調査研究成果データベース

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序論
第1節 調査研究の概要
  1 調査研究の趣旨
  2 調査研究の方法
  3 調査研究の概要
   (1) アンケート調査
   (2) インタビュー調査
   (3) 既存調査の再集計

第2節 問題の所在と本調査研究の意義
  1 母子世帯とは
  2 母子世帯数が増えている
  3 日本の母子世帯比率はまだ低い
  4 母子世帯の経済問題は賃金が低いこと
  5 日本の母子世帯就業率が高い理由
  6 母子世帯問題と階層問題の関わり
  7 結びにかえて-「米百俵」


第1部 母子世帯の母への就業支援に関する調査
第1章 アンケート調査
 I 調査の目的
 II 調査の方法
 III 調査実施時期
 IV 回収状況
 V 調査結果の概要

第1節 調査対象者の属性
  1 本人の状況
  2 世帯・子どもの状況

第2節 有業者の状況
  1 現在の仕事のあらまし
  2 就業継続に関する意識
  3 副業の有無

第3節 無業者の状況
  1 就業希望に関する意識
  2 働いていない理由と働ける条件
  3 希望する働き方

第4節 母子世帯になった当時の状況
  1 暮らしを立てた方法
  2 仕事上の変化
  3 就業形態の変化
  4 就職・転職した者の状況
  5 仕事に向けての準備

第5節 生活一般
  1 暮らし向きについての意識
  2 健康状態について
  3 児童扶養手当
  4 世帯収入の内訳と主な収入
  5 月平均の収入と支出
  6 最低収入に対する意識
  7 親・親族からの援助
  8 社会保険の加入状況
  9 生活意識

第6節 職業能力の向上と支援策
  1 パソコンの使用状況
  2 資格の取得状況
  3 資格や技能習得等の実施
  4 仕事に関する支援策

第2章 自由回答欄のコード分析
 1 自由記入欄の記入者数
 2 自由記入の内容
  (1) 概要
  (2) 具体的内容
  (3) 終わりにあたって

第3章 インタビュー調査


第2部 再集計

第1章 就業構造基本調査の再集計の概要
 1.就業構造基本調査の再集計について
  (1) 各世帯の定義
  (2) 「子ども」と「孫」の定義
 2.属性の集計-6類型の比較
 3.有業の割合にみる就業状況
 4.有業者の就業の状況
 5.有業者の就業に関する意識
 6.無業者の就業に関する意識
 7.就業異動
 8.母子世帯の子どもの就業状況

第2章 全国母子世帯等調査の再集計の概要
 1 はじめに
 2 平成10年度全国母子世帯等調査の概要
 3 再集計結果の概要
  (1) 世帯の状況
  (2) 母子世帯になった年齢と理由
  (3) 就業状況
  (4) 無業者の就業希望
  (5) 年間収入等
  (6) 子どもを巡る状況
  (7) 現在困っていること
  (8) まとめ


第3部 分析編

第1章 母子世帯の就業実態:調査結果から得られる知見

1.母子世帯の定義をめぐる問題
  (1) 母子世帯の定義と世帯数
  (2) 同居率
  (3) 地域分布

2.母子世帯の就業実態
  (1) 母子世帯の母の就業率の高さ、就業形態の特徴
  (2) 勤労収入
  (3) 労働時間
  (4) 勤労収入を規定するもの
  (5) 母子世帯になってからの期間別にみると
  (6) 母子世帯になる前の働き方、前後の状況
  (7) 学歴の問題
  (8) 子どもの就業・進学問題

3.おわりに
  (1) 「未婚・非婚」者への就業支援について
  (2) 副業について
  (3) 深夜・早朝の就業について
  (4) 父子世帯の就業実態について

第2章 離婚直後の世帯の経済面と生活面の状況
   ―人口動態社会経済面調査報告『離婚家庭の子ども』の再分析
 1.はじめに

 2.離婚直後の家族と住まいの状況
  2-1 末子の年齢、子ども数、兄弟が分れることの有無
  2-2 他の親族との同居の有無と住居の状況

 3.子ども年齢と離婚前後の就業状態の変化、離婚前の経済状況
  3-1 就業状態の変化
  3-2 現在収入の規定要因としての子ども年齢と就業形態、就業履歴

 4.養育費・一時金の支払い状況とその決定因
  4-1 養育費・一時金等の支払いの状況
  4-2 養育費や一時金の支払いの決定要因

 5.児童扶養手当の申請と受給
  5-1 児童扶養手当の認知と申請の状況
  5-2 児童扶養手当の申請、受理の決定因のプロビット分析

 6.暮らし向き全般

 7.子どもの心の状態の変化

 8.おわりに

付録

第3章 母子世帯の母のキャリア形成、その可能性
   ―『就業構造基本調査平成9年』を中心に

1.はじめに

2.母子世帯と有子有配偶世帯の就業率と収入
  (1) 労働力率と仕事が主な者の割合
  (2) 個人の就業収入、その他の世帯収入および収入の種類
  (3) 就業形態別に見た就業収入

3.仕事についた年齢と仕事機会
  (1) 年齢と就業形態の変化
  (2) 就職年齢と就業形態
  (3) 中高年からの正社員への参入の可能性
  (4) 就職年齢と賃金経路
  (5) 母子世帯に見られる勤続の短さと「予想外」が必要とする調整

4.より良い仕事を求めて

5.子ども数と暮らし向き

6.女性の就業確率、賃金関数の推計と男性賃金との比較
  (1) 方法
  (2) 母子世帯と有配偶世帯の就業確率の推計
  (3) 母子世帯と有配偶世帯の賃金関数の推計
  (4) 男性賃金関数との比較

7.就業選択とセレクション修正済みの賃金関数および労働供給関数
  (1) 就業セレクション修正済みの賃金関数と労働供給関数の推計
  (2) 就業形態選択と賃金関数

8.母子世帯の就業支援

9.おわりに


第4部 資料編

1 母子世帯の母への就業支援に関する調査集計表

2 就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年)

3 全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年)

4 母子世帯の母を対象とした取組事例
  地方自治体における母子家庭の母の自立・就労支援の取組
  母子福祉団体における母子家庭の母の自立・就労支援の取組
  母子家庭の母が多く活躍する企業の状況-企業ヒアリングによる-

5 集計対象調査票
 (1) 母子世帯の母への就業支援に関する調査
 (2) 就業構造基本調査(平成9年、昭和62年)
 (3) 全国母子世帯等調査(平成10年、平成5年)
 (4) 人口動態社会経済面調査-離婚家庭の子ども(平成9年)
序論


第1節 調査研究の概要

1 調査研究の趣旨
 「人口動態統計調査」(厚生労働省)によると、近年の離婚率は昭和38年の0.73を底に上昇傾向を示しており、平成12年には2.10と近年急激に上昇している。このような離婚率の上昇等により、「ひとり親世帯」は増加傾向にある。特に母子世帯の母は、「全国母子世帯等調査」(厚生労働省)によると、平成10年には約95万世帯で、平成5年に比べ2割増加したことが報告されている。(ただし、平成5年は母子、父子ともに減少しており、10年前を基点にすると、12.4%増となる。)遡って、20年前と比較してみると、母子世帯数は1.5倍に増加し、当時は半数を占めていた死別による母子世帯が2割弱に減っており、質・量ともに大きく変化している。

離婚件数及び離婚率の年次推移
母子世帯になった理由別母子世帯数及び構成割合の推移

 本研究は「ひとり親世帯」のうち、母子世帯の母を対象にしている。
 母子世帯の母は、世帯主として生活を支えるだけの収入を得る必要があるにもかかわらず、十分な技能の習得なしに就業せざるを得ない場合が多く、経済的に自立した生活が困難な者も多い。もとより従来から各種の施策が講じられているが、現下の厳しい雇用情勢の下で状況は一層厳しさを増していると考えられる。母子世帯の母等の実態については旧厚生省の他、地方自治体でも調査がなされているが、それは生活の実態を全般的にとらえたものであったり、詳しい報告でも残念ながら地域が限定されていたりする。本研究は、母子世帯の母が、経済的に自立した生活を送ることを可能にするという観点から、就業のプロセスを含む実態を踏まえて、問題点を把握することにより、今後の施策に資することを目的としている。

2 調査研究の方法
 平成12年度に日本労働研究機構研究所内に「母子家庭等就労支援に関する研究会」を設置、母子世帯の母を対象にアンケート調査とヒアリング調査を実施したほか、既存調査の再集計を行った。

「母子家庭等就労支援に関する研究会」

主査  仁田 道夫  東京大学社会科学研究所所長
江上 節子  東日本旅客鉄道(株) フロンティアサービス研究所長
友田 直人  (福) 社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会常任協議員
永瀬 伸子  お茶の水女子大学大学院助教授
藤原 千沙  岩手大学人文社会科学部助教授
松原 康雄  明治学院大学教授
今田 幸子  日本労働研究機構統括研究員
濱田 知子  元日本労働研究機構主任研究員(神奈川労働局雇用均等室長)
小川 幸子  元日本労働研究機構主任研究員(埼玉労働局効用均等室長)


3 調査研究の概要

(1) アンケート調査
  「母子世帯の母への就業支援に関する調査」
 生活と就業の実態及び意識を把握するためアンケート調査を実施した。

 ・調査対象  60歳未満の母親と20歳未満の子どものみで構成されている5,000世帯
   平成7年の国勢調査時に設定された調査区をもとに全国から調査地域を抽出し、その地域の住民基本台帳から60歳未満の母親と20歳未満の子どものみで構成されている5,000世帯を抽出し、調査対象とした。この中には父親が単身赴任しているため、母子のみで暮らしている世帯等も含まれており、母子世帯に該当しない場合は、該当しない旨の回答を依頼した。回収票には3割の非該当が含まれていた。

 ・調査実施時期  平成13年1月~2月10日

 ・調査方法    郵送による配布・回収

 ・回収状況
   有効配布数 4,940件
   回収数 2,733件
    該当調査票回収数 1,874件
    非該当調査票回収数 859件
   有効集計対象数 1,721件
   推定有効回収率(注1) 50.8%
   推定最低有効回収率(注2) 42.2%

    (注1)未回収の対象者の中に回収した調査票と同率の非該当が含まれていると推定した場合の回収率
    (注2)未回収の対象者には非該当が含まれていないと推計した場合の回収率

 ・調査内容    母子世帯の生活、就業の実態及び意識について調査した。

 ・調査結果を要約すると次のとおりである。
 <1> 母子世帯の母の9割は働いている。

 <2> 就業形態をみると、「正社員・正規職員」が4割、「パート・アルバイト」が3割である。

 <3> 職業をみると、「正社員・正規職員」では事務、専門・技術職が多く、「パート・アルバイト」ではサービス、製造、営業、事務に分散している。

 <4> 育児と両立させるため、通勤時間が短く、片道通勤時間「15分未満」に4割、在宅での就業を含めると、30分未満が7割を占めている。

 <5> 有業者の仕事からの年収は平均値245.6万円、中央値200.0万円である。

 <6> 社会保障給付等を含めた世帯の平均月収は21万円で、現在の暮らしを苦しいと感じている者が6割を超えている。

 <7> 4割が母子世帯になる前には働いておらず、早く収入を得たいために仕事に就いた者が多く、よりよい就職先を求め、転職を希望する者が多い。また、初職を継続就業している者以外では、半数が母子世帯になってから転職を経験している。

 <8> よりよい就職や仕事上の問題解決のために、職業能力の開発向上や情報の入手についての支援を求めている。こうした能力開発関連の支援策は年収の低い層で要望が多く、子育て関連の支援策は収入が高くなるほど多くなる傾向がみられる。

 <9> 世帯収入に含まれる項目をみると、離婚では、本人の勤労収入が9割、親・親族からの援助と子の父からの養育費がそれぞれ2割である。なお、児童扶養手当を7割強の世帯が現在受給している。死別では、遺族基礎年金・厚生年金が9割弱、本人の勤労収入が8割である。

 <10> 主な支出をみると、家賃や教育費の負担が大きい。


 ・調査票には自由記入欄を設けたが、1,000人を超える記入があった。また、そのボリュームも相当のものであった。これは調査票の回収率の高さとともに本調査の特徴としてあげることができる。現状を変えたい、変えてほしい、あるいは困難を乗り越えてきた過去を振り返ってあとに続く人たちの道を切り開きたいという思いが伝わってくる多くの意見等がよせられた。中には切実な状況を訴え、救いを求めるものも含まれていた。また、調査が何の役に立つのかというご批判もあった。

 ・自由記入については若干の分析を試み、生の意見等を紹介している。手を加えない意見であるため、施策等の実態が必ずしも反映されているとはいえず、また、誤解による意見も含まれていることをお断りしておく。当事者がどのように受け止め、考えているかという情報は大変貴重なことと考えるが故に、あえて排除はしていない。


(2) インタビュー調査
 アンケート調査時にインタビュー調査に協力してもらえるかどうか意向を確認し、協力する旨の返事をもらった中から次のように対象者を選定し、11人について、インタビュー調査を実施した。
 対象者は児童扶養手当の受給(全額受給、一部受給、収入要件ではずれた、年齢要件ではずれた)を軸に、母子世帯になってからの期間(母子世帯になった当時の状況や現在に至る経緯が聞き取れること)と仕事(働き方や仕事を幅広くとること)に留意して、地域的には都市部に限定し、首都圏を中心に一部関西からも選定している。

(3) 既存調査の再集計
 就業構造基本調査(平成9年、昭和62年)、全国母子世帯等調査(平成10年、同5年)と人口動態社会経済面調査-離婚世帯の子ども-(平成9年)について再集計を行った。

☆就業構造基本調査(総務省)の再集計
 母子世帯の母の就業の実態、就業に関する意識を把握するため、平成9年と昭和62年の就業構造基本調査を再集計した。ここでは母子世帯、父子世帯、同居母子・父子世帯、有配偶有子世帯を抽出し、母子世帯の特徴を明らかにしている。

 再集計結果
 ・母子の世帯年収は低く、半数近くが200万未満で、400万を超える世帯は1割強にすぎない。

 ・母子、同居母子ともに学歴が低い傾向にある。父子、同居父子ではその傾向がより顕著である。

 ・有業者の従業上の地位・雇用形態は、母子の半数が正規雇用で働いており、有配偶母親の3割強に比べると正規雇用比率はかなり高くなっているが、正規雇用者の職業をみると、専門・技術・管理で働く者が有配偶母親の半数程度と差がついており、有配偶母親に比べその個人所得は低い。また、10年前と比べると、所得格差は拡大している。

 ・母子では正規雇用などへの転職希望が高く、求職活動者の比率も高く、就業意欲は高い。

 ・母子では無業者の就業希望が高く、過半数が仕事を探している。

 ・就業希望者で求職活動をしていない母子では「病気・高齢のため」を理由にあげる者が3割を占めている。病気・高齢を理由にあげる者は年代が若くても母子に多く、病気や体力的な問題で、働きたくても働けない状況が読みとれる。

☆全国母子世帯等調査(厚生労働省)の再集計
 生活の実態とその支援を中心に実施されており、ここでは、母子のみ世帯(独立世帯という。)と同居世帯を抽出し、比較検討した。

 再集計結果
 ・親等との同居世帯で、幼い子供を持つ20歳代前半までの者の比率が高い。

・母子世帯になる前の就業状況をみると、現在の親同居の状況によらず、無業者の割合は全く同じで、働き方をみると、同居世帯でパートよりも常用雇用者の割合が高い。

・現在の就業状況についても大きな差はなく、母子世帯になる前と同じく同居世帯で常用雇用者の比率がやや高い。

・無業者は独立世帯でやや多い程度だが、就業していない理由をみると、世帯間で差が出ている。求職中、病気・病弱が独立世帯で多く、一方、職業訓練中がその絶対値は小さいものの同居世帯で多い。

・子どもの進学目標にやや差が出ており、同居世帯では大学がトップにきているが、独立世帯では高校がトップで、中学校が僅かだが含まれている。

☆人口動態社会経済面調査(離婚家庭の子ども)(厚生労働省)の再分析
 人口動態社会経済面調査(離婚家庭の子ども)は、協議離婚直後の状況を押さえた貴重な調査である。再集計によると、子あり離婚は、6歳以下(6割)、中でも2歳以下(4割)の子どものいる世帯で多く起こり、女性が引き取ることが多いことが判明した。以下、<1>母子家庭、父子家庭の離婚後の家族や住まいの状況、<2>女性を中心に、子ども年齢と離婚前後の就業状況変化や離婚前の経済状況、<3>養育費や一時金はどういう場合に支払われているかその決定因の検討、<4>児童扶養手当の申請や受給状況をみた上で、誰が早い受給を受けやすいか、最後に<5>暮らし向き全般の分析をしている。

 以上のように、本研究では独自調査の他、既存調査の再集計を行った。それぞれの概要並びに分析結果を紹介するとともに、これらの調査結果を基に母子世帯の就業実態等を分析している。
 まず、『母子世帯の就業実態:調査結果から得られる知見』では、母子世帯の定義を押さえた上で、母子世帯の就業実態を詳細に分析している。<1>母子世帯の母の就業率の高さ、就業形態の特徴、<2>勤労収入、<3>労働時間、<4>勤労収入を規定するもの、<5>母子世帯になってからの期間別の実態、<6>母子世帯になる前の働き方、前後の状況、<7>学歴の問題、<8>子どもの就業・進学問題について分析し、今後の諸課題についても指摘している。
 次に、『母子世帯の母のキャリア形成、その可能性-「就業構造基本調査平成9年」を中心に』では、「就業構造基本調査平成9年」の20-49歳の女性を対象に、母子世帯(ただし、子どもの年齢は18歳未満)、有配偶有子世帯、場合によっては未婚女性との比較分析を次のとおり実施している。<1>労働力率、就業形態別の収入等を母子世帯と有配偶有子世帯の女性とで比較し、両者で大きく就業行動が異なること、<2>母子世帯の女性が正社員の職にいつ頃就いたのか、参入年齢と賃金はどのような関係があるか、そうした行動は有配偶有子世帯とどのように異なるか、<3>母子世帯と有配偶有子世帯との転職意識や職探し行動の比較、<4>母子世帯と有配偶有子世帯での一人当たり生活水準の比較、<5>賃金関数の推計、<6>ヘックマン型の賃金関数の推計結果、<7>母子世帯がどのような就業支援を望んでいるか等である。
 本報告書は4部構成で、第1部に独自調査の結果の概要を、第2部に前述した再集計結果の概要を、第3部には参加委員による分析論文を収録している。
 そして最後の第4部は資料編である。アンケート集計結果の他、再集計結果についても母子世帯の実態に関心を持たれる方々の利用に供するため、出来る限り掲載するとともに、厚生労働省から情報提供を受けた母子世帯を対象とした取り組み事例-地方自治体、企業、団体における取組-をそれぞれ1事例紹介している。



第2節 問題の所在と本調査研究の意義

 本調査研究の目的は、わが国における母子世帯の生活実態と意識を、その就労をめぐる諸問題に焦点を当てて解明することである。もちろん、母子世帯問題は、複雑で多面的な様相をもつ社会問題であり、母子世帯の母の就労のあり方を考える場合にも、関連するさまざまな要素を考慮にいれなくてはならないし、また、母子世帯の多様性を考慮に入れる必要がある。この調査研究の概要については、上に述べた通りであり、また、結果の分析は別の章で示す通りである。ここでは、母子世帯問題の専門家以外の読者がこの報告書を読むことを考え、母子世帯問題の所在について概括的に述べ、この調査研究の位置を明らかにしたい。

1 母子世帯とは
 厚生労働省が5年に一度実施している全国母子世帯等調査(以下、全国母子世帯調査)の定義によれば、母子世帯とは、「父のいない児童が、その母によって養育されている世帯」である。ここで、「児童」とは、「満20歳未満の子どもで未婚の者」を指し、「父がいない」とは、「死亡、婚姻の解消、非婚の他に生死不明、遺棄、精神・身体障害、法令により拘束されている、その他準ずる状態」(注1)を指し、「養育」とは、「児童と同居して、これを監護し、かつ、生計を維持すること」をいう。平成10年に実施された全国母子世帯等調査によれば、全国にこのような世帯が95万4900世帯存在するとされる。それ以後の離婚率の急激な上昇を考慮に入れると、平成14年現在では、この数は一層増加し、100万世帯を超えているものと推測される。
 国勢調査など他の調査と異なる全国母子世帯調査の特徴は、親等と同居している、いわゆる同居母子世帯を含んでいることであり、本調査研究が実施した同調査の再集計によれば、その割合は母子世帯全体の26.8%であった。約4分の1の母子世帯が親等と同居している事実は、わが国の家族関係のあり方と密接に関連しており、政策的観点からみても重要である。一般的には、こうした親等との同居は、母子世帯がかかえる諸問題を緩和する要因(たとえば住居費の節約という観点だけからみても)といえよう。だが、他方、4分の3の母子世帯が同居しておらず、独立の生計を営んでいることも事実である。日本でも、「親元に帰る」ことで母子世帯問題が全て解決されているわけではない。
 もちろん、これら独立の母子世帯のなかにも、さまざまな形で家族からの援助を受けているものがあり、そうした家族援助が母子世帯のかかえる問題が表面化するのを抑制する上で重要な意味をもっていることは確かである。だが、調査方法上の理由で対象が基本的には非同居母子世帯に限定されている今回のJIL調査によれば、現在も、また過去においても、親や親族の援助を受けたことがない母子世帯が39.6%に上っていることも確かである。家族間相互扶助による問題解消・抑制には限界があり、また、家族の状況等によって格差があることは、母子世帯問題を考える上で重要な論点である。

2 母子世帯数が増えている
 さて、今日、母子世帯をめぐる問題がとくに社会的関心を集め始めているのは、どのような理由によるのであろうか。
 まず第1に重要な事実は、母子世帯数が相当な勢いで増加していると考えられることである。平成5年の全国母子世帯等調査で78万9900世帯と推計された母子世帯数は、平成10年には95万4900世帯に急増している。もっとも、戦後のベビーブームの影響等により、世代間人口変動が大きいわが国では、絶対数の変動だけでは、その規模の大きさを正確に把握することはできない。20歳未満の子どもをもつ世帯全体に占める母子世帯の比率を見る必要がある。だが、現在の統計では、分母にあたる20歳未満の子どもを扶養する世帯総数を把握することができないので、この重要な項目について正確なデータを得ることができない。国勢調査は、母子世帯という項目を集計しているが、同居母子世帯を含まないので、その内部でこの調査研究で対象として考えている同居を含む母子世帯全体の比率を算出することは不可能である。そこで、次善の策として、調査年がずれるが、全国母子世帯等調査でわかる母子世帯数を、直近の国勢調査でわかる夫婦と子どものいる一般世帯数に全国母子世帯等調査の母子世帯数および父子世帯数を加えた数字で割ってみたのが、表1である。この推計によれば、1998年の母子世帯比率は6.4%に上ることになる。また、この調査研究で、就業構造基本調査を再集計した結果を利用し、非同居母子世帯数を夫婦と子ども(20歳未満)世帯数に非同居母子世帯数と非同居父子世帯数を加えた数字で割ってみると、非同居で20歳未満の子どもをもつ世帯に占める母子世帯の割合は、平成9(1997)年調査で6.2%、昭和62(1987)年調査で5.2%となる。以上から、1990年代末の時点で、わが国の母子世帯比率が6%を超える程度に上っていたと推測することができそうである。

表1 母子世帯比率の推計


3 日本の母子世帯比率はまだ低い
 この数字は、大きいのだろうか、小さいのだろうか。これを判断する一つの方法は、国際比較をしてみることである。もちろん、国によって母子世帯の定義が異なるために、正確な比較をすることは困難である。J. Lewis編のLone Mothers in European Welfare Regimes(Lewis, 1997)によると、母子世帯問題が社会的政治的問題として大きく取り上げられたイギリスでは、1981年に10.7%であった母子世帯比率が1991年には17.5%に急増している。これに対してそれほど大きな問題として取り上げられていないオランダでは、1993年の母子世帯比率は9%程度である。スウェーデンでは、1991年に13.5%と推計されている。母子世帯を定義する際の子どもの年齢上限は、国によって異なるが、分母・分子とも同じ年齢をとっているので、比率でみれば、こうした年齢上限の違いによる誤差はそれほど大きなものではないと推測される。
 これらの国とくらべると、1990年代末の時点で6-7%程度と推測されるわが国の母子世帯比率は、なお比較的小さいと言うことができる。これは、1)表2に示すように上昇してきているとはいえ、国際的に見れば、日本の離婚率はなお低い部類に属すること、2)母子世帯になった理由に占める未婚の母の割合が1998年でも7.3%にとどまっていることからわかるように、国際的に見れば未婚の母(非婚同棲カップルが同棲を解消したものを含む)の割合が少ないこと(イギリスでは、1991年の時点でこの数字が36.5%に上る(Lewis, 1997:pp55))など、日本社会における家族構成の特徴的あり方によるところが大きいと考えられる(注2)。

表2 性、年齢階級別離婚率:1930~2000年

 だが、同時に、そうした日本社会における家族のあり方が変化の渦中にあることも確かである。とくに、表2を見ると、1990年代における離婚率の上昇度合いが急激であることがわかる。また、未婚の母についても、平成5年の全国母子世帯調査では、母子世帯となった理由の4.7%にすぎなかったものが、平成10年には7.3%にまで増えている。これらの変化の結果として、母子世帯数の増加がおき、その結果、この問題についての社会的関心が高まることになったと言えよう。

4 母子世帯の経済問題は賃金が低いこと
 ところで、母子世帯数の増加は、どのような意味で社会問題なのであろうか。離婚が増加したり、未婚の母が増加したりしても、それ自体でみれば、単なる家族構造の変化のあらわれであり、直ちに社会問題とはならない。だが、母子世帯は、両親が揃った二人親世帯と比較すると、さまざまな生活上の問題を抱えがちである。それを解決することは、社会全体にとっての重要問題であり、緊急度の高い政策上の課題である。
 母子世帯が抱えている問題の中で最大のものは、経済問題であり、生計の維持に必要な収入の不足である。今回実施した平成9年就業構造基本調査再集計によれば、非同居母子世帯の平均世帯年収は248万円であり、有業者世帯のみをとっても、261万円である。これは、二人親世帯の669万円とくらべて極めて低い水準にとどまっている。しかも、非同居母子世帯の世帯収入には、のちに述べる児童扶養手当(平均的にみて、年間35万円程度か)が含まれていると考えられるから、それを除いた収入はさらに低いことになる。平成10年全国母子世帯調査再集計では、これよりさらに低い数字となる(独立母子世帯の世帯年収平均値は227.7万円)。
 非同居、同居を問わず、母子世帯の母の有業率は極めて高い(平成9年就業構造基本調査再集計では、それぞれ86.7%、86.0%)。有業者の年間就業日数200日以上の割合は、非同居で80.6%、同居で83.7%に達し、週間就業時間35時間以上の割合も、非同居で79.6%、同居で82.7%に上っており、短時間勤務者の割合は、それほど高いわけではない。にも関わらずこれだけ収入が低いのは、長時間仕事をしても賃金が低く、低い勤労収入しか得られていないことによる。同再集計で妻無業の二人親世帯の世帯年収は、607万円であるから(専業主婦を可能にする夫の収入は高いはずだから、妻有業二人親世帯の夫の年収は、これよりは低いはずである)、高賃金の夫を稼ぎ手としてもたない母子世帯の不利益が示されていると言えよう。このことから、母子世帯の低所得問題を解決するうえで主要な課題の一つが、母子世帯の母がいかにして高賃金の仕事につくことができるようにするかであることは明らかである。この調査研究の主要な関心の一つも、この点にある。政策的には母子世帯の母に対する有効な就労支援(よりよい仕事につくための)の方策如何ということになる。
 もっとも、母子世帯が母子世帯でなくなれば、問題が解決するということはありえよう。再婚による解決がそれである。理論的には、すべての母子世帯の母が再婚すれば、問題が消滅するかもしれない。政策的には、再婚を援助する政策をとることも考えられなくはない。また、実際に、そのような形で「解決」されている例も多数存在するに違いない。このメカニズムの解明は、本調査研究の主たる課題ではないが、ここで一つだけ関連する重要事実を指摘しておくと、表3からわかるように、離死別者の再婚率は男女で大きく異なっている実態がある。同表によれば、再婚率が比較的高い20歳代から30歳代前半をとっても、女性のそれは男性のそれの2/3ないし3/4にとどまっている。推測にすぎないが、母子世帯の母の再婚率は、子どもをもたない離死別女性の再婚率より低い可能性があるから、こうした「再婚による解決」には限界があることも確かであろう。また、結婚は個人の自由に属する事柄であるから、再婚しないと母子世帯の生活問題が解決しないという社会は、母子世帯の母となった女性から実質的に結婚しない自由を奪っている不自由な社会であるとも言える。さらに言えば、離婚のリスクと、子どもを持つことのリスクが高い社会では、婚姻率も出生率も低下傾向をたどる可能性がある。出生率の上昇を政策目標に掲げるのであれば、母子世帯の生活難が深刻な状態は、目標実現にマイナスの効果を及ぼす可能性が高いことになる。

表3 性、年齢階級別 死・離別者に対する再婚率:1930~2000年


5 日本の母子世帯就業率が高い理由
 ところで、日本の母子世帯の国際的に見たもう一つの特徴は、母子世帯の母の就業率が極めて高いことである。上記のように、平成9年就業構造基本調査再集計では、86%を超える有業率を示していた。平成10年全国母子世帯等調査でも、母子世帯の母の就業率は85%に上っている。前掲(Lewis, 1997a)によれば、ヨーロッパ各国の1990年代前半における母子世帯の母の就労状況は表4の通りである。最も高いスウェーデンでも70%にとどまっており、イギリス(41%)、ドイツ(40%)、オランダ(40%)と、50%に満たない国が多い。イギリスでは、多数の母子世帯の母が生活保護を受けており、その財政負担や「福祉依存症」(Welfare Dependency)がアメリカと同様、大きな政治問題となった。それらの国に比べると、日本の母子世帯の母の就業率の高さは、驚くべきものであり、「もう一つのJapanese Miracle」と呼んでもおかしくないほどである。

表4 ヨーロッパ諸国における母子世帯の母の就業状況

 このような高い就業率を支えているのはどのような要因であろうか。本調査研究は、この疑問についての踏み込んだ検討を主目的としているわけではないので、将来の課題とするしかないが、いくつかの論点を提起しておくことは可能である。
 第1に、社会保障制度の違いである。日本の母子世帯の中にも、就業による収入を得たり、家族による生活扶助を受けることができず、生活保護を受けているものもある。2001年国民生活基礎調査によれば、母子世帯の被保護率は、11.7%であり、全世帯被保護率1.8%にくらべて大幅に高い。(なお、母子世帯の被保護率は、1985年には15.7%であったから、低下の傾向にある。1985年の全世帯被保護率は1.3%であったから、全世帯被保護率の上昇傾向とは逆の傾向を描いていることになる。その理由は不明である)だが、イギリスなどと異なって、資産調査(means test)に基づく公的扶助以外に、所得調査(income test)に基づく児童扶養手当制度が存在し、それが比較的広く利用されているのが日本の特徴である。
 児童扶養手当は、児童扶養手当法に基づき、「父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について児童扶養手当を支給し、もって児童の福祉の増進を図ること」を目的とする(同法第1条)。支給期間は、当該児童が18歳に達する日以後の最初の3月31日までであり、所得制限がある。母子二人世帯を例にとると、所得90万4000円未満(所得税非課税限度額と同じ)の場合は、全額支給で月額42370円、所得90万4000円以上、192万円未満の場合は、一部支給で月額28350円となっている。2人目の子は5000円、3人目からは一人について3000円が加算される。つまり、子ども二人の場合は、全額支給の場合、月額42370円だったものが、47370円となり、子ども3人の場合は、50370円となる(平成14年改正前の金額)。平成14年度に大きな制度改革が行われたが、この調査研究は、基本的には、制度改革以前の状況についての研究であるので、制度改革の内容と、その影響について、ここでは触れないこととする。平成15年度予算案における予算総額は2590億円である。
 この制度により児童扶養手当を受給している母子世帯は、約71万世帯であり(平成12年社会福祉行政業務報告)、年間予算約2600億円を受給世帯数で割れば、平均年間受給額36万6000円という計算が成り立つ。200万円程度の年収しかない母子世帯の場合、この金額、あるいは、全額支給の50万円強という金額が重要な意味合いをもってくるであろうことは、容易に想像できる。なお、上にのべた所得制限との関係で言えば、所得控除などがあり、200万円程度の年収の場合には、全額支給となることが多いと考えられる。200万円-300万円程度の年収がある場合、部分支給となっているケースが多いと考えられる。平成9年就業構造基本調査再集計によれば、非同居母子世帯の勤労所得200万円未満が55.9%、200万円以上、300万円未満が24.9%であるから、300万円未満に80%強が含まれる計算となる。同居母子世帯は、やや勤労所得が高く(200万円未満が45.6%、300万円未満が69.2%)、また同居親族による扶養関係があるために、児童扶養手当支給対象となっている例は、比較的少ないであろう。
 もし仮に、このような仕組みがなく、生活保護制度しか利用できないとすれば、母子世帯の中には、働いて収入を得、それによって生計を維持しようと努力することを放棄し、生活保護を使おうとする人が増えていたであろう。イギリスのように、勤労収入を補完する児童扶養手当類似の制度を持たない国で、しかも、監護すべき子がある場合には就業努力を必ずしも求めない生活保護制度をもつ場合には、母子世帯の母で生活保護を利用する人が増え、就業率が低いものになるであろうことは容易に想像できる。逆に言えば、わが国の児童扶養手当制度は、かなり強い就業へのインセンティブをもつ仕組みとなっており、これが例外的に高い就業率を可能にする一つの要因になっていると考えられる(注3)。
 第2に、学齢前の子どもをもつ母子世帯の母の就業率に及ぼす保育制度の影響が重要であろう。わが国では、公的な保育所が比較的多く整備されており、母子世帯は、入所決定において相対的に必要度が高いと認定される割合が高いと推測される。今回のJIL調査で、就学前の子どもがいる世帯での子の保育担当者として認可保育所を挙げるものの割合は、71.8%に上る。また、保育費も所得によって段階づけられていることから、所得の低い母子世帯の場合には、比較的安い保育費で子どもを保育所に預けることができる。ところで、(Lewis, 1997b)によれば、公的保育所があまり整備されておらず、保育所利用コストが高いイギリスでは、幼い子どもをもつ母子世帯への就業インセンティブが低くなっているという。逆に、公的保育所が充実しているスウェーデンでは、母子世帯の就業率が比較的高くなっている(Hobson & Takahashi, 1997)。
 第3に、これは全くの憶測だが、学齢到達以後の子どもをもつ母子世帯についても、社会制度・慣習の違いや、治安状態の良否などによって、就業率が左右されるという事情があると思われる。イギリスでは、小学校に親が子どもを送迎することが当然の義務だが、日本ではそのようなことはない。日本には「カギっ子」という言葉があるが、イギリスやアメリカではそのような概念そのものが考えにくい。今後、日本の治安悪化が続き、多くの「カギっ子」たちが危険にさらされるようになれば、学童保育を制度的に充実するというような手をうたないと、従来の母子世帯の高い就業率を維持することが困難になるかもしれない。
 第4に、従来の比較的良好な労働市場の需給関係がある。日本経済が相対的にすぐれたパフォーマンスを示し、中小企業セクターを中心に雇用機会が多く作り出されている状態のもとでは、母子世帯の母も、他の人々と同様に仕事につきやすかったに違いない。近年の長く、深刻な不況は、この条件をこわしつつある。
 第5に、これまで母子世帯の数が比較的少なかったという事情そのものがその就業率を高めに保つことに貢献してきたという要素がある。端的に言えば、近年問題になっている児童扶養手当の財源問題も、母子世帯の数が少ない時は、それほど大きな問題にならなかった。その数が大幅に増えてきたために、経費が増え、政府の財政問題として問題視されるようになってきたわけである。

6 母子世帯問題と階層問題の関わり
 本調査研究の結果浮かび上がってきた論点は数多い。詳しくは以下の各章を読んでいただきたいが、一つだけ、指摘しておくと、母子世帯と階層構造の関係についての考察が重要であることが挙げられる。
 たとえば、本調査研究が明らかにした重要な事実の一つは、母子世帯の母の学歴構成が同世代の女性にくらべてやや低いほうに偏っていることである。平成9年就業構造基本調査再集計によれば、短大・高専、あるいは大学・大学院卒の割合は、二人親世帯の母についてみると36.3%であったが、同居母子世帯の母では25.4%、非同居母子世帯の母では19.3%にとどまる。この数字が何を意味するのか、さまざまな解釈が可能であるが、一つの解釈は、学歴は出身階層の代理変数であるというものであろう。母子世帯の母には、相対的に出身家庭が裕福とは言えない階層出身者が多いとすると、彼女らは、似たような階層の男性と結婚する確率が高いと考えられる。結婚当初は、二人共稼ぎしているので、世帯収入もそれなりに確保されているが、子どもが生まれて、妻が退職し、また、パート勤務に転換するなどした結果、収入が減少し、生活が苦しくなる。(JIL調査によると、調査対象の38.2%が母子世帯になる前に働いておらず、また、働いていたと回答した56.8%のうち36.5%(調査対象全体の20.2%)のみが正社員・正規職員として働いていたと答えている)。そうなると夫婦関係にも齟齬が生じ、離婚の増加につながりやすい。その結果、母子世帯が増加するという連関である。このように考えてくると、1990年代における離婚率の上昇も、経済環境の悪化による生活難が一因となっているのかもしれないと思えてくる。「子はかすがい」と言われ、子をもつ夫婦のほうが離婚率が低いと考えられてきたが、むしろ、子をもつことのリスクが高くなっているのかもしれない。
 以上は、母子世帯の学歴構成の偏りを説明する一つの仮説を展開したにすぎない。この仮説の当否を判定するには、なお、十分な吟味を要する。十全な分析のためには、個人の行動の軌跡を追跡できるパネルデータの開発が必要になろう。だが、以上の簡単な考察からも、次のことは言えそうである。すなわち、一般に、離婚やそれにともなう母子世帯の増加という現象は、経済発展にともなう「豊かな社会」に特徴的な価値観の変化に由来すると考えられ、伝統的価値観の立場からは、離婚する親や未婚の母の「わがまま」を非難するような言説が流布されたりもするが、わが国の母子世帯増加の現実は、そのような現代的言説とはかなりかけ離れており、ある意味で古典的な階層問題、ないし貧困問題の反映とみるべき側面があること、これである。
 このような論点についての認識を深めていくことは、今後の母子世帯政策を考えていく上でも、重要な意味をもっている。たとえば、母子世帯の収入不足を補うために、離別世帯に限定されるが、父親からの養育費徴収を強化するという方策が考えられる。確かに、今回のJIL調査でも、離婚によって母子世帯となった1199世帯のうち、子の父からの養育費を収入として挙げているのは、21.8%にとどまり、親・親族からの援助を挙げているものの21.9%と同じレベルでしかない。これは、余りに少ないように思われ、別れた父親の養育責任をより明確にすべきではないかという議論がでてくることは理解できる。
 だが、前掲表3に示した男性再婚率の高さからみて、別れた父親は再婚している可能性が高く、そちらでも扶養義務が発生している可能性が高いので、どこまでの養育責任を負わせうるかという一般的問題がある上に、もし、上記の仮説が妥当であり、別れた父親に比較的所得水準の低いものが多いとすると、現実問題として、どれほど支払い能力があるのか、疑問が生じる。ちなみに、JIL調査で学歴別に見ると(離別に限らず、調査対象全体について)子の父からの養育費を収入項目として挙げている母子世帯の割合は、大学以上卒では23.2%なのに、中学校卒では13.3%、高等学校卒では17.3%である。

7 結びにかえて-「米百俵」
 従来、わが国では、離婚率や未婚の母の数が少なく、母子世帯の数が比較的少数にとどまっていた。経済環境が比較的良好で、児童扶養手当制度のように就業促進的な社会保障制度が機能してきた。そして、母子世帯の母の側も、子どもにできるだけ高い教育を与え(平成10年全国母子世帯調査によれば、子どもの進学予定を中学校としているものは、0.3%にすぎず、高校までが30.2%である。大学進学予定は、28.5%にのぼり、高専、短大、専修・各種学校等進学予定が17.3%であるから、両者合計で45.8%が子どもに高卒後2年ないし4年程度の教育機会を与えたいと考えていることがわかる。)、それによって次の世代にはゆとりある暮らしができるように懸命に働き、頑張ってきた。家族もそれを支援してきた。その結果として、母子世帯の生活がなんとか維持され、また高い就業率が実現してきた。このようなわが国の母子世帯の行動様式は、先年注目を集めた明治維新期長岡藩における「米百俵」の故事を思い起こさせるものがある。
 しかし、状況が大きく変わり、母子世帯数は増加し、安定的な就業機会を確保することが困難になってきている。対応を誤ると、この問題は、貧困の再生産につながりかねず、重大な社会問題を発生させかねない。このような状況の中、母子世帯の母への就労支援、すなわち、より高い収入をもたらす仕事につけるよう援助していくことの必要性は、一層高くなってきている。本調査研究が、そうした方策を考えていく上で一助となることを希望している(注4) 。


参考文献
Bussemaker, Jet, Annemieke van Dreth, Truide Kniji, and Janneke Plantenga, “Lone Mothers
 in the Netherlands”, in J. Lewis ed., Lone Mothers in European Welfare Regimes-Shifting
 Policy Logics, Jessica Kingsley Publishers, London
Hobson, Barbara and Mieko Takahashi, (1997) “The Parent-Worker Model”, in J. Lewis ed.,
 Lone Mothers in European Welfare Regimes-Shifting Policy Logics, Jessica Kingsley
 Publishers, London.
Lewis, Jane, (1997a) “Introduction”, in J. Lewis ed., Lone Mothers in European Welfare
 Regimes-Shifting Policy Logics, Jessica Kingsley Publishers, London.
Lewis, Jane, (1997b) “Lone Mothers: the British Case”, in J. Lewis ed., Lone Mothers in
 European Welfare Regimes-Shifting Policy Logics, Jessica Kingsley Publishers, London.

