満足度が高まっている場合に多い。労働組合や従業員組織が、福利厚生制度の拡充に果たしている役割は、かなり高いと評価することができる。また、高い熟練度や専門性を要する職場においても、福利厚生制度の充実度は高い。労使コミュニケーションにおいては、労働組合の結成率はおしなべて低く、発言型ないし親睦型の従業員組織の結成率の方が高い。
 従業員の職場生活全体の満足度に強い影響を与えているのは、賃金や労働時間よりも人間関係や作業環境である。実際、事業所の規模が小さかったり、事業主と従業員の職務の共通性・連続性があったりする場合には、職場に親密な人間関係が生まれ、従業員の仕事へのコミットメントは高まる。また、事業主の側の自己評価においては、新規開業型か、それとも分社・派遣型かで違いが生まれ、後者の方が労使関係や経営方式は「近代的」だが、自己評価は否定的だという逆説も見られた。


第8章 事業主のキャリアと雇用者の独立開業

 事業主のキャリアを明らかにするとともに、雇用者から開業した事業主に焦点を当て開業理由等を分析する。それに続き従業員の独立開業志向や開業実態、さらには開業環境の変化や企業の開業支援の内容を検討する。
第1節 事業主のキャリア
 事業主の開業の経緯では、「雇用者から新規に独立開業した」が38.3%と最も多く、つぎに「家業を引き継いだ」(18.5%)が第2位で、これら以外は「関連会社や子会社として開業した」(10.7%)、「家業とは別に新たに開業した」(9.9%)、「会社(法人)内で昇進した」(9.5%)、「金融機関・親会社等から派遣された」(4.7%)、「主婦、学生から新規に独立開業した」(2.8%)などキャリアが分散する。調査対象企業の事業主の約4割は雇用者から開業しており、独立開業が雇用者のキャリアの一つとなっている。
 事業主の開業の経緯は、会社の設立時期や会社の従業員規模、さらには業種によって異なる。
(1) 会社の設立時期が新しいほど雇用者からの独立開業と関連会社等としての開業が増え、他方、開業時期が古くなると家業継承が増加する(59年以前開業で46.2%、60-74年開業で23.9%)。
 雇用者からの開業は、75年以降の開業では46-49%を占める(60-74年開業で35.4%)。
(2) 企業の従業員規模が小さくなると雇用者から開業した事業主が増加する。雇用者から開業した事業主は、従業員0人(妻などが家族従業員として働いている可能性があるが調査していない)で56.1%、従業員1-9人で52.9%と過半を占める(従業員10-50人では36.6%)。
(3) 業種によって事業主の開業の経緯に相違が見られる(図表8-1)。この相違は、業種毎による企業の設立時期や従業員規模の違い、さらには雇用者からの開業の可能性等に規定されたものである。総計では、事業主の開業の経緯として比率が少ないものであっても、業種によっては指摘率の高い開業経緯となっている。法律事務所等、建築サービス業等、情報処理業、理美容業、自動車整備業の5つの業種では、雇用者からの開業が50%を超え、雇用者からの開業が多い業種である。
図表8-1 業種別にみた事業主の開業の経緯
第2節 雇用者からの開業した事業主のキャリアと開業理由
1 雇用者から開業した事業主のキャリア
 雇用者から開業した事業主は2032人であるが、これらの事業主の属性と開業までのキャリアはつぎのようになる。
(1) 性別では男性94.3%、女性3.5%で、男性が圧倒的である。
(2) 平均年齢は53.0歳である。
(3) 最終学歴は大学以上が49.5%、高校27.5%、中学7.7%、高専・短大5.1%となる。
(4) 雇用者から開業した時の平均年齢は34.8歳である。開業年齢は20歳代(23.7%)から40歳代(20.2%)が多く、その中でも30歳代が48.0%と過半を占める。
(5) 開業前に勤務していた企業の業種は「今と同じ業種」が61.1%、「今と類似の業種」が21.9%、「今と異なる業種」が16.4%となる。
(6) 開業前に勤務していた企業での仕事は、「今と同じ仕事」が52.4%で、「今と類似の仕事」が31.2%、「今と異なる仕事」が16.1%となる。
(7) 開業前に勤務していた企業の従業員規模は、中小企業が大多数(299人以下83.8%)で、その中でも9人以下(36.7%)と10人から99人(37.2%)の小規模企業が多い。
 以上によると、雇用者から開業した事業主は男性がほとんどである。半数が大学卒以上であるが、平均年齢が53歳であることを考慮すると同年齢層に比べ高学歴層が多い。開業する直前に勤務していた企業は中小企業が大多数で、勤務先企業の業種は現在の業種と同じだった者が多く、開業した年齢は30歳代が中心となる。
2 雇用者の開業理由