(注1)「全国母子世帯等調査」の調査員手引きでは次のようになっている。
     父のいない児童:次のいずれかに該当する児童をいう。
      ア 父が死亡した児童、
      イ 父母が婚姻を解消した児童、
      ウ 父の生死が明らかでない児童、
      エ 父から遺棄されている児童、
      オ 父が精神又は身体の障害の状態にあるため、その養育を受けることができない児童、
      カ 父が法令により拘束されているため、その養育を受けることができない児童、
      キ 母が婚姻によらないで懐胎した児童、
      ク その他、前各号に準ずる状況にある児童
(注2)未婚の母の数に影響を及ぼす要因は、多様である。たとえば、(Bussemaker et al, 1997) によれば、オランダで、母子世帯比率が比較的低いのは、ピルの解禁が早期から進み、また人工中絶も容易であることが影響している可能性があるとされている。

(注3)制度としての児童扶養手当制度に問題がないと主張するものではない。父子世帯には適用されないという問題、所得制限にともなう就業調整の可能性、支給条件として「父がいない」など家族状況についての調査が必要となることから生じるプライバシーの侵害や、過度の私生活への侵入のおそれなど、検討すべき論点は多い。だが、それが日本の母子世帯の高い就業率に強い影響を及ぼしてきたことは否定できないと思われる。

(注4)ヨーロッパのいくつかの国で見られるように、母子世帯に対して、就業促進というよりは、子どもの監護に専念することを求め、そのための社会福祉給付を充実してきた国もあるから、こうしたわが国の母子世帯対策のあり方は、余りに就業の側面に偏りすぎているという見方もできなくはない。しかし、子どもが自立した時に、自ら生計を維持していく必要が生じた場合、母子世帯である期間中に就業経験を積み、労働能力を維持発展しておくことが望ましいように思われるから、高い就業率を維持する政策的考え方には、それなりに合理性があると考えられる。

第1部 母子世帯の母への就業支援に関する調査


第1章 アンケート調査


I 調査の目的
 近年、離婚件数の増加等に伴い、母子世帯等の数が増加している。母子世帯の母は、世帯主として生活を支えるだけの収入を得る必要があるにもかかわらず、十分な技能の修得なしに就業せざるを得ない場合が多い。このため、母子世帯の母が経済的に自立した生活を送ることを可能にするという観点からの施策を検討する上での基礎資料として、「母子世帯の母への就業支援に関する調査」を実施し、母子世帯の生活、就業の実態及び意識について調査した。


II 調査の方法
 1)調査対象者は「母親と20歳未満の子どものみからなる世帯」の60歳未満の母親で、地域は全国、対象者数は5,000件とした。

 2)平成7年の国勢調査時に設定された調査区をもとに調査地域を抽出し、当該地域の住民基本台帳から「60歳未満の母親と20歳未満の子どものみからなる世帯」5,000世帯を抽出した。

 3)上記で抽出された世帯には母子世帯ではない世帯、例えば、父親の単身赴任等で母親と子どものみの世帯も含まれているため、母子世帯に該当しない場合は「該当しない」旨の回答を依頼した。

 4)郵送による配布、回収を行った。


III 調査実施時期
  平成13年1月~2月10日


IV 回収状況
有効配布数 4,940件
回収数 2,733件
 該当調査票回収数 1,874件
 非該当調査票回収数 859件

有効集計対象数 1,721件
推定有効回収率 50.8% (未回収の中に回収したと同率の非該当が含まれていると推計した場合)
推定最低有効回収率 42.2% (未回収の中に非該当が含まれていないと推計した場合)


V 調査結果の概要



第1節 調査対象者の属性

1 本人の状況
(1) 年齢(付表1-1)
 本人の年齢は40歳代(40~44歳 23.9%、45~49歳 22.1%)が半数近くを占め、次いで30歳代(30~34歳 15.3%、35~39歳 19.1%)が3割強を占めている。平均年齢は40.5歳である。

(2) 母子世帯になった理由(付表1-2)
 母子世帯になった理由については、離婚が7割、死別が2割で、未婚・非婚及び別居がそれぞれ5%である。

図表1-1-1 年齢別母子世帯になった理由

 離婚による母子世帯が増加傾向を示しており、離婚と死別でどのような違いがあるかをみるため、40歳以上(本人年齢と末子年齢は仕事と生活に大きな影響を及ぼす要因であるため、死別の割合が多くなる40歳以上を分析の対象とした)について別途集計したが、年齢計と違った傾向はみられなかった。結果は集計表に掲載している。

(3) 結婚年齢(付表1-3)
 結婚年齢は、24歳までが5割を超えており、平均は24.3歳である。

(4) 母子世帯になった年齢(付表1-4)
 母子世帯になった年齢をみると、「30~34歳」が27.5%、「35~39歳」が20.9%、「25~29歳」が19.6%、「40~44歳」が15.3%であり、平均は34.1歳である。
 母子世帯になった理由別にみると、死別では「40~44歳」(29.7%)と「35歳~39歳」(25.6%)で多く、離婚の場合は「30~34歳」(29.7%)と「25~29歳」(23.6%)で多くなっている。

(5) 母子世帯になってからの期間(付表1-5)
 母子世帯になってからの期間をみると、「5~9年」が28.9%で最も多いが、「2年まで」も26.6%と4分の1を占めており、平均は6.4年である。

(6) 学歴(付表1-6)
 最終学歴は、「高等学校」が49.0%で半数を占めている。次いで、「短期大学・高等専門学校」(15.6%)、「専修学校・各種学校」(13.2%)、「中学校」(13.1%)、「大学」(7.1%)である。

(7) 就業の有無(付表1-7)
 仕事をしている者が87.3%、していない者が12.7%である。
 「仕事をしている」は末子年齢「0~2歳」(70.5%)ではやや低いものの、「3~5歳」になると(85.0%)に上昇し、それ以上では9割程度が働いている。

(8) 母子世帯になる前の働き方(付表1-8、1-9)
 母子世帯になる前の働き方として最も多いのが、「結婚・出産などで退職していた(退職型)」で32.5%、次いで、「結婚・出産などで退職し再び働いていた(再就職型)」が25.3%、「最初に就職した仕事をずっと続けていた(初職継続型)」が17.3%、「転職したが、仕事は概ね続けていた(転職継続型)」が13.8%、「就業経験がなかった」が5.7%と続く。

図表1-1-2 母子世帯になる前の働き方

 年齢別にみると、30歳以上層では継続就業(初職+転職)が年齢が高いほど多く、退職型、再就職型は若い層ほど多くなっている。30歳未満では「就業経験なし」が15.7%と多く、退職型が少なくなっている。
 学歴別にみると、「大卒以上」で初職継続型が31.2%と多くなっている。同じく働き続けていても転職継続型は中卒で17.7%と多く、初職継続型とは反対に、学歴が高くなるに伴い少なくなっている。
 次に、母子世帯になる前にどのような働き方をしていたのかその就業形態をみると、「正社員・正規職員」が35.6%、「パート」が33.8%となっている。
 母子世帯になった理由別にみると、「正社員・正規職員」として働いていた割合は離婚で32.3%と最も少なく、死別は42.1%となっている。なお、未婚・非婚では末子の年齢が低く、働いている割合は低いものの、「正社員・正規職員」が55.4%と多くなっている。

2 世帯・子どもの状況

(1) 世帯員数(付表1-10)
本人を含めた世帯員数は、「3人」が4割を占め、「2人」が3割弱である(付表1-6)。

(2) 子どもの数と年齢(付表1-11、1-12)
 20歳未満の子どもの数は「1人」が半数を超え、「2人」が4割弱であり、末子の年齢は「15~17歳」が20.2%、「12~14歳」が18.2%である。小さい子どものいる割合が最も高いのが「未婚・非婚」、次いで「別居」と「離婚」の順になる。

(3) 子どもの就学、保育の状況(付表1-13、1-14)
 同居している子どもは小学生が36.4%、高校生が32.8%、中学生が29.3%と多く、小学校入学前の子は2割である。なお、就職している子どもと同居している者は1割である。
 小学校入学前の子と同居している者について就業中の保育の状況(複数回答)をみると、「認可保育所」が71.8%と多く、次いで、「親・親族」が43.9%である。
 末子の年齢「0~2歳」では、「認可保育所」(56.5%)と「親・親族」(55.3%)が同程度で、自ら保育が23.5%いる(ただし、末子の年齢でみているので、必ずしも「0~2歳」の子の保育状況ではない)。

(4) 住居(付表1-15)
 住居の状況は、民間賃貸住宅が30.7%、持ち家が24.6%、親・親族の持ち家が23.0%、公営賃貸住宅が19.0%である。
 母子世帯になった理由別にみると、死別では持ち家が66.8%と多いが、死別以外では持ち家は1割程度にすぎず、民間賃貸住宅が3~4割と最も多い。
 住居については学歴による差もみられる。中卒の場合、「持ち家」、「親・親族の持ち家」が14.6%、11.9%であるのに対し、大卒以上では36.8%、33.6%と学歴の上昇に伴い、本人、親・親族ともに持ち家比率が高くなっている。



第2節 有業者の状況

1 現在の仕事のあらまし

(1) 有業者の割合(付表1-7)
 仕事をしている者(有業者)の割合は87.3%であり、全女性(63.2%)や有配偶女性(60.4%)と比べて高い。

図表1-1-3 有業者の割合


(2) 就業形態(付表2-1)
 「正社員・正規職員」が42.5%、次いで「パート・アルバイト」33.9%、「嘱託・準社員・臨時職員、派遣社員」12.5%と続く。

図表1-1-4 有業者の就業形態別割合

 年齢別にみると、「正社員・正規職員」は20歳代の31.4%から40歳代前半の48.0%まで、年齢とともに上昇し、40歳代後半(47.0%)でやや低下し、50歳代になると31.8%と大きく低下している。一方、「パート・アルバイト」は20歳代では50.5%と半数を占め、年齢とともに低下し、40歳代を底に反転し、「正社員・正規職員」とは反対のカーブを描いている。
 また、比率は低いものの、「自営業主」の割合が年齢とともに上昇傾向を示している。
 末子年齢別にみると、末子年齢の上昇とともに「正社員・正規職員」の比率は上昇し、「18歳以上」でやや低下している。
 学歴別にみると、高学歴になるほど「正社員・正規職員」の比率は高く、「パート」比率は低い。
 これまでの働き方(就業パターン)別にみると、初職継続型で当然のことながら正社員比率が他に比べると高いが、その割合は56.9%で、パート・アルバイトと嘱託等その他の非正規の合計が2割、自営業主とその手伝い等が1割を超えている。
 職種別にみると、「専門・技術職」(67.8%)、「事務職」(56.7%)で「正社員・正規職員」が過半数を占めているが、その他の職種では2~3割となっている。

(3) 産業・職業(付表2-2、2-3)
 産業では「サービス業」が43.7%と最も多い。次いで「卸売・小売業、飲食店」18.5%、製造業17.5%である。
 職業は「事務的な仕事」(24.8%)、「専門知識・技術をいかした仕事」(20.2%)、「サービスの仕事」(17.2%)、「営業・販売の仕事」(16.4%)、「製造・技能・労務の仕事」(16.2%)と分散している。
 年齢別にみると、「事務的な仕事」は30~40歳代で多く3割近くを占め、「専門知識・技術をいかした仕事」は30歳代後半から40歳代で2割を超えている。一方、「サービスの仕事」と「製造・技能・労務の仕事」は20歳代と50歳代で高くなっている。また、「営業・販売の仕事」は30歳代前半までの若い層で高い。
 就業形態別にみると、「正社員・正規職員」では「事務的な仕事」(33.0%)、「専門知識・技術をいかした仕事」(32.2%)に集中しており、「パート・アルバイト」では「サービスの仕事」(25.1%)、「製造・技能・労務の仕事」(23.1%)、「営業・販売の仕事」(21.6%)、「事務的な仕事」(19.0%)に分散している。

(4) 勤務先の従業員規模(付表2-4)
 自営も含めた勤務先の従業員規模をみると、「30人未満」が43.0%を占め、「30~100人未満」20.4%と続き、「100~300人未満」(12.4%)、「300人以上」(14.2%)と中小企業の比率が高い。
 就業形態別にみると、「正社員・正規職員」の39.2%は「30人未満」で働いている。「パート・アルバイト」と比べると、「5人未満」で少なく、「100人以上」でやや多くなっている。「パート・アルバイト」の「30人未満」の割合は46.2%である。
 職種別にみると「営業・販売職」で、「300人以上」が26.3%と多い。

(5) 就業時間(付表2-5)
 残業を含めた1週間の平均就業時間は「40~45時間未満」が29.7%と最も多く、次いで「45~50時間未満」(16.3%)、「35~40時間未満」(12.6%)であり、平均就業時間は40.2時間である。
 末子年齢別にみると、年齢が低いとより短時間に、高くなると長時間に分散する傾向がある。平均就業時間は、末子年齢が5歳までは37時間台、6~8歳で38時間台、9~17歳では41時間台まで伸び、18歳以上で39時間台になっている。
 就業形態別にみると、平均就業時間の最も長いのが「自営業」の46.8時間で、次いで「正社員・正規職員」44.7時間、「その他の非正規」39.8時間、「パート・アルバイト」33.8時間と続いている。
 勤労収入別にみると年収200万以上では8割が40時間以上働いている。

(6) 就業時間の規則性(付表2-6)
 就業時間が「規則的」と回答したのは75.6%で「不規則」は22.0%である。
不規則の割合が高いのは、就業形態でみると「自営業」で43.4%、職種でみると「専門・技術職」で35.9%、「サービス職」で31.7%である。

(7) 就業時間帯(付表2-7)
 就業時間帯(複数回答)は「日中(午前8時~午後6時以前)」が93.6%、「早朝(午前5時~午前8時以前)」が8.9%、「夜間(午後6時~10時以前)」が24.7%、「深夜(午後10時~午前5時以前)」が9.0%である。
 就業パターン別でみると、継続就業(初職、転職)の場合、夜間、早朝、深夜に働いている割合が高い。
 職種でみると、「専門・技術職」で「夜間」(4割強)、「深夜」(3割弱)の就業が突出している。

(8) 通勤時間(付表2-8)
 職場までの片道通勤時間は「15分未満」が40.8%、「15~30分未満」が29.3%で、在宅での就業を含めると約7割が30分未満である。

(9) 仕事からの年収(付表2-9)
 仕事からの年収(税込み、賞与含む)は「100~150万円未満」が17.6%、「200~250万円未満」が14.4%、「150~200万円未満」が13.0%、「300~400万円未満」が12.0%と続いており、「100万円未満」及び「400万円以上」が1割となっている。平均年収は245.6万円、中央値は200.0万円である。
 就業形態別に平均年収をみると、「正社員・正規職員」が342.7万円で最も高く、反対に最も低いのは「パート・アルバイト」の133.3万円である。
 平均年収は学歴による差が大きい。

図表1-1-5 有業者の就業形態別、学歴別現在の仕事からの収入

(10) 勤続年数(付表2-10)
 勤続年数をみると、「5年未満」に53.9%が、「5~10年未満」に24.1%、「10年以上」に23.6%であり、平均勤続年数は6.4年である。


2 就業継続に関する意識

(1) 就業継続意識(付表2-11)
 今の仕事の就業継続意識をみると、今の仕事を「継続したい」は54.8%で、「よい仕事があれば転職したい」が41.8%と多く、全女性のデータとの比較において転職希望の高さが際立っている。
 年齢的には、若い層で転職希望が多く、30歳代前半までは継続希望を上回っている。また、パート就労、未婚・非婚、末子の年齢が3~8歳、年収が200万円未満でもそれぞれ転職希望が継続希望を上回っている。
 また、死別に比べ離婚、別居では転職希望者が多い。

図表1-1-6 有業者のうち転職を希望する者の割合

(2) 転職に際して重視すること(付表2-12)
 「よい仕事があれば転職したい」と考えている者に転職に際して重視すること(3つ以内)を聞いたところ、「十分な収入が得られる」が68.4%と最も多く、「厚生年金や雇用保険に入れる」40.7%、「土日に休める」33.4%、「休暇がとりやすい」26.4%、「身分が安定している」23.2%と続いている。

図表1-1-7 転職の際に重視する事項


(3) 転職経験(付表2-13)
 母子世帯になってからの転職(自営業についた場合など就業形態の変更も含む。)経験がある者は45.7%、経験がない者が52.7%である。ただし、母子世帯になる前に初職を継続していた者では母子世帯になってからの転職経験ありは19.6%にとどまっている。それ以外の働き方をしていた者では半数が転職しており、無業だった者も含めて大きな差はない。
 学歴別にみると、高学歴者ほど転職経験が少ない。
 就業形態をみると「パート・アルバイト」と「その他の非正規」では半数が転職経験者である。
 転職者の転職回数は2.1回である。

(4) 仕事・職場への満足度(付表2-14)
 全体として現在の仕事・職場に満足しているか聞いたところ、「満足」(13.4%)に「まあ満足」(35.0%)を加えた『満足』が48.4%であり、「不満足」(9.6%)に「やや不満足」(14.1%)を加えた『不満足』が23.8%である。
 就業形態をみると、「パート・アルバイト」は他の就業形態と比べ『満足』が10ポイント程度低い。
 勤労収入別にみると、おおむね収入が上がるとともに満足度が上昇している。


3 副業の有無(付表2-15、2-16、2-17)
 主な仕事に加えて副業を持っている者は10.0%である。主な仕事の勤労収入が低い層で多く、200万未満では14.5%が副業を持っている。
 就業形態をみると、「自営業(内職を含む)」(17.7%)、「その他の非正規」(13.3%)、「パート・アルバイト」(11.6%)で多く、就業パターンでは「転職継続型」(13.0%)と「再就職型」(11.0%)で多い。
 その副業から得ている年収(税込み)は「10~50万円未満」が最も多く、平均年収は58.9万円である。本業とあわせた1週間の総就業時間数は平均で49.6時間であり、本業のみに比べ、10時間程度多い。その分布をみると、「40~50時間未満」が26.5%、次いで、「50~60時間未満」が21.2%、「60~70時間未満」17.9%、「70時間以上」が8.0%と一部に長時間就業の実態が見られる。
 副業の具体例としては、ファミリーレストランやスナック等飲食店で働く、新聞やカタログ等の配達や集金業務、化粧品等の訪問販売、自宅でのパソコン入力や内職、ピアノの講師や書道塾、着付けなどがあげられている。



第3節 無業者の状況

1 就業希望に関する意識(付表3-1)
 無業者の就業希望に関する意識をみると、「今すぐに働きたい」(42.2%)と「今は働けないがそのうち働きたい」(41.7%)がほぼ同じである。「働くことはできない」は10.1%であり、「働きたいと思わない」は4.1%である。
 別居の場合に「働くことができない」と答えた者が4割弱と多くなっており、「働きたいと思わない」は死別や世帯月収40万円以上で多い。

図表1-1-8 無業者のうち就業を希望する者の割合

2 働いていない理由と働ける条件(付表3-2、3-3)
 「今すぐ働きたい」と答えた者に対して、働いていない理由(2つ以内)をきくと、「年齢制限のため仕事がない」(47.8%)、「時間について条件の合う仕事がない」(42.4%)が多い。
 末子の年齢が低い者では「子どもの保育の手だてがない」、「時間について条件の合う仕事がない」等の理由をあげており、子育てとの両立が困難であると考えている者が多いことがうかがえる。
 また、末子の年齢が比較的高い者では「年齢制限のため仕事がない」とする者が多い。
 「そのうち働きたい」者に、働くことができるようになる条件(2つ以内)をきいたところ、「自分の問題が解決したら」をあげるものが6割弱で、「子どもの問題が解決したら」(17.6%)、「子どもの保育の手だてができたら」(17.6%)を大きく上回っている。末子の年齢が低い者では「子どもの保育の手だてができたら」が多い。


図表1-1-9 今すぐ働きたい者が働いていない理由(2つ以内)
図表1-1-10 今は働けないがそのうち働きたい者が働ける条件(2つ以内)


3 希望する働き方(付表3-4、3-5)
 「パート・アルバイトなどの非正社員で働きたい」(33.0%)と「正社員・正規職員として働きたい」(31.7%)がほぼ同じであり、在宅の仕事を希望する者も1割を超えている。
 就業パターン別に希望する働き方をみると、初職継続型、転職継続型では、正規を希望する者が多く、再就職型や退職型ではパートを希望する者が多い。
 仕事をする場合に重視すること(3つ以内)としては、「土日に休める」が多く41.7%で、続いて「十分な収入が得られる」(33.5%)、「厚生年金や雇用保険に入れる」(28.9%)となっている。
 就業パターン別にみると、初職継続型では、十分な収入、年金や保険が比較的多く、再就職型や退職型は「土日に休める」「休暇がとりやすい」「通勤時間が短い」などが比較的多い。



第4節 母子世帯になった当時の状況

1 暮らしを立てた方法(付表4-1)
 母子世帯になった当時、どのような方法で暮らしをたてたか(複数回答)をみると、「自分の勤労収入で支えた」(64.1%)と答えた者が最も多く、「児童扶養手当を受給した」(58.7%)も多い。次いで、「預貯金を引き出した」(41.5%)、「親・親族からの金銭援助を受けた」(26.6%)、「親・親族の家を頼った」(21.2%)である。
 母子世帯になった理由別にみると、死別では「遺族基礎年金を受給した」(83.5%)が最も多く、次いで「自分の勤労収入で支えた」(54.4%)、「生命保険の保険金を使った」(44.3%)、「預貯金を引き出した」(44.3%)と続く。離婚では「児童扶養手当を受給した」(73.6%)が最も多く、次いで「自分の勤労収入で支えた」(67.1%)、「預貯金を引き出した」(40.1%)と続く。別居及び未婚・非婚では「自分の勤労収入で支えた」(66.7%、59.6%)、「預貯金を引き出した」(51.2%、44.9%)ほか「親・親族からの金銭援助を受けた」(41.7%、36.0%)が多く、また、未婚・非婚では「児童扶養手当を受給した」(61.8%)も離婚に次いで多い。

2 仕事上の変化(付表4-2、4-3)
 母子世帯になる前後で「新規に仕事についた」(31.4%)、「転職した」(16.0%)、「仕事を追加した」(2.4%)など新しい仕事についた者があわせて5割である。就業状態に変化のなかった者は「そのままその仕事を続けた」(31.3%)に「そのまま無職を続けた」(8.0%)を加えた4割である。また、「仕事をやめ、無職になった者」が7.0%である。
 母子世帯になった理由別にみると、死別では「そのままその仕事を続けた」が38.9%で最も多く、次いで「新規に仕事についた」(25.9%)、「そのまま無職を続けた」(13.6%)であり、新しい仕事についた者は35.0%、変化のなかった者は52.5%と変化が最も少ない。
 別居の場合は「そのままその仕事を続けた」(34.5%)、「新規に仕事についた」(23.8%)、「転職した」(19.0%)、「そのまま無職を続けた」(11.9%)と続き、新しく仕事についた者は44.0%、変化のなかった者は46.4%と、死別に次いで変化は少ない。
 離婚の場合は「新規に仕事についた」(34.4%)が最も多く、加えて、「転職した」(17.6%)も比較的多く、新しい仕事についた者は55.1%で、変化のなかった者は36.0%と最も少ない。
 未婚・非婚の場合は「そのままその仕事を続けた」(29.2%)は少なく、「転職した」(22.5%)、「仕事をやめ、無職になった」(21.3%)が多くなっており、離婚と同様変化が大きい。
 就業パターン別に変化をみると、初職継続型では仕事をやめた者は5.4%に過ぎず、8割がそのまま仕事を続けており、転職等新しい仕事についた者が1割強である。転職継続型では「そのまま仕事を続けた者」は32.5%で、「転職した」(31.6%)等新しい仕事についた者が半数を占め、「無職になった」者も1割を超えている。再就職型では「そのままその仕事を続けた」者も新しい仕事についた者もともに転職継続型よりもやや多いが、無職になった者は1割に満たない。退職型では新しい仕事についた者が64.8%、そのまま無職を続けたが19.5%で、仕事をやめ無職になった者を加えると25.2%である。
 また、現在の就業状況をもとに母子世帯になった直後の状況をみると、現在無業の者は「そのまま無職を続けた」(32.6%)、「仕事をやめ、無職になった」(22.5%)が多く、当時すでに半数が無職であった。一方、現在働いている者は「そのままその仕事を続けた」(34.3%)、「新規に仕事についた」(33.4%)が多く、当時無職だったものは1割に満たない。

図表1-1-11 母子世帯になってからの期間別新しくついた仕事の就業形態

 新しい仕事についた者にその就業形態をきくと、「パート」が40.6%、「正社員・正規職員」が32.5%となっている。
 なお、母子世帯になってからの期間が短い者ほど「正社員・正規職員」についた比率が低い。

 3 就業形態の変化
 母子世帯になる前の就業形態と直後の就業形態をみると、正規で働いていた者は8割が引き続き正規で働いており、6%がパートに、また、同じく6%が退職して無職になっている。パートの場合は2割弱が正規に変わり、6割がパートで引き続き就業している。また、無職だった者は3割がパートに、2割が正規に変わり、無職のままの者は3割である。

図表1-1-12 母子世帯になる前の就業形態別母子世帯になった直後の就業形態(含む無業)

 次に、母子世帯になる前と現在の就業形態の変化をみると、「正社員・正規職員」からそれ以外の就業形態に変わった者が3割、一方、正規以外から「正社員・正規職員」ヘ変わった者は2~3割となっている。

図表1-1-13 母子世帯になる前の就業形態別現在の就業形態(含む無業)

 また、就業パターン別に就業形態の変化をみると、初職継続型では、正規、自営業主、家族従業者から、無職を含めた他の就業形態に多少の動きが見られる。
 転職継続型では自営業主でわずかに上昇が見られる以外は低下しており、無職が14.8%である。再就職型では正規が10.3ポイント上昇し、パートが11.7ポイント低下している。
 対象者全員の就業状態を、母子世帯になる前、母子世帯になった直後、現在の3時点で整理してみると、有業者は56.8%から母子世帯になった直後には77.9%に上昇し、前述のとおり現在は9割近くが働いている。
 無業者も含めて、就業形態の変化をみると、「正社員・正規職員」の割合は母子世帯になる以前は20.2%、直後は30.1%、現在は37.1%に増加している。「パート」の割合はそれぞれ19.2%、27.5%、25.7%である。一方、無業者は38.2%、17.3%、12.7%と減少している。

図表1-1-14 就業パターン別母子世帯になった直後の就業形態の変化(含む無業)
図表1-1-15 就業形態の変化


4 就職・転職した者の状況

(1) 仕事についた経路(付表4-4)
 母子世帯になる前後に新しい仕事についた者が、その仕事についた経路は「求人誌、新聞、チラシ等でみつけた」が33.4%と最も多く、「友人、知人などの紹介」が28.8%で続く。「公共職業安定所、パートバンクの紹介」は17.5%である。死別の場合には「配偶者であった者の職場や知人などの紹介」が16.2%である。死別ではまた、「友人・知人などの紹介」(36.9%)も離婚より9.2ポイント高く、周りのサポートを受けている。一方、離婚の場合は「求人誌、新聞、チラシ等で見つけた」(35.6%)が最も多く、安定所の利用も死別よりも多く、自力で就職先を見つけた人が多い。

(2) 仕事を選んだ理由(付表4-5)
 仕事を選んだ理由(3つ以内)としては「早く収入を得たかった」が44.6%と最も多く、次いで「通勤時間が短い」(30.4%)、「厚生年金や雇用保険に入れる」(29.9%)、「土日に休める」(28.8%)が多い。「十分な収入が得られる」(12.0%)は少ない。

図表1-1-16 直後の仕事を選んだ理由(3つ以内)

 末子の年齢別にみると、「0~2歳」では「早く収入を得たかった」(36.7%)よりも「通勤時間が短い」(46.7%)、「就業時間に融通がきく」(46.7%)が高く、「休暇がとりやすい」(23.3%)も比較的多く、時間を重視する傾向がみられる。
 「3~5歳」、「6~8歳」でもほぼ同じ傾向を示しており、「早く収入を得たかった」は多いが、「土日に休める」、「就業時間に融通がきく」も多く、時間選好も強くなっている。
 「厚生年金や雇用保険に入れる」や「身分が安定している」は、末子の年齢の上昇に伴い多くなっている。
 次に母子世帯になった理由別にみると、離婚、別居の場合は半数の者が「早く収入を得たかった」をあげており、労働条件よりも早く仕事につくことを優先している。
 一方、死別については「早く収入を得たかった」は2割弱であり、「休暇がとりやすい」、「就業時間に融通がきく」や「厚生年金や雇用保険に入れる」、「身分が安定している」などが他よりも多く、労働条件を選んで就職している。

(3) 求職にあたっての問題(付表4-6)
 新しく仕事を探した者が、仕事を探しているときの問題点(複数回答)としてあげたのは「年齢制限があった」(38.9%)、「子どもが小さいことが問題にされた」(32.2%)、「求人自体が少なかった」(31.4%)などである。「母子世帯であることが問題にされた」も13.2%あった。
 年齢制限を問題としてあげたのは45歳以上で半数を超え、子どもが小さいことが問題にされたのは、末子の年齢が3~8歳で半数前後と多くなっている。
 なお、「求人自体が少なかった」をあげた者は母子世帯になってからの期間「1年未満」(56.5%)で多い。

図表1-1-17 求職に当たっての問題点(複数回答)


5 仕事に向けての準備(付表4-7)
 母子世帯になった前後に、資格や技能の習得など仕事に向けての準備をしたかどうかを全員にきいたところ、「準備した」者は15.9%で、「準備の余裕がなかった」が40.2%、「特に必要なかった」は40.0%である。
 「特に必要なかった」は、大学以上卒(54.4%)、専修、各種学校卒(50.9%)で多く、「準備の余裕がなかった」は中卒(54.9%)、高卒(45.4%)で多い。また、「特に必要なかった」は勤労収入や世帯月収の上昇に伴い多くなっている。反対に、「準備の余裕がなかった」は世帯月収や勤労収入が少ないものほど高くなっている。
 次に、準備の有無別に現在の就業状態や職業をみると、「特に必要なかった」者には「正社員・正規職員」や「専門・技術職」が多い。
 また、現在の仕事についての継続意欲については、「転職したい」と考えている者は「余裕がなかった」者に多い。

図表1-1-18 就職のための準備別現在の仕事の状況


第5節 生活一般


1 暮らし向きについての意識(付表5-1)
 現在の暮らしについて、総合的にみてどのように感じているかをみると、「苦しい」(30.5%)と「やや苦しい」(34.9%)をあわせると65.4%、普通が28.2%、「ややゆとりがある」(4.4%)、「ゆとりがある」(1.1%)はあわせて5.5%である。
 最も苦しいと感じているのが別居(79.8%)の場合で、次いで離婚(70.0%)、未婚・非婚(68.5%)の順である。死別では苦しいと感じているのは44.3%と比較的少なく、ゆとりを感じている者も1割みられる。
 就業形態別にみると、パート・アルバイト(73.5%)で苦しいと感じている者が多く、正社員・正規職員でも56.0%が苦しいと感じている。

図表1-1-19 暮らし向きについての意識

 なお、無業者は有業者に比べて苦しいと感じている者が10ポイントほど多い。

2 健康状態について(付表5-2)
 健康状態については「よい」(19.3%)、「まあよい」(15.9%)、「普通」(39.3%)、「あまりよくない」(20.6%)、「よくない」(4.4%)である。「あまりよくない」、「よくない」をあわせると、25.0%が健康に不安を持っている。なかでも無業者ではこの割合が47.7%(32.1%、15.6%)と高い。

3 児童扶養手当(付表5-3)
 児童扶養手当の受給状況をみると、「全額受給」が42.9%、「一部受給」が17.9%と6割が現在受給しており、「受給したことがない」が20.8%である。
 なお、離婚では「全額受給」(52.6%)、「一部受給」(22.0%)と4分の3が現在受給しており、「以前受給していたが年齢要件ではずれた」(6.2%)、「以前受給していたが収入要件ではずれた」(8.4%)、「受給したことがない」(8.0%)である。
 就業形態別に受給状況をみると、「受給したことがない」は「正社員・正規職員」(24.7%)で多く、「自営業」(18.6%)でもやや多い。両者は「以前受給していたが収入要件ではずれた」もそれぞれ13.1%、12.4%と多い。「パート・アルバイト」と「その他の非正規」は7割が現在受給しているが、「パート・アルバイト」では「全額受給」が「その他の非正規」よりも10ポイント高くなっている。
 母子世帯になってからの期間別にみると、期間の短いほど「受給したことがない」が多い。

図表1-1-20 児童扶養手当の受給状況


4 世帯収入の内訳と主な収入(付表5-4、5-5)
 世帯全体の収入に含まれているもの(複数回答)をみると、本人の「勤労収入」が88.7%、「親・親族からの援助」が20.3%、「子の父からの養育費」が17.5%、「遺族基礎年金・厚生年金」が16.8%である。
 母子世帯になった理由別にみると、死別では「遺族基礎年金・厚生年金」(86.4%)が本人の「勤労収入」(82.9%)よりもやや多いが、離婚では本人の「勤労収入」(91.3%)が圧倒的に多く、「親・親族からの援助」(21.9%)、「子の父からの養育費」(21.8%)が続いている。
 生別母子世帯の世帯収入のうち、「子の父からの養育費」が含まれる割合は離婚の場合であっても21.8%にすぎず、父親の養育責任が十分に果たされていない傾向が見られる。

図表1-1-21 生別母子世帯の世帯収入に養育費が含まれる割合

 働いていない者の収入の内訳は「親・親族からの援助」(33.0%)、「遺族基礎年金・厚生年金」(23.9%)、「子の父からの養育費」(22.9%)と続いており、「生活保護」も1割を超えている。
 最も主な収入をみると、死別では本人の「勤労収入」(55.1%)と「遺族基礎年金・厚生年金」(35.8%)が多く、離婚では本人の「勤労収入」が8割である。別居や未婚・非婚では自分の「勤労収入」の他、「親・親族からの援助」や「子の父からの養育費」の割合が他に比べると高い。

図表1-1-22 世帯収入に含まれるもの



5 月平均の収入と支出

(1) 月平均の収入(付表5-6)
 月の平均収入(税込み、賞与は除く。社会保障給付等を含む。)については、「20~30万円未満」が22.0%、「15~20万円未満」が20.2%、「10~15万円未満」が21.9%であり、平均は21.0万円である。

図表1-1-23 世帯全体の平均収入

 就業形態別に平均をみると、最も多いのは自営業の26.5万円で、次いで正社員の25.4万円、最も低いのはパート・アルバイトで15.5万円である。

(2) 月平均の主な支出

 <1> 子どもの教育費(通学費用を含む)(付表5-7)
 教育費の支出のない世帯は10.3%であり、ある世帯の平均教育費は38,400円である。末子年齢別では「12~14歳」で38,800円、「15~17歳」で53,000円、「18歳以上」で71,700円と上昇している。
 年齢でみると、40歳代後半でピークを迎え63,700円と世帯月収の27.7%を占めている。

 <2> 子どもの保育費(付表5-8)
 保育費の支出のない世帯は51.0%であり、ある世帯の保育費の平均は21,300円である。

<3> 医療費(自己負担分)(付表5-9)
 医療費の支出のない世帯は32.2%であり、ある世帯の医療費の平均は6,700円である。

 <4> 家賃・住宅ローン(付表5-10)
 家賃・住宅ローンの支出のない世帯は27.0%であり、ある世帯の家賃・住宅ローンの平均は50,100円である。
 家賃・住宅ローンの額は勤労収入や世帯月収に応じて高くなり、世帯月収の3割から2割の負担となっている。
 なお、大都市圏の平均は61,200円と平均を10,000円程上回っている。


6 最低収入に対する意識(付表5-11)
 新しく仕事を探すと仮定した場合にこれ以下の収入では就職しないという最低レベルの金額を聞いたところ「20~30万円未満」が32.6%、「15~20万円未満」が32.4%で、「10~15万円未満」が15.2%と続き、平均は18.4万円である。
 世帯月収が高いほど、また都市規模が大きいほど最低収入に対する金額も高い。

7 親・親族からの援助(付表5-12、5-13)
 親や親族の援助の有無については、「現在受けている」は41.1%、「以前受けていたことがある」は18.9%で、6割が何らかの援助を受けていた。しかし、死別とそれ以外では状況が異なり、死別の場合は6割が援助を受けたことがないと回答している。
 現在受けている援助の内容(複数回答)としては、「生活費の援助」(46.0%)、「日常の子どもの世話」(41.7%)、「日常の家事援助」(39.0%)、「子どもが病気の時の世話」(37.0%)、「住宅についての援助」(37.0%)が多い。
 末子の年齢でみると、子どもが小さいときは子育ての援助を受け、大きくなり教育費がかかるようになると、経済的な援助を受けている。

8 社会保険の加入状況

 <1> 雇用保険(付表5-14)
 被雇用者(正社員・正規職員、パート・アルバイト、嘱託・準社員・臨時職員、派遣社員)のうち雇用保険加入者の割合は66.3%であり、未加入者は26.6%である。
 就業形態別にみると、「正社員・正規職員」では加入者85.4%、未加入者8.8%であり、「パート・アルバイト」では加入者39.8%、未加入者51.0%である。

 <2> 医療保険(付表5-15)
 医療保険については、健康保険組合に加入が52.4%、国民健康保険加入が41.2%である。
 有業者でも職場で健康保険に加入している者は6割に過ぎず、4割弱が国民健康保険に加入している。なかでもパート・アルバイトでは6割強が国民健康保険に加入している。

 <3> 年金(付表5-16)
 年金については、厚生年金・共済年金に加入している者が52.3%、国民年金に加入している者が31.8%である。
有業者の加入状況をみると、6割が職場で厚生年金等に加入、3割弱が国民年金に加入している。


9 生活意識(付表5-17)
 図表1-1-24に示した項目について、本人の気持ちに近いものを聞いた。「そう思う」、「わりとそう思う」と肯定が多かったのは「母子世帯になってから自分の健康がより気になる」(80.0%)、「自分が働かなくてはというプレッシャーを感じる」(77.0%)、「経済的に無理をしても子どもの教育は十分にしたい」(72.3%)、「母子世帯になって経済的に不安定になったと思う」(56.4%)である。
 死別の場合には、離婚に比べ「精神的なゆとり」について減ったと思う者がかなり多い。また、周囲や自分の健康にも気を使っている者が多い。
 「母子世帯にとって暮らしにくい世の中だと思う」は別居や未婚・非婚の場合に多い。

図表1-1-24 意識




第6節 職業能力の向上と支援策

1 パソコンの使用状況(付表6-1、6-2、6-3、6-4)
 パソコンの使用状況をみると、「使っている」が32.4%、「使えるが使っていない」が7.2%、「使えない」が58.4%である。
 使えない者の割合は50歳以上(72.3%)で高く、次いで20歳代(61.2%)も高い。
 使っている者の使い方(複数回答)では、「職場で仕事のために使っている」が76.5%、「家で趣味や情報収集のために使っている」が40.0%である。
 今後、77.5%がパソコンを使えるようになりたいと答えており、その目的(複数回答)として「転職や再就職のため」54.2%、「趣味や教養のため」50.1%と多いが、「現在の仕事のため」、「在宅で仕事をするため」と答えた者も2割を占める。

2 資格の取得状況(付表6-5)
 働く上で役立つと思われる何らかの資格を持っている者は「簿記」が18.4%で最も多く、次いで「ホームヘルパー」(6.3%)、「看護婦」(6.2%)、「教員」(6.2%)、「調理師」(4.9%)と続く。このうち、母子世帯になってから取得した割合をみると、ホームヘルパー(83.5%)、介護福祉士(85.7%)、パソコン(61.4%)、調理師(36.9%)で多い。資格が仕事の役に立っていると答えた者は介護福祉士(90.5%)、看護婦(74.8%)、パソコン(61.4%)で多い。
 「その他」にあげられた資格としては、自動車免許、珠算、保育士、幼稚園教諭、保険関係資格、ワープロ検定、着付けなどがある。

3 資格や技能習得等の実施(付表6-6、6-7)
 現在、資格や技能の習得など職業能力向上のために実施していることが「ある」と答えた者は9.7%であり、30~40歳代前半層でやや多い。実施している者の割合は正社員・正規職員、専門・技術職、勤労収入が多い者、世帯月収が多い者で高い。
 さらに、「希望はあるが実施できない」(46.0%)は若い世代、末子年齢が低い世代で多く、その理由(複数回答)としては、「費用が負担できない」(67.6%)が最も多く、次いで「仕事が忙しい」(48.4%)、「子育てや家事が忙しい」(31.7%)が続く。

4 仕事に関する支援策(付表6-8)
 よりよい就職や仕事の問題解決のためどのような支援策(3つ以内)がほしいか聞いたところ、「訓練受講などに経済的援助が受けられること」が最も多く54.3%、次いで「就職のための支援策などの情報が得られること」(39.8%)、「訓練などが受講しやすくなること」(33.1%)、「技能講習、職業訓練など機会がふえること」(27.6%)と続いており、職業訓練に関する要望が強い。
 支援策は年齢や末子の年齢によっても異なっており、いずれの年齢層でも「訓練受講などに経済的援助が受けられること」が第1にあげられているが、その次には20歳代では「延長保育、休日保育が充実すること」が、30歳代では「学童保育が充実すること」があげられている。
 また、勤労収入階層別に就労支援策をみると、訓練に対する経済的援助や情報の提供については年収200万円未満で要望が多く、保育所、延長保育、学童等子育て関連の支援策は収入が高くなるほど要望が多くなる傾向が見られる。

図表1-1-25 母子世帯が必要とする就労支援策(3つ以内)


第2章 自由回答欄のコード分析

 「母子世帯の母への就業支援に関する調査」では自由記入欄を設けている。多くの調査対象者からたくさんの悩みや意見、要望が寄せられた。自由記入の多さは今回の調査の特徴をなすものである。
 「あなたが今もっとも悩んでいること、仕事を続けていくうえで困っていることなどについて、行政、企業、社会一般への要望や意見を含めてご自由にお書きください。」に応えていただいた自由記入についてここで紹介する。


1 自由記入欄の記入者数
 自由記入欄に記入している者は、40歳代が41.6%、30歳代が34.8%と多く、30歳未満と50歳代がそれぞれ1割程度となっている。これは調査対象者の年齢分布と大きな相違はなく、どの年齢層からも自由意見は寄せられていると言える。

2 自由記入の内容

(1) 概要
 まず、自由記入を悩んでいること、困っていること(以下「悩み」とする)と要望・意見(同「要望」とする)に分け、内容を仕事、暮らし、子ども、社会・ネットワーク、行政に分類し、集計したものが次の表である。

問42 悩み・要望 テーマ別集計(複数回答)

 悩みについては仕事に関することが68.4%と多い。次いで、暮らしに関することが44.4%、子どもに関することが28.7%と続いている。
 要望は子どもに関することが26.5%と多く、次いで、暮らし(16.0%)、仕事(14.9%)、行政(14.8%)と続いている。
 多くの記入があった悩みについてもう少し詳しくみてみよう。
 仕事については労働条件等と就職・転職の困難さがあげられており、労働条件の中では子どもの病気、学校行事の時休暇がとりにくい、残業がある、土、日は休みたい等仕事と育児の両立を図るための時間に関することと賃金・手当、それに雇用の不安定さを訴える声が多い。就職、転職の困難さの中では年齢制限の訴えが半数を占めて多い。
 暮らしについては現在の生活を支える経済面の苦しさ、これからの生活、老後の生活は大丈夫だろうかという将来に対する不安、住宅費の負担が軽ければ生活がもう少し楽になるのに安い公営住宅に入居できない嘆き、病気等体調不良のため、全くあるいは十分に働けず生活が苦しい状況を訴え救いを求めるもの、それに、病気になったらどうしよう、これからも今のように働けるだろうかという不安を訴えている。
 子どもに関しては、小さい間は子どもに目が届かない、かまってやれない悩みを持ち、大きくなると高校への進学(特に私立校)、大学や専門学校への進学希望に応えてやれるかといった教育費の負担に不安を抱いている。
 年齢別にみると、仕事に関する悩み・暮らしに関する悩みは、年齢の上昇とともに増加している。暮らしに関する悩みの中では「病気」と「将来・老後」は年齢の上昇に伴い増えており、「住宅」は30歳未満を除くと同程度の分布となっている。一方「経済」については30歳未満で多くなっている。
 子どもに関する悩みは若い層の「保育・育児」、から「教育・しつけ」、「進学・教育費」と、年齢の上昇に伴って悩みが変化している。また、子どもに関する要望も年齢の若い層で多い。

年齢別(細目は主な項目のみ)

 次に、母子家庭になった理由別にみると、離婚の場合はどの項目も平均よりも高く、より多くの意見が寄せられている。死別では仕事に関する悩みが離婚に比べるとかなり少なくなっている。別居では子どもに関する悩みがやや多い。未婚・非婚では仕事について離婚とほぼ同じ程度に多くなっているが、その他の悩みは少ない。しかし、要望をみると、未婚・非婚で比較的多くなっている。中でも子どもについては格段に多い。また、実態的には母子世帯でありながら、法的には別扱いになる別居で母子世帯として支援してほしいという行政への要望が多くなっている。

理由別((細目は主な項目のみ)

 末子年齢別にみると、悩みについては本人の年齢の上昇と同じような状況だが、子どもに関する要望が0~5歳で5割を超えて多くなっている。

末子年齢別(細目は主な項目のみ)

 就業形態別にみると、嘱託・臨時・派遣等の「その他の非正規」で仕事に関する悩みが9割を超えており、労働条件が5割を占めている。次いで「パート・アルバイト」も仕事に関する悩みが多くなっている。なお、労働条件については「パート・アルバイト」よりも「正社員」の方がやや多い。暮らしについては「自営業」で6割強と多く無業も5割を超えている。無業と自営業ではともに病気が他に比べ高くなっている。自営業では暮らしについての要望も多い。正社員とその他非正規では児童扶養手当についての要望が多くなっている。

就業形態別(細目は主な項目のみ)


(2) 具体的内容
 以下、具体的な悩みや要望の一部を内容別に紹介する。

<1> 仕事に関する悩み
●就職・転職の困難さ
  ~複数の要因が複合して就職・転職をより困難なものとしている。

▼母子世帯 ~子どもが幼いことを理由に断られるので、20・30歳代に多い。
 母子家庭だと、それが理由で仕事を断られます。子どもがまだ小さい、病気などで休む時もあるでしょなんて言われます。仕方のないことなので、あきらめていますが。(28歳 離婚)

 母子家庭で子どもが小さいと、どこも正社員ではやとってくれません。今もパートで働き、自分が病気で休んだことはありません。(32歳 離婚)

▼年齢制限 ~40・50歳代に多い。最も多い項目である。
 誰でもそうかもしれませんが、自分でしたいなと思う仕事、できるなと思った仕事は35歳くらいまでが多く、年齢が上になるほど仕事は見つけにくくなります。年齢だけはどうしようもないのにと思うことが多いです。(42歳 離婚)

 就職するとき、年齢制限が厳しく、人間個人を見てほしいのに、希望する仕事の面接も受けられないことです。子供が大きくなればなるほど、親は仕事に対して集中できます。その時の年齢は、ある程度高くなるのは当たり前だと思います。(52歳 離婚)

 ある程度の年齢になっても正社員として働けるようにしてもらいたい。最初からダメではなく、期間を設けて教えていただきたい。で、ダメだったら不採用にしていくようなことを多くの会社でしてもらいたい。(35歳 離婚)

 長い不況の時代で一般家庭でも大黒柱がリストラされている今、私のような中高年にはパートの職に就くのさえ簡単ではありません。(49歳 死別)

▼学歴・資格・技能
 いずれは保護を打ち切って、自分の収入だけで生活したいと思うが、学歴、資格などがないのと、体力的、精神的にもかなり無理な部分があるので、先の事を考えると不安でいっぱいです。資格や技能の勉強をやりたいという希望もあるし、今は家でテキストのようなものがあれば勉強もやりたいと思う。(32歳 離婚)

・パソコン
 正社員になりたかったのですが、この年齢ではありませんでした。……完全に働く体制は出来ているのですが、現実は厳しいです。事務系に関しては、自分が思っている以上にパソコン等機械の導入がすごくて、昔の事務経験など何の意味もないことにおどろかされました。……(46歳 離婚)

・中卒者
 主人が突然亡くなりました。……途方に暮れていましたが、いつまでもこんな事ではいけないと思い、何か手に職をつけたいと思いました。でも私は高校を卒業しておらず、きちんと就職するためにはまず高卒の資格からという事に。……専門学校へ行きたくても、資料にはどれも「高卒以上」の文字が。人間として生きていくための常識はきちんと身につけているつもりなのに、子どもを育てていくために仕事を持ちたいのに、学歴がないがために閉ざされてしまっている現状がとてもさみしく思えます。(32歳 死別)

・資格をとっても活かせない
 ……少しでも次の就職に有利になるよう、自己啓発に励みました。でも、……その資格を取ったばかりの人はダメ。経験者でないとお断り。経験のない人が来ても教えられませんとこんな調子です。初心者の門を開いてくれなければ、誰も経験者にはなれません。月日がたてばせっかく取った資格も忘れてしまいそうです。(40歳 離婚)

●労働条件

▼賃金が低い、残業手当がつかない
 まだ子どもが小さいので、……自由のきくパート、アルバイトしかつく事が出来ず、ボーナスなどがなく、そして会社のかってでひまな時には休まされることがたびたびあるので、収入に安定がなく不安定である。(34歳 離婚)

 給料が安いこと。(世間の相場より安い、新卒並です)大学卒業時は大規模の病院に勤めていたが、結婚退職。さらに転職のたびに規模は小さく給料は安く、経験が全く考慮されず。(46歳 離婚)

 昨年から何の説明もなく夏と冬のボーナスが廃止になったこと。給料が売り上げにより毎月変動する(先の計画がたてられない)。残業手当等一切つかないこと(仕事量が多く、就業の5時半に終わったことがない)。男性社員ばかり厚遇し、女子社員の地位は低いまま。1月分の給与が、売り上げが悪いという理由で、手取りで10万円にしかならない給与。(50歳 離婚)

▼時間・休日・休暇・通勤 ~時間・休日・休暇・通勤の問題が多くなっている。特に、子どもの保育や教育との両立の問題で、20・30歳代が多い。有給休暇や育児休暇の充実などの要望に至る人はあまり多くない。

 病気の時(自分、子ども)等、休みにくい。他の人に迷惑がかかる。休むと時間給なので、減る事もつらい。かといって病気の時に保育所に連れて行ったり、病児保育に預けるのは、しんどいときにはやはり母親がそばにいてやりたいと思う気持ちと交差してしまい、また仕事中でも気にかかり、対処法が見つからない。(30歳 離婚)

・労働時間が短い分、収入につながらない
 派遣社員として働いているため、会社の都合でフルタイムになったり、短時間勤務になったりと一定しておらず、正社員と違いボーナスもほとんどない為、なかなか生活が安定しないことが何より困ります。(47歳 離婚)

 51歳という年なので、今働いているスーパーが、今年3店舗ほど営業停止になり、又労働時間が短縮されたりで、お給料も少なくなるけど、今は就職口がありませんので、今のところで我慢するしかありません。(51歳 離婚)

▼正社員とパートの格差
 現在の仕事は前の会社と同じ仕事ですが、リストラで籍が変わっただけで、正社員からパートになりました。しかし、経済面での格差があまりにも違うため、悔しい思いをしています。又、いつ解雇になるかと心配です。(45歳 別居)

 パートで仕事をしているが、社員と同じ仕事をしているが、同年齢であまりにも収入の差がありすぎで、これをもう少しパートの人たちの収入面で考えてほしい。(51歳 離婚)

▼不安定な雇用、雇用不安 ~40歳代に多い
 会社が倒産するかもしれない。注文がへっているからという理由で、私たちパートは、休みたくないのに休まされ、収入がない。保険なども一切ないので、職を失ったら明日からのくらしにも困ります。次は、せめて雇用保険や会社で仕事中にケガなどした時の保険があるような会社で働きたい。(30歳 離婚)

 パートの雇用契約が3ヶ月毎の更新で、安定していないことが、一番の悩みです。会社の都合でいつ切られるかわからない。この先、年齢が進んで、突然契約切れとなっても、希望する事務の仕事には、つけないのが現状です。求人の年齢制限が大きな壁です。(40歳 死別)

 正社員として事務の仕事をしているが、会社が自分の定年の時まで存在するかどうか不安である。(37歳 離婚)

▼社会保険、福利厚生 ~50歳代にやや多い。
 現在、パート勤めなのですが、会社での健康診断や病気、ケガ等をして私が働けなくなった時の保障など、充実させてほしいです。パートでも、その会社に勤めている社員と同じように扱ってほしいです。今は先の事が不安なので転職をするつもりです。(27歳 離婚)

 個人のお店で働いておりますが、失業保険がないため、今後どうなるのかとても心配しております。ほとんどの勤め口が年齢制限をしているため、資格のない私は仕事がありません。今の仕事は代わりの人がいないので病気をしても休むことができないので、もう少しゆとりのある仕事がほしいです。(53歳 離婚)

▼仕事内容
 仕事は、生命保険の外交です。契約が取れなければ自然に会社をやめなければいけないので毎月ノルマがきつくて頭が痛いです。体が丈夫ならもっと他を探すのですが、保険会社のように朝、朝礼に出れば、体調が悪ければ帰って寝ていられるような仕事はありません。(51歳 離婚)

▼契約違反・法律違反
 前の会社でリストラの対象に会い、辞めさせられる様な方向に持っていかされました。母子家庭だからといい、どんなやり方されてもいつづけられると思われたのにも腹が立ちました。……年収も4割程減り、精神的にも未だに傷ついて気持ちのもっていき場がありません。行政の力を借りることが出来たでしょうか。(49歳 死別)

▼男女格差 ~40・50歳代に多い。
 一般的に男女の雇用格差(賃金)は現在も少しも改善されておらず、女性が一人で生きていくことを選択しにくい状況にあると思う。女性が経済的自立ができるような社会になって欲しいと思う。(43歳 離婚)

 女性は一度仕事をやめてしまうと正職員になる機会がなく、同じ仕事をしていてもパート、アルバイトですまされ、給与や待遇面の差別はもちろんの事、人間的にも低い地位に見られがちです。退職金やその他の福利厚生はすべて同等に(正社員や男性)扱われるべきだと思います。それでなくても母子家庭という事で、世間から白い目で見られるのですから。どんなに一生懸命働いてもほっておかれる立場なのです。(47歳 離婚)

▼正社員になれない、なりたい
 安定した正社員として働きたいと思い、派遣社員で入社。なかなか正社員には無理なよう。残念。(36歳 離婚)

 夫が亡くなる前は、扶養からはずれないように働いていましたが、夫が亡くなって、フルタイムで働きたいと会社に言っても働かせてもらえませんでした。社会保険も何も入れてもらえません。……会社は必要な時だけ私を使い、社会保険に入れない。本当に利潤主義で腹立たしいです。(51歳 死別)

●人間関係
  ~職場における人間関係のことについては、あまり詳しくは述べられていない。

 ……人間関係も母子家庭ということなのでしょうか、かなりの暴言を言われたこともあり、悩んでいます。生活のためには辞めることはないのだろうと思われているのでしょう。社長も見て見ぬふりです。つらいです。(41歳 離婚)

●能力資格
  ~資格を取得したいが何らかの問題があるケースが多い。20・30歳代に多い。

 若いうちに看護学校に行きたいが、学校に入学できても、経済的に無理な為(収入源がなくなる)行けない。(22歳 離婚)

 仕事に生かせる資格を持っていない為、取得したいが、身近になかなか見つからない。技能等を生かした仕事につきたいが、その間の生活費のことを考えると気持ちに余裕がなく、決断できない。(43歳 離婚)


<2> 暮らしに関する悩み

●経済
  ~生活が苦しい母子世帯が多い。20・30歳代にやや多い。

 自分一人の収入ではとても子ども2人を養っていけない。養育費に頼らず、一人で自立するには物価も高いし、とても無理。30過ぎの女性が(子どもを抱えて)働ける仕事は非常に少なく、あっても収入になかなか結びつかないのが現状。(37歳 離婚)

●病気
▼病気・障害 ~40・50歳代に多い。
 私は、脳梗塞のため(45歳の時)病院へ月一回は通院しています。医療費が高い、検査の時は1万円以上もするので、その月はいつもお金のことを考えてしまいます。前は言葉も話せず、字も書くことが出来ませんでした。今は仕事も出来るようになりましたが、いつまで仕事が続けられるか、心配でもあります。今まで、一人で出来るだけ頑張ってきたつもりですが、やはり健康でない自分がいつまで頑張れるか?一番の心配です。(47歳 離婚)

 昨年から子供が三人とも体調が不安定になり、年末から今も私のぜんそくがひどくなった。精神的なものだと周り言われ、しっかりしろと親にも言われ、体調は苦しくなるばかり。今は毎朝苦しくて仕方ない、気持ちばかり焦ってしまう今の状態がすごく悔しい。(不明、その他)

▼病気・体力不安 ~40歳代に多い。
 仕事は学校給食の調理です。立ちづめの仕事で重い物を持つことが多く、腰痛、肩の痛みと、毎日自分の体力以上の仕事で、今は43歳ですが、何歳まで続けられるかとても不安です。もう少し身体が楽な仕事をと思うのですが。自分の健康状態が心配です。(43歳 離婚)

 現在、更年期障害で悩んでいる。疲れやすく、体がだるく色々な症状で気持ちが落ち込んだりで仕事を辞めて、自宅で何か仕事をしたいと思うが、在宅では生活費(20万)位を得るのは難しい。子供が大学を卒業するまでは、辞められないかなと思う。(45歳 離婚)

●精神・ストレス
  ~様々な場面でストレスを感じることが多く、精神的にも不安定になりやすい。

・離婚時
 離婚時にストレスなどにより拒食症におちいり、以来10数年、拒食症は克服したものの身体的に虚弱になってしまい、ずっと体調がよくないのです。入退院を繰り返してばかりで、定職に就けず、収入が不安定で。(34歳 離婚)

・母子家庭ゆえに頑張りすぎる
 子どもを育てながら仕事をするのは、周りの人たちの協力がとても必要です。特に私の両親にはとても助けてもらっています。又1人で何でもやらなくてはというプレッシャーをいつも感じてしまい、よく不安な気持ちになったり、疲れた時に子どもにおこって、あたってしまったりします。精神面でも経済面でも苦労はとても多いです。(36歳 離婚)

・職場
 主任をしているが一人で何でもしなければならないため、精神的ストレス、身体的ストレスが大である。時々夜間一人で仕事をしていると、発狂しそうになり大声で「助けて!」と怒鳴りたくなる。……自分はいつも一人なんだと絶望的になってしまい、対人関係をますます悪くしてしまう。……もう子供達も育て上げたし。本当に疲れてしまいました。……いつも一人です。ひとりぽっちです。(49歳 離婚)

●住宅
  ~住宅に関する悩み―後の「暮らしに関する支援」の住宅の項目も同様―は多くの人が感じている。

・家賃の高さ
 私にとって一番困っていることは住居です。……住居にかかるお金は収入の中でも大きく占めるところです。母子家庭の人はみんな言っています。家賃が大変だと。優先的に入れる住宅があると本当にいいと思います。金額的に負担の少ない市営住宅はなかなか当たりません。もっと優先的に入れるといいと思うし、家賃が少なくなれば少し生活も楽になりますが、本当に生活は大変苦しいです。(42歳 離婚)

 一番困って悩んでいることは住宅です。市営住宅に入居したいと思っていますが、あくまで抽選ですので希望がもてません。空き家については(新築と空き屋募集がある)場所を選ぶことが出来ません。しかしながら、仕事を2つ持っているので通勤できる地域が限られてしまいます。遠いところがもし当たってしまえば仕事を失うことになるので応募できません。そして新築は倍率が高く、宝くじのようなものなのです。早く何とかしないと子供が中、高校となるので、食べていくことが出来なくなりそうです。困っている人はたくさんいると思いますが、それぞれ、事情を聞いて市営、県営、公営何でも良いから、入居させて!!と心で願い続けています。(51歳 離婚)

・住宅の狭さ
 現在住んでいるアパートが1LDKで狭いため、子ども達も私ももう少し広い家に住みたいと考えているが、現状では金銭的にとても無理なので、とても悩んでいます。もうすぐ上の子が中学生なので、気持ち的にも“狭いアパート”というのは不満なようで、態度にあらわれてきているこのごろです。(42歳 離婚)

●養育費
 離婚調停しても相手が養育費を送金しない。アメリカ等は国の機関が強制的に取り立ててくれると聞いたことがあります。日本でもそのように法的処置が講じられるようにしてもらいたい。……微々たる額でも、この世に生みだした子は「二親の責任」を明確にするため、きちっと実質的に取り立てる方策を講じていただきたい。(54歳 離婚)

●将来・老後
  ~様々な不安要因が、将来・老後に対する不安と結びついている。特に近年の不景気や年金制度などの社会不安が強く影響している。40・50歳代に多い。

 このような世の中で一番不安なのは、年を取って、何の保障もないこと。子供は一人でその子も多分、親と離れてそれから先は、どのように毎日を送ればいいのか等、心配事がいっぱいです。仕事は今のところ何とかやっていけるが、じゃ、あと3年先は?とか5年先は?で気持ちが暗くなります。(49歳 離婚)

 子供は一人(女の子)なので老後、迷惑をかけたくはないが、どうなることか。年老いたときに果たして年金はもらえるのか、医療費はどうなっているのかetc。考えただけで不安で仕方ありません。先が長すぎます。(42歳 死別)

●親・同居者

▼親の面倒・介護 ~40歳代に多い。

・介護の負担
 母と同居ですが、3年前に脳梗塞になり、リハビリで回復、家におりますが、家事は一切できません。子どもも手伝いはしますが、遅く帰ってからの夕ご飯作りとなり、子どもがかわいそう。私も全てやらなくてはならず大変です。(41歳 離婚)

・死別した夫の親
 亡くなった夫の母が一人暮らしなので、何かと頼りにしてくるので困っています。高齢で病気がちなので、仕方がない側面もあるのですが、我が家も母子家庭で色々大変なので、悩んでいます。本人の自覚が足りないのが一番の難点なのですが、行政の方でもっと何とかしてもらえるといいと思うのですが、どうしたら良いのかがわかりません。(44歳 死別)

▼親その他 ~親が協力的であるとは限らない。
 親元で支援等を受けてはいるが、親も高齢で、退職したりすると自分たちのことで精一杯になり、何かとシビアになり、口うるさくもなり、何となくいごこちが悪い。(34歳 死別)

●前夫の問題
 元夫との種々のトラブルの解決。元夫よりストーカー的行為を受けている。(27歳 離婚)

夫の借金の後始末、私がどこまで払っていいものかで悩んでいます。(45歳 死別)

●暮らしその他
・病気や自分が死んだ後の残された家族の心配
 自分に兄弟がいない為、私の両親、私が死んだ後の子を救える人が全くいなくなることがとても心配。(42歳 離婚)


<3> 子どもに関する悩み

●保育・育児
  ~幼児のいる20・30歳代に多い。

現在通っている保育園では「病児保育」をやっていないので、保育園で発熱した場合、仕事中に電話がかかってくる。午前中などに電話がきたりすると、すぐには迎えに行けないので、やむをえず昼までみていてもらうが、仕事を中断せざるをえない事が度々ある。朝から熱がある時は、実家の母親に来てもらいみてもらうが、それも容易ではないので、…… (23歳 離婚)

 区の保育園が一杯で仕方なく無認可保育園で高い月謝を払い、安月給を手に入れ、昼夜逆転した生活となった。精神的に非常に追いつめられ、泣いてばかりの日々。家賃は高いし、もうどうにもならない。実際に保育園に預けている親の中には、「めんどうだから」とか、夫が自営業でそれを手伝っていることにして預けて遊んでいる人がいる。本当にせっぱつまった母子世帯に門戸が開かれず、非常に迷惑である。(30歳 別居)

 母子家庭に限らず、小さい子どもを持って働くことによって増える負担(学童、保育所)は、本当に大きいものです。仕事で忙しいのに、更に使い役でまた時間をとられる。父親の助けがある所は協力できますが、母子(父子)家庭は、それを全部母(父)が背負う。小さい子どもを持って一人で働く母子(父子)家庭の負担は一言では言えません。(43歳 離婚)

●学童保育
 「今春めでたく小学校へ入学。給食が始まるまでは大変だけど、始まったら学童に預けて、今まで通り働ける」の予定でしたが、最近得た情報で、平日の学童はできればいいなあとの希望であって決定ではないと。働く意志も場所もあるのに、義務教育の年齢になった途端、働けなくなりそうです。どうやって生活していこうかと。楽しみにするはずだった1年生が永遠に来て欲しくない気分です。夏休みも学童のある日全部預けたら月2万するそうです。母子になって保育料は延長保育の2,000円(月)だけだったのに。(30歳 離婚)

 今後仕事を始めたいと思っていますが、子供(第3子)が小さいため、その間誰も保育してくれる人がおらず心配です。学童保育も考えましたが、上の子のときに一時入所したときに、保護者の役員や話し合いなど夜遅くまでかかりとても負担になりやめてしまいました。学童保育はあきらめていますが、まだ低学年では一人で留守番させるにはとても心配です。(34歳 未婚)

●教育・しつけ
 夜勤を月6回行っているが、子どもがさびしがり、精神的な負担をかけていることが悩みです。夜勤をしなければ、経済的にもやっていけないため困っています。昼間のフル勤務でも、ある程度の収入を得られる仕事があればと思うのですが。(33歳 離婚)

・非行
 今一番の悩みは高校を中退した長女のことです。……高校に入って友達が変わったとたん徐々に非行に走り、今では学校もやめて家でだらだらした生活をしています。昼間家に誰もいないのを良い事に、友達もしょっちゅう家に来て好きほうだいしている様子。いくらしかっても効き目がなく困っています。とにかく、世間に迷惑をかける事のないようにだけを思うばかりです。(42歳 離婚)

・登校拒否
 長男の将来について、中学校はほとんど登校拒否で行っておらず、非行は収まっているが、希望があまり持てない様子。学校へは行きたいと思っているらしいが、学力が無く、不安、およびやる気をなくす。仕事がない。アルバイトを時々行っていたが、不景気なのであまり仕事がない。一番どうしたいのか本人もわからないと思う。(47歳 離婚)

・学習の遅れ
 子どもの勉強など、親が教えてやれればと思うことが多いが、仕事や家事などで時間とられて見てやることができません。塾など入れたいのですが、お金の面で無理なことも多く、学校だけでは遅れていくようで、何か援助があればと思います。公立高校への進学など、大変むずかしくなってきていると言われています。(36歳 離婚)

・死別は父親不在の意識が強い
 子供のこと、父がないのできつくしかることができないし、いくらいっても言うことを聞かないときがある。学校へ行きたがらない、何とか卒業して欲しい。(44歳 死別)

 子供の進路や将来のことについて、共に悩んだり、話し合う夫がいないのが非常につらい。長女・次女に対して私の気持ち(親としての考え)を直接話すようにしている(45歳 死別)。

 父親のいない分厳しく育てようと思うのですがなかなか思うようにいきません。置かれている境遇を思い強くこの世の中を渡って欲しいと願うばかりです。(49歳 死別)

●教育・進学費
  ~教育費の負担に不安を持っている。40歳代に多い。

 子どもの教育費が一番の悩み、上の子は留学中。下の子は東京の専門学校。卒業までに自分の体が健康でいられるかどうか心配である。現在2つの仕事を持ち、1日14時間、土、日もなく働いている。卒業後の自分の老後の生活資金のことも考えなくてはならない。(43歳 離婚)

 子供の進学について、大学に行かせてやりたくても、お金がないのであきらめてもらわざるを得ないので悩んでいます。(48歳 離婚)

 子供が大きくなるにつれ、お金が出る金額が多くなり(生活費・食費など)大学まで進めることが出来るんだろうか。今の私一人の収入で・・・・・、と考えさせられます。……高校の修学旅行も金額が高くなりますし・・・・(45歳 離婚)

●就職
  ~就職できない子どもや社会的に自立できない子どもの悩みを抱えていて、相談先に困っている人も多い。40・50歳代のみ。

 同居している21歳の長男の仕事がないこと。一時期不登校状態となり、高校を一年留年して卒業したが、フリーター、アルバイト等の情報は書店販売の情報誌等より手に入り、アルバイトはしたこともあるが、高卒でつける職業(正社員として)の情報の手に入れ方が分からない。(48歳 離婚)

 現在20歳になる長男が高等(サポート校)を卒業して以来、引きこもり、自立できません。職を探しておりますが、なかなか面接までいかず、家にいてもお金が自由にならないと妹に暴力を振るいます。このままでは娘が今度中学3年になりますので、高校入学もままならず、不安です(経済的にも)。(57歳 離婚)

 高校生の娘は現在奨学金で学んでいますが、卒業後、大学、専学の進学がさせられません。でも高卒の就職もむずかしく、親子ともども悩んでいます。その上片親では就職が不利だと聞いておりますので、前途多難です。(49歳 未婚)

●PTA・学校行事
・役員が負担である
 PTAの役員など、忙しくて出来ない親はいっぱいいるのだからPTAをなくしてほしい。母子家庭や父子家庭では役員をやるのはムリがあるのに順番だからという理由で、やらなくちゃならないのは、たいへんです。子供会も、子どもの為に入っているが、役員をやるのが気が重い。(29歳 離婚)

・出たいが出られない
 私は資格もある為、母子家庭の中でも恵まれており、職場でも理解していただいている方ですが、学校関係の父母会等時間的に参加できないことが困ります。又、普段留守番させている子ども達とゆっくり過ごしたい休日に、町内、子供会、PTA行事に追われてしまうと、個人として休む時間が全くとれず、イライラすることがあります。近くに同じ環境の方がいるのか等、全く情報なく、淋しくなります。(38歳 離婚)

●障害児
  ~障害や病気を抱えている子どもの場合は、母親の負担がかなり大きい。

 心身ともに疲れている。障害のもった子を持っているので、常に自分に気を張っている。収入欲しさに仕事を増やせば子どもとの接点がなくなる。ただ疲れた。力のない自分がただなさけない。(36歳 離婚)

 下の子供が障害があるため、普通に小学校へあがれない見込み。どんな施設等に行くことになるかわからないが、勤務時間や公休など考えると、今の仕事を続けていく事は困難かもしれない。万が一を考え、テープライターの通信教育を始めた。障害児の通所施設以外に、保育してくれるところがあれば助かる。(休日や夜間も)(33歳 離婚)


<4> 社会・ネットワーク

●信用
・ローン
 仕事上、運転資金を借りるとき、母子になる前に主人、商売をしてからの信用などで銀行などでもいろいろ助けてもらって商売がやってこれましたけど、母子になるとなかなか難しいです。世の中って母子というだけで信用してもらえないことが多いですね。(46歳 その他)

・住宅 ~母子世帯だと住宅が借りられないという悩みも多い。
 子供がアパートを借りるときに母親の他に所得の多い保証人が必要だったので困りました。実の姉がなってくれるといってくれたのですが、パート勤めで低所得で、結局姉の夫が書いてくれたのですが、迷惑をかけたようで、やっぱり母親だけというのはきびしいなあと思いました。(45歳 死別)

▼偏見・差別
 離婚は決していいことではありませんが、離婚しているというだけで、普通と違うという感覚で見られてしまって、自分ではがんばっているつもりでも、どこかみとめてもらえないような所があるので、時々苦しくなってしまうことがあります。離婚するにもその人その人いろんな事情があるし、今幸せに暮らしている人達でも、もし自分がそうなったらどうだろうということを、ほんの少しでもいいから考えてくれたらなと思います。(30歳 離婚)

 母子家庭というだけで、男性への偏見をされ、仕事をしていく上でも何もないところで男性との噂が広まっていたりと、ひぼう、中傷などがたえない。ただ真面目に働いているのに、そういうことがあるという現実が悲しく思います。(32歳 離婚)

 母子家庭に対しての周囲の目はいつも興味本位で、良くても何かと陰口をいわれたり、悪い点は大きく取り上げられてしまったりして、精神的につらいです。収入とか生活は現在私は何とかやっていますが、精神面で怒りや悲しさを自分の中で消化していくことがつらいです。(44歳 離婚)

 母子家庭・母子世帯という言葉があまり好きではない。今の世の中、離婚される家庭も多く、自ら“母子”になる家庭と仕方なく“母子”になる家庭がある。最愛の夫を亡くしたのに、離婚したと思われているときが多く、不快になるときもある。“母子”という言葉をもう少し、考えてもらえたらうれしい。(38歳 死別)

●地域の役員
 地区行事の一つとして、自治会の役員や組長(子供が学校へ行っているときはPTA役員等)がまわってきます。その地区に住んでいるのだからやらなくてはいけないことだとわかってはいるけど、母子家庭(当然父子家庭も)だと協力してくれる人がいないので、仕事を休んで決められたことをするか、やらないかになってしまう。人それぞれいろんな理由があるとは思うけど、社会通念上通る理由があることをわかって欲しい。特に地区の仕事は土、日に集中していて、土・日が仕事で客商売なので、特に休みにくいため、いやがられながら遅刻や早退等してやっている状況です。(39歳 死別)

●母子会・相談相手
 母子家庭の横のつながりがなく、相談したり子どもを遊ばせたりする人がいなかった。もっとオープンに知り合う機会を必要としている人がたくさんいるのでは?私もそういう所があれば、もっと救われたと思うし、子どもが病気にもならなかったのではとさえ思います。(42歳 離婚)


<5> 仕事に関する支援

 ~アンケート項目にあるので自由回答では少ない。あまり具体的でないものも多いが、とにかく雇用をという意見が多い。

▼斡旋・紹介
・人材バンク
 現在私達が職安等へいって職場を選ぶやり方ですが、反対に私達が自分のいろいろの条件を(自分の性格なども)登録しておいて、募集している企業側が自分の職場にあった人を選択し、そこで初めてお互いに面接し、納得のいく職場に就職できればよいと思う。(46歳 離婚)

 母子世帯になった時、やはり無職だった人は働き先を探すのがまず一番大変だと思います。仕事先が早く見つかるような手だてがあれば良いと思います。たとえば職安まで行かなくても自分の地域の役所で見ることができるなど、職安出張所みたいのがあったりすれば良いと思います。別に職安に限らず、情報をいち早く提供してもらえる所があればと思います。(44歳 離婚)

▼年齢制限のない雇用
 長寿国、高年齢社会といわれる今、雇用年齢制限が低いと思います。男女とも、50歳代・60歳代にもう少しチャンスを与えてほしいです。(50歳 死別)

▼行政の雇用提供
 公共施設への就職の門を開いて欲しい。年齢的な問題で正規の職員の道は閉ざされている。能力があれば母子世帯などは優先されても良いと思う。(39歳 死別)

▼母子優先の雇用
 母子家庭だからとか子どもが小さいからという2つの理由で採用されないことが多い。母子家庭だからこそ大変なのに、つめたい世の中だと思う。母子専門の企業などがあり、資格もいらないような所があれば便利だし、嬉しいのですが。(29歳 離婚)

▼企業に対する支援
 母子家庭の多い今、一般企業の理解を受けられる様、支援策を企業側へ出していただければと思っています。母子家庭が増え、働く母親が多い現在でも、一般企業では子どもがいることによる病気や学校行事での休日などは認められることはなく、就職に関しても、その点で採用がむずかしかったりすると思います。その点を理解また対策として、何か応援策を政府から企業へ出して頂けると、母子家庭の働く母たちは安心して働けると思います。(36歳 死別)

▼在宅ワーク
 在宅ワークの場合の情報広告には、その会社の商用のものが多く、情報がすべて信じられるものではなく、いつも問い合わせをしてはガッカリする。これから在宅ワークは多くの人が利用すると思うので、公的に正しい情報を収集して欲しい。(45歳 死別)

▼資格・訓練~20・30歳代にやや多い。
 収入もなく、特別な技能もなしで、とりあえず、子どもたちと食べる分だけでもと思い、パートに出たのですが、仕事をしながら訓練受講でもできたらと思いました。近くにそういう場所でもあれば、仕事の帰りとか、自分の時間にあわせて技術を少しでも身につければ、もっと社会的に出れて、仕事ももっと多く選ぶこともできるような気がしました。母子センターに住んでなくても、その中の勉強に参加できたらいいなと思いました。(32歳 離婚)

 資格や技能の勉強をやりたいという希望もあるし、今は家でテキストのようなものがあれば勉強もやりたいと思う。そんなシステムをもっと増やして欲しいです。(今もあるのは知っているけれど、身近なものとして感じられないです。)(31歳 離婚)

 母子対象の講習は抽選で何度も外れて講習を受けることが出来ません。もっと、人数、回数を増やして欲しいです。(47歳 離婚)

 市等の行っている職業講習等には、仕事を持ちながら参加するのがむずかしい。もっと日程や開催の回数を増やしてほしい。教育訓練給付制度のような制度を利用できる様にして欲しい。現状では、長年専業主婦であった母の母子世帯では、何も職業訓練に対する援助が無い。本当に困っているのは、結婚当初から職を持ち続けていた母子世帯ではなく、パート程度の職しか持っていなかった母が世帯主になって行く時である。ましてや子どもが小さい場合、更にむずかしい。(39歳 離婚)

▼扶養手当、住宅手当等
 ダンナがいないと言うだけで軽く見られるのが嫌ですね。(今の方が子どもが明るくなったのですが)男性には家族手当、住宅手当があるのに、なぜ女にはないのか納得いきません(女でも世帯主なのに)。(33歳 離婚)

▼上司・同僚の対応
 ……以前勤めた会社は、男性、独身者が多く、辛い思いをくり返しました。子どもに手がかかるのは、普通10年位なので、立場の異なる人を互いに理解し合い、独身者が見て「自分も子育てしながら働きたい」と思えるような環境にしてゆきたいものです。早退してのんびり休んでいるわけではないし、翌日は、仕事を休んだ分を取り戻そうとさえ思うのです。ただ休んだことだけにこだわるような洞察力に欠ける上司がいる職場は、本当に働きにくいです。(不明 離婚)


<6> くらしに関する支援

▼住宅
 家賃が高いので、都営住宅などに入居したいが、なかなか当選しないので、大変です。できればこの先何十年もそこに住むので、新築に入居したい。もう少し母子世帯もシルバー世帯のように、新築の都営住宅など、公営住宅に入りやすくしてほしいと思います。(30歳 離婚)

もっと公営住宅を便利な所に、住みやすい所に作ってほしい。へんぴな所とか日当たりの悪い所ばかり選んで公営団地を建てないで、便のいい中心地に……建てられてもいいと思う。やはり家賃が一番きつい。生活のすべてが家ちんで、……建築28年という木造の一軒家に住んでいますが、寒く、家ちんは6万もします。3DKと広さは2人ですので十分です。けど、やっぱ家ちんは高すぎ。……公営の住宅に住みたいけど遠い所、不便な所ばかり。仕事にかよえなくなる。……やはり、住まい、どうにか公営の住宅をふやしてほしい。……サッシでないのでカギすらちゃんとかからず、どろぼうとか変質者など入ってくるのではという不安とか、他色々不安だらけです。(42歳 離婚)

▼公的支払いの軽減~国民年金や健康保険が多く、住民税や公共料金もある。生活が苦しい20・30歳代に多い。

 年金が高い。将来の為に仕方がないが、現在、支払うのがきつい。子どもの学費等を考えると、少しでも預金にまわし、行きたい学校へ通学をさせたい。月々13,300円の年金は、とても母子家庭では受け入れるのには難しい。(33歳 離婚)

 パートだったので国民健康保険に加入したところ毎月の支払いがすごく高くて、(9~11万の給料なのに毎月2万近くの保険料でした)5,000円づつの分割にしてもらい1998年の保険料を未だに納めています。ちなみに保険証は一度も使ったことがありません。母子家庭、特に低所得者の保険料はぜひ見直しをお願いします。(47歳 離婚)

▼生活保護
 生活保護のお金もギリギリの計算でくれるので、もうちょっと考えてほしいです。市住もまだ、被災者の人優先でなかなか当たらないので、もうちょっと考えてほしいです。(22歳 未婚)

▼病気・医療
・死別、離別とも医療補助制度の継続を希望している人が多い。

 母子家庭等医療費助成制度の子供の年齢18歳までを20歳までにしてほしい。(49歳 離婚)

 18歳になると遺族年金・母子医療の給付が出なくなる。高校を卒業し大学・専門学校等に行く場合、今まで以上の生活費が必要になる。収入が少なくなるし出費が多くなる。今の社会は大学等行く子供達が多い。せめて大学卒業まで、給付があるよう考えて欲しい。(47歳 死別)

・対象枠の拡大
 私の場合、132万円の収入をこえると課税対象となり、母子家庭医療が受けられなくなるので、その金額をもう少し引き上げてほしい。(29歳 離婚)

・手続きについて
 母子世帯の医療費について、在住している市町村でしか適用されず、また他の市町村で何らかの医療を受けた医療費を請求する手続きが面倒。(28歳 離婚)

・その他
 年に1回ずつでも良いのですが無料で健康診断が受けられるようになればよいと思う。(40歳 死別)

▼貸付
 急にお金が必要になった時などは、なかなか借りられる場所がない。(例えば冠婚葬祭、車の修理や車検等)。役場でもらった「母子家庭のしおり」にお金を貸してくれる機関があったが、問い合わせたらあちこち電話させられて、結局よく分からなかった。(29歳 離婚)

 行動に移す時にはまとまったお金が必要だった。無料に近い金利でお金を貸してもらえたり、住宅が借りられると良いと思う。(34歳 離婚)

 昨年自分で商売を始めました。その時、所得証明も取れず、銀行からは借入もできず、困りました。何とかオープンしましたが、いざという時に、母子で借り入れできるようなことができたらと思います。母子生活15年間、やはり母子ということで一番困ったことは、お金です。生きていくための支援の場がもっとあればと思います。(40歳 離婚)

 生活保護という形を取らなくて、他に生活費の相談をするところが出来ればいいと思ってます。行政の手続きが長すぎて、……日数がかかりすぎる。母子家庭だけの貸付はありますけど、母子予算がない場合は貸付はできないといわれました。……民生委員さんに相談しても、行政の手続きしなくてはなりません。それではなくて、民生委員さんにも相談して、生活貸付という形は取れないのでしょうか。(48歳 離婚)

▼寡婦控除
 寡婦控除など、未婚の場合は控除対象にならず、税額が上がり、保育料その他もかかる費用が多く、法の差別を感じます。その為、児童扶養手当も受けられず(児童手当も含め)単身者扱いで子どもを育てているのと同じなので、非常に生活は苦しく思います。(36歳 未婚)

▼全体的な支援
・母子世帯に対する、具体的なものでなく全体的な生活・経済支援の充実を求めるものが多い。

▼遺族年金

・増額
 遺族年金だけの収入では生活がとても大変です。金銭的には援助がもう少し多くほしいです。○○市は支給額が少ないように思えます。(41歳 死別)

・延長
 遺族年金は子が18歳になる年度末に扶養加算がなくなり、大学進学となる時に少なくなります。せめて成人する20歳まで扶養加算はそのままにしてほしい。(45歳 死別)

・その他
 ……働いて掛け続けた厚生年金も一人1年金で、私が受給する時は、遺族年金か老齢年金かを選択しなければならない。仮に今無職になった時、私の年金は、遺族年金の方が金額が多く、こちらを受給するとなると、子どもにつらい目、さびしい思いをさせながら働いた28年(うち死別後17年)に払った厚生年金保険料が1円にもならない。なのにサラリーマンの妻というだけで保険料も払わずに年金が受給できる今の年金のあり方がおかしい。払い込んだ分、払った人が受給できるものであってほしい。(45歳 死別)

▼暮らしその他
 幼い子供と二人きりの生活では、度々不安になるときがあります。それは、今(例えば就寝中)何かあったら(死んだら)、電話を使えないこの子は誰かが気付いてくれるまでどうするだろうと言う事です。幸い我が家は一般の会社にお願いして緊急時に対応できるようになっていますが、勿論お金がかかります。そのような援助があれば、他の幼い子供を抱える母子家庭も少しは安心して生活できると思います。女一人で子供を守る、自分の身を守るということは並大抵のことではありません。すべての母子家庭にセキュリティシステムを導入し、援助する!と言うのが理想です。(33歳 死別)

 病気で倒れたときの生活費の補助が出るような保険(母子保険)があればよいと思います。(掛け金の低いもので、行政からの補助もあるもの)(44歳 死別)


<7> 子どもに関する支援

▼保育施設の増設・充実
 14年間母子家庭のまま現在に至りますが、小さな子どもをかかえ、仕事をするということは周りの支えなくして成り立ちえないという事です。母子家庭に対する社会の理解、支援は必要不可欠。子どもを中心とした援助(保育等に関する充実)、又片親の子どもがのびのびと育っていける地域づくり。大人である私達ができることはたくさんあると思います。社会から阻害された、孤立したものにしてはいけないと思います。(37歳 離婚)

▼保育延長、休日の保育 ~20・30歳代に多い。
 延長保育がほしいです。時間が長く仕事にいきたいのですが、夜おそくまであずけられる所がほしいです。時間を長くしたいのに夕方6時まででは、仕事ができません。生活のためにはどうしても、夜も仕事したいのに、夕方までしかなかったら、仕事が限られてきます。なるべく早めにそういうのを作ってください。(26歳 離婚)

 4月より看護婦として働けるとしたら、夜勤時子どもの保育をしてくれる施設があるか、もしくはベビーシッターを支援してほしい。できれば、公的施設のもので、安心できる施設がいいです。(30歳 離婚)

 保育園が、日、祝日でも預かってくれるような認可の保育所が欲しい。サービス業(販売業)につきたくても、自分の親も働いている場合、子どもを預ける所がない。自分の希望する職種が子どもがいるというだけで、条件が合わず、年齢制限もあり、とてもつらい。(37歳 離婚)

▼病児保育~20・30歳代に多い。
 カゼなどで保育園を休んでいるときの医療保育をする様な施設があれば病気の回復時などの時は仕事を休まなくてすむので、あった方が良いと思う。(27歳 未婚)

 私が経験したことで、子どもが保育園で熱をだすと、仕事先に電話で早く迎えにくるようにという電話があり、なかなかすぐには帰れない時もあります。働かせてもらっているのに、仕事の途中で言い出せない時もありました。保育園にも看護婦さんを置く制度のものがあってもいいのではないでしょうか。多少の時間のやりくりをしてかけつけるまでみていてほしいと思います。(57歳 未婚)

▼保育料金
 母子家庭であるのに保育料が他の世帯の人たちと同じ金額であること。単給世帯として扱われないのは、おかしいと思う。しかも最高額で請求される。(28歳 離婚)

▼その他保育サービス
 中央(札幌、東京etc.)では、成り立つようなベビーシッター、ベビーハウス等、田舎になるほど少ない。ベビーシッター等の派遣会社が身近にあったり、ベビーハウス(託児所)が充実していると、よりもっと女性にとって働きやすい社会になるのではないかと思う。(36歳 離婚)

 家事全般および子どものケアのヘルプをしてくれる人たちを派遣してくれる所があると良い。お手伝いさん+英国でいう「ナニー」のような役割の人。そしてできればやすい方が良い。(38歳 離婚)

▼職業訓練・求職中の保育
 母子家庭になってすぐ考えたことは、仕事につくことでした。それにはまず子どもを保育してくれるところを探すことから始まる。それが現実なのに市役所へ行き、保育所を願い出て返ってきた言葉は、「今保育所はどこも定員がいっぱいで、希望された保育所に入所するには空きを待ってもらうようだ。また空きが出ても順番待ちになる。優先されるのはこれから仕事を探す人ではなく、今すでに仕事をしている人、または就職先の決まっている人です。たとえ母子家庭でも、その辺で優先順番は違ってくる。……」……当時0歳の子どもを抱えて、先に仕事を決めろなんて。面接すら行けないではないか。……なるべく自分の力で自立した生活を送りたいと思っても、最初の第一歩で打ちくだかれてしまう。(35歳 離婚)

 技能講習や職業訓練の機会をもっと増やして、その際の援助や子どもの保育などが可能になればもっといいと思います。(31歳 離婚)

▼学童保育 ~20・30歳代に多い。
 自分の住んでいる地域には今学童保育をやっている所が少なく、料金が高い為あずけられない。もう少し料金が安く、学童保育などを町全体などでやってもらえると安心して子どもをあずけ働くことができると思う。(26歳 離婚)

 小学校は今、土曜日も休みなので仕事を土曜日にするのがきびしくなっていくので困ります。児童館にも入れるつもりですが、もう少し7時頃までやっているといいと思う。母子世帯でも保育料が高い。(29歳 離婚)

 学童保育の充実。公営の学童4年生以上も受け入れてもらいたい。PM7:00以降もやって頂きたい。(31歳 離婚)

 子どもの長期の休み、特に夏休みなどに昼食の準備が困る。毎日毎日自分で何とかしてとは言えないし、気になりながら放っておくというのがちょっと考える。夏休み中の子ども達を公的な場で少し集めて学習なり活動などをすることを考えてほしい。(43歳 離婚)

▼学校教育・進学 ~40歳代に多い。
 児童扶養手当は、18歳で打ち切りになりますが、大学等へ進学を希望していても、経済的に不能となるため、進学できない現状があると思います。一番費用のかかる大学や専門学校への進学にあたって、もっと支援がないでしょうか。また受験手続きに関して、各種の書類をそろえて提出するだけでもかなり費用と手間がかかるので、簡略化してほしい。(40歳 離婚)

 入学金などは、合格して1ヶ月ほどで入金しなくてはならないのに、借りられる金額も少なく、あまりあてにならない。就学資金の借入も在学証明をいただいてからでないと申し込みができないのは不便である。その前に借り入れできるようにならないのか?福祉課での借り入れは、時期的に遅れるので考えなければならない。(42歳 離婚)

 母子に対する福祉が、子どもが高校卒までというのが多いが、それ以上の学力、資格を取得しようとした時に、母親の収入によって規制されることが多々ある。資格、学力を問われる世の中、もう少し長い期間、例えば学生の期間等の福祉があっても良いのではないだろうか、母子家庭の子どもは、高校を卒業したら働きなさいといっているような機関が多いように思う。(43歳 別居)

▼子どもその他
 「児童福祉を公平に充実させて欲しい。」母子世帯になる前に住んでいた東京都内と、現在の○○市と比べると、保育料、給食、時間外保育、児童施設(児童館、図書館、公園など)何をとっても、△△△の方が充実している。もっと全国規模で公平な基準を設けることはできないのだろうか。(33歳 離婚)

 親のいない子供が集える場が欲しい。(神戸のレインボーハウスのような)東京では、アメリカのダギーセンターを見習ってグリーフワークプログラムを行っています。親を亡くした子どもの心のケアをしてくれる場が○○にもあればと思います。(38歳 死別)

 子育てをしながら仕事を持つのは大変なことです。保育所の時間延長など、対策もきかれますが、でもそれは子どもの側には立っていないものだと思います。心も体も健康な子どもの成長を願う時、「母親が働きやすい環境」という見方ばかりすると、生活のリズムがくるい、子どもの心のやすらぎがどこかに行ってしまいそうで怖いです。時間延長etcが本当に必要な人もいるけど、そうじゃない人も、楽だから利用する人もでてくるから、むずかしいと思います。でも日常生活で2人の子どもをどなりまくっている嫌な自分がいるのですが。(36歳 死別)

●児童扶養手当
  ~不満も多いが、既に支給対象外となった人からは、助かった、なくさないで欲しいという意見もある。

▼増額
 今、自分の回りにいる母子世帯のほとんどが、生活が苦しくなかなかいい収入がある仕事がまったくありません。あるとすれば、夜の仕事かパチンコ屋さんか。もう少し国からの援助(母子児童手当)を増やしてほしいです。ギリギリの生活なので、ストレスがたまりやすく、あたる人がいないので、どうしても子どもにあたってしまいます。(33歳 離婚)

▼収入枠 ~20・30歳代に多い。
 児童扶養手当て支給の要件が(所得制限)低すぎる様に思われます。幸い私自身は支給を受けなくても生活していくことができますが、就職により多少収入を得ると、すぐ支給停止のラインになってしまうため、要件が引き上げられることを希望します。(33歳 離婚)

 収入が増えると児童手当などの支給が止められると言うのは納得行きません。本人の努力で高収入を得ようとしているのであって、楽をしてお金を得ているわけではないのですから努力すればするほどそれに見合ったものがあって当然で努力して収入が増えたら児童手当がカットでは、のらりくらりしていた方がましという考えになるのでは。(45歳 離婚)

 児童扶養手当を今全額支給でもらっていますが、今年の所得で一部支給になる見込みなのですが、もらう金額が毎月1万3千円も変わるのは、母子家庭にとってはとっても厳しいです。年間にすると15万円近くも違うのは。もう少し差を少なくしてほしいです。それか均一にしてほしいと思います。だって母子家庭は一般家庭から見ると、所得はかなり低いと思います。(37歳 離婚)

▼人数
 児童扶養手当に関することで1人目は約4万5千円(月)に出るのに、2人目には1人目の4万5千円プラス5千円されるだけで1人でも2人でも子どもにかかる費用は同じことだと思います。せめて2人目は1人目の半額ぐらいは出してほしいです。(26歳 離婚)

▼同居
 離婚当時、児童扶養手当をもらっていたが、兄夫婦の収入の関係で医療費も扶養手当もらえなくなった。実際、兄夫婦からは何の援助も受けていない為、生活が苦しくても行政もなにもしてくれず、何度も相談に行ったが相手にされなかった。(29歳 離婚)

 去年の8月まで児童扶養手当をもらっていましたが、12月に打ち切られてしまい、困っています。実は、実父が保証人になってしまい、家を取られてしまいました。それまでは別々に住んでいましたが、それからは父、母、私、子ども3人で住み始めました。突然手紙が来て、収入が多いので(一時所得)で家を売った事になり、一緒に住んでいるため、父の収入も加算され、打ち切られてしまいました。本当に家を売ってお金が入っているのなら仕方ありませんが、家は取られ、扶養手当ももらえなくなり、子ども3人かかえてとても困っています。(37歳 離婚)