 雇用者から開業した事業主の開業理由(複数回答)は、「自由に自分の能力を発揮したい」(71.7%)と「自分の技術・知識が生かせるから」(53.1%)が2大理由で、この2つ以外では「自分なりのライフスタイルの実現」(33.7%)、「事業の面白さを味わいたいから」(32.4%)、「自分のペースで仕事ができるから」(30.2%)、「より高い所得が得られるから」(30.2%)が30%台となる。雇用者が開業する理由では、所得志向よりも能力発揮志向が強いことが分かる。雇用者から開業した事業主の開業理由は、後に分析する開業を希望する正社員の開業希望理由と違いが見られる。
第3節 雇用者から開業した事業主の職業生活評価
 雇用者から開業した事業主は、自分の職業生活を、大企業の同世代の雇用者と比較してどのように評価しているのか。調査では職業生活に関わる6つの項目をあげ、それぞれについて評価を求めた。結果では、取り上げた6つの項目のすべてにおいて、大企業の同世代の雇用者よりも、事業主である自分の方が恵まれているとの回答が多くなった(図表8-2)。雇用者から開業した事業主は、自分の職業生活を大企業の同世代の雇用者と比較して肯定的に評価している。とりわけ「仕事のやりがい」と「自分らしく生きられる」の2つでは、事業主である自分の方が良いとする者の比率がきわめて高い。他方、「仕事のつらさ」と「収入」では、自分の方が良いとの回答が多いものの、大企業の同世代の雇用者の方が良いとする者との差が少なくなる。
図表8-2 雇用者からの開業者の職業生活評価-大企業の雇用者との比較-
 雇用者から開業した事業主の職業生活評価と回答者総計の職業生活評価を比較しよう。後者の職業生活評価は、図表8-2のe)欄に表掲している。職業生活評価の6つの項目のすべてについて回答者総計の評価よりも雇用者から開業した事業主の評価の方がよりプラスに評価されている。後者には前者の回答者が含まれていることから、後者から前者を除くと、雇用者から開業した事業主とそれ以外のキャリアの事業主との職業生活評価の差が一層大きくなる。つまり、雇用者から開業した事業主は、他のキャリア類型の事業主よりも、自分の職業生活をより肯定的に評価している。
第4節 開業を希望する正社員と開業希望理由
1 正社員の開業志向
 事業主のキャリアでは、雇用者から開業した者の比重が高く、かつそうした事業主の職業生活評価は良好なものであった。そこでつぎに調査対象企業に雇用されている正社員の開業志向を取り上げる(図表8-3)。正社員の中で「将来独立開業したい」と考えている者は7.3%となった。正社員の中で開業希望を持つ者はそれほど多くはない。
図表8-3 正社員に占める開業希望者
 開業希望を持つ者を属性別に見ると、<1>女性よりも男性で多く、<2>男性の中では、10-20歳代と30歳代で高くなる。
 勤務先の業種別に見ると正社員の中で開業希望を持つ者の比率が異なる(図表8-4)。開業希望者が10%を超える業種は、理美容業(23.8%)、法律事務所等(15.3%)、建築サービス業等(13.4%)の3業種である。事業主の中で雇用者からの開業した者が多い業種について、正社員に占める開業希望率を調べると、理美容業、法律事務所等、建築サービス業等の3つの業種は、雇用者から開業した事業主が多いだけでなく、正社員の中で開業希望を持つ者が多い。
図表8-4 雇用者からの開業者が多い業種別に見た正社員に占める開業希望者の比率
2 正社員の開業希望理由
 正社員が開業を希望する理由(複数回答)は多様であるが、「自分なりのライフスタイルを実現したいから」と「自由に自分の能力を発揮したいから」が2大理由となる(図表8-5)。これら以外では、「自分のペースで仕事ができるようになるから」(37.4%)、「自分の技能や知識を生かせるから」(35.2%)、「より高い所得が得られるから」(31.4%)、「事業の面白さを味わいたいから」(26.8%)となる(以上20%以上の指摘率の選択肢)。男性正社員の中で開業希望者が多かった10-20歳代と30歳代を取り出すと、正社員計に比べ「より高い所得が得られるから」がやや多くなる。
図表8-5 開業希望理由(複数回答)
 以上によると、開業希望理由では自分のライフスタイルの実現と能力発揮志向が高く、それに比べ所得志向は低いと言える。
 雇用者から開業した事業主の開業理由と開業を希望する正社員の開業理由を比較すると、両者の間に違いが見られる(図表8-6)。雇用者から開業した事業主の開業理由では、能力発揮志向が第1位を占めるが、正社員の開業希望理由では自分のライフスタイル実現志向が第1位となる。また正社員の開業希望理由では、事業主の開業理由に比べ技能・知識活用志向も順位が低い。他方、正社員の開業希望理由では、自分のペースで仕事がしたいが3位に入る。つまり、事業主に比べ正社員の開業希望理由では、能力発揮志向や技能・知識活用志向が弱く、自分のライフスタイル実現志向や自分のペースで仕事ができることを志向して開業を希望する者が多くなる。正社員の開業希望者は、自分のライフスタイルを実現するための方法として開業を志向しているのである。
図表8-6 雇用者からの開業した事業主の開業理由と正社員の開業希望理由の比較