▼支給回数
 児童扶養手当を国の方からいただいているんですけど、4ヶ月に1度ずつというのはとても大変です。私の場合、元夫から養育費も毎月ちゃんともらえないし、子供が保育園をかぜとかで休んだらそれだけ給料も減るので、親にもお金を入れない状態が続くのでもう少しどうにかしてほしいです。(31歳 離婚)

▼対象年齢
 現在18歳未満の子供を扶養している場合は手当が受けられるが、子供が大学進学希望しても、該当しなくなるため、母親の収入に頼るしか方法がなく、将来に全く希望が持てない。何とか18歳以上でも、進学する場合は、受給を受けられるようにしてほしい。(47歳 離婚)

▼給付の重複
 私本人が障害者で、年金を受けているということで、児童扶養手当の受給はできませんでした。行政の方、もう少し、障害者の母子世帯を考えてほしい。(44歳 離婚)

 遺族年金が支給されているとなぜ、児童手当はもらえないのか、不公平だ。母がきちっと資格を取れるまで助成すべきだ。(41歳 死別)

▼その他
 児童扶養手当がもらえず困っています。子どもが小さい頃は何とか自分の力だけで頑張ってやるという考えで申請をしませんでしたが、子どもが小学生になり、大変なので申し出たところ、小さい頃にしなかったためにもうだめです、という事で、それでは何がどうであろうと、小さい頃のうちに申請をして援助金をもらっておいた方が賢いという事でしょうか。(42歳 未婚)

 子供を育てるため、児童扶養手当を頂き、とても助かっています。ぜひ、児童扶養手当はなくさないでほしいです。(49歳 死別)


<8> 行政の窓口対応等

▼開庁日時
 母子家庭のいろんな手続きとかいろいろなことでよく市役所に出向くことがありますが、市役所とかは、土、日休みだし、平日のみで昼休みは混むからとか言ってるんですが、母子家庭だからこそ働かなければいけないのに、どうしても仕事中抜け出すかあるいは休むとかしないと手続きできないとなると、困るんです。抜けたり休んだりしたら、その分給料が減るんですから。(37歳 離婚)

▼情報提供
 “児童扶養手当”や“ひとり親家庭の医療費の助成”のことを長い間知りませんでした。この制度の存在を知ったのは、休職中にハローワークの職員の方に教えていただきました。たいがいの方は、母子家庭になるといろいろ大変だと思いますので、離婚届提出の時にでも「こういう制度があります。」と、お話だけでもしていただきたかったです。(44歳 別居)

 母子世帯に対していろんな情報を教えてほしい。市役所とかに行かないとわかるんじゃなく、自宅に定期的に郵送とかしてほしい。(33歳 離婚)

▼対応が悪い・事務的
 離婚届を出しに行った日、市役所でワンワン泣きました。初めてする手続き、あっち行って、こっち行ってと、1つ1つしか教えて頂けず、次は次はと聞くと、怒ったように言われました。母子相談室では“あなたが形あるものをこわしたのですから”とまで言われ、忘れられない日でした。泣きながら市民課の苦情課へ行きましたが、やさしく聞いてくれただけでした。1つの仕事、ボランティアではない、お金を頂いている仕事、こんな仕事で良いのか。……“市役所では泣かされるよ”と同じ立場の友人に聞いてはいたが、ひどかった。(33歳 離婚)

 生活保護や児童扶養手当の受給を受けようとした時、何人もの人に同じ事を聞かれ、まるで何か悪いことをしたかのような口調にすごく腹が立ちました。本当に生活に困り、どうしていいかわからない時だったので、すごく残念でした。(43歳 死別)

▼対応がよい
 子供を育てていく中で、生活に困ったとき町役場の人たちがあまり(全然)力になってくれなかった。相談に行ったのですが。ある時、県の福祉事務所の人とお目にかかることが出来、大変お世話になりました。とても感謝しています。もう少し、身近な役場の方が、相談に応じてくれればと不満に思っています。県の方にお会いする機会がなければ今はどうなっていたかわかりません。(53歳 その他)

▼対応が遅い・柔軟な対応
 別居一年後に離婚しましたが、児童扶養手当の受給申請の時、前年度所得で判断されることは理解できますが、前年度に子どもの扶養を取っていなかったため、実質受給できたのは、別居後2年以上経ってからでした。別居、離婚直後が一番不安定な時期でしたので、ひどく対応が遅く感じました。(46歳 離婚)

▼手続きが煩雑
 社会的な信用のない状況で、母子世帯になる方がほとんどだと思いますが、そういった場合の最初の段階での住宅や経済的な援助を受ける場合等の手続きを簡単にして、1日でも早く、安定できる様に考えて頂きたいと思います。(36歳 離婚)

 以前、医療費の手当を受けていたときに感じたことですが、治療が終了してから医院に申請書に記載してもらい、それを役場に提出しなければならないので、その為にも勤めを休まなければならず、何とかもっと簡単な方法がとれないものかと思います。他県はそのシステムが違っていると聞きました。(45歳 離婚)

▼不正受給、援助の平等性
 看護婦として働けば、収入は安定しています。収入が安定しているということでほとんどの経済的な公的な補助は受けられませんでした。働くとほとんどが子どもは人任せです。しかし、はじめから働く気もなく補助をたくさん受け、べったり子どものそばにいる女性もたくさんいます。公的な支援も大切ですが、援助の見きわめ、平等性を考えていただきたいです。(36歳 未婚)

▼別居に対する対応
 ……離婚していないと母子世帯とみなされず、保育料の算定に夫の収入も加算され、保育料が高くなり、支払えない点。又夫が源泉徴収票を出してくれないために手続きがすすまないので、入所が認められない方もあったそうです。自治体の柔軟な対応を望みます。離婚を考えて母子福祉の相談に行ったら、夫をたて協力するよう説得された方もいて、行政の対応としては、言語道断です。(38歳 別居)

▼相談機関、サポート機関
 自分が病気になった時、子どもをどうするかなど、相談する所がほしい。行政などで、相談を受け付けてくれる所があるが、受付時間が日中では、無理。(41歳 離婚)

 離婚後、様々な手続きについて、一括した相談場所が切にほしいと思った。(年金、国民保険への手続き、戸籍の変更の手続き等、税金軽減手続き、扶養手続き、就労の案内、資格取得案内、各教育事務所への願いで提出、健康についての相談通院)一つずつ挙げればもっと多いのですが。他にも元夫からのストーカー行為についての相談等。子の親でもあり、養育費の関係もあり、ガソリン、ナイフといろいろあっても何をやっても相手方の出方を見てからという。(45歳 離婚)


<9> その他

▼少子化、女性
 女性は、出産、育児で社会での生活が変わることを今になって痛感している。同年代の女性で結婚をしていない割合が多い。少子化が進んでいる今、女性の社会、会社での男女均等のあり方について、女性への社会からの対応について、出産、育児という点を重要視して、今、女性は何を求めているかを受けとめて、行政の対応を期待したい。(29歳 離婚)

 母子家庭である為に守って欲しいとは思わないが、ひとりで子どもを育てていける環境、経済的に安定した仕事ができる様な社会的な基盤が整備されるべきだと思う。男女雇用均等法が出来たとはいえ、女性の社会的な地位は依然として低く、賃金面においても明らかである。……均等法が出来ても、機能していなければ意味がなく、それ以前に日本人の考え方の基本を変えてしまわないと、何の解決にもならない。男尊女卑を口に出して言う人はいないが、根本的な考えとして根強く身体にしみついていると思う。……男だ、女だという前に、個人としての特性を伸ばせる社会であって欲しい。男女の不平等に気づいて、30年以上も戦ってきた(自己の内、外)が、何にもならないことに今気づき、疲れてきた。これからは肩をはらず、自分のペースで、自分の生き方を楽しもうと思っている。(42歳 未婚)


(3) 終わりにあたって
 母子世帯の母が直面している現状は、女性労働問題そのものであり、問題点が幾重にも重なって苦しい状況に陥っている様子が伝わってくる内容である。
 女性の再就職の困難さ、パート労働者の処遇の問題、労働市場における女性労働に対する評価の低さ、仕事と家庭との両立の難しさ、どれも女性労働問題である。それらの問題を一人の女性が抱え込んで苦境にいるのが多くの母子世帯であるといえよう。

第3章 インタビュー調査





対象者 No.1(千葉県在住)

2001年1月現在 (2001年10月インタビュー)

年齢:30歳代後半

母子世帯になってからの期間:14年(離婚)

職業:学習塾経営(開設1年)

子の数と年齢:2人(15歳、7歳)

学歴:大学中退

住居:親の持家

勤労収入:70万

週平均労働時間:42時間

児童扶養手当:全額支給

就業履歴の特徴:
 大学中退後、結婚前から出産までの2年間歯科助手をした。出産後、専業主婦になっていたが、離婚してから実家に戻り、職安でパートを探す。子の健康状態がわるく、不動産の経理事務パート、酒屋の経理事務パート、洋品店で販売のパートなど転々とした。どれも子どもの病気で休みがちで長く続かなかった。そこで、家で内職(プラスチック組み立て)をしながら、県の講習会に出てヘルパー3級の資格を取得した。子が幼稚園に行っている間に登録ヘルパーとして1年勤務した。様々なパートをしながら生活を支え、2000年に大手フランチャイズチェーンの塾の教室を開設し、教室長になって現在にいたる。開設のために母子福祉貸付金を借りた。10月より、別の場所にある、障害児のための塾教室でアルバイトをして、自分の教室に障害児を受入れる参考にしている。10月で教室開設より1年になり、本契約となる。生徒数約60人、月収約15万、経費を引くと10万程度になる。塾経営は自分の子の世話をしながらできて、地域にも密着していて気に入っている。仕事にプラスになるような様々な活動に参加している。やりがいがあるので、今後もこの仕事を続けていきたい。


インタビュー記録

1.現在の仕事

 今の塾の採用基準は「教えることに情熱を持ち、塾の理念に賛同できる」というのが条件で、大卒とか教員免許は必須ではない。ただ、ペーパーの筆記試験はある。私の意欲を買って、採用してくれたことには感謝している。子どもが熱を出したときに教室の空いている一室に寝かせておいたこともある。子どもの具合が悪いときは、助手に理解があり、フォローしてくれるのでありがたい。安い時給しか払えないが、熱心にやってくれている。
 塾の授業は7時までということになっているが、親の仕事の都合で8時過ぎまで迎えにこられない場合は、子を預かっている。そのあと教材をセットしたり、準備などに夜中までかかってしまうこともある。「教室便り」を作るのに夢中になって、いったん帰宅して晩ご飯を済ませてからまた教室に戻り、つい夜中までやってしまうこともある。「教室便り」を作るのは楽しく、特に子どもから反応があるのはすごくうれしい。家庭の冷蔵庫に張って見栄えのするように、カラフルなデザインを心がけて楽しんで作っている。実は自分はジャーナリスト志望だったので、こういうことは好きだ。
 近いうちに学校が完全週休2日制に移行するのに対応して、土曜の子どもの行き場としてこの塾は機能してくると思う。現在土曜は読み聞かせ会をおこなって、場所を開放している。塾の本部の人を招いて行う私の教室の保護者懇親会は、出席率が非常によい。
 正規の授業時間以外では、子どもは勝手に本を読んだり、ことわざを覚えたり、カルタをしたり、腕相撲大会をしたり、いっしょにわいわい遊んでいる。教室に入ってくる子どもの顔を見るのが何よりうれしい。入ってくる顔を見て、その日の調子がどうかわかる。生徒に自閉症のお子さんがいるが、好きなことからマイペースで進めている。自分もやりたいと思ったときが始めるときで、そのタイミングを逃さないように気をつけている。
 塾の研修制度は充実している。教室長同士での情報交換は活発で、アルバイトの時給の相場などの情報を得る。教室の家賃(55,000円)は一年目は本部の塾がもつが、家具や電化製品などの備品は自前で用意しなければならない。その資金は母子福祉貸付金160万円を借りた。教室を引き継いだときは、生徒数8人だったが、今は60人まで会員数を増やせた。今の仕事にやりがいを見出している。定年がないので、年をとるまで続けていきたい。


2.キャリアパターン

 結婚前から歯科の助手をしていた。出産を機に退職して専業主婦となる。しかし出産後まもなく離婚にいたり、実家に帰り仕事を探した。職安で近所の酒造会社の経理事務を6か月間した。子が熱をだして1週間休んだら辞めさせられた。子の面倒は実家の親はみてくれなかった。そのあと不動産屋で事務を4か月し、その後は洋品店の販売員をした。経済的には親が助けてくれたので、ヘルパー3級の資格をパートの仕事をしながら取得した。家でプラスティック製品をニッパーで切る内職を何か月かしたこともある。子が幼稚園に行くようになって、介護ヘルパーに登録し、子のいない間だけ登録ヘルパーとして働いた。通信教育で通関士・行政書士の資格を取ろうとしたがどれも続かなかった。これからは自分の今の塾経営にプラスになる、カラーコーディネータや教員免許、保育士などの資格を取得したい。


3.準備期間

 子が生まれてすぐに母子家庭になったため、就業のための準備はできなかった。ヘルパー3級の資格は離婚してから働きながら取得した。


4.生活全般

 実家の母親が働いていたので、私の子どもの世話はしてもらえなかった。1日頼むと5,000円といわれた。母は働いて経済的援助はしてあげるから、子は自分で育てなさいという考えであった。孫の世話は母にストレスになるものだったと思う。上の子はヘルニアで、1歳と3歳のとき手術した。10回ほど入院もした。下の子は喘息で、器官がやられて吐いてしまうことが多い。子どもが弱かったので、パートで勤めに出ても、病気で休まざるを得ないことが多く、サボっていると思われてしまうこともあった。
 保育園に入れていたときに、「だから母子家庭のお母さんはだめなのよね」と保母さんに言われたことがあった。このときすごく傷ついたために、保育園への印象が悪くて、その後保育園ではなく幼稚園に入れることになる原因となったともいえる。幼稚園は2時頃に終わってしまうので、それにあわせたパートしかできない。
 自分の子は私の塾に来て勉強しているが、そんなに特別かまってやっているわけではない。でも、子どもたちは非行に走らずに無事育ってくれたのでよかったと思う。長男は、5時半に帰宅して、年の離れた弟の面倒を見てくれている。塾が忙しくて、夕食が作れない時は、コンビニで買ってくる。


5.受けた支援および今後の希望

<公的でない支援>
 実家からの経済的支援・夫からの養育費(この24か月途絶えている)。

<公的支援>
 児童扶養手当全額・子の授業料免除・母子福祉貸付金(160万円)の借入。家裁で調停離婚をしたが、そこで家裁の調査官に生活のことなどの話を聞いてもらうことは精神的な助けになった。

<公的支援への評価と希望>
 就職に結びつく資格をとるために、民間の教育機関で学ぶための費用を一部でも負担してほしい。児童扶養手当は4ヵ月に1度ではなく、毎月1度支給してほしい。また銀行から借入れをする際に、国や県が保証人になってくれれば助かる。
 母子福祉資金借入れの交渉で、福祉課の窓口の人に「こんなに元気で前向きな母子世帯のお母さんは初めてだ」といわれた。使えるものは何でも巻き込んで、積極的に利用する。
(インタビュァ:中野裕美子、竹沢純子)


対象者 No.2(東京都在住)

2001年1月現在 (2001年10月インタビュー)

年齢:30歳代半ば

母子世帯になってからの期間:7年(離婚)

職業:派遣社員、病院で入院などの手続き、カルテの作成管理事務、
(面接時2001年10月時点では薬局の医療事務)

子の数と年齢:2人(14歳、16歳)

学歴:中卒

住居:民間賃貸(前夫の親が援助している)

勤労収入:150万円(面接時2001年10月では100万以下)

週平均労働時間:45時間(面接時は24時間以下)

児童扶養手当:全額受給

就業履歴の特徴:
 10代で結婚したので、結婚前に就業はしていなかった。夫が定職を持たなかったため、自分がアルバイトやパートをして支えてきた。昼は食堂で働き、夜はまた別のアルバイトをするという生活をしていた。子どもが小さいときは、子どもだけ家において、鍵をかけて仕事にでたこともある。離婚直前は大手眼鏡チェーン店のパートの販売員であった。時給は1,200円、有給休暇、社会保険、雇用保険もあったが、離婚を機に引っ越した為に販売員は辞めた。その後は個人病院の事務を2年、スーパーのレジ係を経て派遣会社に登録し、公立病院の事務を4年間していた。今は体調が悪いため病院の事務を辞めて、薬局で週3日~4日のパートの事務(時給850円)をしている。年収103万以下で働きたい主婦を対象とした募集であった。現在パニック障害で通院している。睡眠が3時間くらいしか採れず毎日働くことはできない。離婚した後は必死で働いてきたが、子育てが一段落して精神的に疲れが出てきたようだ。


インタビュー記録

1.現在の仕事

 2001年4月から、1日8時間、月10日。薬局の医療事務をしている。薬局は全国展開している大きなところで、売り上げでは全国で3番目くらい。時給は850円で、電車で一駅のところにある。月収7~8万円。もともと主婦のパートを求めていて年収103万位内に押さえる人を募集していた。

2.キャリアパターン

 結婚したのが10代なので結婚前の職歴はない。結婚してから昼間は、子が幼稚園にいる2時までラーメン屋で働いたり、レジの仕事をした。子を迎えに行って、夕飯の用意をして、夜は9時頃から働いた。10年後離婚した。夫は養育費を支払うことはできなかった。離婚前に眼鏡店の販売員をしていた。時給1,200円。パートで週5日、1日8時間勤務で6か月間働いた。そこは有給休暇・社会保険・雇用保険もあった。途中で離婚したために引っ越しがあり、辞めた。引っ越してから、小児科の個人病院で2年間、一般事務・診療所での手伝いをした。週4日働いた。時給は1,000円であった。残業があって帰りが遅くなることと、通勤に1時間かかるので辞めた。その次は大手スーパーでレジうちをした。時給880円で週4日、1日6時間働いた。この間、派遣会社に登録していて、派遣待ちであったので1年足らずでスーパーは辞めた。派遣社員として公立の病院で4年働いた。日給月給だった。派遣会社から家族手当・住宅手当・交通費もでた。契約は半年ごとに更新した。月から金まで8時30分から5時15分まで働き、月収12万位だった。体調が悪くなり、勤務していた病院が事務を民間委託するらしいから派遣社員は仕事がなくなるという話をきいたので2001年3月にやめて、現在の薬局で働くことになった。仕事を探すときは、ハローワークに行っても給料が安いので、地域に密着した情報は求人誌やチラシをよく見る。正社員になることを選ばない理由は、働く時間が増えて子どもの世話ができなるのでやっていく自信がないからだ。


3.準備期間

 職業訓練を受けたことがある。母子家庭だと月14万もらえて職安紹介の職業訓練を6ヵ月受けられた。4.5倍の競争であったが幸い受けられた。クラスは15人で全員母子家庭の母であった。ここでコンピュータや経理、簿記を習った。そのクラスを出た人はその後経理をしたり、会計事務所で働いている。しかし私は実務経験がなかったのですぐにその訓練が就職には結びつかなかった。出ても3ヵ月も仕事がない人もいた。職業訓練を受けたことと就職が結びつかないことがおかしいと思った。しかしここで会った人たちとは現在もつきあっている。今は通信教育で医療事務の資格を取りたいがお金がかかる。


4.生活全般

 2、3年前から体調が悪いので医者に行ったら、パニック障害といわれた。2週間に1度、投薬とカウンセリングを受けている。立つことができなくなる。不眠もあり、夜3時間くらいしか熟睡できないので心療内科にかかっている。昔の苦しかったことが、トラウマとして今出てきている。仕事の日(週3~4日)は6時に起きて子どもの弁当を作り、8時に出社する。6時30分まで働く。8時になることもある。そういう日は夕食は流し込むだけだ。10時には床に就く。だから毎日は働けない。あとの日は弁当を作ったら、ごろごろしている。高校生の長男はアルバイトをしている。大学進学は断念し、高校を出たら就職すると言ってくれている。中学生の長女は週3回塾に通っている。旧知の先生で月謝を分割してもらっている。長女は進学に関して経済的に不安がっている。


5.受けた支援および今後の希望

<公的でない支援>
 別れた夫の親がアパートの家賃を支払ってくれている。塾の先生が月謝の支払について便宜を図ってくれる。職業訓練中に知り合った母子家庭のお母さんたちとの交流があって精神的に支えられている。

<公的支援>
 児童扶養手当全額受給。育成手当2人分受給(1人15,000円)、長男の学費免除・奨学金・医療費免除・年金保険料免除。職業安定所が行う職業訓練を6か月受けたことがある。

<公的支援への評価と希望>
○職業訓練を受けても、就職を斡旋してくれるわけではないことがおかしいと思う。

○児童扶養手当が切り下げられると聞いたことがある。離婚が増えて国も大変だろうが、勝手に離婚したんだから自分たちでなんとかしろというふうに福祉施策が動いているように感じる。あちこちから支援を受けて、やっと生活ができるというのではなく、自立を支援してほしい。そうでないと前向きに考えられなくなる。

○都営住宅に住みたいが抽選に当たらない。母子寮は子の年齢が高いのでやめた方がよいと福祉事務所の人に言われた。

○母子家庭に息抜きの機会をもっと与えて欲しい。遊園地の招待券などを今より減らさないでほしい。

○子の非行について悩んでいる知り合いがいるが、相談するところがない。まわりからは「母子家庭だから」といわれるのがつらいし、母親本人も自分のせいではないかと思ってしまう。
(インタビュァ:小川幸子、中野裕美子)


対象者 No.3(神奈川県在住)

2001年1月現在 (2001年10月インタビュー)

年齢:50歳代前半

母子世帯になってからの期間:5年(離婚)

職業:スーパーでパートを週25時間。この他に3つの副業を持つ。葬儀場の配膳・老人の施設・在宅での家事援助。

子の数と年齢:1人(13歳)

学歴:高卒

住居:持家(住宅ローンあり)

勤労収入:140万

週平均労働時間:25時間

児童扶養手当:全額受給

就業履歴の特徴:
 学校卒業後、会社勤めの後、機会があってお好み焼き屋を始めた。パートを1人雇い繁盛していた。遅い年齢での妊娠、これを機に専業主婦になった。40歳半ばに母子家庭になり、新聞広告をみて子どもが学校に行っている間だけのパートの仕事に就いた。まず倉庫での荷物テープ貼り(時給700円)で、1日5時間くらい働いた。次はコンビニの店員(時給750円)で1日5時間、2年間働き、次にファミリーレストラン(時給800円)で1日5時間、1年間働いた。パートの時給は転職しなければ上がらないので、少しでも高い時給の仕事を転々とした。新規に開店するスーパーの求人を友達から聞いたのが現職に移ったきっかけで、勤続5年目である。今は時給865円。このスーパーの仕事を中心に、可能な副業をはじめている。夜の葬儀場の配膳が月に10日程度入り、スーパーの仕事が終わってから出かける(時給1,000円、3、4時間程度)。スーパーは週2日休みなので、老人グループホームの賄い(時給950円、1日3時間)をはじめた。また土曜の朝1時間だけの在宅介護の家事援助の仕事をもらったのでこれをしている。こうした仕事の合間合間に食事のしたくをする。時間があれば横になって休んでいる。自分名義のマンションはローン返済が厳しいので、売却して市営住宅に転居できることを望んでいる。


インタビュー記録

1.現在の仕事

 大手スーパーの支店で朝の9時~午後2時まで、週5日働く。時給は現在865円である。1年に5円あがる。5年前にスーパーが新規オープンしたとき応募した。賞与が年間、月収の2ヵ月分出る。有給休暇は年20日ある。月収は10万弱。副業として葬儀場の配膳・老人ホームの食事つくり・在宅介護の家事援助の3つをもっている。葬祭場は通勤に40分くらいかかるが、スーパーのパートから帰って手早く子どもの食事の用意をしたらすぐに出て夕方から夜10時まで働く。それが月に10日くらいある。そこのボーナスは年に1万円である。時給は1,000円。それからもう一つ、4月から副業を始めた。火曜と土曜はスーパーが公休なので、老人グループホームの食事の賄いを月に8回ほどしている。10時から1時まで、時給は950円である。さらに土曜の朝1時間だけ在宅介護が必要なかたの家事援助を友人のヘルパーから紹介され、時給1,500円で働いている。でも、そのお年寄りの体調が悪くなり、私は介護ヘルパーの資格がないので働けなくなりそうだ。
 今のスーパーの仕事は、ボーナスもあり有給もあるなど待遇が良いと思う。開店当時からいるので、古株になり居心地がよい。今後も続けていくつもりだ。


2.キャリアパターン

 学校卒業後、会社員として働くが、世話をしてくれる人がいて、お好み焼きの店を始めた。パートを1人雇っていた。はやっていたが遅い年齢で子どもができたので、妊娠を機にお店はやめて、専業主婦になった。母子家庭になって、とりあえず新聞広告をみて、仕事を探した。子どもが学校に行っている間だけの仕事が良かった。学童保育は地域にはなかった。まず倉庫に配送された荷物のテープを貼り直したりする仕事をした。時給は700円で1日5時間。短い期間の仕事のはずだったが、もう少し来てほしいということで、結局1年くらい続けた。その後はコンビニで2年働いた。時給750円で1日5時間くらい。次にファミリーレストランで1日5時間働いた。時給は800円。ここで1年働いた。パートは転職しなければ時給はあがらないから、いい仕事がないか、ちらしを見て探していた。スーパーが新しく出来ることは友達が教えてくれた。ちゃんとした会社説明会があった。有給休暇ももらえ、PTAにも出られる。今年は勤続5年めになる。スーパーの仕事は今後も続けたいが、子どもの成長に伴い副業を増やしている。葬儀場の配膳係りの仕事が月に10日程度入る。スーパーの仕事が終わってから出かけ帰宅は夜10時を過ぎる。スーパーが週2日休みなので、老人のグループホームの賄いの仕事をはじめた。また土曜の朝1時間だけ在宅介護の家事援助も引き受けた。仕事の合間合間に食事のしたくや家事をする。


3.生活全般
 娘は公立中学に通っている。女の子を1人残して夕方から仕事に行くときは心配である。学校へは年31,836円払い、塾に週3回行かせて2万円払っている。高校に行くときは公的なお金を借りるかもしれない。その先は娘に働いてもらうつもりだ。これまでは貯金や生命保険を解約してなんとかやってきた。元夫は行方不明で養育費はもらっていない。先のことは考えないようにしている。
 子がいるので働ける、働く意欲がわく。離婚後の困難をこうやって乗り切るという成功例があるなら是非教えてほしい。
 近所や職場の付き合いに気を使う。子どもがいじめにでもあったらいやだから、母子家庭であることは誰にも言っていない。姓も夫のものを使っている。途中で子の名前がかわるのはいやだ。職場でも知れると相手が気を使ってしまって自然なおしゃべりを楽しめなくなると思うから話さない。子どもとは1日4時間くらい接触する。働くのも良いけれど、家のこともする人がいないと、と思う。睡眠時間は6時間から7時間。

4.受けた支援および今後の希望

<公的でない支援>
 子が小さい頃は1時間かかるところに住んでいる母にきてもらったことがある。

<公的支援>
 母子福祉資金4万円を一回のみ、教育費として借りた。国民年金の支払は免除させてもらっている。

<公的支援への評価と希望>
 もともと自分名義のマンションを持っていて、それを売って今のマンションを買った。
 ローンは住宅金融公庫とハウジングローンで借りた。住宅金融公庫は繰り延べ返済にしてもらっている。マンションは値下がりしてしまっていて、月々75,000円のローン返済もとても出来ないので、早く売却して市営住宅に転居したい。最初は持家なので、市営住宅の抽選に応募できないと思っていた。そうでないと知って応募しているが、抽選なので入れるかどうかわからない。母子家庭であり、ローン返済のため売却を迫られているという事情を考慮して入れてもらいたい。
 介護ヘルパーの資格はほしいが、講習を受けるのには8万円かかり、後から援助してくれるといっても、立て替えるだけのお金がない。立替をしないで講習が受けられると良い。
 児童扶養手当は収入が200万を超えると一部支給になってしまうので、超えないようにしている。手当は今、年間約60万円もらっている。200万円をどうにか超える収入を稼いでも、とても260万は稼げないと思う。
 役所の法律相談に行ったが、もう知っているようなことばかり教えてくれるので役には立たなかった。養育費をもらいなさい、って言うけれど、もらえるならもらっている。実質的に母子家庭全般について本当に相談に乗ってくれる人はいなかった。もっと木目細かい相談に応じてほしいし、実質的な援助を求める。ただかたちだけそういう窓口があるだけだと思う。
(インタビュァ:永瀬伸子、中野裕美子)


対象者 No.4(東京都在住)

2001年1月現在 (2001年10月インタビュー)

年齢:30歳代前半

母子世帯になってからの期間:3年(離婚)

職業:通信関連企業で派遣社員として勤務。システムサポート業務担当。
勤続3年10か月。

子の数と年齢:1人(小学2年)

学歴:短大卒

住居:民間賃貸(家賃9万)
勤労収入:300万

週平均労働時間:37時間

児童扶養手当:一部受給

就業履歴の特徴:
 短大卒業後、1年間出版社で正社員として働き、その後アパレルで正社員で働き、3年して店長にまでなったが、妊娠のため退職した。出産後9ヵ月で私立の保育園に子をあずけてパートを転々とする。子が小さい為、残業もできず、どれも長くは続かなかった。そこで派遣会社に登録し、通勤時間や勤務時間について子育てが可能かどうかで職を求め、現在の会社へ派遣された。残業がなく保育時間内に迎えに行けることが選択の理由である。夜勤が年間10日あるが、その時は実家の親や兄弟が泊りにきてくれる。現在の会社に派遣されてから離婚したが、そのまま働き続けている。離婚がきっかけで就業したのではなく、経済的に婚姻期間中も就業せざるを得なかった。正社員になれるとしても時間の融通がきかなくなるので派遣社員にとどまっている。しかし、いつ解雇されるかもしれないと心配で、将来的には介護福祉士の資格を取ろうと考えている。


インタビュー記録

1.現在の仕事

 現在の職場に入って、はじめは時給1,650円、今は1,670円である。派遣の相場は最近下がってきているが、時給がまだ高いうちに自分は入ったので得をした。派遣先の現在の職場に勤め始めてから、離婚をした。会社には社会保険の手続き、名前を変えたことなどで、離婚した事情は知らせざるをえなかった。幸い職場に理解があり、居心地よく働かせてもらっている。現在の職場では正社員にしてくれるような話もあるが、他の派遣の人との兼ね合いなど、難しいと思う。
 派遣は、受付業務、ファイリング、OA機器操作で採用された。現在、電話応対業務は数えるほどなので若手に任せていて、主に事務処理を担当している。勤務時間は8:40~17:10。通常、残業はないが、変則的に月2回の夜間残業がある。顧客からの質問に対して電話で応答する。残業分の割増が出るのでありがたい。
 自宅から会社まで自転車で30分、会社から学童保育まで20分、という比較的近い圏内にまとまっているのが幸いしている。会社には参観日なども融通を利かせてもらっていてありがたい。


2.キャリアパターン

 学校卒業後は正社員として働いていたが、妊娠を機に退職した。出産後9ヵ月で働きはじめた。まずクリーニング屋で時給750円のパートをしたが、保育園から職場へ「熱があるので迎えにきてください」との電話があり、休んだりすることがあって、1か月でクビにされてしまった。次に個人のブティックで、出産前にアパレルの店長をしていたので経験者ということで採用、時給900円で働くが、2か月でつぶれてしまった。その後、倉庫で値札付けの仕事につく。これは登録しておくと、倉庫街で都合に合った時間に仕事を回してもらえるというものであった。これは1、2か月でやめた。
 次に、大手クレジット会社の受付、審査業務、入力などのパートをした。時給1,100円。小売の客先などではどうしても夜遅くなったり、土日になったりするので、子育てとの両立がしにくい。1年勤めたときに、今までいた部署が人員削減の対象になり、本社に異動になる。本社では、自分の居場所がないと感じた。もしかすると、異動を機にやめるのではないかと踏んでのことだったのかもしれないと思う。未婚の女性ばかりで、寿退社の人も多く、子持ちの女性が勤めやすい会社ではないし、長くいられるところではないなと思っていた。結局10か月ほどいて、退職した。
 この頃、夫は借金を抱え、収入を当てにできない状況で、自分の収入の必要性も高くなってきていて、長いスパンで子どもを育てながらやっていける仕事につきたいと考えたが、ゆっくり探している余裕もなかったので、派遣会社に登録して探してもらうことにした。この時点で正社員という働き方は、時間的な不安から選択肢になかった。当時販売職で派遣はなかったので、販売職に正社員で入るとすれば、残業ができないし、とても子どもを抱えてはやっていけないだろうと思った。これまでアパレル関係の正社員で面接を受けたこともあったが、小さい子どもがいて、残業できないとなると、はねられてしまった。


3.準備期間

 離婚前から派遣社員として現在の職場で働いており、離婚後のために特別な準備したわけではない。とにかく婚姻中から収入を得る必要があったので、子育てをしながら働ける仕事を派遣会社に登録して探した。職安には自分の求める条件はないと思っていて、ハローワークは利用した経験がない。


4.生活全般

 両親と兄弟には、いろいろな面で助けてもらっている。土日勤務のときは実家の両親にきてもらって世話を頼んでいる。学童保育は3年生までなので、その後どうしようというのが目下の悩みである。
 夜はご飯にお味噌汁におかず、というきちんとしたものを作るように心がけている。子どものためにしっかり食事を用意している。仕事の日は疲れて寝てしまうことも多いが、子どもが寝てから、メールをチェックしたりして、夜更かししてしまうこともある。精神的に離婚後一年ぐらいはつらかったが、今はすっかり立ち直れた。一番の相談相手になったのは母親だった。離婚したことを友達や同僚に話したりすることで、支えられてきたし、立ち直れた。夫からの養育費は別居中に3か月もらったきりである。調停は不調に終わり、協議離婚である。養育費の取り決めはしていない。
 古いアパートに住んでいるが、近所には地元民が多く、親切にしてもらっている。病気で寝込んでいたときに、食事をもってきてくれたこともあった。子どもがいる家庭だからと思って食べ物を下さるかたもいる。子どもの友達との家族ぐるみの付き合いもあり、自分が仕事のときに預かってもらうこともある。長年住んでいて、近所に恵まれているから、なかなか離れがたい。ただし家賃が高いので公営住宅に申し込んだことがあるが、だめだった。もし入れたとしても引っ越さなければならず、子どもも転校させたくないので、その後公営住宅の申し込みはしていない。


5.受けた支援および今後の希望

<公的でない支援>
 実家からの精神的サポートと夜勤の日の育児サポート。近隣の人からの子育サポート。職場の理解(参観日などのために休めることなど)。

<公的支援>
 児童扶養手当一部受給。就学援助(給食費・就学費・学童保育費)。

<公的支援への評価と希望>
 学童保育を小学6年生まで続けてほしい。児童扶養手当を母親の年収で機械的に決めるのは納得できない。実家に住んでいて家賃が必要でなく、親の援助を受けているので、収入が少なくても暮らせる人が全額児童扶養手当を支給され、自分のように家賃を払っている人が一部支給はおかしい。児童扶養手当が4ヵ月まとめてではなく、毎月支給されるとよい。就学援助は助かっている。また家賃の援助が一部でもあると助かる。
(インタビュァ:中野裕美子、竹沢純子)


対象者 No.5(東京都在住)

2001年1月現在 (2001年11月インタビュー)

年齢:40歳代前半

母子世帯になってからの期間:10年(離婚)

職業:職業は老人ホームの介護職・正社員

子の数と年齢:2人(14歳・13歳)

学歴:短大卒

住居:公営住宅(家賃23,800円)

勤労収入:700万(勤続7年)

週平均労働時間:48時間

児童扶養手当:収入要件で外れた

就業履歴の特徴:
結婚前は着物販売の仕事をしていた。正社員だった。結婚によって退職。離婚後は2~3か月のパートをしながら、医療事務の資格を取った。しかし、収入が思ったより低いことがわかり、医療事務の仕事はしなかった。近所に老人ホームが建設されることになり、介護職の募集があったので応募した。当時は介護に関する資格はもっていなかった。就職してからヘルパー3級を東京都の主催する講習会に出て、自分の休みを使って取った。現在の老人ホームは職員の資格取得には関心がない。3年間介護の実労働経験があれば介護福祉士の試験が受けられるので自分の意志で受けたところ合格した。このまま介護職で60歳まで働くのは体力的に厳しい。しかし、当ホームにいるとずっとこのまま介護職のままであることがわかった。そこで、介護福祉士が実労働経験5年でケア・マネージャーの受験資格ができることから2001年(11月)に受験した。結果はまだ不明であるが、将来的にはケア・マネージャーとして転職したいと考えている。(12月合格通知あり)


インタビュー記録

1.現在の仕事

 離婚届を出してから医療事務の資格をとったが、収入が思ったよりよくないことがわかった。たまたま当時住んでいた自宅の近くに老人ホームが建設され、介護職の募集があったので応募した。採用された当時は介護に関する資格は全くもっていなかった。通常は9時から6時までで残業はない。週休2日だが前月に翌月の休日の希望日を届け出て決められるので、子の学校の行事に参加できる。ここには70人の老人がいて、職員は50名前後いる。月に4~6回の夜勤がある。その時の勤務時間は夕方5時30分から翌朝の10時まで。途中で仮眠が2時間とれる。勤続7年になる。


2.キャリアパターン

 結婚前は着物の販売業者で5~6年くらい販売の仕事をした。正社員だった。結婚によって退職した。結婚後着付けの資格を取得した。離婚後就職先がみつかるまでの間パートをして過ごした。夫は自営業で結婚当初の収入は高かった。離婚してからは、お菓子屋でパートをし、同時に結婚式場で着付けのパートをした。その間は、子は保育園に入れ、近くに住む実の母にもみてもらった。家は夫の借金の担保になっていたがすぐに引っ越す必要はなかったので家賃もいらなかった。その2つのパートをしながら半年弱、医療事務の資格を取る為に学校に通った。しかし医療事務では、収入が低いとわかった。老人ホームに就職したのは、職場が近くで、子と接する時間が長いこと、実家に近いことを考えてのことだ。
 近くの老人ホームの介護職員として採用されてから、自主的にヘルパー3級、介護福祉士の資格を取った。このまま介護職で60歳まで働くのは体力的に厳しい。そこで、ケア・マネージャーの資格試験を受験した。将来的にはケア・マネージャーとして転職したいと考えている。


3.準備期間

 離婚後、複数のパートをしながら、医療事務の資格を取りに学校へ通ったが、就職できても収入が低いことがわかったので、医療事務の仕事には就かなかった。たまたま近所にできた老人ホームに介護職の求人があったので応募したら採用された。離婚後あわてて就職しなくてよかったのは、自宅に住んでいたため家賃の支払がなかったことと、貯金があったこと、実家の支援があったことなどがその理由である。


4.生活全般

 休日に外に出かけると父親のいる家族が見えて、子がさみしい思いをするかもしれないので、実家の両親をさそって行くことにしている。車があるのでこのようなことができたと思う。小学生のころは朝、実家に寄って子をおいてから仕事に行った。子たちは実家から学校へ通っていた。名前のことは下の子が小学校の4年の時、担任の先生に相談した。それまで夫の籍に子達は入っていたが母親と子の姓が異なるとパスポートを作るとき面倒だったので、その際に子の籍を母親の籍に入れた。それによって学校で問題はおきなかった。
 休日は自治会やPTAの用事で出ることが多い。先生たちと接することで、自分が子と先生のコミュニケーションのパイプ役になれたらと思い続けている。
 離婚直後は自宅にいたが夫の借金のために出て行かざるをえず4年前に市営住宅に移った。最初の家賃は8,000円だったが、今は収入が増えたので22,600円になった。収入が増えたし、手狭でもあるので引っ越してもよいが、子の学校が近いこと、実家が近いこと、家賃は上がったとはいえ安いので、すぐに出る予定はない。
 現在子ども2人とも塾にやっていて月謝が月5~6万かかる。長男は好きな学校に行かせたいが、本人は都立高校を希望している。長女は私立高校を希望している。経済的には心配しなくていいから好きな学校へ行きなさいと言っている。


5.受けた支援および今後の希望。

<公的でない支援>
実家の精神的、経済的支援。

<公的支援>
離婚直後は仕事をしてなかったので1年間のみ児童扶養手当は受給していた。保育園に2人入れたが保育料は無料、医療費も無料であった。

<公的支援への評価と希望>
○経済的には実家の援助もあり困った記憶はないが、上の子が5年生の時に反抗期があり、母親1人で対応することがつらかった。そのような時に相談相手になってくれる人が欲しかった。

○保育園の保育時間が長ければよかった。正社員になると、送り迎えができなくなる。

○児童扶養手当の打ち切りの収入限度額が低すぎる。

○よかったことは離婚直後、市役所の人が「子のことは気にしないでいいです。自分が離婚したことで神経質にならなければ大丈夫。」とひとこと言ってくれて肩の荷が下りた気がした。

○手当を受けていた時に、母子、父子の旅行に参加し、子ども、親共に新たなつながりができ、とても良い体験をした。収入で切らないで、そういった支援の対象者としてほしい。

○収入が増しても、両親と片親の違いをわかってほしい。
(インタビュァ:小川幸子、中野裕美子)


対象者 No.6(兵庫県在住)

2001年1月現在 (2001年12月インタビュー)

年齢:30歳半ば

母子世帯になってからの期間:9年(未婚・非婚)

職業:看護師

子の数と年齢:1人(8歳)

学歴:看護専門学校卒

住居:持ち家(住宅ローンあり)

勤労年収:700万

週平均労働時間:43時間

児童扶養手当:収入要件で外れた

就業履歴の特徴:
 看護師として働いていたが、非婚で妊娠し、職場にいづらくなってやめた。実家近くに引っ越して出産したが、別の病院にパートの看護職があると紹介され、出産後3ヵ月で働きはじめた。子どもが1歳になって常勤の看護師として採用された。夜勤のときや保育所の送り迎えは実家の母親に手伝ってもらった。
 その後、実家近くの条件のよい職場を探し、現在の病院に転職した。夜勤をこなしつつ収入を維持していているが、身体の面でも子育ての面でも夜勤はつらい。子どもが成長して多感な時期にもなるので、できるだけ一緒にいてあげられるよう、夜勤のない仕事がしたい。最近ケアマネージャーの資格をとったが、ケアマネの仕事では、現在の収入を維持できない。将来のことを考えると、諦めてもいるし、焦ってもいる。


インタビュー記録

1.現在の仕事

 公立病院で看護師(正規職)として働いている。病棟勤務のため、3交代制である(<1>8:30~17:00、<2>16:30~1:00、<3>0:30~9:00)。夜勤は週に2回以上、1か月に8~10回程度入る。夜勤手当がなければこの収入は維持できない。
 3交代制はまだマシである。私立病院のように2交代制だと身体はさらに厳しくなるだろう。外来勤務は日中だけなので楽だが、産休明けの看護師や年配の看護師がメインであり、枠が少ない。医師のいうとおりに動くことが中心業務となるため、仕事のやりがいも少ない。病棟勤務は判断力が求められるので仕事にやりがいがある。しかし体力的にはきつい。
 夜勤のときは子どもを親の家(徒歩圏内)に預けている。子どもが小さいときは保育所からの送り迎えも母に頼んでいた。勤務先までは車で片道15分ほど。車がなければ深夜勤務はできない。
 残業はないが勤務時間以外に看護研修や学習会などが入る。業務命令だが勤務時間内にしてはいけないので持ち帰り仕事となることもある。


2.キャリアパターン

 高校卒業後、看護学校で3年学び、看護師として就職した。現在の職場は3つ目である。
 常勤の看護師として働いていた最初の病院は、現在と同じ3交代制で、バブルの頃で賃金も良かったが、子どもができてやめた。妊娠6ヵ月までは妊娠を隠して働いたが、非婚で出産して働きつづけられる雰囲気ではなかった。
 その後、実家近くのアパートに引っ越して出産した。引越費用と出産費用で、働いていたときの貯金はすぐになくなった。仕事を探さなくてはいけないと焦った。
 2番目の職場は、前の職場の同僚が「パートでよかったら仕事がある」と紹介してくれた病院。出産後3ヵ月で働き始めた。子どもは“赤ちゃんホーム”に預け、1歳になってから保育所に預けた。子どもが1歳になるまでは夜間勤務はできないという病院の既定があり、最初はパートの外来勤務として採用された。しかし1日8時間は働いた。その後、臨時採用を経て、常勤職となった。
 この職場の問題点は、通勤に片道1時間以上かかったことと、看護研修や自己学習のため休日出勤が多かったこと。小さい子どもを抱えて働きつづけるのはつらかった。子どもの保育所の送り迎えを親に見てもらっていたので、実家近くから離れて、職場近くに引っ越すことは考えられなかった。そのため、実家近くの病院に転職しようと準備をはじめ、看護師の募集がないか、情報収集を重ねた。現在の職場は、競争率の高い人気病院だったが、2回目の挑戦で採用された。


3.準備期間

 ずっと働いていたが、ひとりで出産することで仕事をやめざるをえなかった。親のサポートを得るために引っ越した。仕事をするうえで子どもをどうするかが問題だった。
 結局、無職だったのは産前産後の半年ほどである。看護師以外の再就職は考えなかった。給料の良さを考えると別の仕事では働けない。この業界では30歳を超えると良い職場に転職できないので、できるだけ早く実家に近い病院に移ろうと、さまざまな準備をした。友人や知人のツテを探ったり、市の広報で募集があれば応募し続けた。


4.生活全般

 子どもを出産し母子世帯になった当時が精神的にも経済的にも最もつらかった。3ヵ月の子どもを預けて働き始めた頃、パートで18万円ほどの収入しかないのに、保育費用(赤ちゃんホーム)だけで月6万円を支払っていた。働くことの矛盾を感じた。当時の住居は家賃3万円の古いアパートで、虫がわいたり天井から何かが落ちてきたりするところだった。最悪の住環境で、赤ん坊と2人で気分が落ち込んだ。お金を貯めようと我慢して、子どもが4歳になるまで住み続けた。節約したお金で現在のマンションを買った。
 子どもに対しては両親世帯に負けないことをしてあげたい。学習塾にも行かせてあげたいが、他の母親たちがしているように、塾への送り迎えや、塾から帰ってきたときに「よくがんばったね」と声をかけてあげることができない。そういうフォローをせずに、ただ「塾に行け」というのは、勉強をさせればいいというだけであり、良くないと思う。子どもと一緒にがんばってあげるという状況をつくれないことが、もどかしい。
 PTAや学校の行事などはできるだけ参加する。夜勤あけだと昼間家にいることができるのでスケジュールを調整する。子どもが急な病気のときは、親や近くに住んでいるきょうだいに頼むこともある。
 子どもの父親とは、養育費の取り決めはしておらず、金銭援助はない。経済的に当てにならない人であり、自分のほうが収入が高かったから。あまりお金のことはいいたくない。子どもと父親とのつながりを保つよう定期的に面会はしている。


5.受けた支援および今後の希望

<公的でない支援>
 子どもが保育所に通っていた頃、保育所の送り迎えの時間と、自分の勤務時間が合わないときは、母に送り迎えを頼んでいた。現在も夜勤の日は、親の家に子どもを預けている。

<公的支援>
○妊娠・出産で無職になった年は収入が低かったので、その翌年だけ児童扶養手当を受けた。しかし出産後すぐに働き始めたので、収入要件を超えたとして手当もすぐにカットされた。手当を受給した記憶は薄い。

○現在、市が母子寡婦福祉団体に委託して行っている母子家庭対象の講習会(フラワーアレンジメント)を受けている。気分転換という意味では良いが、月に1回程度なので、技術が向上するわけではない。フラワーアレンジメントの道を究めたらどういう仕事に就けるのかということを教えてほしい。講習会自体は楽しいが、趣味的なものではなくレベルの高いことをしてほしい。母子家庭対象の講座でなくてもよいが、講習代が安い点が助かる(費用は実費のみ)。講習会のついでに母子家庭の相談会・交流会のようなものにも誘われるが参加していない。暗い雰囲気でみじめだから。「がんばってください」といわれると、ちょっと違うと感じる。

<公的支援への評価と希望>
○働くことと支援策のあり方に矛盾を感じる。子どもが3ヵ月のときから働きに出て、収入は少ないのに乳児保育の費用が高かった(月6万円)ことと、パートでしか働けないのにフルタイムで働いていたときの前年の収入で税金が引かれるのがつらかった。小児科病棟などでは、生活保護を受けている母子家庭のお母さんが子どもにつきっきりで看病している姿を目にすることがある。働かなくていいのなら自分も夜勤をしないで子どもと一緒にいたかった。子どもが一番かわいい時期に働きに出て、働きに出たら一切の援助が切られるのはおかしい。

○将来は、現在の収入を維持できる仕事で、夜勤のない仕事がしたい。年齢を重ねると夜勤がつらい。体力的な意味だけでなく、子どもを育てていくうえでもつらい。子どもが思春期になると交友関係なども心配になってくるし、受験勉強も応援してやりたい。夜勤をしていたのでは子どもに目がとどかない。だからといって、仕事をやめるわけにはいかない。ケアマネージャーの資格をとったが、ケアマネの仕事では、現在の収入を維持できない。年齢を重ねると転職も不可能になると考えると、諦めてもいるし、焦ってもいる。
(インタビュァ:藤原千沙)


対象者 No.7(埼玉県在住)

2001年現在 (2001年11月インタビュー)

年齢:40歳代後半

母子世帯になってからの期間:7年(離婚)

職業:不動産業でのマンション居住者のクレームデータ管理業務

子の数と年齢:1人(中学2年)

学歴:高校卒

住居:給与住宅

勤労収入:400万

週平均労働時間:40時間

児童扶養手当:収入要件で外れた

就業履歴の特徴:
 学校卒業後ゼネコンで13年間正社員として働く。付き合っていた人が米国に行く事になって、仕事をやめて渡米し、現地で結婚した。7年間米国で暮らした後、夫を残して子と帰国し、とりあえず実家にもどり歯科でアルバイトをした。リュウマチを煩い左中指が不自由なため、身体障害者3級に認定された。身障者雇用促進月間中、新聞広告で現職を得た。まず嘱託で採用され、翌年、正社員となった。今の部署で使用しているコンピューターのソフトで業務ができる人が他にいないので頼りにされている。会社から期待や責任をかけられて、それに応えようと頑張っている。月給は、入社してから1万円上がった程度。しかし、ボーナスは普通以上に多くもらっている。一般事務職から総合職になりたいが営業もこなし、残業もあるので、子と過ごす時間も取れなくなるだろうし、食事も作ってやれないし、何より体力的に無理と思う。一般職で定時に帰れる働き方となると、今の給料で仕方ないのかもしれない。でも、より良い条件の職が近くで見つかれば転職したいという希望もある。


インタビュー記録

1.現在の仕事

 母子世帯になってから約7年経過、現在、不動産会社で一般職の事務(マンション居住者のクレームデータ管理業務)として勤務。勤続約8年。就職活動をはじめて、ハローワークにも通ったが、土日が休みでなかったり、年齢で引っかかり、なかなか見つからなかった。リウマチの持病をもち、身体障害者3級。左手中指の関節に症状が出ている。就職活動中、ちょうど身障者雇用促進月間で、新聞の求人欄で現在の職を見つけ、まずは嘱託という身分で入った(93年11月)。嘱託でまずは勤めてもらって、様子を見ましょうということだったが、「あなたは若い人ともうまくやっていけそうね」ということになり、4月には正社員になれた。職場は埼玉県内だった。母子寮のあるA市の学童保育は5時までしかなかったが、社宅のあるB市は学童が6時までで、社宅に入居できることになったこともあり、これを機に母子寮から転居して娘と2人で自立した生活をスタートした。現在は同じ会社の東京都心の事務所に勤務しているので、通勤が大変だ。体力的に疲労する。一般職で、主任の地位にあり、部下1人(身障者)を使っている。データベースについては、会社に入ってから本を買って自分で勉強した。今の部署では自分しかできる人がいないので、頼りにされている。会社から次々といろんな期待や責任をかけられて、それに応えようと頑張っている。
 月給はそんなに多くなく、入社してから8年で1万円上がった程度。しかし、ボーナスは普通以上に多くもらっている。これは、査定で高ランクにあるため。ボーナスがたくさんもらえるので助かっている。しかし、一般事務職からもっと上に行きたい、そしてお給料をもっとたくさんもらいたい。とはいっても、給料がもっといい総合職になってしまうと営業もこなし、残業もとなると、娘との時間も取れなくなるだろうし、食事も作ってやれないし、何より体力的に無理と思う。現在のように一般職で定時に帰れる働き方となると、今の給料で仕方ないのかもしれない。でも、より良い条件の職が近くで見つかれば転職したいという希望もある。


2.キャリアパターン

 学校卒業後は同じ勤め先に正社員として13年勤務し、退職してアメリカに渡る。夫は学費給付生として渡米したため、豊かではなく、市民権を得てからはウェイトレスをして働いた。夫の実家から借金をしたこともあった。7年後、子を連れて帰国し、実家にもどる。歯科でアルバイトをする。母子寮に入って、本格的に就職活動をして現職に就く。はじめは嘱託で採用され、後に正社員となる。協議離婚で父親からの養育費は受け取っていない。
 「管理主任者業務」という試験を来月受験する。義務というわけではないが、取ることを奨励されており、毎朝朝礼前に小テストが5問ずつ行われる。この試験に合格すると、「マンション管理者試験」を受験することになる。ただし合格しても給料には反映されない。


3.準備期間

 とにかく夫と別れたかったので、準備なしで帰国した。とりあえず、実家にもどりアルバイトをしながら、就職活動を始めた。母親からも独立するため、市役所で情報を得て、A市の母子寮に6か月間入居、家賃、その他の生活費が安く、地元のライオンズクラブなどから、奉仕品の提供や旅行のプレゼント、子どものための習い事等があったりして、お金がたまったという点ではよかった。しかし一緒に入居していた母子の人たちは、生活保護や児童扶養手当に頼っていて働く気もなく、家計管理能力に欠け、無駄遣いが多くみうけられ、長く住む環境ではないと思った。子どもは日本の保育園に半年だけ通ったが、日本語が話せなく、集団行動にもなじめなかった。


4.生活全般

 社宅は本来の規定では7年間まで入居可なのだが、特別な計らいで子どもが中学卒業まで住まわせてもらえることになった。社宅内での近所づきあいは、会えば挨拶する程度。噂話などには加わらない。上の階の方が、子どもに関する催しなどの情報を届けてくれたり、昼間働いていて情報が得られない分を助けてもらった。子が中学を卒業したら、今の社宅を出ていかなければならなく、対応を考えている。転校しなくてよい範囲でこの近辺の公営住宅の入居は難しい。A市に75歳の母、東京都内に子どものいない姉が住んでいる。出張の時には、姉に来てもらったりすることもある。泊まりの出張のときは、すぐ食べられるようなものを何食分か作っていく。買ったものではなく手作りの物を極力食べさせたいと思っている。朝は5時半におきて朝食作りと夕食の下ごしらえをする。
 子どもと過ごす時間を大切にしたい。娘が話す学校の一日の細かな出来事を、毎日たくさん聞いている。週末は、一日は家事、もう一日は娘と出かけることが多い。娘には大学まで進学してほしいと思っている。寿命が延び長い人生となった現在において、18歳で働き出すのは早すぎると思う。学費は奨学金等の制度を利用したい。現在は部活に忙しくしている。週二回塾に行かせている。公立高校をめざしている。洋服やCDなど買いたいものがいろいろ出てくる年頃なので、そのためにもお給料がもっとあればと思うこともある。ボーナス時には買ってあげられる。年金の受給権発生の25年まで、頑張らなければと思っている。


5.受けた支援および今後の希望

<公的でない支援>
 実家の母からのサポート、東京に住む姉が出張の時は泊りにきてくれる。職場の理解(社宅の供与や期限延長)。

<公的支援>
 今は要件が外れたが、児童扶養手当を受給していた。母子寮に6か月住んだ。身障者の薬剤費補助。

<公的支援への評価と希望>
 二週間に一度、個人の医院に通院している。児童扶養手当の限度額を超えて支給対象から外れたために、母子世帯向けの医療補助は受けられないが、身障者の薬剤費補助制度が使える。これは助かっているのだが、娘の万が一の際の医療費を考えると、母子世帯の医療補助が受けられると安心なのに、とは思う。「母子寮」ではなく、普通のアパートに住む援助をしたらどうか。仕事の斡旋をしてくれたら40歳以上でも見つけられるかもしれない。児童扶養手当の所得制限が低すぎる。
(インタビュァ:中野裕美子、竹沢純子)


対象者 No.8(大阪府在住)

2001年1月現在 (2001年12月インタビュー)

年齢:30歳半ば

母子世帯になってからの期間:6年(離婚)

職業:パソコンのインストラクター・システム開発アシスタント

子の数と年齢:2人(11歳、12歳)

学歴:高校卒

住居:親・親族の持ち家

勤労年収:400万

週平均労働時間:40時間

児童扶養手当:収入要件で外れた

就業履歴の特徴:
 高校を卒業後、洋服販売会社や自動車販売会社で正社員として働いていたが、結婚を機に退職し、専業主婦として2人の子どもを育てる。子どもが幼稚園の頃に、別居して実家に戻り、訪問販売の仕事をはじめる。収入の変動が大きく、その後、喫茶店のパートとして働く。安定した仕事を探してハローワークにも行ったが、子どもが小さいからと雇ってもらえなかった。子どもが小学校に入学する頃に離婚。喫茶店のお客さんだったコンピュータ会社の社長が事情を知り、事務員として採用される。会社に入ってから、パソコンや簿記の技能を身につけ、会社の事務だけでなく、IT講習会のインストラクターとして派遣されるまでになった。今の自分があるのは、いい職場に恵まれたおかげであり、この経験や知識を、他の母子家庭の人達のために役立てていきたいと考えている。


インタビュー記録

1.現在の仕事

 従業員10人未満のコンピュータ会社で、正社員として働いている。IT講習会などの依頼を受けたときはインストラクターになるので、会社の外で働いていることが多い。講習会がないときは、システム開発のアシスタントや、会社の事務的な仕事をしている。
 残業を含めて就業時間はだいたい9~18時で、土日休みの週休2日。子どもの学校行事や緊急のときなどは、ちょっと仕事を抜け出させてくれるなど、会社に理解があり、とても助かっている。職住接近(片道通勤15分以内)である利点も大きい。
 入社したきっかけは、離婚して仕事に困っていたときに、今の会社の社長が事情を知り、事務員として雇ってくれたこと。社長が1人で始めた会社であり、入社したときは従業員2人だった。何の資格や技能もなくて車の運転しかできなかったが、会社に入ってからパソコンと簿記を習わせてくれた。パソコンは同僚が教えてくれて、簿記は商工会議所の講習に会社が行かせてくれた。
 職場の同僚には障害者や母子家庭が多い。社長によれば「仕事を一生懸命してくれるから」だそうだ。障害者のためのIT講習会などを会社が受注する機会も多い。この会社で働くことができて自分はラッキーだと思う。


2.キャリアパターン

 高校を卒業後、洋服販売の会社に正社員として就職した。出張が多く、費用負担の持ち出しが大きくて、2年ほどでやめた。その後、アルバイトをしてから、自動車ディーラー会社の営業事務(正社員)として就職した。1年ほどで結婚退職。専業主婦として2人の子どもを育てていた。
 子どもが幼稚園の頃に別居をへて離婚。別居していた頃、最初に始めたのは、衣類関係の訪問販売の仕事だった。子どもを連れて行けるからと友だちに紹介されて始めたが、月収は最大10万円から最低0円で、変動の幅が大きかった。
 その後、時給800円の喫茶店のパートをした。月収8万円くらいだった。ちゃんとした仕事をしたいとハローワークにも行き、いくつか面接にも行ったが「子どもが小さいから」と断られた。子どもが小さいと、会社はどうしてもイメージ的に「休みがち」と思う。そのときに「親がいます」「ファミリーサポートを利用します」「絶対に休みません」などと主張できなければ就職できない。悔しい思いをした。
 今の会社の社長は当時のアルバイト先で知り合った。離婚して地元に帰ってきていたので、昔の知り合いだった。会社に採用されてからは、技能や知識を身につけようと、簿記もパソコンも必死で勉強した。
 子どもが幼稚園の頃は、2時に終わってから5時まで、延長保育をお願いしていた。残業や子どもの病気など、いざというときは、近所に住んでいる実家の母に頼んでいた。母に頼むことができたので正社員として働くことができた。


3.準備期間

 別居していた頃や離婚した直後は、子どもも自分も精神的に不安定だった。専業主婦をしていたので何の技能もなく、これからどうすればいいのかと気持ちが落ち着かず、不安だった。仕事にむけた準備がしたいと思ったが、お金の余裕も時間の余裕もなかった。子どもと離れ離れになることも不安な状態だった。
 家庭裁判所にも相談にいったが、手当や生活保護などを紹介されただけだった。それらを求めていたのではなく、安定した仕事がほしかった。仕事さえできれば、住むところがあればなんとかなるし、子どもの保育の費用は、お金さえあればなんとかなる。
 別居しているときは実家を頼って身を寄せていた。離婚してしばらくたって実家を出たが、近くに住んでいる。公営住宅に母子枠があると聞き、調べてみたことがあったが、場所を選べないといわれた。それは困るので申し込まなかった。子どもを育てながら働くうえでは、いざというときに母に頼らざるをえない。
 財産分与のない離婚でゼロからのスタートだったが、子どもの父親と養育費の取り決めはした。子ども2人分で月5万円、20歳までという約束で、今のところは守られている。しかし養育費は子どものためのものであり、将来のために残しておかなければならない。病気になったり身体が壊れてしまうなど、何があるかわからないので。離婚した当時もらっていた児童扶養手当はとても助かった。パート収入8万円、養育費5万円、児童扶養手当5万円の計18万円で、親子3人ぎりぎりで暮らしていた。当時は手当がなければ生きていけなかった。


4.生活全般
 別居していた頃や離婚してしばらくは大変だったが、今は子どもも自分も落ち着いている。しかし行政に助けてもらったとは思っていない。いい職場がみつかって今がある。この経験を、これからは他の人たちに提供していきたい。
 たとえば母子家庭だけを対象にしたIT講習会などができればいいと考えている。会社を通して行政に働きかけてみたが、「母子だけ集めるというのはプライベートなことなので行政としてはやれない」と冷たくあしらわれた。障害者向けのIT講習会でも、視覚障害者と肢体不自由者の違いが配慮されておらず、行政はわかっていない。主婦や高齢者向けの昼間のIT講習会は多いが、母子家庭など切羽詰った人は昼間働いているので、そういった講習会に行くことができない。夜間や土日の講習会となると、子どもの保育をどうするかが問題となる。費用と時間と保育の問題を工夫すれば、母子家庭に役立てる講習会ができるはずだ。
 将来的には、母子家庭の母たちで起業したいとも考えている。問題は、事業がうまく軌道に乗れるかどうかだ。仕事さえ受託できれば、きちんと業務をこなして、信頼関係を築ける自信があっても、起業した初期に仕事を受注できるかどうかが心配だ。役所はデータ入力などの仕事を大手企業に委託しているが、そういった仕事を母子家庭に回してほしい。起業して2年間など事業が軌道に乗るまでの間、行政が最低これだけの仕事を発注してくれるなどといった支援があれば、安心して起業できると思う。


5.受けた支援および今後の希望

<公的でない支援>
 実家からの住宅援助・子育て援助。子の父からの養育費。職場の理解。

<公的支援>
 児童扶養手当(収入要件で外れた)。

<公的支援への評価と希望>
○児童扶養手当と医療費助成が一緒になっていることについて、なんとかしてほしい。今は児童扶養手当はいらなくなったが、医療費のサポートがほしい。子どもがぜんそくなので、発作、点滴、注射、入院など、多額の医療費がかかる。母子医療でなくてもよいから、子どもの医療あるいは慢性疾患の医療などに対して、援助がほしい。医療助成とセットになっているから手当を抜け出せないという人もいるのではないか。以前、手当と医療証を分けてくれと行政にかけあったことがあったが、無理だといわれた。

○いちばん大変だったのは離婚する前、別居していた頃だった。離婚しないとサポートしてくれないというのはおかしい。別居していたとき行政に相談にいったが、手当ももらえず、住宅の支援もないと言われた。別居時のサポートがほしい。たとえば今の会社は母子家庭や障害者を多く雇っているということで、駆け込み寺的な相談がくることがある。話を聞いてみると、どこに相談に行けばいいのか情報がないようだ。離婚してからのサポートは役所にいけばわかるが、それ以前の準備はどうしたらよいのか。「準備をしましたか」と聞かれても、どうやって準備したらよかったのか、わからない。せめて役所の児童扶養手当の窓口で、幅広く情報を流して欲しい。

○子どもが小さかったときに必要だったのは、子どもの病気など緊急時に利用できるファミリーサポートのような制度。ふだんの保育はなんとかできていても、緊急時に対応できないと言われて、どこにも雇ってもらえなかったから。

○行政の仕事を母子家庭や障害者に回してほしい。仕事をすることを応援してほしい。
(インタビュァ:藤原千沙)


対象者 No.9(千葉県在住)

2001年1月現在 (2001年11月インタビュー)

年齢:40歳代半ば

母子世帯になってからの期間:17年(離婚)

職業:市役所職員(勤続26年)

子の数と年齢:1人(19歳)

学歴:高卒

住居:持家

勤労収入:700万円

週平均労働時間:40時間

児童扶養手当:収入要件で外れた

就業経歴の特徴:
 結婚前から市役所に勤務していて現在まで継続している。市役所の現在の部署に2001年4月に異動になった。他の人に比べて、ひとつの部署に長くいた方である。勤続26年だが役職はない。出産時は産前6週間の休みをとり、産後6週間で出勤した。子の面倒は夫の母がみてくれた。離婚するまでは夫の母が世話してくれた。離婚後は実家に帰り、実家の両親に2歳までみてもらい、その後、保育園にいれた。母子家庭だからといって残業しないと、他の人に迷惑だし、そのように言われるのが嫌だったので残業もなるべくやった。できないときは家に持ち帰って仕事をした。実家の父には、「仕事と子どもとどっちが大事か」と言われたこともあったが、意地になって働いた。最近、体調が悪く、更年期障害といわれた。週に1日位は出勤できないことが続いた。吐き気がしたり、めまいがしたりした。今はなんとか毎日通勤しているが、残業がある季節はつらい。できればやめて自宅でできる仕事がしたい。70歳の母親が最近同居するようになったので、介護福祉士の資格もとりたい。パソコンが苦手なのでそれも覚えたい。住宅ローンは残っているが今やめても退職金で払えると思う。娘が大学を出て働くようになったら市役所をやめたいと思っている。


インタビュー記録

1.現在の仕事

 市役所内で異動をくりかえし、今度の課は5つめである。今のところ残業はあまりなく、8時30分から5時15分の勤務。通勤は自家用車で15分である。今の課に2001年4月異動になった。新しい職場に移ってから体調が悪く、医者に更年期障害といわれた。年齢が自分より下の人が多い課で、新しい仕事を覚えるのは厳しい。週に1日位は出勤できないことが続いた。吐き気がしたり、めまいがしたりした。今はなんとか毎日通勤しているが、残業がある季節はつらい。できればやめて自宅でできる仕事がしたい。70歳の母親が最近同居するようになったので、介護福祉士の資格もとりたい。パソコンが苦手なのでそれも覚えたい。住宅ローンは800万残っているが今やめても退職金で払えると思うので、娘が大学を出て働くようになったら私は市役所をやめたいと思っている。


2.キャリアパターン

 役所は500人から600人の人が働いていて、異動があるとしても、同じ建物内で動く。最初はB課で10年、次ぎがC課(今のところと違う係である)で5年、D課で5年、B課で6年、そして今のC課になった。ひとつの部署が長い方である。勤続26年だが役職はない。同期の男性は係長、補佐になっている。出産の時は産前6週間の休みをとり、産後6週間で出勤した。子の面倒は夫の母がみてくれた。離婚するまでは夫の母が世話をしてくれた。離婚後は実家に帰り、実家の両親に2歳までみてもらい、その後、保育園にいれた。残業のある時は1度職場から保育園に迎えにいき、実家に戻って両親に預け、また職場にもどった。子は小さいときから心臓が悪く、月に1回は通院していた。また子が病気の時は有給の時間休をとって、病院に自分で連れて行って、また実家において、職場にもどった。そのため1日休暇をとる必要はなかった。PTA等は有給休暇を使って私が参加した。職場に離婚した人が何人かいて、皆がんばっている。母子家庭だからといって残業しないと、他の人に迷惑だし、そのように言われるのが嫌だったので残業もなるべくやった。できないときは家に持ち帰ってした。実家の父には、「仕事と子どもとどっちが大事か」と言われたこともあったが、意地になって働いた。


3.準備期間

 夫が失踪してそのまま離婚に至った。離婚後は実家に帰り、実家の両親に子の世話をしてもらって仕事を続けた。離婚のために何か準備するということはなかった。


4.生活全般

 現在、子は20歳になり大学生で、自宅から通学している。実母と同居していて3人暮らし。自宅を4年前に新築した。離婚してからは実家にもどっていた。父親がなくなり、兄もなくなって実家は母1人になったので、家と土地を売って私と一緒に住むようになった。住宅ローンをくんで、母から援助を受けて、自分の貯金を足して、父から相続した土地に現在の家を4年前に建てた。現在名義は自分になっている。母親と自分と娘の女3人家族になった。毎月のローンの返済額は4万円。結婚しているときも私の給料で生活していた。夫は多額の借金をかかえていて、離婚後もサラ金が私を追いかけてきた。保証人が私になっていたからだ。職場に電話が頻繁にかかってきたし、脅かしもあった。そのようなことは離婚したあと10年くらい続いた。娘が小さいころピアノやクラシックバレーを習いたいといったことがあるが、夫の借金の返済金を実家に一部負担してもらった手前、私は娘にお金のかかる習い事をさせてやれなかった。今は大学で教員になる勉強をしている。司書の資格もとることにしている。できれば地元の学校の教員になりたいと考えている。ひとつ気になっていることは娘が小さいころ世話をしてくれた夫の母親が自殺をしてしまったことだ。息子の作った多額の借金の返済を夫の両親も迫られていたことも原因のひとつだが、今でも心が痛む。


5.受けた支援および今後の希望

<公的でない支援>
実家の両親からの子育て援助。同居することによる経済的、精神的援助。
職場の上司のサポート。

<公的支援>
児童扶養手当は子が保育園に行っているころ受給していたが、小学校へあがるころに、収入が受給制限を越えたので辞退した。それから何も受給していない。高校へ上がったとき、娘の担任の先生が心配して、奨学金を受けないかと娘が呼出され、娘はショックを受けていた。「うちはそんなに貧乏なのか」ときいた。奨学金もかりていない。小・中・高と公立で今は私立大学に通っている。大学の学費は昔から子ども名義で月5,000円ずつ貯金をしてきたので入学時にはそれを使った。

<公的支援への評価と希望>
恵まれていたのは、福祉課も市役所内なのでなにかと便利だったこと。役所の中でいろいろ聞けたことが助かった。休暇も取りやすかったと思う。
(インタビュァ:中野裕美子)


対象者 No.10(東京都在住)

2001年10月現在(2001年10月インタビュー)

年齢:50歳代前半

母子世帯になってからの期間:18年(3年間別居を経て離婚)

職業:無職(失業中)

子の数と年齢:長男(24歳)は近居、次男(19歳)は予備校生で同居。

学歴:短大卒

資格:中高家庭科教員資格(短大時取得)、簿記1級(母子世帯になってから取得)

住居:都営住宅(現在失業中のため家賃は1万円)

勤労収入(前年):340万

健康状態:糖尿病(インシュリン注射をしている)

児童扶養手当:年齢要件で外れた

就業履歴の特徴:
 短大卒業後、事務職正社員として官庁外郭団体に就職、3年目に画学生と結婚し夫を扶養する立場となる。その後美術関係の研究所でデザインの仕事、さらに科学教育文化施設の受付業務へと転職する。第1子出産を機に退職、夫が家計保持者として働くことになり子育てに専念する。第2子出産後まもなく別居状態となる。翻訳など在宅仕事、その後学童保育所指導員に嘱託として勤務したが持病の糖尿病が悪化する。求職中に資格の無いことを問題にされ、その悔しさをバネに職業訓練校に入所し短期間で簿記の1級資格を取得、資格を生かして会計事務所正社員の職を得る。転職を考えていたところ、以前勤務していた科学教育文化施設のポストに空きがあり、再び正社員として勤務するが、施設の閉鎖で失業、現在は失業給付を受給しながら職業訓練を受けている。まもなく終了し、求職活動を始めるところである。


インタビュー記録

1.現在の仕事
現在失業中である。失業保険を受給しつつ、ハローワークの紹介で職業訓練(システムサポート科3ヶ月コース)を受講している。


2.キャリアパターン
 短大卒業後、初職は官庁外郭団体の事務職、その後美術関係の研究所で染色デザイン、科学教育文化施設の受付業務へと転職した。この間、世帯主として夫を扶養していた。
 30歳、第1子出産を機に夫が就職し、専業主婦となった。34歳で第2子妊娠、この頃から夫婦関係が悪化した。別居状態の間、翻訳やフリーライター等在宅仕事、教職免許(家庭科中高教員資格)を生かして嘱託で学童保育所指導員、コンビニ等職を転々としていた。
 職業訓練校で取得した簿記1級の資格を生かして会計事務所に就職、半年後正社員となった。給料も結構よかったが、確定申告や決算などの繁忙期は仕事量が多く残業もあった。税理士という目標を目指して、土日は通学していた。こうしたハードな生活の結果、病状が悪化し入院した。会計事務所でキャリアを積み、税理士の資格を取るという夢をあきらめて、収入が少なくなっても、健康に留意しゆとりある生活が可能な仕事に転職することにした。
 その頃ちょうど以前勤めていた科学教育文化施設から、定年退職する女性の後に入らないかというお誘いをいただいた。退職後も顔を出してつないでおいたのが功を奏した。会計事務所の経験を生かしてあらゆる仕事をこなした。


3.準備期間

 別居状態の間に求職活動を始めた。当時小1と3歳の子を抱えて38歳になっていたということもあり、なかなかいい仕事が見つからず、資格取得を決意した。職業訓練校での訓練期間中、母子世帯特別枠で受講手当が受けられるためには、正式に離婚していることが必要であった。まずは離婚を成立させ、その上で訓練校を受験し、母子世帯特別枠で入ることが出来た。簿記3級取得3ヶ月コースに在籍したが、必死に努力し短期間で1級を取得した。


4.生活全般

 母は「結婚よりも自分の仕事を持つ女性に」と、自立を促すタイプであった。短大卒業後の初職は、キャリアを身につけ長く勤められることを基準に就職先を探した。
 ずっと持病の糖尿病による入院、通院の必要があった。加えて子どもも喘息で通院する必要があり、仕事とのやりくりが大変だった。
 メリハリをつけたお金の使い方を心がけてきた。子どもと一年に一度は旅行し、芸術鑑賞はお誕生日の機会にすべての種類を見せた。経済的に余裕は無かったが、かけるべきところにはお金をかけた。


5.受けた支援及び今後の希望

<公的でない支援>
 離婚に際し、母は実家に戻ってきてもいいという考えだった。しかし父は実家に戻り親に養ってもらいながら子供の世話をするという状態になるのは、長い目で見るとプラスにならないのではないか、それよりも同居せず働いて自立を目指しなさい、もしどうしようもなくなった時には最後の拠り所として戻ってきていいから、という考えだった。親と同居はしなかったが、入院したときには妹が子どもを預かってくれたりと、家族には大変助けられた。
 元夫は養育費を送れるだけの収入がないことはわかっていたので、期待もしていなかった。子ども達は元夫とたまに連絡をとって会っていた。
 女性史の勉強会、子育て仲間など、地域のネットワークを通じ、洋服や家具をもらったりして経済的に助けてもらっている。

<公的支援>
 職業訓練校:簿記1級取得。母子世帯枠で訓練中は失業手当とほぼ同額の受講手当の支給を受けた。離婚後まもない時期での訓練所での訓練期間は、技術の取得が第一目的であったが、精神的な疲労を癒す場でもあり、同じ悩みを話し合える友人を得たり、将来を具体的に考えたりすることができたという意味で大変貴重であった。
 都営住宅に入居:公団団地の建て替え問題が起こり、立替後の団地に住むには経済的に厳しいということから、都営住宅へ入居できた。
 児童扶養手当:一部受給していた。まったく手をつけずに、子どもの学費として貯金した。

<公的支援への評価と希望>
 児童扶養手当+就労、または生活保護+非就労、という2つの選択肢があった。病気を理由に生活保護を受けられるのではと言われ、考えたこともあった。
 医療費の負担が重かったので、母子世帯への医療補助は非常に助かった。こうした母子世帯支援制度の対象は、児童扶養手当受給世帯に限られている。ゆえに収入が増加し手当が受けられなくなる場合に失うものが大きく、収入増加を喜べない制度となっているのは問題である。
 日曜の保育の手だてが難しく、日曜も働く販売職などには就けない。子どもを抱えて就ける職は非常に限られる。
 離婚しても、旧姓には戻さなかった。旧姓と夫の姓と、同じぐらいの年数使ってきたということもあるし、離婚したから親の名前の旧姓に戻るということも、家制度に他ならないと思った。女性は、夫か、親かに属さなければならないということには、どうしても納得がいかない。夫にも、親にも、誰にも属さない自分でいたいという思いが強くある。
(インタビュア:永瀬伸子、竹沢純子)


対象者 No.11(千葉県在住)

2001年1月現在 (2001年11月インタビュー)

年齢:40歳代前半

母子世帯になってからの期間:12年(離婚)

職業:宝飾販売会社の正社員。勤続6年

子の数と年齢:1人(19歳)

学歴:高卒

住居:民間賃貸(家賃8万)

勤労収入:350万

週平均労働時間:40時間

児童扶養手当:年齢要件で外れた

就業履歴の特徴:
 学校卒業後、大手百貨店で正社員になり、3年間販売職をしていた。職場結婚で、出産を機に退職した。9年後に離婚した。離婚後、すぐに貼り紙を見て洋品店の店員のパートタイマーで半年働く。働きたいと思っていた大手宝石店が近所に出店したのでパートで4年働く。その間再婚したが、3年で離婚。その後、現在の宝石販売店で正社員として採用された。現在、2度目の夫が作った借金を月々4万円返済している。月に8日休めるが、不定期である。土日は特に忙しく、朝9時から夜の9時まで働く。現在の会社は3年前に和議申請をし、経営がどうなるか不安である。会社が倒産した場合、正社員の仕事があるかどうか心配である。今まで職安は利用したことはないが、今度は行く事になるだろう。就職のことを考えるとパソコンを習いたい。


インタビュー記録

1.現在の仕事

 現在の会社に入って6年になる。仕事は宝石の店頭販売。今の勤務地はD市で通勤は1時間30分かかる。その前はもっと近くだった。D市の支店にきてから2年になる。転勤があるのは、景気が悪くなって、支店を閉じることがあったからだ。現在のD市の支店は5店舗めである。勤務状態は月8日の不定期な休みがとれる。有給休暇はあるが実際的には使えない状態。店は朝の10時から夜の9時まで。早番と遅番がある。しかし月に4日は朝10時から夜9時まで通しで働く。日曜日は朝9時から夜9時まで働く。大手スーパーの店舗に入っている店で毎月19日と20日は開店時間中働く。時間外は月10時間くらい。時間外を入れると、手取りで月20万くらい。ボーナスは年々減らされ、最近は1ヵ月分。


2.キャリアパターン

 高校を卒業後、大手デパートの販売員として正社員で3年働いた。そこで最初の夫と知り合い、出産を機に退職した。9年後離婚した。すぐに洋服屋の販売員としてパートで9時30分から6時まで働いた。手取り12万だった。そこは6ヵ月でやめた。次に大手宝石店の支店が近所で募集していたパートの募集をみつけて4年間働いた。時給850円で280時間くらい働いた。ここで社会保険に入った。ここで働いていたとき、再婚した。子どもは小学3年生だった。30歳半ばまで3年間、2人めの夫と結婚していた。その時は2度目の結婚だったので夫に対してずいぶんとがまんしたが、毎月私の給料日に私の稼いだお金を持っていってしまうので別れることにした。夫の親から嫌がらせの電話がきたり借金取りに追いたてられて、わずらわしくなって夫の作った借金を払う約束をしてしまった。とにかく別れたかった。今も月々4万、ボーナスで18万払っている。大手宝石店でパートをしていたころ、夫の借金を返すため、会社には1ヵ月間、有給休暇をもらって臨時のアルバイトで稼いだこともある。最初の夫から月2万養育費をもらっていた。


3.準備期間

 専業主婦の状態で母子家庭になったので、すぐに生活に困った。姉の家の近くに転居して、援助をうけながら、あわててパートを探した。母子家庭になるまでの準備期間はなかった。


4.生活全般

 現在、娘は販売の仕事をしている。家にお金を入れなくてもよいとは言っているが時々くれる。朝はいっしょに食事をする。夕飯は時間がずれるので別々に外でとる。月に1度はいっしょに出かけるようにしている。今年の夏ははじめて娘と母親をつれて北海道へ旅行した。娘のPTAには全部私の姉が行ってくれていたので、友達のお母さんたちは、姉のことを実の母親だと思っていたようだ。今ここにすんでいるのも姉の家が近いからだ。アパートに住まない理由は娘がピアノとマリンバを弾くからだ。今の住居は家賃が月8万だが姉の家に近く、マリンバも置けるので選んだ。2LDKである。将来は姉の家の敷地内に私の部屋を作ってもらおうかと思っている。姉の夫もいい人で助かっている。母親は1人で都営住宅に住んでいるので世話になるわけにはいかない。団地には住みたくないので、公営住宅も申し込みはしたことがない。


5.受けた支援および今後の希望

<公的でない支援>
 姉夫婦の支援(経済的支援、子の世話、精神的サポート)、最初の夫からの養育費。

<公的支援>
 一部支給だった。現在は年齢要件で外れている。医療費免除。学費免除であった。

<公的支援への評価と希望>
 児童扶養手当は最初の離婚後受給し、2度目の離婚後も受給したが、収入が200万を超えたので、一部支給だった。最初に母子家庭になったとき、市役所に児童扶養手当について問い合わせたが、そんなものはないと言われた。1年後、友人の助言で、市役所に出向いていったところ、手当がもらえるようになった。
 役所の人の対応が事務的で嫌だった。カウンセラーのような人がいて気楽に相談できるとよかった。市では民生委員に相談するようにアドバイスしてくれたが、近所に住む人にはかえって相談には行けなかった。何かしてもらいたいというより、話を聞いて欲しかった。
(インタビュァ:小川幸子、中野裕美子)

第2部 再集計



第1章 就業構造基本調査の再集計の概要

1.就業構造基本調査の再集計について
 今回の再集計は、母子世帯の母親の就業の実態、就業に関する意識を明らかにし、調査研究の基礎資料とすることを目的に申請を行い、抽出標本数で集計した。よって、詳細な集計ではないが、全国的な実態が把握できるよう努めた。
 また、母子世帯の特徴を把握するため、比較の対象世帯として父子世帯、同居母子・父子世帯、有配偶有子世帯を抽出し集計した。そのうち本章では、同居母子世帯の母親、有配偶有子世帯の母親を中心に、必要に応じて他の世帯も取り上げる。調査データも昭和62年と平成9年の複数年で再集計したが、本章では平成9年を中心に参照する。その他の結果は、巻末の集計表を参照していただきたい。
 これ以外にも母子世帯の状況を把握する参考として、「母子世帯の子ども」を抽出し若干の集計を行った。一部は本章の最後で報告し、申請した集計の全ては巻末の集計表に掲載した。

(1)各世帯の定義

<1> 母子世帯の母親、父子世帯の父親、母子世帯の子ども

 本集計の「母子世帯の母親」「父子世帯の父親」とは、世帯主が未婚または離死別で、世帯主と20歳未満未婚の子どものみで構成される世帯の女性ないし男性の世帯主である。就業構造基本調査の公表されている集計では(総務庁統計局編,1988; 同,1998)、「母子世帯」は世帯主と18歳未満未婚の子どものみと定義されており、本集計とは異なっている。
 また「母子世帯の子ども」とは上記の定義で抽出した「母子世帯の母親」と同居している15~19歳の未婚の子どもである。15歳以上という制約は、就業構造基本調査によるものである。

<2> 同居母子世帯の母親、同居父子世帯の父親

 本集計の「同居母子世帯の母親」「同居父子世帯の父親」とは、

 a.世帯主が「未婚または離死別」であって、「20歳未満未婚の子」とそれ以外の世帯員から構成されている世帯の女性ないし男性の世帯主。

 b.世帯主との続柄「子」が「離死別」であって、世帯主との続柄「孫」で「20歳未満未婚」の者がいる世帯、またはその孫とそれ以外の世帯員から構成される世帯のうち、世帯主との続柄「子の配偶者」がいない世帯主の女性ないし男性の子。

 bの定義で、世帯主との続柄「子」が離死別であれば、15歳未満の世帯員は全て世帯主の孫(世帯主との続柄「子」の子)と見なした。
 また、bで同一世帯内において、世帯主との続柄「子」で「離死別」である者が複数いる場合、「孫」がどの「子」の子であるか判定できないが、全ての「子」をこれに該当するものとし、末子年齢・子どもの数は世帯内の「孫」のものを代用した。
 よって「同居母子世帯」「同居父子世帯」は、上記のような制約や、上記の定義以外にも実際には存在していると考えられるので、他の類型より精度が低い。よって、結果は参考までに留めておくことにする。これらも、就業構造基本調査の公表されている集計にない。

<3> 有配偶有子世帯の母親、有配偶有子世帯の父親

 本集計の「有配偶有子世帯の母親」「有配偶有子世帯の父親」とは、世帯主が有配偶で、世帯主と配偶者と20歳未満未婚の子どものみで構成される世帯の世帯主または配偶者で、女性が母親、男性が父親である。これも就業構造基本調査の公表されている集計になく、母子世帯の比較対象として家族の構成条件を一定にするために設定した。

 よって、「母子世帯の母親」と「同居母子世帯の母親」の両者の違いは、「20歳未満未婚の子ども」以外の同居者の有無で、「母子世帯の母親」と「有配偶有子世帯の母親」の両者の違いは男性の配偶者の有無だけである。以下本文では、「母子世帯の母親」は「母子」、「同居母子世帯の母親」は「同居母子」、「有配偶有子世帯の母親」は「有配偶母親」と表記する。男性の世帯も同様の形式の表記とする。

(2)「子ども」と「孫」の定義
 a.15歳以上で、世帯主との続柄が「子」ないし「孫」である世帯員。(個票あり)

 b.15歳未満で、母親との年齢差が15~45歳内の世帯員、但し、父子・同居父子では父親との年齢差で判定している。(個票なし)


2.属性の集計―6類型の比較
 以下では、各世帯類型別に地域・年齢・学歴・子どもの数・末子年齢などの属性と、世帯年収について比較・検討する。
 地域の割合では(図表2-1-1)、有配偶有子世帯と比較すると、母子はほぼ同じ分布であるが、都市部の割合がやや高く、郡部はやや低い。それとは反対に、同居母子は、都市部が低く、郡部は高い。父子はほぼ同じで、同居父子は都市部が低く、郡部はかなり高い。

図表2-1-1:地域の割合(%)[平成9年]

 同居父子は、もともと親と同居していて、離死別後もそのまま同居している割合が高いだろうから、一般に都市(特に大都市)よりも、親との同居の割合が高い郡部が高くなるのだろう。同居母子は、郡部での離死別後、郡部の実家で同居する、都市部での離死別後、郡部の実家に帰って同居するなどが考えられるが、もし「同居有配偶有子世帯」と比べることができたなら、地域の分布に違いはないかもしれない。
 年齢の割合では(図表2-1-2)、有配偶母親と比較して、母子のほうが20・30代の割合が低く、40・50代が高い。同居母子は、20代は同じくらいだが、30代は低い。父子・同居父子も有配偶の父親と比べて、20・30代は割合が低く、40・50代が高い。

図表2-1-2:年齢の割合(%)[平成9年]

 学歴(卒業者のみ)は(図表2-1-3)、母子・同居母子とも学歴が低い傾向がはっきりとしている。「小・中学」で高く「大学・大学院」で低い。また、父子・同居父子はその傾向がより顕著である。

図表2-1-3:学歴(卒業者のみ)の割合(%)[平成9年]

 子どもの数は(図表2-1-4)、有配偶有子世帯「1人」34.9%と比べて、母子53.0%、同居母子64.4%と半数以上であるように、母子・同居母子は子どもの数が少ない傾向がある。これは父子・同居父子も同様である。

図表2-1-4:子どもの数の割合(%)[平成9年]

 末子年齢は(図表2-1-5)、有配偶有子世帯よりも母子・同居母子で、末子年齢が高い傾向にある。特に「0-1歳」「2-3歳」の乳幼児が母子・同居母子に割合が低い傾向が顕著である。父子・同居父子も同様である。

図表2-1-5:末子年齢の割合(%)[平成9年]

 一般に、子どもが幼いうちは離別を避けたり、延期したりすることが考えられので、母子の末子年齢のほうが高くなる傾向があるのだろうが、離死別時期が分からないため、はっきりとしたことはいえない。だが、母子の末子年齢が高いことは、特定の質問項目(例えば、就業の有無)に影響しているかもしれないので、念頭に置いておく必要がある。

 世帯年収は(図表2-1-6)、母子「100-199万円」33.3%を最高に、全体の86.5%は400万円未満である。一見しただけで、母子の世帯年収が低いことが明らかであるが、各年収カテゴリの中央値(図表2-1-6の一番左に記載)をその世帯の所得と見なして平均値を算出して比較すると、母子247.9万円、同居母子542.5万円、有配偶有子世帯669.2万円とその差がより分かりやすくなる。また、各類型の有業者の平均で見ても、母子261.0万円、同居母子557.2万円、有配偶母親725.3万円と差は歴然としている。

図表2-1-6:世帯年収の分布(%)[平成9年]