第5節 正社員が希望する開業業種
 開業を希望する正社員が開業したいと考えている業種について、現在の勤務先の業種との関連を見ると、勤務先の業種での開業を希望する者は35.4%と3分の1程度でしかなく、類似業種での開業が24.6%、異種業種での開業が24.6%となる(図表8-7)。後者2つの合計は、同一業種での開業を大きく上回る。雇用者から開業した事業主について開業前に雇用されていた企業の業種と開業業種との関係を見ると、同一業種での開業が61.1%と多くなっていた(図表8-7の参考)。つまり従来の雇用者からの開業では同業での開業が多かったが、最近では雇用者が同業で開業することが難しくなっていることが、同業での開業希望を少なくしている背景と考えられる。この点は後に検討する。
図表8-7 正社員の開業希望者が開業を希望する業種
 正社員が開業を希望する業種は、勤務先の業種により相違が見られる(図表8-8)。現在の勤務先と同じ業種で開業しようと考えている者が多いのは、理美容業、法律事務所等、建築サービス業等である。この3つの業種は、正社員の開業希望者が多い業種でもある。他方、異業種での開業を希望する者が多いのは、病院、旅館、リース業などである。後者の3つの業種の事業主のキャリアを見ると、旅館(7.3%)では雇用者からの開業が少なく、家業継承と家業とは別に開業した者が多く、病院では家業継承が目立ち、リース業では関連会社・子会社としての参入や金融機関等の派遣が多くなる。つまり異業種での開業希望者が多い業種は、雇用者以外からの開業が多い業種である。
図表8-8 現在の勤務先の業種と今後の開業希望業種の関係
第6節 雇用者の開業環境評価
1 10年前と比較した開業環境評価
 雇用者が同業で開業する場合の開業の困難度や容易さが、10年前と比較してどのように変化していると事業主は評価しているのか(図表8-9)。総計では、「難しくなっている」とした者が半数(47.8%)を占め、「どちらかといえば難しくなっている」(29.6%)も3割ほどとなり、この両者を併せると8割弱となる。他方、容易になった(「どちらかといえば容易になった」と「容易になっている」)は、5%強でしかない。開業環境に関する評価は、雇用者から開業した事業主を取り出してもほとんど同様の結果となる。10年前との比較で見ると、雇用者が勤務先の同業で開業することが次第に難しくなっていると言えよう。
図表8-9 雇用者の同業での開業の困難度の変化(10年前との比較)
 同業での開業が難しくなっているの回答が多いが、その比率は業種で異なる(図表8-10)。病院、各種学校、法律事務所等、個人教授所、廃棄物処理業、旅館では「難しくなっている」が50%を超えている。
図表8-10 業種別に見た雇用者の同業での開業の困難度の変化(10年前との比較)
 他方、映画・ビデオ作成業、建築サービス業、葬儀業、情報処理業、建物サービス業等、情報提供業、理美容業、老人福祉事業では「難しくなっている」の指摘率が低くなる。
2 同業での開業が難しくなっている理由
 同業での開業が難しくなっている理由(複数回答)は、「同業者間の競争が激しいから」(60.0%)が第1位で、これ以外の理由は40%以下となる。40%以下の選択肢の中では、「市場の変化が激しく予測が困難」(38.3%)、「市場規模が縮小・停滞している」(36.2%)、「人件費が高額になったから」(32.1%)、「事業運営のノウハウが高度化した」(30.5%)が30%以上となる。
 同業での開業が難しくなっている理由は業種別に違いがあり、それはつぎのようになる(図表8-11)。
図表8-11 開業が難しくなっている理由(総計より指摘率が高い主たる業種)
第7節 従業員の独立開業と開業支援
1 従業員の開業の実態
 過去3年間に従業員の中で開業した者がいたかどうかを調べると、総計で「いた」とした事業主が18.9%、「いない」とした事業主が76.7%となる(図表8-12)。事業主に独立することを知らせずに会社を辞める従業員も少なくないと考えられることから、開業した従業員がいた企業は、これを上回ると考えられる。
図表8-12 過去3年間の従業員の開業の有無と開業者数
 開業した従業員がいた企業における3年間の平均開業者数は2.1人である(図表8-12)。分布で見ると、1人が51.3%、2人が25.2%、3人が12.3%、4人以上が9.8%となる(無回答1.5%)。3年間に開業した従業員の累計は1,484人となり、年換算すると年495人が開業したことになる。調査対象企業の総数は5,307社であることから、5,307社から年間495人が独立して新しい企業が誕生した計算となり、独立した者が一人で1社の企業を創業したとしたとすると開業率は9.3%となる。この開業率は、事業所統計から推計されたサービス業の年間開業率の約5%を上回る。