 次に、母子、同居母子、有配偶母親の3類型を主に、有業の割合から就業状況を見ていこう。

 「ふだん何か収入になる仕事をしているか」という質問に対し、「している」を有業、「していない」を無業として、有業の割合を見ると(図表2-1-7)、母子86.7%、同居母子86.0%と有配偶母親52.5%と比べてかなり割合が高い。父親はいずれも90%以上だが、有配偶父親>同居父子>父子の順にわずかながら割合は低くなっている。

図表2-1-7:有業・無業の割合(%)[平成9年]

 年齢別では(図表2-1-8上)、母子・同居母子ではどの年代でも有業の割合は高く70~80%であるが、有配偶母親は40代を頂点にそれまで徐々に高くなっている。この傾向は昭和62年と変わらない。
 学歴(卒業者)別では(図表2-1-8下)、母子は学歴が高くなると、有業の割合が緩やかに高くなる傾向が見られる。同居母子では、昭和62年は学歴間の差はあまりないが、平成9年は母子と同じ傾向となっている。有配偶母親では必ずしもこの傾向は見られず、「大学・大学院」ではやや高いものの、学歴が低いほど有業の割合は高い傾向がある。

図表2-1-8:年齢別・学歴別有業の割合(%)[平成9年&昭和62年]

 末子年齢別では(図表2-1-9左)、平成9年で母子は「0-1歳」58.3%であるが、それ以上になると急激に高くなり80%台でほぼ横ばいとなる。同居母子も(図表2-1-9右)、母子と同様の分布であるが、母子と比べて、平成9年で「0-1歳」63.3%とやや高く、「2-3歳」78.7%「4-5歳」81.6%とわずかに低い。有配偶母親では(図表2-1-9左)、末子年齢が高くなるにつれ、「12-14」歳まで直線的に高くなっている。この傾向は昭和62年と変わらない。

図表2-1-9:末子年齢別有業の割合(%)[平成9年&昭和62年]

 以上をまとめると、母子・同居母子では有業者の割合がかなり高い。学歴が高いほど有業者の割合がやや高く、年齢と末子年齢の影響は有配偶母親ほど大きくない。但し、母子・同居母子で末子年齢「0-1歳」の有業者の割合は、他の末子年齢カテゴリーと比べて極端に低い。それでも有配偶母親の約2倍である。女性にとって幼い年齢の末子がいることは就業に不利な条件となっているはずだが、母子ではそのような不利な条件の中でも働かざるを得ない状況にあることを端的に示しているといえる。
 ここまでは、母子・有配偶母親の全サンプルに占める有業の割合を検討した。有業者は母子や同居母子の大部分を占めるが、有配偶母親では約半数である。そこで、就業の実態を明らかにするために、平成9年の有業者だけを取り出して、どのような条件や状況で働いているかを検討する。具体的には、従業上の地位・雇用形態、産業、職業、従業者規模(民間・官公庁、民間企業の規模)、就業時間、個人所得などである。同じ女性の有業者でも母子・同居母子と有配偶母親で大きな違いがあるかどうか。

4.有業者の就業の状況
 有業者の従業上の地位(雇用者は雇用形態)で見ると(図表2-1-10)、母子は「正規」50.3%と有配偶母親32.5%よりも17.8ポイント高く、「パート」は有配偶のほうがやや高い。母子では配偶者がいないため家族従業者は例外的な存在である(グラフには表示されない)。同居母子は「正規」58.6%と3類型のうち最も高く、「パート」20.2%は最も低くなっている。

図表2-1-10:従業上の地位・雇用形態(%)[平成9年]

 正規雇用の割合を年齢別・学歴別に見ると(図表2-1-11)、年齢別では母子は30代を頂点に以下低くなっていくが、有配偶は20代を頂点に低くなる傾向がある。同居母子は、母子と同様の傾向があるが、どの年代もその水準は高い。

図表2-1-11:年齢別・学歴別正規雇用の割合(%)[平成9年]

 学歴では全体として学歴が上がると割合が高くなる傾向があるが、母子では「短大・高専」と「大学・大学院」との差はほとんどないのに対し(0.7ポイント差)、有配偶母親では13.1ポイント差、同居母子では10.1ポイント差がある。これらから、母子の「大学・大学院」はもっと正規の割合が高くてもよいはずだが、そうなっていない。
 末子年齢別に正規雇用の割合を見ると(図表2-1-12)、母子では末子年齢が上がると正規雇用の割合が高くなる傾向がある。有配偶母親では「0-1歳」56.1%を最大に「9-11歳」まで低くなっているが、小学校高学年~中学生になる「12-14歳」から再び30%台となる傾向である。同居母子は、母子と同様に、末子年齢が上がるにつれ緩やかに高くなる傾向であるが(15-17歳は例外)、同居母子はどの年代も50~65%と3つの中で最も高い水準となっている。

図表2-1-12:末子年齢別正規雇用の割合(%)[平成9年]

 有業者の産業を見ると(図表2-1-13)、母子で「サービス」33.9%、「卸・小売、飲食店」30.6%、「鉱・建設・製造」22.8%の順で、これは有配偶母親と同じ順で水準も大差はない。同居母子は、「農林漁」2.2%、「鉱・建設・製造」25.0%がやや高い。

図表2-1-13:産業の割合(%)[平成9年]

 職業では(図表2-1-14)、「事務」25.4%「技能、労務」25.0%「サービス」19.2%の順であるが、有配偶母親では「事務」「技能、労務」「専門・技術・管理」の順である。つまり、母子では「専門・技術・管理」「事務」が少なく、「販売」「サービス」の割合がやや高い。同居母子は、多い順は有配偶と同じだが、有配偶より「販売」「サービス」の割合がやや高く、この点では母子に近い分布である。

図表2-1-14:職業の割合(%)[平成9年]

 職業について、正規雇用者だけを取り出して見ると(図表2-1-15)、有配偶母親と比べて、母子で「専門・技術・管理」の割合が低く、「販売」「サービス」「技能工、労務」が高い。事務はほとんど同じ水準である。図表2-1-14の全体の分布と比較して、正規だけ取り出した場合、「専門・技術・管理」で母子と有配偶母親の差(17.2ポイント差)が大きく開く。同居母子は、「農林業」がやや高い(1.3%)ほかは、どちらかといえば母子に近い分布である。

図表2-1-15:正規雇用者の職業の割合(%)[平成9年]

 次に、民間企業と官公庁の割合を見ると(図表2-1-16)、全体では有配偶母親のほうが「官公庁」に高い。「正規」では母子7.1%、同居母子10.8%、有配偶24.4%とさらに差が開いている。
 図表2-1-15で正規雇用者の「専門・技術・管理」の割合から見て、正規で「官公庁」に勤めている人は、「専門・技術・管理」の職業についている割合が高いと予測されるので、その点では結果は一致している。

図表2-1-16:従業者規模-民間企業と官公庁の割合(%)[平成9年]

 民間企業の従業者規模では(図表2-1-17上)、全体ではどの類型でも「1-9人」の零細な企業が最も高い割合となっている。「1-9人」は有配偶母親が38.5%と3つのうちで最も高い。同居母子は、母子とほぼ同じ分布である。
 有配偶母親には、家族従業者が多く含まれているので、従業者規模が小さくなると予測される。そこで正規雇用者だけを取り出すと(図表2-1-17下)、「1-9人」の母子と有配偶母親の差は2.3ポイントとほとんど差がなくなる。全体的な分布にも大きな差はなくなるが、有配偶母親で「1000人以上」が17.7%とやや高い。

図表2-1-17:民間企業の従業者規模の割合(官公庁を除く)(%)[平成9年]

 有業者のうち年間の就業日数が「200日以上」の人と「200日未満」で、就業が「だいたい規則的な」人の週間就業時間を見ると(図表2-1-18)、母子では「35-42時間」41.1%と最も高くなっている。有配偶母親と比べて、母子、同居母子のほうが全体的に就業時間が長い傾向が見られる。同居母子が最も就業時間が長い傾向が見られるが、これは同居母子の正規雇用の割合が高いためと思われる。

図表2-1-18:週間就業時間の割合(%)[平成9年]

 正規雇用者とパート別に見ると(図表2-1-19)、正規では母子・同居母子のほうが若干長い傾向が見られるが、大きな差ではない。パートでは、母子・同居母子のほうが労働時間が長い傾向がはっきりしている。特に有配偶母親では約3割の人が「15時間未満」「15-21時間未満」である。図表2-1-18での同居母子の就業時間が長い傾向は、正規・パート別では見られない。

図表2-1-19:正規・パート別就業時間の割合(%)[平成9年]

 副業の有無について、「あり」と「時期によってあり」を合計したものを「副業あり(計)」として見ると(図表2-1-20折れ線グラフ)、母子7.0%、同居母子6.0%、有配偶母親4.5%と母子でやや高い。副業ありの人の従業上の地位を見ると(図表2-1-20棒グラフ)、母子では「雇用者」61.7%と有配偶母親の40.8%と比べて高い。その分、有配偶母親は「家族従業者」24.0%と高くなっている。同居母子は、「雇用者」は有配偶母親と同水準で、「自営業」が32.7%とかなり高くなっている。

図表2-1-20:副業の割合と副業の従業上の地位の割合(%)[平成9年]

 個人所得の分布を見ると(図表2-1-21)、全体として母子のほうが有配偶母親より所得が高い傾向が見られる。例えば「0-99万」では母子18.5%、有配偶母親47.5%と大きく差が開いている(29ポイント差)。だが、「500万円以上」は有配偶(7.8%)のほうがやや高い。3類型のうち同居母子で所得が最も高い傾向である。これだけでは、実態が把握できないので、正規だけ取り出してみると(図表2-1-22)、労働時間では同じくらいか、母子のほうでやや長かったにもかかわらず(図表2-1-19上参照)、有配偶母親のほうが所得が高い傾向がある。また図2-1-21の全体の結果とも傾向は反対である。同居母子は母子に近い分布となっている。

図表2-1-21:個人所得の割合(%)[平成9年]

図表2-1-22:正規雇用者の個人所得の分布(%)[平成9年]

 パートだけ取り出すと(図表2-1-23)、労働時間が長い分、母子・同居母子のほうが高い傾向がある。有配偶母親で「100万円未満」73.8%と割合のかなりを占めるのは、103万円の枠内で就労している人が多いためと思われる。先の就業時間の結果と合わせて考えれば、同じパートでも母子・同居母子と有配偶母親では、その意味は大きく異なっている。

図表2-1-23:パート雇用者の個人所得の分布(%)[平成9年]


 以下では、従業上の地位・雇用形態別に個人所得の平均値を求めて、正規・パート以外についても検討する。世帯年収と同様に、各所得カテゴリの中央値をその個人の所得と見なして平均値を算出した(図表2-1-24左)。
 母子有業者の平均217.3万円、有配偶母親の平均188.5万円となり、母子のほうが約23万円高い。同居母子は249.1万円で、母子よりも約32万円高い。従業上の地位・雇用形態別では「正規」は母子284.1万円、有配偶母親343.9万円と有配偶母親のほうが多いが、「パート」では母子121.2万円、有配偶母親88.0万円と逆転する。以下、母子のほうが有配偶母親より高くなっている。
 母子の個人所得の平均値が有配偶有子世帯の個人所得(母親と父親それぞれ)の何%を占めるかを、以下の式で計算して比率を求めた(図表2-1-24右)。

図表2-1-24:従業上の地位別個人所得の平均値(万円)と対比率(%)


   比率(%)=母子の個人所得÷有配偶有子世帯の個人所得(父親・母親)×100

 母子の平成9年有業者全体では、対母親の115.3%、対父親の36.9%となる。しかし、「正規」では対母親82.6%、対父親47.9%と、対母親で低くなっている。
 昭和62年の比率と比較すると、有業者で、対父親49.6%から36.9%と格差が広がっている。対母親でも、121.1%から115.3%とこちらも広がっている。

5.有業者の就業に関する意識

 就業希望意識(就業継続希望・転職希望)の割合を見ると(図表2-1-25上)、全体では母子で「継続」68.9%「転職」20.9%と有配偶母親よりも「継続」の割合がやや低く、その分「転職」の割合が高くなっている。正規では(図表2-1-25中)、全体と同じような傾向があるが、正規で母子の「転職」16.8%に対して有配偶母親9.1%と約1.8倍の差がある。パートでは(図表1-2-25下)、「転職」で正規と有配偶母親の差は約10ポイントである。正規よりパートはどの類型でも「転職」の希望が高い。

図表2-1-25:就業希望意識(就業継続希望・転職希望)の割合(%)[平成9年]

 転職希望者の転職希望理由のうち「その他」を除く上位5位の要因を見ると、「収入が少ない」と「時間的・肉体的に負担が大きい」の割合が高い。全体では(図表2-1-26上)、「収入が少ない」は母子・同居母子のほうが高く、「負担が大きい」は有配偶母親に高い傾向が見られる。正規では(図表2-1-26中)、全体と同様の傾向が見られるが、母子・同居母子で「負担が大きい」を理由に挙げる者が多くなる。また、有配偶母親で「家事の都合」9.5%と高くなっている。一方、パートでは(図表2-1-26下)、母子・同居母子で「収入が少ない」が約半数と、有配偶母親の28.3%に比べてかなり高い。またパートではどの類型でも「一時的についた仕事」が10%台となっている。

図表2-1-26:転職希望者の転職希望理由(主なもの)の割合(%)[平成9年]

 転職希望者に希望就業形態を尋ねると(図表2-1-27上)、母子「正規」56.4%に対し、有配偶母親では31.6%と割合が低い。有配偶母親ではその分「パート・アルバイト」が41.4%と最も高い割合となっている。同居母子は母子とほぼ同じ水準となっている。
 正規・パート別(図表2-1-27中・下)でも同様の傾向が見られるが、パートで母子は「正規」を希望する割合が63.6%、同居母子は69.7%と、有配偶母親と比べてかなり高い割合になっている。

図表2-1-27:転職希望者の希望就業形態(%)[平成9年]

 転職希望者に求職活動の状況について尋ねると(図表2-1-28)、「探している」人は母子53.9%、同居母子50.6%、有配偶母親40.1%と、母子・同居母子のほうが高い割合である。

図表2-1-28:転職希望者の求職活動の状況(%)[平成9年]


6.無業者の就業に関する意識
 次に、無業者について集計を見ていく。母子・同居母子では全体の13~14%、有配偶母親では約半数が無業者である。
 無業者の就業希望の割合は(図表2-1-29左)、母子81.5%、同居母子76.5%と有配偶母親の60.3%と比べてかなり高い。希望者のうち「探している」人は(図表2-1-29右)、母子60.1%、同居母子55.4%、有配偶母親29.0%と大きく差が開いている。母子・同居母子のほうが、就業希望が高く実際に行動を起こしている人も多い。

図表2-1-29:就業希望の割合(左)と求職活動の状況(右)(%)[平成9年]

 就業希望者の希望就業形態を見ると(図表2-1-30)、母子で「正規」33.8%、有配偶母親で9.2%と、母子のほうが正規を希望する割合がかなり高い。その分、有配偶母親は「パート」72.8%とかなり割合が高く、「内職」も10.8%と他と比べて高い。有配偶母親では負担の少ない働き方を希望する人が多いためと考えられる。また、同居母子は「正規」43.1%と最も高い割合である。

図表2-1-30:就業希望者の希望就業形態(%)[平成9年]

 学歴別に正規雇用の就業希望の割合を見ると(図表2-1-31)、母子・有配偶母親とも学歴が上がるにつれて正規雇用を希望する割合が高くなる。同居母子だけはそのような傾向になっていない。有配偶母親と比べて、どの学歴でも、母子・同居母子の正規雇用希望の割合の高さは際立っている。学歴以外(年齢や末子年齢)では、明確な傾向が見らない。

図表2-1-31:学歴別正規雇用の就業希望者の割合(%)[平成9年]

 就業希望者で求職活動をしていない人にその理由を尋ねたところ(図表2-1-32)、母子では「家事・育児・通学で忙しい」34.7%、「病気・高齢のため」30.2%の項目が他に比べて多くなっている。「病気・高齢のため」は、有配偶母親2.2%と28ポイント差が開いていて、母子に特徴的である。また、有配偶母親では「家事・育児・通学で忙しい」68.2%が突出して高い。

図表2-1-32:非求職の理由の割合(%)[平成9年]

 同居母子は、母子と有配偶母親の中間的な分布を示すものもあるが、「家族の介護・看護」は10.6%と3類型で最も高くなっている。
 また、「探したが見つからない」「希望の仕事がない」は、いったんは求職活動したが中断しているということだが、「探したが見つからない」は母子6.0%とやや高く(有配偶母親2.9%)、「希望の仕事がない」は有配偶母親6.5%とやや高い(母子4.7%)。「急いで仕事につく必要がない」は母子4.0%、有配偶母親12.4%と有配偶母親が高い。これらから有配偶母親より母子はより厳しい状況にあるように見える。
 さらに、母子は「家族の介護・看護」5.5%も有配偶母親1.8%よりも高い。これは子どもの病気の看護だろうと思われる。同居母子は先に述べた通り最も高く、親などの同居者の介護が含まれているのだろう。
 母子には「その他」12.1%、同居母子も10.5%と、かなり多いことも目につく。母子・同居母子は、様々な問題が存在しているのだろう。
 次に、「病気・高齢」「家事・育児・通学」の2理由をもう少し詳しく、年齢別「病気・高齢」の割合、末子年齢別「家事・育児・通学」を見てみる(図表2-1-33)。

図表2-1-33:非求職の理由(%)[平成9年]

 年齢別「病気・高齢」は(図表2-1-33左)、年齢が上がると割合が高くなるのは当然としても、母子と有配偶母親、同居母子とではあまりにも差が大きい。また、20~40代の場合は高齢というより病気や体力的な問題で、働きたくても求職活動を行う状況になく、より深刻な状態であると考えられる。
 末子年齢別「家事・育児・通学」は(図表2-1-33右、同居母子はグラフが見にくくなるため表示していない)、末子年齢が上がると割合が低くなる。母子と有配偶母親を比べると、「0-1歳」では両者とも約90%となるが、「2-3歳」で22.2ポイント差、「4-5」歳で32.8ポイント差と開いていき、小学校に入学する「6-8歳」では8ポイント差まで縮まる。

7.就業異動
 1年前との就業異動について見ると(図表2-1-34)、まず目につくのは有配偶母親の「継続非就業者」43.0%で、有配偶母親では結婚や育児退職後しばらくの間、あるいはずっと無業でいるということだろう。このままでは、就業異動の実態がよく分からないので、1年前有業者と1年前無業者に分けて検討する。

図表2-1-34:1年前との就業異動の状況(%)[平成9年]

 1年前有業者の就業異動を見ると(図表2-1-35左)、「転職者」は母子13.7%、有配偶母親6.0%と約2倍母子が高い。その分「離職者」は母子5.0%、有配偶母親9.0%と有配偶母親で高い。「継続就業者」の割合も有配偶母親がやや高い。同居母子は、「就業継続者」88.4%と最も高く、「離職者」3.9%と最も低い。
 1年前無業者の就業異動は(図表2-1-35右)、「新規就業者」は母子50.6%、有配偶母親13.3%と圧倒的に母子のほうが高く、その分「継続非就業者」は有配偶母親が高い。同居母子は、有配偶母親と同様の傾向が見られる。

図表2-1-35:1年前有業者の就業異動(左)、1年前無業者の就業異動(右)(%)[平成9年]

 1年前有業者のうち「転職者」の離職理由を見ると(図表2-1-36)、「その他」を除き、3つとも1位「労働条件が悪い」、2位「収入が少ない」と順位は同じである。だが、有配偶母親と比べて「収入が少ない」は母子のほうが4.3ポイント高い。3位の理由は、母子が「人員整理・倒産」、同居母子・有配偶母親が「自分に向かない」で若干異なっている。

図表2-1-36:転職者の離職理由(%)[平成9年]

 「その他」はそれぞれ20%を超えていて高くなっているが、「その他」は男性でも多く、女性に特有の傾向ではない。

8.母子世帯の子どもの就業状況
 母子世帯の子ども(1.(1)<1>の定義参照)の就業状況について、ごく簡単に見ていく。
 母子世帯の子どものうち、就業構造基本調査で調査対象となる15-19歳の子どもの在学・卒業者の割合を見ると(図表2-1-37上)、在学者は女子約8割、男子約7割である。公表済みの集計(総務庁統計局編,1998: p.48)から「一般世帯(住居と生計をともにしている二人以上の集まり)」の15-19歳の総数をもとに同様に集計を行い比較してみると(図2-1-37下)、男女とも一般世帯よりも在学者の割合は低い。その分母子では、卒業者、特に中卒の割合が高く、男子では12.3%とかなり高い。なお、「一般世帯」にはその定義から母子世帯も含んでいることになる。

図表2-1-37:男女別在学・卒業者の割合(%)[平成9年]

 男女別に15-19歳の有業の割合を見ると(図表2-1-38左)、女子19.7%、男子23.5%と男子のほうがやや高い。同じように、公表済みの集計(総務庁統計局編,1998: p.36)から「一般世帯」の15-19歳の有業者数をもとに有業の割合を算出して比較してみると(図表2-1-38右)、「一般世帯」で女子14.7%、男子15.4%と「母子世帯」の子どものほうが有業の割合が高い。また、母子世帯と一般世帯の差は、男子では8.1ポイントとやや開きがある。

図表2-1-38:男女別15-19歳の有業の割合(%)[平成9年]

 母子世帯の子どもで有業者の主な雇用形態を見ると(図表2-1-39)、女子では「アルバイト」53.5%、「正規」35.4%、男子では「正規」50.7%、「アルバイト」42.9%となり、男子のほうが「正規」の割合は高い。これは女子に在学者が多いので、男子より「正規」が少なく「アルバイト」が多くなるのではないかと考えられるが、卒業者(中卒・高卒)だけで見ても差は残るので、労働市場における格差もあるといえる。

図表2-1-39:男女別雇用形態(主なもの)の割合(%)[平成9年]

 男女別で主な職業の割合を見ると(図表2-1-40)、男女で職業の構造は大きく異なっている。女子では「事務」「サービス」「販売」の順でそれぞれ20%台である。男子は「技能、労務」66.3%と圧倒的に高い。女子は、母子世帯の母親と比べて(図表2-1-14参照)、「専門・技術」「技能、労務」の割合が低く、「事務」「販売」「サービス」の割合が高い。年代が近い20代の母子の分布に似ている。(母子20代「事務」25.4%、「販売」21.1%、「サービス」22.7%、「技能、労務」23.0%)

図表2-1-40:男女別職業(主なもの)の割合(%)[平成9年]

 男女別で個人所得の平均値を見ると(図表2-1-41左)、女子106.4万円、男子139.4万円となっている。さらに主な雇用形態別では(図表2-1-41右)、正規で女子169.8万円、男子188.8万円、アルバイトでも女子64.6万円、男子84.3万円である。母子世帯の世帯年収や母親の個人所得の平均値から見て、子どもの就業は家計に対して重要な貢献をしていると思われる。但し、これはあくまで平均値からの単純な推測であって、子どもの就業の影響は個々の世帯の状況によって大きく異なるだろう。

図表2-1-41:男女別・雇用形態別個人所得の平均値(%)[平成9年]


引用文献
総務庁統計局編,1988『昭和62年就業構造基本調査報告 全国編』総務庁統計局.
総務庁統計局編,1998『平成9年就業構造基本調査報告 全国編』総務庁統計局.



第2章 全国母子世帯等調査の再集計の概要

1 はじめに
 「全国母子世帯等調査」(厚生労働省)を再集計した。この調査は、母子世帯等の生活実態を把握し、福祉対策の充実を図るため、5年に1度実施している。直近の平成10年度調査と5年度調査を再集計した。
 ところで、今回実施した「母子世帯の母への就業支援に関する調査」(第1部第1章)は母子のみで暮らしている世帯を対象に実施している。その結果が母子世帯の状況をどの程度カバーできているかを読みとるためにも、ここでは「母子のみ世帯」(以下「独立世帯」という)と親等と同居している「同居世帯」の世帯比較を中心に10年度調査の再集計結果をまとめた。
 なお、父子世帯、寡婦世帯も含めた再集計結果を、巻末の資料編に記載している。

2 平成10年度全国母子世帯等調査の概要
  調査の目的 全国の母子世帯、父子世帯、父母のいない児童のいる世帯及び寡婦の生活の実態を把握し、福祉対策の充実を図るための基礎資料を目的としている。

  調査の時期 平成10年11月1日現在

  調査の方法 調査員が対象世帯を訪問して調査票を手渡し、回収は郵送により行っている。
        調査対象は、平成7年国勢調査により設定された調査地区から層化無作為抽出された1,800地区に居住する母子世帯等該当世帯の全数を対象としている。
(母子世帯 1,969世帯、父子世帯 337世帯、寡婦 2,328人等)

3 再集計結果の概要
 「全国母子世帯等調査」(厚生労働省)によると、平成10年11月1日現在の母子世帯は95万4千9百世帯で、平成5年に比べ2割増加、父子世帯は16万3千4百世帯で、4%増加していることが報告されている。
 母子世帯の世帯類型をみると、独立世帯が7割、同居世帯が3割である。

(1) 世帯の状況

本人の年齢
 独立世帯、同居世帯ともに40歳代が4割強を占めて最も多く、次いで30歳代が4割と続いている。違いがみられるのは、同居世帯では20歳代までの若い層の比率がやや高い点である。

図表2-2-1 年齢構成


世帯人員と世帯構成員
 独立世帯では「2人」(46.3%)と「3人」(41.0%)に二分されている。同居世帯では「5人以上」(42.5%)が最も多く「4人」、「3人」と続いている。

図表2-2-2 世帯人員

 同居の子どもは、独立世帯も同居世帯もともに「小学生」が最も多いが、独立世帯は「高校生」、「中学生」と続くのに対して、同居世帯は「高校生」、「小学校入学前」と続き、子どもがやや小さい。末子年齢(3歳刻み)でみると、独立世帯、同居世帯ともに「15-17歳」が最も多く、次いで「12-14歳」となっているが、同居世帯で小学校入学前の幼児の割合が高い。子どもの数は独立世帯でやや多い。
 なお、同居世帯の同居相手は「父母」(83.0%)の他「兄弟姉妹」(19.7%)「祖父母」(7.3%)と続いている。

図表2-2-3 同居の子ども
図表2-2-4 末子年齢


(2) 母子世帯になった年齢と理由
 母子世帯になった年齢は独立世帯、同居世帯ともに30歳代が最も多く、世帯による差がみられるのは、同居世帯で20歳代前半までの比率が高くなっていることである。

図表2-2-5 母子世帯になった年齢

 母子世帯になった理由をみると、独立世帯、同居世帯ともに離婚が7割を占めている。同居世帯で未婚により母子世帯になった割合がやや高い。

図表2-2-6 母子世帯になった理由


(3) 就業状況

母子世帯になる前の就業状況
 母子世帯になる前の就業状況をみると、独立世帯、同居世帯ともに、「不就業」は35.7%である。就業者の従業上の地位をみると、独立世帯では「常用雇用者」(25.2%)よりも「臨時・パート」(26.9%)がやや多く、同居世帯では「常用雇用者」(28.4%)が「臨時・パート」(19.7%)よりも多い。

図表2-2-7 母子世帯になる前の就業状況


現在の就業状況
 現在「不就業」は独立世帯で14.4%、同居世帯で11.4%と、独立世帯で働いていない者がやや多い。就業者の従業上の地位をみると、「常用雇用者」として働いている割合が全体的に高くなっている。
 独立世帯では、「常用雇用者」(43.1%)が「臨時・パート」(33.6%)を9.5ポイント上回っている。同居世帯では「常用雇用者」(47.1%)と「臨時・パート」(29.9%)の差は17.2ポイントと大きく、世帯間で働き方に違いがみられる。

図表2-2-8 現在の就業状況


仕事の内容
 職種をみると、最も多いのが「事務」で、次いで「サービス」、「専門・技術」、「技能・生産工」と続き、世帯間で大差はない。あえて違いをあげれば同居世帯で「専門・技術」がやや多く、独立世帯で、「サービス」、「販売」が僅かに多い。

図表2-2-9 現在の仕事の内容


勤務先事業所規模
 独立世帯、同居世帯とも「6~29人」が最も多いが、独立世帯では「30~99人」、同居世帯では「1~5人」と続き、同居世帯で規模がやや小さい。但し、同居世帯では「事業主」や家族従業者が含まれる「その他」の割合がやや多くなっているので、その影響は否定できない。雇用労働者の事業所規模に差があるとはいえないであろう。

図表2-2-10 事業所規模


帰宅時間
 帰宅時間は「午後6時以前」に4割、「午後6時~8時」に3割とほとんど同じ状況であるが、独立世帯で「不定」がやや多く、同居世帯で「午後10時以降」が僅かに多い。

図表2-2-11 帰宅時間


転職希望とその理由
 転職希望は独立世帯29.4%、同居世帯26.6%と独立世帯でやや多い。その理由をみると、「収入がよくない」が6割と最も多く、世帯間で差がついているのは「労働時間が合わない」(8.3%、4.3%)で、独立世帯でやや高くなっている。

図表2-2-12 転職希望
図表2-2-13 転職希望理由


(4) 無業者の就業希望
 無業者の就業希望は同居世帯で80.0%と独立世帯(72.4%)よりも高くなっている。
 なお、就職したいのに就職していない(出来ない)理由は、独立世帯で「求職中」(42.9%)、「病気・病弱」(21.9%)、「子どもの世話」(14.3%)と続いており、同居世帯では「求職中」(33.3%)が最も多いがそのレベルは独立世帯に比べると低い。次いで「その他」(27.8%)があげられている。

図表2-2-14 無業者の就業希望
図表2-2-15 就業していない理由


(5) 年間収入等

年間収入(社会保障給付を含む全ての収入)
 「独立世帯」の年間収入の平均(各カテゴリーの中央値を年収と見なして算出)は227.7万円、「同居世帯」の平均は239.6万円で、同居世帯がやや多い。調査の設問は世帯収入になっているが、同居世帯の場合には本人が受給する給付金等を含めた本人の年間収入と考えてよいのではないかと考えられる。

図表2-2-16 年間収入


父親からの養育費
 父親からの養育費の取り決めをしているのは3割で、6割が取り決めをしておらず、世帯類型による差は出ていない。

図表2-2-17 父親からの養育費

 養育費の取り決めをしていない理由については「相手に支払う意思や能力がないと思ったから」が6割弱で、次いで「交渉がまとまらなかった」(独立世帯11.2%、同居世帯8.5%)となっている。
 養育費の額については、独立世帯の平均が5.41万円、同居世帯の平均が4.46万円である。

図表2-2-18 養育費の取り決めをしていない理由


(6) 子どもを巡る状況

子どもの保育状況
 小学校入学前の子どもの保育状況は「保育所」利用が6割前後で、次いで「本人」が2割強と世帯類型による差はほとんどなく、ただ同居世帯で「その他家族」による保育が2割に対し、母子のみで構成されている独立世帯ではそれが6.3%と、至極当然の差が出ている。

図表2-2-19 幼児の保育状況

 保育の状況は末子年齢、本人の従業上の地位によって差が出ており、末子年齢0-2歳で「保育所」と母親本人がそれぞれ4割、3-5歳で「保育所」が6割強と大半を占め、本人は2割に減り、代わりに「幼稚園」が1割となっている。6-8歳になると「保育所」6割、「幼稚園」は2割強に増え、本人は1割となっている。
 従業上の地位でみると、雇用されて働いている常用雇用者と臨時・パートは7割が「保育所」を利用しており、事業主と内職や家族従業者の含まれる「その他」では母親本人が保育しているが4割を超え、次いで「幼稚園」が3割と多い。

図表2-2-20 従業上の地位別幼児の保育状況


子どもの最終進学目標
 子どもの進学をどこまで考えているのかを、中学生(末子年齢14歳)までの子を持っている者でみると、同居世帯では「大学」(36.3%)、「高校」(35.9%)とわずかの差ではあるが大学がトップになっているのに対し、独立世帯では「高校」(36.1%)、「大学」(33.4%)の順になっており、同居世帯では出てこない「中学校」(0.8%)があげられている。
 子どもの教育を義務教育で終わりと考えている者は数は少ないものの母子世帯だけでなく父子世帯でも平成5年の独立世帯にみられる。

図表2-2-21 子どもの進学目標


(7) 現在困っていること

子どもについての悩み
 子どもについての悩みは、「特にない」が同居世帯で31.9%、独立世帯で29.0%である。悩みとしてあげられているのは「教育・進学」(独立世帯30.1%、同居世帯25.6%)、しつけ(同12.8%、13.2%)、就職(同9.5%、10.6%)と続いている。
 悩みを末子年齢でみると、子どもが小さい時は「しつけ」が、小学校に入ると「教育・進学」があげられ、12-14歳では「教育・進学」の悩みが49.8%と約半数に達している。

図表2-2-22 子どもについての悩み


困っていること
 現在困っていることは、「家計」(独立29.0%、同居28.4%)、「仕事」(同16.5%、18.2%)、「住居」(同14.1%、12.4%)と続いており、困っていることの特にない者は、独立世帯20.7%、同居世帯で24.6%となっている。
 末子年齢でみると、乳幼児期は家計と仕事がともに3割弱と高くなっている。

図表2-2-23 困っていること


相談相手
 相談相手がいる割合は独立世帯で77.1%、同居世帯で81.5%と、同居世帯でやや多い。相談相手がいる割合は年齢とともに概ね減少しており、必要なしが増加している。
 相談相手は「親族」が6割強と大半を占め、「知人・隣人」が3割で、同居世帯で親族の割合がやや高い。

図表2-2-24 相談相手


(8) まとめ
 以上で明らかになったように、世帯類型による差はあまり大きなものではない。

<1> 同居世帯で、若年母子の比率がやや高いこと、未婚による母子世帯の比率がやや高いこと

<2> 同居世帯で、母子世帯になる前も現在も、常用雇用者として就業する者が多いこと

<3> 同居世帯で、無業者の就業希望が高いこと、これは、就業していない理由に求職中、病気・病弱が独立世帯で多くあげられ、一方、同居世帯ではその絶対値は小さいものの職業訓練中が多い状況があること

以上を違いとしてあげることが出来よう。
 また、既に指摘したように子どもの教育について、独立世帯の場合、より社会的な援助を必要とする層が見受けられることを付け加えたい。
 以上を参考に第1部第1章のアンケート調査を読みとっていただければ幸いである。

第3部 分析編

第1章 母子世帯の就業実態:調査結果から得られる知見

 本稿では、日本労働研究機構が2001年1月におこなった「母子世帯の母への就業支援に関する調査」(以下、JIL調査とする)と、総務省「就業構造基本調査(1987年、1997年)」、厚生労働省「全国母子世帯調査(1993年、1998年)」の再集計結果をもとに、母子世帯の母の就業実態を分析する。



1.母子世帯の定義をめぐる問題

(1) 母子世帯の定義と世帯数
 既存の官庁統計において、母子世帯の数が集計されているのは、総務省「国勢調査」、厚生労働省「国民生活基礎調査」、厚生労働省雇用均等・児童家庭局「全国母子世帯等調査」である。しかし図表3-1-1でみるように、「国勢調査」や「国民生活基礎調査」では母子世帯数は1990年代で約50-60万世帯であるのに対して、全国母子世帯等調査では約80-100万世帯と推計されており、その乖離をどのように理解すべきかは謎であった。調査方法や推計方法の違いもあるにせよ、その定義の違い、とくに「母と子以外の世帯員のいる世帯を、母子世帯としてカウントするかどうか」が大きいと推測できたが、その真偽も不明であった。

図表3-1-1 母子世帯・父子世帯の定義と世帯数

 日本では「実家に戻る」という表現があるように、死別・離別して母子世帯になった場合、親きょうだいなど親族の家に母子で身を寄せたり、あるいは親を呼び寄せて同居することがある。そのようないわゆる「同居」母子世帯は、国勢調査や国民生活基礎調査では「母子世帯」として認められておらず、唯一、全国母子世帯等調査だけが、母子世帯としてカウントしている。だが全国母子世帯等調査では、そのような「同居」の母子世帯と「母子のみ」母子世帯は区別されずに、総計として把握されているため、世帯構成の違いによる生活実態の違いや、そもそも母子世帯のどれだけが「同居」しているのかについては、これまで明らかではなかった。
 当研究会の調査研究の特徴は、配偶者のいない女性とその子どものみで構成している「母子のみ」母子世帯(以下、「独立」母子世帯と表現する)と、配偶者のいない女性とその子ども以外に、子の祖父母など他の世帯員を含む母子世帯(以下、「同居」母子世帯とする)とを、区分しつつ分析したことである。このことは少なくとも以下の3つの理由において重要である。
 第1に、「同居」母子世帯は、生活実態や当事者の意識において明らかに母子世帯であり、児童扶養手当をはじめ、国や地方自治体の母子福祉施策の対象でもある。各種調査や統計において、彼らの生活実態や就労実態を把握することができない現状は、実態にそくした施策の遂行をさまたげる。
 第2に、日本は他の先進諸国と比べて母子世帯は少ないといわれているが、諸外国との比較で利用されるデータは、「独立」母子世帯のみである。だが、もし母子世帯のいわゆる「同居率」が諸外国と比べて高ければ、母子世帯の数が少ないといった数的動向や社会認識に留保をつける必要がある。
 第3に、どういった母子世帯が「同居」しあるいは「独立」するのかといった、母子世帯の形成にかかわる背景の重要性である。子育て支援や住宅支援の不十分さのために、すなわち母子が「独立」して暮らすことができないために、やむをえず「同居」しているのであれば、それは目にはみえない母子世帯のニーズが存在していることを意味する。しかしそのような「同居による(とりあえずの)解決」は今後も期待されうるのか、少子高齢化時代の母子福祉施策を考えるにあたっては新たに検討を要すべき課題である。

(2) 同居率
 図表3-1-2は、「全国母子世帯等調査」と「就業構造基本調査」の再集計で明らかとなった母子世帯・父子世帯の同居率である。「同居率」とは、母子・父子以外の世帯員のいる母子・父子世帯数が、母子・父子世帯全体のサンプル数に占める割合である(注1)。

図表3-1-2 母子世帯・父子世帯の同居率


 母子世帯の同居率をみる。全国母子世帯等調査では、1993年23.7%、1998年26.8%であり、就業構造基本調査では、1987年24.8%、1997年27.5%である。両調査ともに同程度の数字であることから、「日本の母子世帯の約4分の1は、母子以外の世帯員のいる「同居」世帯である」と理解してよいだろう。また両調査ともに 5年前、10年前と比べて、同居率は上昇している。
 父子世帯の同居率はさらに高い。全国母子世帯等調査では、1993年43.2%、1998年46.1%であり、就業構造基本調査では、1987年54.4%、1987年56.5%である。日本の父子世帯の約半数は「同居」である。また母子世帯と同じく、両調査ともに5年前、10年前と比べて同居率は上昇している。父子世帯は母子世帯以上に「父子」が独立して暮らしていけない状況を示唆するものと思われるが、「同居」世帯として隠れているために、父子世帯の生活実態やニーズが把握されにくく、施策の対象として認識されにくい現状につながっている。
 母子世帯で約4分の1、父子世帯で約2分の1という同居率の大きさをふまえると、国勢調査や国民生活基礎調査で示される「母子世帯数」や「父子世帯数」の増減は、同居率の増減に直接左右されることがわかる。統計上あらわれる「独立」母子世帯が少ないことは、生活実態としての母子世帯が少ないことを意味しない。
 続けて、同居率を年齢別にみる。母親・父親の年齢が若いほど(図表3-1-2)、あるいは末子の年齢が低いほど(資料編集計表参照)、同居率が高いといった傾向が、若干ではあるが確認できる。同居の誘因のひとつが子どもの保育であることが推測される。
 しかしさらに明瞭な特徴としてあらわれるのは、地域別でみた同居率(図表3-1-3)である。「13大都市」「その他の市」「町村」と、都会から郡部にいくにつれて、母子世帯の同居率は、20.4%、25.5%、39.4%と上昇し、父子世帯のそれは、33.7%、51.7%、72.6%と上昇する。残念ながら、ふたり親世帯(有子有配偶世帯)の親族等同居率が不明なため、一般的な地域別の同居率と比べても母子世帯・父子世帯の同居率がより高いのか、検証することはできない。しかし地域差が大きいことだけは確認できる(注2)。

図表3-1-3 母子世帯・父子世帯の地域別同居率と地域分布


(3) 地域分布
 全国的にみた母子世帯の分布状況も確認しておこう。図表3-1-3より、日本の母子世帯の18.0%は「13大都市」(12政令指定都市および東京都区部)に存在し、60.1%が「その他の市」に、21.2%が「町村」に存在している。この地域分布は、ふたり親世帯(有子有配偶世帯)の地域分布とほぼ同様である(ただし同居を除いた核家族世帯のみ)。父子世帯の地域分布は、「13大都市」12.3%、「その他の市」54.1%、「町村」33.6%であり、母子世帯やふたり親世帯と比べて、都会(13大都市、その他の市)よりも郡部(町村)により多く分布している。ただし父子世帯の場合も「独立」世帯に限れば、「13大都市」18.8%、「その他の市」60.0%、「町村」21.1%となり、母子世帯やふたり親世帯の地域分布と同様となる。

 これらの前提をふまえて、以下では母子世帯の母の就業実態を分析する。JIL調査では、調査対象から「同居」母子世帯を除いているため、「独立」母子世帯のみの考察となることに留意されたい。



2.母子世帯の就業実態

(1) 母子世帯の母の就業率の高さ、就業形態の特徴
 本報告書のあらゆるところで指摘されているとおり、母子世帯の母の就業率は高い。一般に女性の就業率は、「夫婦と子の世帯」よりも「夫婦と子と親の世帯」のほうが高く、親等との同居は妻(=母)の就業率を高めるとみられているが、母子世帯の場合は「同居」の有無に関係なく、むしろ「独立」母子世帯のほうが、わずかではあるが就業率は高い(図表3-1-4)。就業の必要性がより勝っているからであると思われる。

図表3-1-4 母子世帯の母の就業率、就業者の就業形態(%)

 末子の年齢別(資料編集計表参照)でみても、0-1歳(就業構造基本調査)、0-2歳(全国母子世帯等調査)の時期でこそ約60-70%であるが、2-3歳、4-5歳になるにつれて83.5%、85.2%へ(就業構造基本調査、1997年)、3-5歳、6-8歳になるにつれて74.7%、89.3%へ(全国母子世帯等調査、1998年)、急速に上昇し、その後は80%台半ばで安定的に推移している。0-1歳(0-2歳)の階層に出産直後の不就業があることを考慮すると、母子世帯の母のほとんどは、子どもがどんなに小さくても就業していると考えられる。
 どの年齢階級にも存在する10%強の不就業世帯は、遺族年金や他の資産があり就業する必要性がない世帯か、身体的障害等により就業することができない世帯である。稼得を必要とする母子世帯の母は、一時的な失業を除き、そのほとんどすべてが働いていると考えられるため、就業率を上げることは就業支援の課題ではない。
 就業者の就業形態(就業者の従業上の地位・雇用者の雇用形態)はどうか。
 これまで、母子世帯の母の就業形態については、全国母子世帯等調査によって、「自営業主」「常用雇用者」「臨時・パート」「その他」の4分類で把握されていた(注3)。1998年では就業者のうち5割以上が「常用雇用者」であるが、常用雇用者とは雇用期間の定めがなく雇われている者という意味であり、いわゆる正規雇用者であるとは限らない。
 2001年のJIL調査では、雇用者の雇用形態の選択肢として「正社員・正規職員」「パート」「アルバイト」「嘱託・準社員・臨時職員」をもうけたところ、「正社員・正規職員」は42.5%と全国母子世帯等調査の「常用雇用者」より10%ポイントほど低く、代わりに「嘱託・準社員・臨時職員」の割合が10.4%と高くあらわれた(図表3-1-4)。嘱託や準社員等は常雇いであることも多いことから、全国母子世帯等調査の「常用雇用者」すべてが必ずしも正社員・正規職員ではないことが推認される。
 ただし、就業構造基本調査の再集計で母子世帯を抽出したところ、やはり「正規の職員・従業員」が「独立」世帯で50.3%、「同居」世帯で58.6%と高くあらわれ、全国母子世帯等調査の「常用雇用者」と同程度の数字であった。JIL調査と他の調査との違いが、調査票の違いによるものなのか、この3-4年の雇用情勢を反映した調査年度の違いなのかは不明である。
 なお、「同居」世帯と「独立」を比べると、「同居」の母子世帯は、常用雇用者や正規雇用者である割合が高い。しかし同居世帯は正規雇用に結びつきやすいといえるかどうかについては、地域分析をしてみなければわからない。女性労働者は一般的に、大都市より地方都市のほうが正規雇用である割合が高く、また大都市より地方都市のほうが同居世帯が多いからである(注4)。
 母子世帯の母の就業形態の特徴は、他の女性労働者と比較することで、より明らかとなる。
 就業構造基本調査より、ふたり親世帯の母(有配偶母)の雇用形態は、「正規の職員・従業員」32.5%、「パート」40.2%である(図表3-1-4)。子育てと両立しながら働くという点では母子世帯の母と同じであるが、母子世帯の母の正規率(「独立」世帯50.3%、「同居」世帯58.6%)は、ふたり親世帯の母のそれより20%ポイントも高い。子どもの有無にかかわらず、同年代(20-59歳)の女性や、女性全体と比較してみても、母子世帯の母は就業率が高いだけでなく、正規率も高いということが確認できる。

(2) 勤労収入
 母子世帯の母は、他の母親と比べても、同年代の女性、女性全体と比べても、就業率が高く、正規として働いている割合も高い。では勤労収入はどうか。
 図表3-1-5は、就業形態別にみた仕事からの年収を表したものである(税込み。副業収入は含まない)。JIL調査(A)と就業構造基本調査(B)を比較すると、概してJIL調査のほうが年収が高く、とくに正規(342.7万円)は、就業構造基本調査1997年の正規(「独立」284.1万円、「同居」298.2万円)より、40-60万円ほど高い。パートの年収も、JIL調査(131.8万円)のほうが、就業構造基本調査のそれより約10万円高い(「独立」121.2万円、「同居」121.9万円)。2001年と1997年という調査年度の違いを考慮しても、JIL調査は比較的高所得層に偏ったサンプルであったと考えられる。

図表3-1-5 母子世帯の母(就業者)の勤労年収

 もっとも、就業構造基本調査1997年における母子世帯の年収(「独立」217.3万円、「同居」249.1万円)も、ふたり親世帯の母の年収(188.5万円)と比べればより高く、正規以外は約120%から200%以上の収入を得ている(C:格差)。正規雇用者のみ、ふたり親世帯の母の年収を下回っており、約82-87%の水準である。母子世帯の母は就業率が高く、正規の割合も高いものの、正規の年収が低いのである。なぜ低いのか?