 開業した従業員がいたとした事業主が多い業種と従業員の中で開業希望を持つ者の比率が高い業種は、重なるのかあるいは重ならないのか。前掲図表8-4とつぎの図表8-12を比較すると、理美容業、建築サービス業等、法律事務所等の3つの業種では、開業した従業員が「いた」とした事業主が多いだけでなく、開業を希望する従業員が多い業種であることが分かる。つまりこれらの業種では、従業員の開業志向が実現できる可能性が高いことになる。
 事業主の自社の労務管理自己評価と過去3年間の従業員の独立の有無との関係では、両者の間に相関関係は見いだせない。例えば、労務管理自己評価得点が低い企業、つまり労務管理の整備が遅れている企業で独立する従業員が「いる」とした事業主が多くなるわけではない。また事業主による自社の属する業界の成長判断別と従業員の独立の有無との間に相関があるわけでもない。つまり業界が成長していると判断した事業主の企業で、独立した従業員が「あった」とした事業主が多いわけでもない。
2 従業員の開業支援の有無と内容
 開業する従業員に対して何らかの支援をしている事業主はどの程度あるのか。またその支援内容はどのようなものか。総計で従業員の独立開業を「支援している」とした事業主が14.8%で、「支援していない」とした事業主は70.2%となる(無回答15.1%)。雇用者から独立した事業主の企業では、「支援している」が21.0%とやや多くなる。また事業主による労務管理の自己評価得点別では、評価得点が高くなるにつれ、つまり労務管理が整備されていると自己評価した企業で、開業支援を「実施している」とする事業主が増加する。
 また業種によって開業支援を行っている企業の比率が異なる(図表8-13)。開業支援を実施している企業が多い業種は、理美容業、法律事務所等、建築サービス業等などである。この3つの業種は、雇用者から開業した事業主が多いだけでなく、開業を希望する従業員の多い業種でもある。
図表8-13 開業支援を実施している企業
3 開業支援の内容
 開業支援を実施している企業におけるその内容(複数回答)は、「開業後も親身に相談」(64.6%)、「顧客の斡旋」(40.5%)、「経営技術の指導」(37.2%)が3大支援の内容で、これ以外は20%以下の指摘率となる。
 開業支援を実施している企業が多い理美容業、法律事務所等、建築サービス業等の3つの業種について、開業支援の内容を調べると、多少の違いがあることが分かる(図表8-14)。理美容業では、「開業後も親身に相談」と「経営技術の指導」の2つが主たる支援でこれに「開業資金の貸与・与信」が続く。法律事務所等では、「開業後も親身に相談」、「顧客の斡旋」、「のれん分け制度」が主たる支援で、建築サービス業等は総計と同様の支援内容となる。
図表8-14 開業支援の内容(複数回答)(%)
第8節 まとめ
 本章で明らかとなった点をまとめるとつぎのようになる。
(1) 事業主のキャリア及び従業員のキャリア志向からみて独立開業は、サービス業で働く雇用者のキャリアの一つとして位置づけることができる。
(2) 雇用者から開業した事業主は、中小企業の雇用者から独立した者が多いが、事業主としての職業生活に関して大企業の同世代の雇用者に比べ良好なものと評価している。とりわけ仕事のやりがいと自分らしく生きられる点で、事業主は自分の職業生活をきわめて高く評価している。
(3) 同業者間の競争激化などを背景に10年前と比較すると、雇用者が勤務先と同業で開業することが難しくなっている。こうしたことから、開業を希望する雇用者が、開業したいと考える業種では、同業が3分の1と少なく、類似業種や異業種が多くなる。雇用者から開業した事業主では、同業での開業が6割を占めていることと比べ大きな違いである。同業での開業が難しくなっていることが、開業を希望する雇用者の開業業種の選択に影響している可能性が高い。
(4) 雇用者から開業した事業主では、自分の能力発揮や技能・知識の活用を考えて開業した者が多いが、開業を希望する雇用者の開業希望理由では、自分のライフスタイルの実現志向が強くなる。
(5) 過去3年間に独立開業した雇用者数から、企業の創業率を推計すると年率で約1割となる。雇用者の独立開業によって、毎年、約1割の企業が新しく誕生した計算となる。
(6) 従業員の開業支援を実施している企業は多くないが、その内容は開業後の相談、顧客 斡旋、経営技術の指導の3つである。
(7) 以上の指摘は調査対象全体の傾向であり、業種によりいくつかの相違が見られる。理美容業、建築サービス業等、法律事務所等の3つの業種は、雇用者から開業した事業主が多く、かつ正社員の中で開業を希望する者だけでなく同業での開業を希望する者も多くなる。さらには従業員の開業支援を実施している企業が多く、また過去3年間に開業した従業員が「あった」とした企業も多くなる。つまりこの3つの業種では、独立開業が企業のキャリア管理や従業員のキャリア志向に組み込まれている。しかし法律事務所等では、10年前と比較して開業が難しくなったとした事業主が総計に比べても多く、今後は、従業員の開業が難しくなる可能性が指摘できる。


参考資料

資料1 業種別事業内容一覧
業種別事業内容一覧P1
業種別事業内容一覧P2
業種別事業内容一覧P3
業種別事業内容一覧P4
業種別事業内容一覧P5
業種別事業内容一覧P6
業種別事業内容一覧P7
業種別事業内容一覧P8

資料2 従業員福祉の向上に対する意見・要望(企業・法人票)
(企業・法人票)P1
(企業・法人票)P2
(企業・法人票)P3
(企業・法人票)P4
(企業・法人票)P5
(企業・法人票)P6
(企業・法人票)P7
(企業・法人票)P8
(企業・法人票)P9
(企業・法人票)P10
(企業・法人票)P11
(企業・法人票)P12
(企業・法人票)P13
(企業・法人票)P14
(企業・法人票)P15
(企業・法人票)P16
(企業・法人票)P17
(企業・法人票)P18
(企業・法人票)P19
(企業・法人票)P20

資料3 従業員福祉の向上に対する意見・要望(従業員票)
(従業員票)P1
(従業員票)P2
(従業員票)P3
(従業員票)P4
(従業員票)P5
(従業員票)P6
(従業員票)P7
(従業員票)P8
(従業員票)P9
(従業員票)P10
(従業員票)P11
(従業員票)P12
(従業員票)P13
(従業員票)P14
(従業員票)P15
(従業員票)P16
(従業員票)P17
(従業員票)P18
(従業員票)P19
(従業員票)P20
(従業員票)P21
(従業員票)P22
(従業員票)P23
(従業員票)P24
(従業員票)P25
(従業員票)P26
(従業員票)P27
(従業員票)P28

資料4 調査票及び単純集計結果

企業・法人用
サービス業における経営革新と従業員福祉
企業・法人用P1
企業・法人用P2
企業・法人用P3
企業・法人用P4
企業・法人用P5
企業・法人用P6
企業・法人用P7
企業・法人用P8
企業・法人用P9
企業・法人用P10
企業・法人用P11
企業・法人用P12
企業・法人用P13
企業・法人用P14
企業・法人用P15
企業・法人用P16
企業・法人用P17
企業・法人用P18
企業・法人用P19
企業・法人用P20
企業・法人用P21
企業・法人用P22
企業・法人用P23
企業・法人用P24

従業員用
サービス業における従業員福祉とキャリア
従業員用P1
従業員用P2
従業員用P3
従業員用P4
従業員用P5
従業員用P6
従業員用P7
従業員用P8
従業員用P9
従業員用P10
従業員用P11
従業員用P12
従業員用P13

[先頭に戻る]