 第2部第1章「就業構造基本調査の再集計の概要」でもふれられているとおり、母子世帯の「正規」とふたり親世帯の母の「正規」を比較した場合、母子世帯の「正規」は、相対的に、<1>年齢構成が高く、<2>高学歴者の割合が低く、<3>職業別では「専門・技術・管理」の割合が低く、<4>勤め先企業全体の従業者規模では「官公庁」の割合が低い。逆にいえば、「正規」として就業しているふたり親世帯の母は、比較的若年かつ高学歴で、専門・技術・管理の仕事をしながら、官公庁で働いている割合が相対的に高いのである。そのことが「正規」の年収の高さにつながっている。
 母子世帯の「正規」をめぐる検討はさらに次節でおこなうとして、1987年と1997年の10年の変化を就業構造基本調査よりみておきたい。
 図表3-1-5の「D:伸び率」とは、1987年の年収と1997年の年収の差額を、1987年の年収で割った百分率である。1987年の母子世帯の年収は、就業者全体でみて、「独立」世帯166.0万円、「同居」世帯192.2万円であり、1997年の年収(「独立」217.3万円、「同居」249.1万円)は、それぞれ30.9%増、29.6%増であった。しかし、ふたり親世帯の母のほうが年収の伸び率は高く、就業者全体でみて37.5%増(1987年137.1万円)である。とくに「正規」の伸び率が45.5%と高く、母子世帯の「正規」の伸び率(「独立」38.7%、「同居」35.7%)を、10%ポイント近く上回っている。
 1987年から1997年までの10年間で、女性の雇用環境は改善されてきたとみられるが、就業形態別でみた年収の伸び率でみると、「正規」の伸び率がもっとも高いことがわかる。その他の就業形態でもプラスの値を示しているが、「正規」の伸び率ほどには大きくない。「パート」の年収の伸び率は、母子世帯で約26-29%、ふたり親世帯の母では18.8%にすぎない。労働条件や雇用環境の改善が「正規」を中心として進むかぎり、「正規」と「パート」の格差は収入面だけみても拡大していくと思われる。

(3) 労働時間
 母子世帯の就業支援を考えるうえで最も重要なのは労働時間の問題である。ひとりで仕事と子育てを両立しなければならない母子世帯の母親は、ふたり親世帯の母親以上に、生活のために勤労収入を得る必要がある一方で、そのために長時間労働をおこなえば、子どもと接する時間が極端に少なくなる。保育所への送迎、子どもが病気のときの看護、思春期の悩みや反抗期の対処、学校・友人関係や勉学の相談など、ふたり親世帯では父親と母親が分担してできる子育てが、ひとり親世帯ではひとりでおこなわなければならない。親きょうだいや近所の人に支えられながら乗り越えるにせよ、母親が「仕事ばかりしている」現状では、周囲からの理解も得られず、子どもとの関係も悪化しかねない。にもかかわらず「仕事をしなければ暮らしていけない」のも事実であり、適度な労働時間である程度の勤労収入を得られることが、母子世帯の就業支援にとって唯一ともいうべき課題である。
 図表3-1-6は、1987年と1997年の就業構造基本調査から「正規」と「パート」をとりだし、勤労収入の年収額と週あたり就業時間の構成割合を対比したものである。まず「正規」の場合、1987年と1997年を比較すれば、いずれのカテゴリーにおいても「43時間以上」の割合が大きく減少し、「35~42時間」へと就業時間が短縮されていることがはっきりと確認できる。バブル経済期と長期不況という調査年度の対照的な違いもあるが、週40時間労働制の効果も無視できないだろう。1997年の数字で、母子世帯の母とふたり親世帯の母を比べると、ふたり親世帯の母のほうが就業時間は比較的短く、にもかかわらず勤労年収は高い。母子世帯の「正規」は、いわゆる「割のいい仕事」ではない。

図表3-1-6 勤労年収と就業時間

 就業時間の差が大きいのは「パート」である。1997年において、ふたり親世帯の母の「パート」の就業時間は「34時間未満」が78.1%であるのに対し、母子世帯の場合は「独立」世帯で45.6%、「同居」世帯で44.9%であり、半数に満たない。母子世帯の「パート」の過半数は、労働時間が35時間以上のいわゆる「フルタイムパート」である。1987年と比べれば就業時間は短縮し、勤労年収も増加しているが、それでも母子世帯の「パート」の半数以上は、週35時間以上働きつつ、年収は平均120万円程度である。
 母子世帯の場合は「パート」であるといっても労働時間が短いわけではないということは重要である。子育てと仕事を両立するために「パート」を選択しているとは、少なくとも労働時間の観点からはうかがえない。
 さらに「パート」の場合、勤労収入を増加させるには限界があることも示している。収入を増加させるために労働時間を長くするという手段は、これ以上とれないからである。週に43時間以上働く「パート」が約17%(1997年)と、母子世帯の場合は無視できないほどに存在するが、ひとりで子育てもしなければならない母子世帯の母がこれ以上労働時間を延ばせば、子どもの福祉に対して悪影響をおよぼしかねないだけでなく、母親の健康問題にも早晩支障が生じると思われる。
 母子世帯の就業時間には、「独立」世帯と「同居」世帯でそれほどの差が存在しないのも特徴である。「同居」世帯の場合は他の世帯員がいるために長時間働きやすいとも考えられるが、1987年時点にはそのような特徴がみられるものの、1997年時点では明確な差はなくなっており、「独立」母子世帯であっても「同居」世帯と同程度の時間働いている。

(4) 勤労収入を規定するもの
 母子世帯の母の勤労収入を規定するものは何か。計量分析による解析は第3章にゆずり、ここではJIL調査のデータをもとに就業者の勤労年収をいくつかの指標とクロスしておきたい。
 ここで用いる分類は「正規」「パート・アルバイト」「他の非正規」である。「パート・アルバイト」とは「パート」443サンプル、「アルバイト」67サンプルを合計したものであり、「他の非正規」とは「嘱託・準社員・臨時職員」157サンプルと「人材派遣会社の派遣社員」31サンプルを合計したものである。
 「パート」と「アルバイト」の違いは、図表3-1-7で整理したとおり、主として産業・職種の呼称の違いである。「アルバイト」という呼称の55.2%がサービス業に集中しており(職種ではサービス職に47.8%)、「パート」では2割以上を占める製造業(23.0%)や生産工程の職種(製造・技能・労務25.5%)がほとんど存在しない。

図表3-1-7 「パート」と「アルバイト」

 「アルバイト」の平均年齢は36.5歳であり、「パート」の40.3歳よりも若干低い。しかし 20代若年者に限った呼称とはいえない。勤続年数も3.6年と同程度である。週平均就業時間は「アルバイト」が31.4時間であり、「パート」の34.1時間よりも短い。にもかかわらず勤労年収は「パート」131.8万円よりも「アルバイト」143.4万円のほうが高いが、産業別構成や職種別構成の違いを反映した結果と思われる。「パート」と「アルバイト」という呼称の違いにより待遇や労働条件に差があるとは認められないため、以下では、「パート」と「アルバイト」は区別せず、合計して扱う。
 図表3-1-8~12は、3つの雇用形態「正規」「パート・アルバイト」「他の非正規」の「週あたり就業時間」と「その仕事からの年収(勤労年収)」を、<1>年齢別、<2>母子世帯になってからの期間別、<3>学歴別、<4>事業所の従業員規模別、<5>勤続年数別でみたものである(注5)。
 まず年齢別(図表3-1-8)でみると、「正規」の場合、年齢が高くなるにつれて、就業時間にかかわりなく年収が増加しているが、「パート・アルバイト」にはそのような関係はみられない。「他の非正規」はサンプル数が少ないこともあるが、就業時間と年収にも対応関係がみられない。

図表3-1-8 年齢別・勤労年収(JIL調査)

母子世帯になってからの期間別(図表3-1-9)も同様であり、「正規」の場合は「20年以上」を除き、傾向的に年収は増加しているが、「パート・アルバイト」の年収は就業時間によって規定されているように見受けられ、期間がたつにつれて年収が増加しているわけではない。なお、母子世帯になってからの期間別の分析は次節でより詳しく検討する。

図表3-1-9 母子世帯になってからの期間別・勤労年収(JIL調査)

 学歴別(図表3-1-10)では、「正規」の場合、高学歴者ほど明らかに年収が高くなっている(注6)。就業時間は同程度であるにもかかわらず、中卒者の年収(254.1万円)は、大卒以上の年収(465.8万円)の半分以下である。ただし「パート・アルバイト」の場合は、そのような学歴による影響はみられない。「他の非正規」では、「短大・高専卒」を除けば、若干、高学歴者のほうが就業時間とかかわりなく年収が高いようである。

図表3-1-10 学歴別・勤労年収(JIL調査)

 事業所の従業員規模別(図表3-1-11)ではどうか。「正規」の場合は、規模が大きくなるほど年収が高くなるといった関係が確認できる。とくに「官公庁」では年収705.6万円と突出して高い。しかし就業構造基本調査の再集計で確認されたとおり、母子世帯はふたり親世帯の母と比べて官公庁で就業している割合が低く、JIL調査でも就業者の2.2%と少なかった(資料編集計表参照)。
「パート・アルバイト」や「他の非正規」では、従業員規模が年収に影響しているといった関係はみられず、就業時間に比例した年収額となっている。

図表3-1-11 従業員規模別・勤労年収(JIL調査)

 最も興味深いのは勤続年数別(図表3-1-12)である。「正規」の場合、勤続年数を重ねるにつれて、就業時間とは関係なく、明らかに年収が増加している。「年齢別」や「母子世帯になってからの期間別」で正規の年収が増加するように見えるのは、この勤続年数の効果が付随的に表現されたものと考えられる。「パート・アルバイト」の場合も「15‐20年」を除き、少しずつではあるが、勤続年数を重ねるにつれて、就業時間とは関係なく年収が増加している。しかし時給が毎年10円アップする程度の増加幅であり、正規の伸び率とは比較にならない。「パート・アルバイト」である限り、同じ仕事を20年以上経験しても、年収200万円を超えることはない。

図表3-1-12 勤続年数別・勤労年収(JIL調査)

 ところで、勤続年数の長短が年収の大きさに関係するとなると、検討すべきは転職の問題である。JIL調査によると、母子世帯になってから転職した者の割合は、「正規」39.1%、「パート・アルバイト」51.0%、「他の非正規」58.0%であり、母子世帯の母の転職率は高い(資料編集計表参照)。転職経験の有無別に年収を見た場合、「正規」では、「転職経験あり」が284.1万円(週平均就業時間44.6時間、224サンプル)、「転職経験なし」が382.4万円(週平均就業時間45.0時間、340サンプル)であり、転職経験のない者のほうが100万円ほど年収が高くなっている。その仕事の勤続年数が長くなるからである。
 ところが「パート・アルバイト」の場合は逆であり、むしろ転職経験のある者のほうが年収が高い。図表3-1-13は、「パート・アルバイト」の年収を、転職経験の有無と勤続年数でみたものである。勤続年数を重ねるにつれて、「パート・アルバイト」であっても年収は増加していくが、同じ仕事を続けている者より、むしろ転職をした者のほうが、同じ勤続年数であっても勤続7年未満までは年収が高くなっている。正規とは違って、「パート・アルバイト」の場合は、少しでも時給のよい仕事を探すことが、勤続による年収増を待つよりも早いことを示唆している。

図表3-1-13 「パート・アルバイト」の勤労年収(転職経験の有無×勤続年数)(JIL調査)


(5) 母子世帯になってからの期間別にみると
 児童扶養手当法の改正により、2003年4月以降、原則として手当の受給後5年で、最大2分の1まで児童扶養手当が減額されることとなった。減額の大きさは、同時に施行される改正母子寡婦福祉法に基づく就業支援策の実施状況などを勘案して決めるものとされ、いまだ未定であるが、母子世帯になって5年でどのような生活状況・就業状況にあるかは、重要な関心事項である。
 図表3-1-14は、JIL調査の回答者サンプルすべてを、母子世帯になった期間(年数)別に整理し、主な指標を表したものである。巻末の資料編集計表では、「1年未満」から「15年以上」までを6区分して掲載しているが、ここでは1年ごとに整理している。母子世帯になってからの期間は最大で26年まで存在したが、15年以上になると各セルのサンプルが少なくなるため、参考値として参照されたい。

図表3-1-14 母子世帯になった期間別・就業状況(JIL調査)

 まずJIL調査回答者の分布を確認する。母子世帯になって「1年」「2年」「3年」の者がそれぞれ約10%と最も集中しており、「5年以下」を累積すると51.6%、約半数となる。「10年以下」では78.0%、「15年以下」で93.0%を占める。
 本人年齢は、母子世帯になった直後「0年」「1年」という者でも36-37歳であり、若年とはいえない。母子世帯になってから新規就業したり転職したりする場合、事実上の年齢制限として広く流布している「35歳以下」を超えていることが、雇用機会上の障害のひとつになるだろう。
 末子の年齢(注7)は、母子世帯になった直後「0年」「1年」の世帯で約8歳であり、小学校低学年である。母親が新規に就業したり就業時間を増やす場合、保育所に入所できるかというよりもむしろ、放課後児童クラブ(学童保育)を利用できるかどうかが重要となる。
 誤解を招かぬよう付言すると、以上の考察は現時点で「直後」の人たちの状況であって、すでに母子世帯になってからある程度の期間がたった人たちの「直後」の状況ではない。母子世帯になったときの本人年齢・末子年齢をみると、概して、母子世帯になってからの期間が長い人ほど、母子世帯になったときの本人年齢が若く、末子年齢も低い。たとえば、母子世帯になって「10年」の世帯では、母子世帯になったときの本人年齢は32.3歳、末子年齢は3.6歳であった。「15年」の世帯では29.1歳、1.8歳である。つまり母子世帯になってからの期間が長い人たちにとって、母子世帯になった「直後」に必要であった支援とは、何より、保育所をはじめとした乳幼児保育の問題であったと思われる。
 ちなみに、なぜ母子世帯になってからの期間が長い人ほど、母子世帯になった当時の年齢が若いかといえば、中高年で母子世帯になった人は、期間がたてば子どもが成長して「母子世帯」として括られなくなるからである(いわゆる母子寡婦福祉法上の「寡婦」になる)。母子世帯になる年齢が10年前と比べて上昇しているわけではない。
 母子世帯になってからの期間が「5年」の世帯の平均像は、本人年齢が39.2歳、末子年齢が10.6歳である。子どもの保育の問題はなんとか乗り越えても、思春期を前に多感な時期に入る年頃であり、子どもの成長にともなって食費や教育費も増加していく時期である。
 続けて、就業状況を確認する。
 就業率は、母子世帯になった直後「0年」でも80.0%の高さを示し、その後も80%台半ばから90%台の就業率が続く。就業者の就業形態をみると、就業者に占める「正規」の割合は、「0年」が41.1%と比較的高いのを除けば、期間がたつにつれて正規割合は傾向的に増加しているように見受けられる。母子世帯になってからの期間が「5年」の世帯では、就業率85.2%、うち「正規」の割合は45.2%、「パート・アルバイト」が36.5%である。半数近くが「正規」に就いているとはいえ、「パート・アルバイト」も4割近く存在している。
 母子世帯になってからの期間が長くなるにつれて勤労年収が増加するのかどうか、図表3-1-14では「就業者計」「正規」「パート・アルバイト」の3つを例示している。それらの数字をグラフ化したのが図表3-1-15である。

図表3-1-15 母子世帯になってからの期間(年数)別・勤労年収(JIL調査)

 残念ながら、「正規」であっても、「パート・アルバイト」であっても、母子世帯になってからの期間が長くなるにつれて年収が増加するという関係は、まったく見られない。前節でみたように、年収の大きさを左右するのは、「正規」の場合は主として「勤続年数」と「学歴」であり、プラス「従業員規模」である。
 「パート・アルバイト」の場合、勤続年数による収入増と転職による収入増にジレンマがあることは先に指摘した。図表3-1-14の「パート・アルバイト」の勤続年数をみると、母子世帯になってからの期間が短い人でも長い人でも、勤続 2-3年というのは興味深い。母子世帯になってからの転職経験率は「パート・アルバイト」で51.0%であるが、より良い時給の仕事を求めて、何度も転職を重ねているためと考えられる。「パート・アルバイト」の場合、年収を左右するのは何より「就業時間」である。しかし時間を延ばすことによる収入増には、物理的に限界がある。

(6)母子世帯になる前の働き方、前後の状況
 母子世帯になる前や前後の状況は現在の就業状況にどのような影響を与えているのだろうか。以下では、母子世帯になる前の就業形態や母子世帯になる前後の変化を中心に現在の就業状況をみていきたい。

6-1.就業形態の変化
 図表3-1-16は、母子世帯になる「前」「直後」「現在」の就業状況を示したものである。3時点を対比すると、無業者の割合は38.2%、17.3%、12.7%と減少し、正規就業者の割合は20.2%、30.1%、37.1%と増加している。このことは、母子世帯になる前はたとえ無業(専業主婦)であっても、母子世帯になったことで就業をしはじめ、時間を経過すれば「正規」に移ることもできると、一見イメージすることができる。

図表3-1-16 母子世帯になる「前」「直後」「現在」の就業形態(JIL調査)

 しかし時がたてば誰でも「正規」になれるわけではない。たとえば、第1部第1章(JIL調査の結果の概要)の図表1-1-11で示されているとおり、母子世帯になる前後に新規就業したり転職したりするなど新しい仕事に就いた者の就業形態は、母子世帯になってからの期間別で異なっている。「正規」に就いた割合は「(期間)15年以上」だと40.0%であるのに対して、「(期間)3年未満」だと27.2%であり、同じ「直後」の就職・転職であっても、正規就業率に差が大きい。現在は「正規」の雇用可能性が減っているのだろうか?

図表1-1-11 母子世帯になってからの期間別新しくついた仕事の就業形態

 とはいえ、先にみたとおり、母子世帯になってからの期間が長い者ほど、母子世帯になった当時の年齢は若かったので、単なる年齢による雇用機会の差であるとも考えられる。そこで、母子世帯になった当時の年齢をそろえて確認する。
 図表3-1-17は、母子世帯になる前後に新しい仕事に就いた者(859サンプル)のうち「正規」の仕事に就いた割合を、正規就職率として示したものである。「母子世帯になった当時の本人年齢」と「母子世帯になってからの期間」を合わせると、各セルのサンプルが少なくなり、はっきりとした傾向は見出せなかった。しかし当時の年齢が「25-29歳」と「35-39歳」層では、母子世帯になってからの期間が4年以下(3年未満、3-4年)の者より、5年以上(5-9年、10-14年)の者のほうが、同じ「直後」の就職・転職であっても正規就職率は高かったようである。女性が継続して仕事を続けられる環境は10年前と比べて整備されてきたかもしれないが、「正規」職に就職・転職できる可能性は、必ずしも拡大したとはいえないのではないか。

図表3-1-17 母子世帯になる前後に新しく仕事に就いた者のうち「正規」に就いた割合(JIL調査)


6-2.母子世帯になる前の働き方と現在の年収
 現在の就業形態別にみた勤労年収を、母子世帯になる前の働き方(就業パターン)別でみたのが図表3-1-18である。「正規」職では、「最初に就職した仕事を継続していた」場合は479.1万円であり、他の就業パターンであった者と比べて高い。勤続年数が長くなるからである。「結婚・出産などで退職」していた者では302.2万円であり、「就業経験はなかった」者では243.2万円である。母子世帯になる前に就業していたことは、現在が「正規」職であるかぎり、勤続効果として活きている。しかし「パート・アルバイト」職ではそれほど大きな意味を与えていない。143.2万円と最も年収が高いのは「結婚・出産などで退職後、再就職」であり、継続就業者の年収を上回る。「結婚・出産などで退職」していた者は126.5万円であるが、継続就業者の年収と大差はない。

図表3-1-18 母子世帯になる前の働き方と現在の勤労年収(JIL調査)


6-3.母子世帯になる前後の就業準備
 母子世帯になる前後に、資格や技能の習得など仕事に向けての準備をしたことは、いかなる影響を与えているか。第1部第1章(アンケート調査)の図表1-1-18で示されているとおり、「準備をした」者のほうが「準備の余裕がなかった」者よりも、現在は「正規」として就業している割合が高く、転職を希望する割合も低い。つまり、準備をしたことが現在のよりよい就業上の地位をもたらしているようにみえる。しかし就業準備の必要性は当時の就業状況と密接に関係することから、母子世帯になる前の就業状況をそろえて、さらに詳しく検討しておきたい。
 図表3-1-19は、母子世帯になる前の就業状況が「正規」「パート・アルバイト」「無業」の者を取り出し、前後の就業準備がその後の就業状況にどのような影響を与えているかをみたものである。まず、就業準備をしたかどうかについては、「正規」では当然ながら「特に必要なかった」が最も多く59.2%を占める。「パート・アルバイト」と「無業」では、「準備の余裕がなかった」という者が最も多く、それぞれ41.6%、49.2%である。「準備した」という者は、「パート・アルバイト」の14.9%よりも、「無業」の17.6%のほうが高い。

図表3-1-19 母子世帯になる前後の就業準備と「直後」「現在」の就業状況(JIL調査)

 母子世帯になった「直後」の就業状況をみる。ここでは、準備をしたかどうかのサンプルを母集団として、母子世帯になった直後の就業形態が「正規」と回答したサンプル数を、正規率として表した。母子世帯になる前が「正規」であった者でも、母子世帯になった直後も「正規」であると回答した割合は、100%ではなく、準備の状況にかかわりなく、低下している。正規の仕事をしていたにもかかわらず、仕事をやめたか、非正規の仕事に移ったことを意味する。「パート・アルバイト」だった者の「直後」の正規率をみると、「準備をした」者では22.8%、「準備の余裕がなかった」者では19.6%であり、準備をした者のほうが正規率は高い。しかし「無業」だった者では逆転しており、「準備をした」者の正規率は14.7%、「準備の余裕がなかった」者では20.7%である。就業準備をしたことが正規の仕事に結びついているとはいえない。
 もう少し長期の効果をみるために「現在」の就業状況も確認しておこう。母子世帯になる前は「パート・アルバイト」や「無業」だった者では、準備のいかんにかかわりなく、直後の正規率より、現在の正規率のほうが高い。しかも「パート・アルバイト」「無業」のどちらも、母子世帯になる前後に「準備をした」者のほうが、「準備の余裕がなかった」者よりも正規率は高くなっており、準備の効果があらわれたといえるかもしれない。「準備をした」者の正規率は、「パート・アルバイト」だった者で43.6%、「無業」だった者で31.9%である。なお、母子世帯になる前に「正規」だった者では、現在の正規率は直後の正規率よりもさらに低下している(注8)。しかし、「準備をした」者のほうが、「準備の余裕がなかった」者よりも低下率は低いことから(正規残存率が高いことから)、その意味での準備の効果はあったといえるかもしれない。
 母子世帯になる前後の就業準備は「現在」の勤労年収にどのように結びつくのか、図表3-1-19では「現在」の就業形態が「正規」と「パート・アルバイト」のケースで例示している。
 母子世帯になる前は「正規」で現在も「正規」の場合、「準備をした」者の勤労年収378.6万円は、「準備の余裕がなかった」者の331.6万円よりも高い。勤続年数はそれぞれ11.5年、11.3年と違いがないことから、準備をしたことの効果があらわれていると考えられる。しかし問題は、どういう人が準備をできたかである。たとえば、学歴の高い人ほど準備ができたとなると、この年収差は学歴差であるとも考えられる。学歴の問題は次節でとりあげる。母子世帯になる前は「正規」で現在は「パート・アルバイト」の場合、母子世帯になる前後の就業準備と現在の勤労年収はまったく関係していない。ただしサンプル数が少ない。
 母子世帯になる前は「パート・アルバイト」で現在は「正規」の場合、「準備をした」者の勤労年収は258.4万円(勤続年数2.8年)、「準備の余裕がなかった」者では254.6万円(勤続年数4.9年)である。年収金額は同程度であるが、正規の年収に与える勤続年数の影響の大きさを考慮すると、準備をしたことが年収の増加に影響を与えたと考えられるかもしれない。
 母子世帯になる前は「無業」で現在は「正規」の場合、「準備をした」者の勤労年収は305.1万円(勤続年数6.2年)、「準備の余裕がなかった」者では260.6万円(勤続年数5.6万円)である。同じ無業であった者でも「準備をした」者のほうが、正規になった現在の勤労年収は高い。
 なお、現在は同じ「正規」であり、母子世帯になる前に「無業」だった者と「パート・アルバイト」であった者を比べると、「無業」だった者のほうが現在の勤労年収が高いことは興味深い。勤続年数も長く、より早期に「正規」に就いたことを意味する。パート・アルバイトとして働きながら資格や技能を習得したり正規職に転職することは、無業だった者よりも困難であることを示している。
 以上は、現在「正規」である者の状況であるが、現在「パート・アルバイト」の場合の勤労年収は、過去の就業準備とはまったく関係していない。母子世帯になる前の就業形態とも無関係である。資格や技能の習得といった就業準備は、正規職につけるかどうか、あるいは正規職についた場合の年収の多寡に影響する可能性はあっても、パート・アルバイト職であるかぎり、その効果は認められない。

(7) 学歴の問題
 当研究会の調査研究から得られた重要な知見のひとつは、母子世帯の学歴問題である。これまでどの官庁統計からも母子世帯の母の学歴・教育歴については把握することができなかった。「国勢調査」の母子世帯に関する統計では学歴別に集計されておらず、「全国母子世帯等調査」や「国民生活基礎調査」では学歴に関する設問自体が存在しない。
 JIL調査はその意味で母子世帯の学歴別構成をはじめて明らかにしたものであり、そこでは、調査回答者に高学歴者は少ないという結果であった。しかも、就業構造基本調査を再集計することで、JIL調査の単なるサンプルバイアスではなく、母子世帯の母親はふたり親世帯の母親と比べて学歴が低い傾向が確認された。
 図表3-1-20は母子世帯の母の学歴別構成である。JIL調査では、回答者の13.1%が「中学校」卒であり、49.0%が「高等学校」卒である。「短大・高等専門学校」卒が15.6%存在するが、「大学」を卒業した者は7.1%であり、「大学院」は0.1%と皆無に近い。中卒者が想定していた以上に多かったことが個人的な驚きであったが、就業構造基本調査の再集計でもその傾向は明らかであった。1997年調査で、「小学・中学校」卒の母子世帯の母は、「独立」世帯で19.0%、「同居」世帯で14.3%である。同じ年代の女性であるふたり親世帯の母では7.5%にすぎないことから、母子世帯の母の中卒割合は2倍以上である。「大学・大学院」を卒業した母子世帯の母は、「独立」世帯で4.2%、「同居」世帯で5.9%であり、ふたり親世帯の母の大卒以上割合10.1%の約半分である。2001年のJIL調査との調査年度の違いは4年しかないことから、社会全体が高学歴化している影響はそれほど大きいとは考えられず、JIL調査の回答者サンプルは母子世帯のなかでもまだ比較的高学歴層であったといえる(注9)。

図表3-1-20 母子世帯の学歴別構成

 これまで考察してきた母子世帯の就業実態も、学歴別に詳しく検討する必要性があるが、本稿では十分にとりあげられなかった。今後の課題として指摘するにとどめ、ここでは一点のみ、ひとつの例を紹介しておきたい。
 図表3-1-21は、図表3-1-19で示した母子世帯になる前の就業形態別・就業準備の状況を、学歴別であらわしたものである。ここからわかるように、母子世帯になる前が「正規」「パート・アルバイト」「無業」のいずれであっても、「準備をした」という者は、高学歴者である。たとえば、同じ「パート・アルバイト」であっても、「大学・大学院」卒では38.1%が「準備をした」のに対して、「高校」卒では13.4%、「中学」卒では5.4%にすぎない。「無業」のケースも象徴的である。「準備の余裕がなかった」という者は、中卒無業者では71.4%と多数を占めるのに対して、高卒無業者では55.1%、大学・院卒無業者では27.7%と比較的少ない。大学・院卒無業者の過半数(51.1%)は、「特に必要なかった」という回答である。前節でみたように、母子世帯になる前後に就業準備をすることは、その後の正規職の雇用機会や勤労収入を拡大させるかもしれない。しかし、そもそも準備ができるかどうかというところに学歴差が存在している。

図表3-1-21 学歴別・母子世帯になる前後の就業準備(JIL調査)


(8) 子どもの就業・進学問題
 母子世帯の就業をめぐる問題のひとつとして、子どもの就業と進学問題にも触れておきたい。図表3-1-22は、1997年就業構造基本調査より、15歳以上の子ども(男女別)の有業者・無業者の割合をあらわしたものである。15-17歳という中学から高校年齢にあたる子どもでは、「無業者」で「通学をしている者」は、母子世帯の子どもの男子で85.5%、女子で87.7%である。有業者が1割程度存在するが、9割近くは高校等へ通学している。しかし18-19歳になると通学率は低下し、男子で37.3%、女子で48.9%となる。代わりに有業者が増加し、男子で45.3%、女子で41.2%の母子世帯の子どもが就業している。

図表3-1-22 母子世帯の子どもの就業状況(1997年就業構造基本調査)

 母子世帯の子どもの就業率は高いのかどうか、一般世帯の子どもと比較してみる。15-19歳の子どもの就業率(有業者の割合)は、男子の場合、母子世帯23.5%、一般世帯15.4%であり、女子の場合、母子世帯19.7%、一般世帯14.7%である。一般世帯とは単独世帯を除いた2人以上世帯のことであり、母子世帯も含まれる。にもかかわらず、母子世帯の子どもの就業率は、一般世帯という世帯平均よりも、男子で8%ポイント、女子で5%ポイント高い。
 15-19歳の子どもの在学状況をより詳しくみたのが図表3-1-23である。すでに「卒業した」とする者の割合は、子ども一般(15-19歳推計人口全体)では、男子17.1%、女子12.9%であるのに対して、母子世帯の子どもでは、男子23.3%、女子17.6%と高い。なかでも、「高校」卒業ではなく「小学・中学」を卒業したとする割合が、男子12.3%、女子6.2%であり、子ども一般の中卒割合(男子5.0%、女子2.7%)と比べて2倍以上である。

図表3-1-23 母子世帯の子どもの在学状況(1997年就業構造基本調査)

 子どもの教育・進学をめぐっては、子どもの学力や進学を希望するかどうかという要因のほかに、親の教育に対する考え方や子どもの進学を支える経済的基盤の有無が大きく作用するだろう。2001年JIL調査では、母子世帯の母に対して子どもの教育に対する意識を聞いている。「経済的に無理をしても子どもの教育は十分にしたいと思う」と回答した割合は、「思う」「わりとそう思う」を合わせて72.3%にのぼり、「あまり思わない」「そうは思わない」を合わせた8.1%を大きく上回る(資料編集計表参照)。ふたり親世帯の母の回答と比べることはできないが、「子どもの教育は十分にしたい」と希望している母子世帯の母はたいへんに多い。しかし子どもの教育・進学を支える経済基盤がないかぎり、その希望をかなえることが困難であるのも事実であり、たとえば母親の勤労収入が低くなるほど「どちらともいえない」という回答が多くなっている(「100万円未満」25.5%、「500万円以上」14.2%。資料編集計表参照)。
 母子世帯の母の勤労収入分析でも確認したとおり、学歴による収入差は大きい。また、資格や技能の修得といった社会資源を使って自己投資をする機会や能力も、学歴による差が認められる。母子世帯の子どもが、その経済的基盤の脆弱さから高等教育への進学をあきらめざるをえないとするならば、将来の子どもの稼得能力を狭める意味において本人のみならず社会にとっての損失である。



3.おわりに
 最後に、本稿では十分とりあげることのできなかった諸課題を簡単に指摘して本稿の結びとする。

(1) 「未婚・非婚」者への就業支援について
 図表3-1-16で確認したとおり、母子世帯は一般的に、母子世帯になる「前」の就業率は低くても、「直後」から「現在」になるほど就業率は上昇していく。しかし「非婚・未婚」者だけは異なり、母子世帯になることで「仕事をやめ、無職になった」という割合が21.3%と相対的に多い(「離婚」5.9%、「死別」6.3%。資料編集計表参照)。他の母子世帯の多くが母子世帯になると同時に就職・転職するなど仕事を始めているのに対して、「未婚・非婚」者の場合は母子世帯になると同時に仕事を失っているのである。産前産後休暇が事実上取得しにくい職場であったり、育児休業が取得できない非正規雇用であったり、あるいは非婚出産をすることで職場に居辛い状況におかれたりなど、さまざまな理由が想起されよう。学歴別でみても「未婚・非婚」者は「中学校」卒が16.9%と相対的に高く(「離婚」13.6%、「死別」11.4%。資料編集計表参照)、就業者の勤労収入も233.7万円と相対的に低い(「離婚」245.4万円、「死別」247.4万円。資料編集計表参照)。全国母子世帯等調査によれば、母子世帯に占める「未婚」者の割合は、1993年の4.7%から1998年の7.3%まで増加しているが、高学歴・高収入のいわゆる「キャリア・シングルマザー」が増えているわけではない。非婚出産をすることで、仕事を継続できなかったり、学業を断念したりする現状があるとするならば、特別の支援体制が必要である。

図表3-1-16 母子世帯になる「前」「直後」「現在」の就業形態(JIL調査)


(2) 副業について
 本稿の分析で用いた指標は、現在の仕事のうち「主な仕事」の勤労収入や労働時間であり、副業については加味しなかった。2001年JIL調査では、就業者の1割、10.0%が副業をもっている(資料編集計表参照)。副業率は、主な仕事の勤労収入が低い人ほど傾向的に高い(「100万円未満」14.5%、「500万円以上」2.7%。資料編集計表参照)。副業からの年収は平均して58.9万円であり、「主な仕事」の低収入を副業収入で補っていると考えられる。しかし注目すべきは労働時間である。副業者の主な仕事と副業を合計した週あたり総就業時間は平均49.6時間であり、きわめて長い。いわゆる「在宅ワーク」に代表されるように、副業仕事は仕事量や稼得が安定しないものが多く、将来の収入増につながる保障もない。就業支援の目指すべき課題としては、ひとつの仕事で必要な収入を得られるようにすることであり、副業にしかならない就業支援メニューは、一時的な稼得増にはつながっても将来の健康不安や精神的な不安定度を増すことになりかねない点に注意が必要である。

(3) 深夜・早朝の就業について
 母子世帯の母の就業は「主な仕事」だけをみても深夜・早朝の仕事が少なくない。2001年JIL調査では、就業者のうち「深夜(午後10時から午前5時以前)」も就業している者は9.0%、「早朝(午前5時から8時以前)」就業者は8.9%と、ともに1割近く存在する(複数回答。資料編集計表参照)。副業仕事を含めれば深夜・早朝就業率はさらに高くなるだろう。「主な仕事」の就業が深夜・早朝に及ぶ者は、その仕事からの収入が高いほど多い。「深夜」就業率は、勤労収入「100万円未満」の場合は5.5%であるのに対して「500万円以上」では18.6%に上り、「早朝」就業率は、「100万円未満」の場合の2.4%から「500万円以上」の20.4%まで増加する(資料編集計表参照)。深夜や早朝に就業することで、ようやくある程度の収入が得られるという現状が認められるが、母親本人にとっても子どもにとっても望ましい姿ではないだろう。昼間、1日8時間を普通に働きつつも、子どもを育てあげるのに必要な収入が得られないとするならば、それは本人の問題ではなく、私たち社会の問題である。

(4) 父子世帯の就業実態について
 当研究会の調査研究は母子世帯を対象としていたため、父子世帯の就業問題については検討していない。しかし生計の責任と子育てをひとりで担っている意味では母子世帯と共通しており、父子世帯の父がどのような就業実態にあるかどうかについては、子どもの福祉の観点からも重要な関心事項である。たとえば図表3-1-24にみられるように、父子世帯の父の就業形態は「父子世帯になる前」と「現在」とでは就業率が95.9%から89.4%へと低下し、無業者の割合は1.6%から9.0%に増加している。「常用労働者」の割合は75.1%から67.3%に減る一方で、「臨時・パート」の割合が2.9%から6.1%に増えている。就業者の勤労年収も、「独立」世帯480.3万円、「同居」世帯446.8万円という父子世帯の父の年収は、「ふたり親世帯の父」の588.1万円より100万円以上も低い。祖父母等の同居者がいない「独立」世帯であっても母子世帯以上に長時間労働であり、父子世帯の子どもが父親の就業時にどのようにすごしているのかどうかも気になるところである。ふたり親世帯の父と比べて学歴別構成も低く、景気の動向や労働市場の構造変化によっては、父子世帯の就業をめぐる問題が一挙に顕在化する可能性もある。本報告書の巻末の資料編集計表では父子世帯のデータも豊富に収録しているが、父子世帯の就業実態の把握はいまだ端緒についたばかりである。

図表3-1-24 父子世帯の父の状況

(注1)「就業構造基本調査」の個票データより抽出した母子世帯・父子世帯の定義は,第2部第1章(就業構造基本調査の再集計の概要)を参照のこと。公開されている『就業構造基本調査報告書』の「母子世帯」は,子どもの年齢が「18歳未満」であり,母子以外の他の世帯員の存在は「認めていない」。当研究会の再集計では,子の年齢が「20歳未満」で「同居」を含めた母子・父子世帯を抽出している。

(注2)それゆえ都道府県等地方公共団体には地域の実態にそくした施策が求められるが,各地方自治体が当該地域の母子世帯・父子世帯を把握できる資料は国勢調査のみ,すなわち「独立」母子世帯のみである(都道府県別集計,市町村別集計)。同居率が高い郡部になればなるほど,国勢調査の数字と事実上の生活実態の乖離は大きくなる。自治体によっては数年に一度,自治体独自のひとり親世帯調査をおこなっているが,当該地域の実態に基づいた施策を実施するうえでそれらの調査は重要である。

(注3)1988年調査では「自営業主」「常用雇用者」「非常用雇用者」「その他」の4分類であり,調査年度によって就業形態の表現は異なる。

(注4)本稿では地域分析まで踏み込むことができなかった。就業実態はとくに地域差が大きいと考えられるため,他日の検討を期したい。

(注5)各クロス分析に利用したすべての設問(「就業形態」「年収」「就業時間」と「年齢」「学歴」など)に有効回答のあったデータサンプルの平均値であるため,巻末の資料編集計表の数字とは,若干のズレがある。各セルのサンプル数は図表に記載したとおり。

(注6)就業構造基本調査を用いた計量分析でも,母子世帯の年収に与える学歴効果は,ふたり親世帯(有子有配偶女性)のそれよりも高いことが確認されている。第3部第3章(母子世帯の母のキャリア形成、その可能性)を参照のこと。

(注7)母子世帯になったときの末子年齢(全体平均5.3歳)は,「現在の末子年齢」から「母子世帯になってからの期間(現在の本人年齢-母子世帯になったときの本人年齢)」を引いて推計したもの。マイナスになる場合(母子世帯になってからの期間よりも現在の末子年齢が小さい場合)は,不詳として扱った。ただし,マイナス1年の場合は,末子の誕生月と母子世帯になった月(たとえば離婚届提出月)の差であると考え,末子年齢0歳として扱った。この「母子世帯になったときの末子年齢」は,巻末の資料編統計表には掲載されていない。1998年の全国母子世帯等調査によると,母子世帯になったときの本人年齢は34.7歳,末子年齢は5.4歳であり,このJIL調査の34.1歳,5.3歳と,違いはない。

(注8)母子世帯になる前の就業形態別にみた「直後」「現在」の就業形態については,第1部第1章(アンケート調査)の図表1-1-12,13を参照のこと。そこでは,仕事に向けての準備の状況とクロスする以前の全体としての就業変化がよみとれる。母子世帯になる前に「正規」だった者が,直後にも「正規」である割合は79.3%,現在も「正規」である割合は67.0%であり,正規率の低下は全サンプルでも確認できる。

(注9)母子世帯の母親が他の世帯の母親と比べて低学歴である傾向が強いとすれば,母子世帯の生活や就業をめぐる諸困難に階層問題がからんでいる可能性がある。欧米諸国における母子世帯「問題」は,人種や学歴と密接に関連した社会的マイノリティの問題として,「機会の不平等」や「次世代への貧困の再生産」が社会的に解決すべき課題と受けとめられてきた。日本の母子世帯「問題」も,単なる時代の変化や親の就業努力によって解決可能な問題として捉えるべきではなく,母親の成育期に与えられた教育機会や世代的な経済的基盤の問題を注視すべきはないか。とくに,父子世帯の父親の低学歴傾向は母子世帯以上に顕著である(資料編集計表参照)。



第2章 離婚直後の世帯の経済面と生活面の状況
 ─人口動態社会経済面調査報告『離婚家庭の子ども』の再分析


1.はじめに
 『人口動態社会経済面調査報告:離婚家庭の子ども』(平成9年10月実施)は調査時点の3ヶ月前の1ヶ月間に協議離婚した者を取り出した全国調査(回収率は40%、集計客対数1885、男性336、女性1549)である。別居後10ヶ月より多く経た世帯は除外されており、離婚直後の状況を伝える貴重なデータである(注1)。厚生労働省『全国母子世帯等調査』や本研究会で実施した『母子世帯の母への就業支援に関する調査』に比べると低年齢児童が多いことが目立つ。調査によれば協議離婚世帯の8割は母親が親権を持っているが、そのうち0-2歳児を抱える母親が4割近くと高く、未就学児を抱える母親は離婚直後の母親の6割を占めている。これは、調査が離婚直後のフローデータであるのに対して、他の統計は、離婚・死別等の後、再婚せずに母子世帯として統計に表れ続けるストックのデータであることが大きい。つまり、子あり離婚は、2歳以下、あるいは6歳以下の子どものいる世帯で多く起こり、女性が引き取ることが多いことが、この調査からわかる(注2)。
 以下、第2節では母子家庭、父子家庭の離婚後の家族や住まいの状況を見る。第3節は女性を中心に、子ども年齢と離婚前後の就業状態の変化や離婚前の経済状況を見る。第4節では養育費や一時金はどういう場合に支払われているのかその決定因を検討し、第5節は、児童扶養手当の申請や受給状況をみた上で、だれが早い受給を受けやすいかを分析する。第6節は暮らしむき全般の分析である。第7節が結語である。付録は第3節の付録であるが、収入の男女別分布を就業形態や住居の状況などからみたものである。


2.離婚直後の家族と住まいの状況

2-1 末子の年齢、子ども数、兄弟が分かれることの有無

図表3-2-1 協議離婚直後の末子学齢

 子どものいる世帯の離婚直後の状況を見ると、女性は0-2歳児を持つものが4割近くであり、3-6歳児の者も2割強、合わせて6割は末子が未就学であり、中学以上の子供のみがいるケースは2割弱である。男性は、年齢が上がった子どもが相対的に多く、末子が中学生以上である場合が3割である。しかし末子が未就学児の離婚父親も4割弱いる。また未就学児のみがいる女性は50%、男性は28%である。
 子ども数を見ると、女性の回答は1人が46%と2人の39%よりも多い。女性の年齢は34歳以下が全体の43%を占め、子ども数が少ない若い段階の離婚が多いと想像される。一方男性が親権者となったケースでは、子ども1人は35%、2人が46%であり、男性が親権者のケースでは、本人が34歳までの者は全体の19%に過ぎず、年齢階層がより高い。
 兄弟が別れて引き取られるかどうか、別れるケースは少ないが、男性ではやや多い。女性の回答では6%だが、男性が親権者の場合は18%である。男性回答者で見ると、子どもが2人いる場合、別れた配偶者が1人育てることになったケースが156人中33人、子どもが3人以上いる場合、別れた配偶者が1人以上育てることになったケースは62人中26人である。女性回答者を見ると、子どもが2人いる場合、別れた配偶者が1人育てることになったケースが608人中43人、子どもが3人以上いる場合、別れた配偶者が1人以上育てることになったケースは223人中39人である。

2-2 他の親族との同居の有無と住居の状況

図表3-2-2 親族との同居状況(父親、母親別)

 また親権のある子どもとの同居状況を見ると、非同居であることが、男性は末子で9%、2人以上の場合、年長の子で9~10%あった。一方女性は非同居のケースは少なく、一番幼い子どもで2%、2人いる場合、3人いる場合の年長の子どもで3%、6%である。
 親権者が父親の場合は、末子が小学校1~3年まで離婚直後に親族と同居しているケースが多い。また親権者が母親も、末子が0~2歳児の場合は、離婚直後に親族同居であるケースが4割である。しかし、3歳以上では母子のみの世帯が7割近く、その後も末子年齢の上昇とともに8割にまで増え、独立世帯が多い。
 離婚前を見ると、女性の73%は核家族で暮らしており、自分の親族と同居である世帯は、女性の6%に過ぎない。離婚後は、女性の28%が親族同居となり、子どもが幼い場合は、34%が親族同居である。一方男性は、離婚前、核家族は62%、自分の親族との同居が22%であり、女性よりも親同居比率がもともと高い。離婚後は、男性の35%が親族同居となるが、未就学児では、もとは15%だったのが、40%が親族同居となる。もともと拡大家族に暮らしている男性が子どもを引き取る傾向が強いが、子どもが幼い場合では、同居という形で親族援助を受けられるよう、親同居が女性同様に増えると見られる。

図表3-2-3 離婚前の住居の状況と離婚後の転居の有無

 住まいの状況を見ると、男性は離婚後の転居が少なく(転居していないが71%、うち転居していない男性の5割は持ち家)女性は逆に7割が転居と多い。子供あり離婚で男性が親権者となる場合は、相対的には裕福な男性が多いのかもしれない。父親の回答では、離婚前43%が持ち家、離婚前賃貸住宅が33%であるが、母親の回答では、離婚前29%が持ち家、51%は賃貸住宅である。
 離婚後の住まいで、女性にもっとも多いのは賃貸住宅であり、狭くなったが4割を占める、賃貸住宅の費用負担が重いだけでなく、居住環境も悪化するケースが多いと想像される。一方、親の家に頼った場合は、広くなったという回答も4割を占める。

図表3-2-4 離婚後の住まいと広さの変化



3.子ども年齢と離婚前後の就業状態の変化、離婚前の経済状況

3-1 就業状態の変化
 男性については、離婚前7割強が常勤であり、2割が自営業であるが、離婚後も多くは、そのままの就業形態を続けている。男性の70%は仕事先が「変わらない」としている。
 一方、女性については、女性は「変わらない」は50%であり、20%が新規に就職、23%が転職をしている。離婚前常勤の仕事を持っていた者の8割はそのままの仕事を続けているが、パート・アルバイトだった者で常勤に移った者が4人に1人程度おり、また5人に1人がパートの仕事の中で転職をしている。また女性の33%は離婚前無職であり、離婚後の3ヶ月間に無職に留まる者も4割弱いるが、パート・アルバイトに就く者が同じく4割弱と多く、また常勤の仕事を得る者も18%いる。図表3-2-5は男女計について、離婚後の職業移動をみたものである。

図表3-2-5 離婚前の就学状況と離婚後の職業移動(男女計)

 離婚後に職業移動の多い女性について、離婚前と離婚後の就業状況を末子年齢別に見たものが図表3-2-6および図表3-2-7である。0~2歳の子どものいる層では離婚前無職者が半数を超え、次いで3~6歳の子どものいる層で無職者が多い。常勤の仕事を持つ者は子ども年齢の上昇とともに上昇している。離婚後については、無職者は減少、すべての子ども年齢層で常勤比率が上昇している。

図表3-2-6 離婚前の仕事の状況(女性)


 図表3-2-8は、もと配偶者の1年前の年収を問うたものを女性について集計したものである。配偶者の年収が0または不詳がどの群でも2割以上と高く、さらに末子年齢が中学生以上でなぜか上昇している。日本の年功的な賃金を考えれば、平均的には、末子年齢が上がるほど、年収500万以上の層が増えて良いはずだが、末子が中学生以上で離婚した世帯にそうした特徴はハッキリは見られない。離婚の原因として、夫の収入の不安定といった経済問題も大きいことが想像される。

図表3-2-8 離婚前の配偶者の収入(女性)

 男女別に、9月の収入分布を見ると、女性は月収15万円以下の低収入に偏っている。また母子世帯、父子世帯とも所得が低い者の親同居割合は高い。収入が低く、かつ、「親族」という資源がある場合にはこれに頼る者が多い。

図表3-2-9 9月の収入と親族同居の有無(男女別)


3-2 現在収入の規定要因としての子ども年齢と就業形態、就業履歴
 9月の月収(調査月の前月の収入、就労収入、定期金、親からの仕送り、家賃・地代収入、社会保障給付金を含む)の規定要因は何だろうか。性差、女性は末子年齢による差、さらに就業形態や就業履歴の差が大きく、また児童扶養手当が給付がされているかどうか、また別れたもと配偶者から定期金の送付があるかどうかが月収に影響を与えているが、これについて順次見ていこう。
 母子家庭の9月の月収平均は、12.7万円、父子家庭の29.6万円と比べて大幅に低く、性差は大きい。

図表3-2-10 末子年齢と9月の収入(女性)

 女性については末子年齢の影響が大きい。調査前月である9月の本人の収入を見ると、図表3-2-10の通り、収入0、収入5万未満などは、0~2歳児、3~6歳児を持つ親に大きく偏っていることがわかる。また女性の月収が10万円以下は、末子年齢で見ると、0~3歳児で58%、4~6歳児で44%、小学校で37%、中学生以上で25%であり、末子年齢の上昇が離婚直後の女性の年収を上げる。とはいえ、月収17.5万円以上の割合を見ると、6歳以下で20%弱、小学校高学年で36%、中学校以上でも4割であり低収入が多い。月収26万以上を見ると、未就学児のいる世帯では5%未満、末子が小学生の世帯で1割、末子が中学生以上でも2割に満たない。ところが男性については、月収17.5万以上は、未就学児で7割以上、就学児童以上では9割である。また月収26万以上も、未就学児のいる世帯で約3割、小学校高学年以上で7割である。男性も子ども年齢が上がると月収36万円以上等が増えるが、これは子どもの影響というよりは、年齢と勤続の影響も大きいだろうと考える。
 また常勤やパートの別、仕事の継続などが女性の現在収入に影響を与えている。離婚を機に仕事の移動があった者、なかった者など女性の9月の収入を見てみよう。

図表3-2-11 女性の離婚前後の就業形態の変化と9月の収入

 常勤の仕事を変わらないでいる者の年収がもっとも高く、9月の平均収入は18.6万円である。常勤から常勤に転職した者の年収が次いで高く、平均月収が14.1万円、パートの仕事を続けた者が続き、平均月収が12.5万、無職から常勤になった者の平均月収は12.3万、パート内転職をした者と無職からパートになった者の月収はほぼ同じ程度の10万円である。
 図表3-2-12はどのような女性が無業にとどまりやすいか、またどのような女性が常勤やパート、自営等を選択するかを多項ロジット分析の手法を用いて推計したものである。頼れる親族がいるので無業に留まっているというだけでなく、無業であるから親族同居を選ぶ面もある可能性がある(内生変数の可能性がある)と考えられるが、親族同居の場合に、常勤の選択は少ない。離婚前の仕事形態を選択する確率が高い(パートであればパートなど)とともに、離婚前に有業であるほど常勤に移りやすくもある。また末子が0-2歳の場合、常勤の仕事であれば、無職でなくこれを選択する可能性も高いが、パートや自営で働くよりは無業選択が増える。

図表3-2-12 離婚後の就業形態の選択(女性)-多項ロジット分析

 付録に、男女別に作成した収入分布の箱ひげグラフを添付した。こちらは月収ではなく年収変数を利用した。A-1からA-3は、離婚後1年間の年収見込みを見たものである。A-1は、離婚後の就業形態を横軸にとったものだが、男女の常勤比率の差と男女の大きい年収差が示されている。A―2は、末子年齢別の男女の収入状況を見たものだが、幼い子どものいる離別女性の収入が全体にきわめて低収入であることが示されている。A-3は離婚後の住まいの状況別に見たものだが賃貸住宅住まいの女性の経済状況の厳しさが示されている。
 付録のB-1からB-7は縦軸を離婚前後の収入変化見込み額とした箱ひげグラフである。年収変化は、離婚前年収から離婚後年収見込みを差し引いて作成した。B-1は離婚前年収別のグラフである。男性の年収変化は少ないが、女性は無収入者が多いだけに100万円程度年収が増える者は多いが、離婚前に年収200万円程度であった者は、それ以上にはなかなか増やせてはいない。B-2は児童扶養手当の有無別にみたもの、B-3は末子年齢別、B-4とB-5は離婚後と離婚前の就業形態別、B-6は転職女性の収入変化、B-7は児童手当を受けてない者の年収変化見込みである。
 定期金の支払いを受けているかどうか、児童扶養手当を受けているかどうかは収入水準を若干上げていることが付録のB-2に示されているが、この詳細は次節で検討する。


4.養育費・一時金の支払い状況とその決定因

4-1 養育費・一時金等の支払いの状況
 離婚に伴う財産分与、慰謝料、養育費等の取り決めの有無を見ると、「あり」が女性で39%、男性で26%ある。「あり」のうち文書がある者は半数程度であって、女性56%、男性48%である。つまり文書での取り決めがあるものは、女性の22%、男性の13%に過ぎず、きわめて低い。
 また離婚時に一時金を受け取った者はより低く、全体で13%、女性の15%のみである。女性について見れば、取り決めがあったとした者の32%、文書で取り決めがあったとする者の39%が一時金をもらっていた。その金額は中位数が160万、平均が416万円である。うち子供の養育費として一時金がある者が女性の6%、その金額の中位数は12万円である。
 また別れた配偶者から「定期金」がある者は23%、女性の27%である。女性に対する定期金の中位数が月額5万程度、平均値は6.92万円である。定期金のうち子供の養育費は中位数が月額同じく5万円程度、平均値は5.83万円である。定期金金額を回答した者が416人、うち子どもの養育費の額を回答した者が388人である。(金額がわからない者を含めると、定期金ありの441人中389人が養育費がある)つまり一時金は子ども養育目的が少ないのに対して、定期金は養育費として受け取っている者の割合が高いということとなる。
 女性について見ると、一時金を得ている者が231人、定期金が430人、両方を得ている者が、126人である。

4-2 養育費や一時金の支払いの決定要因
 養育費の支払いが少ない点が目につくが、どのような特性が養育費の支払い額を上げるのか、養育費の支払いを挙げる要因を合理的に説明できるか計量分析を行った。
 養育費の額を決める要因として、子どもの年齢と人数(子どもが幼くて働きに出られないと想像されるほど、養育費の支払いが増える)が重要だろう。加えてもと配偶者に支払い能力があるかどうかが大きいと考える。また専業主婦だったかどうか(専業主婦であれば、経済力が当面ないことから定期金の支払いが増えるのではないか)、子どもと定期的に面会をしているほど(全く面会なしの場合は、子どもへのお金の払い甲斐が減るのではないか。逆にほとんど毎日会う場合は、お金の支払いよりも物の持参ともなるのではないか)増えると考えた。
 また一時金の支払いについては、夫婦が共同で形成した財産の分割の側面があるから結婚期間が長いほど増えるのではないか(結婚期間の変数がないため、子供数や妻の年齢で代理する)と考えた。一時金は慰謝料の側面もあり、どちらの側に問題があったかが影響を与えると考えられるが、データからはわからないため、これは分析には含められない。
 支払いを全く受けてない者が多いため、トービット分析を行った。図表3-2-13が定期金、養育費(定期金に含まれている)に関する結果である。それぞれ2つの結果を示したが、左は、「取り決めの有無」を入れた結果、右はこの変数を除いた結果である。両者を比べると、「取り決めの有無」を入れた場合に、擬似決定係数に表される説明力は大きく上がっているが、これを除いた場合には、説明変数は有意なケースは多かったものの、式全体の説明力はきわめて低い。つまり「取り決めをしたかどうか」が定期金、養育費の支払いにきわめて重要であり、「取り決めの有無」を考慮すると、子ども数が支払い額を増やすといった説明変数の説明力も上がった。つまり一般的に考えて、定期金、一時金の支払いを増やすと考えられる変数は、直接に「養育費の支払い」、「一時金の支払い」額を説明するというよりは、いったん「取り決めをすることが合意された」場合において、その額の多寡を説明する要因というべきであった。
 「養育費」は、子どもが1人増えると増加、また、専業主婦だった場合、6歳以下児童がいる場合、面会が週か月で決まっている場合などに養育費額は増加する。またもと配偶者の年収の高さも緩やかに関係している。しかしながら一番重要なのは、取り決めの有無である。

図表3-2-13 定期金・養育費の額の決定因の計量分析-トービット分析-

 一時金も同様に「取り決めの有無」が重要である。図表3-2-14が結果であるが、年齢が上がるほど、おそらく夫婦共同で形成した資産の清算の色彩も強いと考えられるが一時金の払いは増える。また幼い子どもがいること、専業主婦であったことなども一時金の支払いを増やす。夫の所得は子どもと異なり有意ではない。今回も「取り決めの有無」が重要であるが、この変数を入れても、「養育費」よりもはるかに説明力は低い。一時金については、どちらの側に問題があったかなどがより重要となるためではないだろうか。

図表3-2-14 一時金の受け取り額の決定因の計量分析



5.児童扶養手当の申請と受給

5-1 児童扶養手当の認知と申請の状況
 女性の95%が児童扶養手当があることを認知しており、認知度は大変高いといえる。また認知している者の86%が申請している。申請した女性のうち、受給中の者が47%、申請中の者が45%、支給停止中の者が5%である。
 申請しなかった14%の女性は申請した女性に比べてやや正社員比率は高く、(35%に対して49%)、パートの者が40%に対して22%と低いものの、無業の者も19%に対して14%おり、必ず高収入というわけではないように見える。しかしこれは子ども年齢が18歳をこえて支給資格がなくなることにもよるのかもしれない。女性の年齢が上昇するほど、認知はしていても申請しない者が増えている(『人口動態社会経済面調査報告』(1997)参照)。

5-2 児童扶養手当の申請、受理の決定因のプロビット分析
 誰が児童扶養手当を申請し、誰がこの調査の時期まで(離婚後3ヶ月)ときわめて早い間に受理されるのだろうか。
 図表3-2-15の左の蘭から、申請は、末子が中学生以上の場合有意に下がること(18歳より上の可能性がある)、見込み年収が低いほど増えることなど、申請受理のための要件(18歳以下の子ども、所得制限)などが良く知られていることがわかる。一時金等の多寡は、支給制限には入らない(資産調査はなく所得調査のみである)。実際、一時金は申請と無関係である。一方、定期金をもらっている者については、有意水準は高くないが、申請が下がる可能性があることが示されている。
 次に図表3-2-15の右欄は、離別後3か月の間に既に申請が受理されたのは誰かを見たものである。最右欄の偏微係数は、説明変数の限界的な変化が申請受理に与える影響を示している。例えば末子の子ども年齢が0-2歳の場合は、中学生以上の場合に比べて、28%申請受理されている確率が高く、末子が小学校高学年の場合は、これが15%であることを示している。全般に末子が幼いほど、申請受理は早いようである。また離婚前に常勤の職を持っていたほど、すぐには受理されにくく、さらに離婚後、仕事に就く努力をしている(が内職などより低所得である)方が無職や自営業等に比べて早く受理されていると解釈できる。

図表3-2-15 児童扶養手当を申請する者、受理される者の計量分析



6.暮らし向き全般
 女性の心配事は、子どものこと、経済的なこと、仕事と子育ての両立などが多い。男性の場合は、子どものこと、仕事と子育ての両立、家事のことなどが多い。
 女性は再婚の意思はないが36%と多く、機会があれば再婚したいは19%、男性は逆に前者は10%、後者は41%であり、結婚に期待するものの男女差が見られる。
 離婚後の生活状況(経済状態)の変化について、「苦しくなった」は女性に61%。男性の36%に比べて経済問題は大きい。女性の場合、就業形態に変化がないケースでも苦しくなったが、57%、就職した、転職したケースでは63-64%が苦しくなっている。
 9月の収入から9月の支出を除いたものを黒字・赤字として、男女それぞれが100%となるようにした上で、分布をみたものが図表3-2-16である。女性は赤字が多い。収支ほぼ均衡およびそれより赤字の者が全体に占める割合を見ると、男性は35%、女性は69%である。「収支とんとん、もしくは赤字」の女性の比率を見ると、児童扶養手当受給中の者では64%、申請中では75%、定期金ありでは66%、定期金なしでは72%である。赤字の原因は、収入が少ないことだけでなく、支出も多いことにある。両方のデータのとれる女性(1261サンプル)の収入平均は13.5万円、支出平均は15.2万円である。これに対して赤字が10万未満5万円以上(196人)の女性の平均収入は10.6万円とより低く、平均支出は17.0万円とより高い。逆に黒字が10万未満5万円以上の女性(91人)は平均収入が19.9万円とより高く、平均支出が12.2万円とより低い。

図表3-2-16 9月の収支----男女でみた赤字と黒字の状況

 おそらく女性に見られる高い赤字は、離婚前の主に配偶者の所得に基づいた消費水準を離婚後の低い所得に合わせた消費水準に調整できていないことにあるのだろう。調整しにくい支出としては子どもの教育費や住居費などがあると想像される。また離婚前の夫の収入が高いほど調整が必要となるだろう。
 赤字の要因を最小二乗法で見ると、実際に末子が低学年のうちは黒字が多く(逆にベースである中学生以上の場合に赤字が増えることを意味する)、子ども数が多い場合、またもとの配偶者の年収が高い場合に赤字が拡大している。親族同居の場合は、その支援があるためかそれは黒字要因となっている。また離婚前専業主婦であるほど、赤字となりやすく、離婚後常勤の仕事を得ていることは、黒字要因である。一方、児童扶養手当を申請し受給されていることや定期金の額は、この分析の中では有意な影響を与えてはいなかった。

図表3-2-17 黒字赤字の規定要因(女性)



7.子どもの心の状態の変化
 子どもの情緒がどのように変化したか、女性が親権者の場合について、子ども年齢、母親の就業の変化、転居の状況、兄弟別れの有無や父親の面接の状況、経済状況(年収、自己認識、および養育費の有無)などを説明変数として、「良くなった」を1とするプロビット分析を行った。
 全般に説明力は低かった。離婚した父親が、離婚後3ヶ月間に定期的に面会していることは、子どもの情緒、友人関係、親権者との関係に離婚直後のこの時期にはどちらかというと負の影響を与えるようである。子どもが混乱するかもしれない。また母親の転職や就職は、変化であるが、子どもの情緒に対してどちらかというと良い影響を与えている。仕事が見つかったことの親の喜びを素直に子どもが受け取っているからかもしれない。同様に、経済の客観的な条件(離婚後収入、養育費があるかどうか)よりは、「楽になった」という親の認識が子どもの情緒、あるいは子どもの友人関係の改善を女親に認識させている。
 また子どもの年齢が幼いほど、子どもと親の関係は離婚後に安定するようである。兄弟別れは情緒不安定の要因かと考えたが、そのようなことはなく(友人関係が悪くなったというケースのみ有意な場合があったが)、むしろ引き取った親子の関係は近くなったと親は認識している。
 図表3-2-18で示したのは、「良くなった」の結果だけであるが、「悪くなった」も同じようにあまり説明力は高くなかった。しかし「良くなった」という認識をしている親は二桁台であり、「悪くなった」と認識している親は一桁台と前者がより多く、離婚は子どもの心を安定させたと親権者が考えていることがわかる。

図表3-2-18 子どもの心の状態の変化(女性)



8.おわりに
 協議離婚女性の収入は協議離婚男性と比べて特に低い。なぜ離婚女性の収入がこれほど低いのだろうか。

<1> 協議離婚が出産後まもない時期に起こっているケースが多い。

<2> 出産を機に女性の半数は無業となっており、また安定した仕事に就いていない場合が多い。

<3> 一時金や養育費の支払いがなされているケースが少ない。もとの配偶者の経済力がこれを規定していると限らない。「取り決め」がなされている場合に、支払いは増えるが、取り決めがされることそのものがまだ多数とはなっていない。

<4> 新たに仕事に就く者も少なからずおり、「常勤」の仕事に移る者も少なからずいるが、賃金水準は高くはない。過去の仕事経験の長さが賃金を規定しているが、転居する者もおり、仕事をもっていても仕事を続けられると限らず、また仕事をもっていない者が多い。この中で、親族資源、これがない者も児童扶養手当は、離婚直後の変動期への対処にプラスの影響を与えている。

<5> 児童扶養手当の存在は、良く認識されている。離婚後3か月以内で既に受理されている者は、末子が幼い者、就業努力はしているが低収入な仕事に就いている者などに多い。

<6> 子どもが幼い場合、親同居に移り当面をしのぐ者が多い。また親同居の場合、家計赤字が減少する要因でもあり、家のスペースやその他の援助を受けとっているのだろう。しかし反面、子どもが一定年齢以上の場合、父子家庭に比べると母子家庭ほど親から独立している場合が多く、いつまでも頼れるものでもないのだろうと想像される。



 長期で見るとより重要なのは、安定的な就業収入の確保だろう。離婚がまだ子どもが幼く、厚いケアが必要な時期に起こっていること、かつ、就業中断をしている女性が大多数であることなどから、職業技能形成には一定の援助が必要と考えられる。この点については、『母子世帯の母への就業支援に関する調査』を用いた分析に譲ることにしよう。
 またもう一つ重要なのは、「定期金」「一時金」の支払いの「取り決め」を義務化することである。ただし末子が中学生となるまで続いた結婚が壊れる場合には、もと夫の収入の不安定も大きい要因と想像される。また子どもの年齢によらず、離別した夫の3割から5割は離別前の年収が200万円未満であることから、養育費の支払いが難しい父親も少なくない。いずれにせよ、子どもが幼く、ケアが必要な時期については経済的な補填の制度化が、中長期的には、仕事能力形成が重要であるだろう。


参考文献
厚生省大臣官房統計情報部(1997)『人口動態社会経済面調査報告 離婚家庭の子ども』
(注1)夫婦双方が日本人で、平成9年6月1日から30日までの間に協議離婚をした者のうち、平成9年1月以降に別居し、親権を行う子を有している者を調査対象としており、調査期間は平成9年10月1日から10月15日、保健所が人口動態調査離婚票をもとに調査客体の選定を行い、この名簿に基づき郵送配布、厚生省への直接郵送返却としてある。

(注2)人口動態統計によれば、子ありの離婚は離婚全体の6割である。また協議離婚が離婚全体の9割を占める。つまりこの統計は、「子有り離婚」についてはその9割をとらえていることになる。また離婚全体では5割強をとらえていることになる。



付 録

 以下の箱ひげグラフの箱の中のラインは、中央値を表している。また箱の上は第3四分位点を、下は第1四分位点を表している。箱の横幅は、サンプル数に比例して幅広となっている。つまりA-1のグラフでは、離婚後の就業形態を見ると、常勤とパートアルバイトがほぼ同数くらいいることを示している。○ははずれ値である。図には、目安として100万、200万、男性は加えて500万で横線を入れてある。

A-1 離婚後の1年間の見込み年収(離婚後の就業形態別)


 女性全体の離婚後の1年間の見込み年収の中位数は約150万円である。
 女性は常勤であっても中位数が220万円程度で、第3四分位が約300万円、第1四分位が160万円程度である。
 男性の場合は、常勤がほとんどであり、中位数が約400万円である。常勤の離婚後収入の中位数は約400万円であるが、全体でみても中位数が約400万円と変わらない。女性の150万円よりはるかに高い。
 子ども年齢の上昇につれて年収は増加している。子どもが幼い時点での離婚が女性に大きい経済不安をもたらすことがわかる。しかし離婚女性の中で0-2歳児を持つ女性がもっとも多い。
 男性も子ども年齢に依存して年収が上がっている。ただし男性は年収が高い子どもが中学以上での離婚が多く、女性は、子どもが幼い時点での離婚が多い。つまり女性が主に幼い子どものケア負担を担い、結果として低年収となっている。

A-2 一番幼い子どもの年齢と離婚後1年間の見込み年収

 女性は賃貸が多く、また年収は、親同居と母子寮、賃貸、給与住宅、持ち家の順に低い。持ち家では第3四分位が350万円近くと高い。大多数を占める賃貸住宅居住者については、低年収の中、家賃負担は重いと想像される。
 男性も年収が低い順番はほぼ女性と同じである。ただしもっとも割合が高いのが、賃貸住宅ではなく、持ち家、ついで親の家である。持ち家では第3四分位は600万円を超えている。

A-3 離婚後の住居の状況と1年間の見込み年収


 続いてB-1以降は、離婚前の年収から離婚後年収(見込み)を差し引いた離婚前後の収入の変化を縦軸にとってある。これは女性は目盛りを幅広にするため、離婚前の年収が700万円未満(これ以上の者が9名いる)の者に限っている。図には目安として収入変化0円と100万円とに横線を入れてある。

B-1 離婚前の収入と離婚後収入の変化(予想)

 箱の大きさは人口に応じて幅広にしてあるが、女性は離婚前は年収0の者が多く、次いで年収51万円~100万円までの者が多い。
 年収0、50万以下だった女性については、100万以上年収増が見込まれている。しかしもともと50-150万年収があったものは、第3四分位でようやく100万程度年収増を予想。第1四分位は年収変化がない。年収151~200万円以上の者は、下落は少ないが、中位数では年収変化の予想はほとんどなく、第3四分位で年収増がある程度である。つまり200万以上に子持ちの女性が年収を増やすことの困難が伺われる。
 これに対して男性は、もっとも多いのは、年収301万から400万の層、ついで年収501万から1000万以上も12名いるが、これを含む501万以上の層である。男性の場合、年収変化はほとんどない。あるのは、0だった者の変化だが、中位数で200万円以上上がっている。
 所得確保がどれだけ母子世帯に難しいかということであるだろう。
 離婚後3ヶ月までに既に児童扶養手当を受けている者が右の図である。児童扶養手当を受けていない者(左の図)よりも、年収が0だった者など低所得層を中心に年収の上昇幅は大きい。

B-2 女性 児童扶養手当有無 離婚前収入と離婚後の収入変化(予想)

 どの子ども年齢でも母親の見込み年収は100万円近く上昇しているが、子ども年齢が上昇するほど、第3四分位が上昇している。子どものケア負担が少ないだけ、本格的に働くことが年収増を可能とするからではないだろうか。(中央値は逆に子ども年齢が上がると大きくは上昇していない。これは離婚前からフルタイムで働いている者も多いからではないか)。一方、年収増の中央値が高いのは、子ども年齢が幼い者である。これは、おそらく年収0の者が多かったためだろう。

B-3 女性 一番幼い子ども年齢別に見た離婚前収入と離婚後の収入変化(予想)

 常勤者がもっとも変化の幅が大きい。これは、もともと常勤の仕事を持っていた者は変化額が0の者が多く、一方、無職から常勤にうまく移れた者などでは、増加分が大きいからだろう。

B-4 女性 離婚後の就業形態別に見た離婚前収入と離婚後の収入変化(予想)

 もともと常勤だった者は上昇の余地が少ないが、無職者は100万の上昇が中央値である。

B-5 女性 離婚前の就業形態別(女性、年収700万円未満)

 転職者の見込み年収は、特に常勤の者で上がっている。

B-6 転職した女性(離婚前年収700万円未満)の年収変化

 常勤は上昇の余地が少ない点は同じ。児童扶養手当を支給されていない無職者であって、年収変化をゼロと見通している者が4分の1ほどいる。児童扶養手当の支給がない場合、自力では離婚後の1年では「年収変化の見通しなし」が全体で4分の1ほどいるということだろうか。

B-7 離婚前の就業形態別(女性、年収700万円未満)、児童扶養手当なし




第3章 母子世帯の母のキャリア形成、その可能性
    ─『就業構造基本調査平成9年』を中心に


1.はじめに
 母子世帯の母の就業機会や仕事の安定性は、離死別後、年数を経るごとに改善するのだろうか。どのような場合に改善が期待できるのだろうか。第3部第2章の『離婚家庭の子ども』では、協議離婚直後の状況を見ると2歳以下、あるいは6歳以下の児童を抱える女性が4割、あるいは6割に達し、その多くが、離婚前は無業者であることが示されていた(注1)。本稿では『就業構造基本調査』、あるいは『母子世帯の母への就業支援に関する調査』を分析対象とすることで、離死別後、年数を経た女性の就業機会がどのように改善しているか(していないのか)を分析課題とする。『離婚家庭の子ども』調査によれば、協議離婚した女性親権者の年齢別分布を見ると、20歳未満は0.6%、50歳以上は2.4%であった。そこで『就業構造基本調査平成9年』の女性20-49歳を主な分析の対象とすることにした。この年齢の女性サンプル数は247,712人(有配偶164,102人、未婚71,032人、離死別12,357人)である。以下では母子世帯と比較するために主に18歳未満の子どものいる有配偶サンプル(以下「有子有配偶世帯」と呼ぶ)を用いるが、サンプル数は103,475(全体の43%)である。また母子世帯の定義は、総務省の就業構造基本調査の定義をそのまま用いる。これは有配偶以外の母と18歳未満の未婚の子のみで構成されている世帯であり、20-49歳女性で見ると3,825世帯(有子者の3.6%)である。第2部第1章では、親同居の母子世帯、あるいは子どもが18歳、19歳の母子世帯も含めて包括的な分析がなされている。そうした側面からの分析は第2部第1章に譲り、ここでは年齢層を限り、独立母子世帯の分析とする。有子有配偶世帯の妻の有業者は60,974人、無業者は42,501人(有業率58.9%)、母子世帯の有業者は3,323人、無業者は502人(有業率86.9%)である(注2)。また20-49歳女性に占める割合は、未婚者が31%、有配偶者が65%、離死別者が5%、母子世帯が1%である。
 第2節では労働力率、就業形態別の収入等を母子世帯と有子有配偶世帯の女性とで比較し、両者で大きく就業行動が異なることを示す。第3節では、母子世帯の女性が正社員の職にいつ頃就いたのか、参入年齢と賃金はどのような関係があるか、そうした行動は、有子有配偶世帯とどのように異なるかを見る。母子世帯は、中年期からの正社員参入も少なくないことが示される。第4節は、母子世帯と有子有配偶世帯との転職意識や職探し行動の比較である。現状の仕事では生活を支えられないとして、より良い仕事を探している者は母子世帯に多い。第5節は母子世帯と有子有配偶世帯での一人当たり生活水準の比較である。母子世帯の一人当たり生活水準は子ども年齢が上昇してもあまり改善されていない。第6節は主に賃金関数の推計である。人的資本の説明変数考慮後に、子どものいない無配偶者と母子世帯あるいは有子有配偶者の賃金はどのように異なるのか、さらに男性賃金関数と女性賃金関数とでは人的資本の係数がどのように異なるかを推計する。母子世帯は他の女性賃金と大きく変わらないが、男女の賃金格差は大きく、特に年齢評価が大きく異なる。第7節ではヘックマン型の賃金関数、労働供給関数および就業形態別の賃金関数の推計結果を示す。第8節は母子世帯がどのような就業支援を望んでいるのか、『母子世帯の母への就業支援に関する調査』を用いた考察である。第9節はまとめである。



2.母子世帯と有子有配偶世帯の就業率と収入

(1) 労働力率と仕事が主な者の割合
 母子世帯と有子有配偶世帯の労働力率を比較したものが図表3-3-1である。母親の年齢階層にかかわらず、母子世帯では労働力率が高い。一方、有子有配偶世帯は、母親が20歳代の労働力率は2~3割程度であるが、40歳代になると7割となり、母子世帯に近づく。
 また図表3-3-2は子どもの有無によらず、未婚、既婚、離死別で労働力率を比較したものである。無配偶の女性の労働力率は、有配偶女性に比べて高い。20歳代では、未婚女性の労働力率が最も高いが、40歳代になると、未婚者よりもむしろ離死別女性の労働力率の方が高くなっていることは興味深い。つまり「母子世帯」は子どもが幼いうちの労働力率こそ、未婚者よりも若干低いものの、中年期にかけて最も高い労働力率を持続する女性群である。

図表3-3-1 母子世帯と有配偶世帯の労働力率、 図表3-3-2 婚姻上の地位別にみた労働力率

 図表3-3-3は仕事が主な者の割合、図表3-3-4は仕事が従な者の割合である。18歳未満の子どもがいる有配偶世帯の女性は、労働力率が高まる30歳代後半となると、「仕事が主」な者も増えるが、同時に「仕事が従」な者の割合も高まる。一方、未婚、離死別、母子世帯等は、「仕事が主」な者の割合が年齢階層によらず高い。

図表3-3-3 仕事が主な者の割合、 図表3-3-4 仕事が従な者の割合


(2) 個人の就業収入、その他の世帯収入および収入の種類
 この節以降は、18歳未満の子どものいる有配偶女性と母子世帯の女性を比較する。まず本人の就業収入の分布全体を100%として分布を母子世帯と有子有偶世帯と比べると、有配偶の母の年収が0円と50-99万円に偏っているのに対して、母子世帯の母の年収は、150-199万円がもっとも多く、50万円以上249万円以下に60%が入り、有配偶世帯の妻よりは高い。

図表3-3-5 本人の就業収入の分布

 次いで本人の就業収入と他の世帯収入に着目しよう。『就業構造基本調査』は、「世帯全体の年間収入」に加えて「個人の仕事からの年間収入」が12の階級値でわかる。このため近似に過ぎないがそれぞれ階級の中央値を所得として当てはめ、世帯所得から個人所得を引いて本人の就業収入以外の収入変数を作成、これを誤差が相対的には小さい本人所得699万円までについて母子世帯と有配偶世帯とを、末子年齢で区切り比較したものが図表3-3-6と図表3-3-7である(注3)。
 有配偶世帯では、無業者とパートが多いが、その区分(本人年収0~150万円程度の範囲)を見ると、本人の年収が0や、低収入であるほど本人の就業以外の収入(夫の収入など)の平均が高くなっている。しかしサンプル数は相対的には少なくなるものの、本人が正社員等で働いていると想像される世帯(本人年収250万円以上)では、本人年収が高くなるほど、本人の就業以外の収入(夫の収入など)も高くなる傾向が見られ、こうした傾向は、子ども年齢にかかわらず見られる。ただし子ども年齢が上がるほど、母親が世帯収入の低さを補填するために働く行動がより大きく見られるようになる。

図表3-3-6・図表3-3-7 母親本人の就業収入以外の収入

 一方、母子世帯の場合、無業者や100万円未満の低収入者には平均で100万円程度の「本人の就業収入以外の所得」がある。これは児童扶養手当や遺族年金と想像される。

図表3-3-8 母子世帯の主な収入、従な収入の種類

 収入の種類を見ると、図表3-3-8の通り母子世帯の場合、主な収入の9%、従な収入の16%が「その他」である世帯があり(有配偶世帯にはほとんどいない)、これは児童扶養手当や養育費と想像される。他には年金・恩給を得ている世帯が主な収入として4%、従な収入として6%、仕送りが主な収入として2%、従な収入として4%である。しかし『就業構造基本調査』の収入は階級値であるため、これ以上に細かい特定はできない。

(3) 就業形態別に見た就業収入
 次に、本人の就業収入を就業形態別、年齢階級別にみることにする。正社員、パート、その他雇用(派遣、嘱託含む)、自営業等の平均年収を年齢階級別に、母子世帯と有子有配偶世帯とで比較した。
 賃金は生産性を反映するものであり、就業経験による賃金上昇が大きいほど、技能形成が大きい仕事であることを基本的には意味する。
 母子世帯、有配偶世帯ともに、年収が年齢上昇とともに最も力強く上がるのは、「正社員」である。20歳代では平均年収は200万円代だが、30歳代では300万円台に上昇する。
 ただし「正社員」に限定すると、パート等を含めた図表3-3-1(前出、240頁)とは逆に、有配偶世帯における有子女性よりも母子世帯の女性の年収が全般に低い。図表3-3-9の通り、例えば40歳代で見ると、有配偶世帯の妻の場合、年収は350万円を超えているが、母子世帯の母の平均はようやく300万台である。
 その他の就業形態を見ると、年齢とともに賃金が明らかに上昇する状況はあまり見られない。「パート・アルバイト」(図表3-3-10)は、有配偶世帯の母の平均が100万円を下回るのに対して、母子世帯の母は、120-130万円程度と逆に母子世帯の方が高い。しかし年齢とともに賃金が上昇することはなく、平均100万円強の収入にしかならない。おそらく有配偶世帯では、100万円を目指した就業調整行動が多く、母子世帯の母にはこれがない分、労働時間が長いということを反映し、若干年収が高いのではないかと推察される。

図表3-3-9 正社員の本人年収、 図表3-3-10 パート・アルバイトの本人年収

 賃金収入という点では、より高いのは、自営業・家族従業の母子世帯であり、年収200万円弱である。有配偶世帯の女性よりも全般にかなり高いが、これは本人収入が、有配偶世帯と異なり、夫の収入の中にまぎれて入ってしまうということがないためかもしれない(図表3-3-11)。
 最後に、「嘱託・派遣・その他雇用」の賃金は、有配偶世帯の女性は平均してパートよりもかなり高いが、母子世帯の場合は、100万円程度と、パート・アルバイトよりも高いことはない(図表3-3-12)。

図表3-3-11 自営・家族従業の本人年収、 図表3-3-12 嘱託・派遣・その他雇用の本人年収




3.仕事についた年齢と仕事機会

(1) 年齢と就業形態の変化
 前節では「正社員」は全般に賃金水準が高く、かつ賃金上昇(技能形成)があることが示された。しかし同時に母子世帯の母は、同じ年齢層で見ると、有配偶世帯の母よりも賃金水準が低い。これはなぜなのだろう。
 この節では、20-49歳の有子有配偶女性に限定したが、母子世帯の母の正社員比率は48%と、有子有配偶世帯の母の22%に比べると格段に高い。
 また年齢階層別に分布を見るとより特徴が明らかになる。
 図表3-3-13は有配偶世帯の女性の就業形態を年齢階級別に見たものであるが、子どもが幼い頃の無業者比率はきわめて高い。20歳代では、7~8割近くが無業者である。正社員比率は年齢上昇とともに若干増えていくが、パート比率も正社員比率と同様に高く、また40歳代後半でもパートとほぼ同割合の無業者が残る。
 母子世帯の母の場合は、図表3-3-14の通り年齢にかかわらず無業者が少ない。子どもが幼いと考えられる20歳代のころは、無業ではなくパート・アルバイト比率が人口の過半数を占める。子ども年齢の上昇とともに正社員比率が増えていき、30歳代後半以降、正社員比率が半数を占める。
 つまり母子世帯の母は、賃金水準が高く、技能形成もある安定した正社員の仕事に、子ども年齢上昇につれて有配偶世帯の妻以上に移っているということが確認された。

図表3-3-13 有子配偶世帯の就業形態、 図表3-3-14 母子世帯の母の就業形態

 『母子世帯の母への就業支援に関する調査』で補完してみよう。現在の就業形態が「正社員」である母子世帯の母について、転職回数なしが6割、1回が19%、2~3回が15%、4回以上が4%である。一方、パート・アルバイトでは転職回数なしが5割、1回が21%、2~3回が30%、4回以上が9%である。
 母子世帯になる前に正社員だった者が36%、母子世帯になってから新しく正社員の職につけた者が32%である。
 これまでの世代に関しては、離死別後に正社員の職についていた者が3人に1人いることに加えて、転職を経て正社員の仕事に参入している者が多いことがわかる。その一方で非正社員の仕事の中でより「まし」な仕事に変わろうと転職を繰り返しつつも、非正規就業のままの者も少なくない。またこの調査では、若い世代ほど新しくついた仕事にパート・アルバイトが増えている(30歳未満で44%、40歳代では4割弱、本報告で藤原も言及、第3部第1章参照)。全般に90年代に入り非正規化が進んでおり、正社員の仕事を見つけることは、より困難になっている可能性は高い。

(2) 就職年齢と就業形態
 このように母子世帯では中年からの正社員への参入が比較的活発に行われている。
 より詳しく正社員になった年齢と就業形態、賃金の関係を見てみよう。
 現在の仕事の勤続年数を年齢から差し引いて、その仕事に新たに就いた時の年齢を算出する。図表3-3-15より、「正社員」の仕事に就いている有子有配偶女性は、その6割が27歳前に現在の仕事に就いている。つまり有配偶女性で正社員の仕事に就いている者は、結婚・出産の時点で「仕事を持ち働く」ということを見通した上で、就業継続した者が多いと推察される。有配偶女性では、現在正社員の仕事に就いている者で、28~35歳までに就職した者は約2割、40歳代となるともっと減少する。逆に「パート・アルバイト」には、年齢が上がって参入するケースが多く、35歳以降に現在の仕事についた者が半数である。
 母子世帯は逆に、「正社員」でも年齢が上がって参入した者が多く、「パート・アルバイト」はもっと若いうちでの参入が多い。

図表3-3-15 現在の仕事に就いた年齢


(3) 中高年からの正社員への参入の可能性
 さらに現在年齢をコントロールして見たものが図表3-3-16である。ここでは「正社員」の参入が、中高年齢者でどの程度可能かを見たいという意図があり、「正社員」のみを取り上げて示した。たとえば現在40-44歳層の女性を見てみよう。有配偶の女性の場合、35歳までの参入が、75%を占めている。いわゆる巷で喧伝される「35歳以降の求人減少説」を裏付ける。(現在の就職先の勤務年数を年齢から差し引いた年齢をここでは参入年齢と呼んでいる。これ以前の就業履歴はこのデータではわからない。)

図表3-3-16 現在年齢別に見た正社員就業者の再参入年齢

 しかし母子世帯の女性に限れば、35歳以降に現在の正社員の仕事に就いた者が大多数を占める。現在40-44歳層を見ると、有配偶では35歳以降に正社員である現職に就いた者は23%だが母子世帯では48%と高い。45-49歳層を見れば、有配偶では41歳以降に就いた者は20%だが、母子世帯では43%である。
 以上のような結果は総合すると、次のように解釈できる。母子世帯の場合、年齢が若い当初は幼い子どものケアもあり、とりあえず、パート・アルバイト的な仕事に就く者が少なからずいる。一方、有配偶女性は子が幼いうちは無職である者が多数いるが、若年時の正社員の仕事をずっと継続している者も一部いる。
 子どもが一定年齢以上になると、有配偶者ではパートへの参入が増えるが、母子世帯の母では正社員への参入が増える。正社員への参入は、40歳代後半になっても母子世帯では続き、有配偶者の妻も40歳代後半となり子育て負担が解消されるとその一部は正社員の職に参入する。
 ではなぜ「35歳からは求人がなくなる」と巷で言われるのだろうか。図表3-3-17では有配偶女性、母子世帯(有配偶は45-49歳、母子世帯は人数が少なくなるため40-49歳)の参入年齢ごとの職種を見たものである。

図表3-3-17 40歳代で正社員である女性の現在の仕事に就いた年齢別に見た職種

 全般に年齢が上がるほど、技能工・製造等労務職や、サービス職が増え、「事務職」等は減少する。一方、専門的職業従事者は、若いうちに就いた仕事をそのまま継続し40歳代にいたる者が半数を占める。専門的職業従事者は若年参入・継続者が多い職種である。
 母子世帯と有配偶世帯とで参入年齢別の職種の差はあまりない。とすると、母子世帯は、40歳代となって、労務職やサービス職を中心に正社員になるが、有配偶女性は、あまりそうした行動をとらない(若いうちから仕事を続けるか、あるいはパートや無職のままで過ごすかという選択が多い)ことがわかる。
 おそらく中年から正社員での仕事に参入したにしても、賃金上昇が限られていることが知られているからだろう。このため、有配偶の女性の場合、配偶者の収入が安定していれば、40歳代後半になってから本格的に働く誘因が少ないということなのではないかと思われる。
 図表3-3-18は、「正社員」の年収分布を(就職年齢による変化を見るために40歳代の女性に限って)就職年齢ごとに見たものである。まず左側の有子有配偶女性を見ると、27歳より若い時点で就職した勤務先での勤続を継続している者が44%を占め、年収ピークは500-699万円と飛びぬけて高い。また就職年齢が上がると、賃金が低い正社員が増える。再就職年齢が41歳以降では年収300万円程度の者も少なからずいるが、その一方で年収150-199万円の正社員も一つのピークを形成している。
 母子世帯(右側)を見ると、目立つ有子有配偶世帯の女性との差は、若い頃からの同一企業勤務継続者の割合が、有配偶者と比べるときわめて少ないことである。1番多いのは、28-35歳からの就職者である。年収はやはり若い頃からの仕事を継続している者がより高賃金となっている。

図表3-3-18 40歳代の正社員女性、就職年齢と年収分布

 つまり35歳が大きい区切りとは思えないが、確かに若いうちに仕事に就いた方が、年収が300万円を超える正社員になる可能性は高いと言えそうである。

(4) 就職年齢と賃金経路
 最後にもう一度就職年齢と平均の賃金経路の関係を、全体、および正社員に限って見てみよう。
 母子世帯は有配偶者世帯と異なり、自身のみの就業収入で家計を支えていく必要がある。図表3-3-19の通り、有配偶女性の場合は、就職年齢が遅いほど賃金が低く、就職当初は年収100万円程度が少なくない。母子世帯の母は、25歳以降はどの年齢層でも最低でも平均200万円程度の稼得収入を得ている。子育て負担がある中でも、少しでも高い収入を得られる仕事を選択していることが見てとれる。しかし仕事継続によって年収が300万円を超えることも少ない。特に年齢が上がって就職した場合、賃金の伸びは大きくない。母子世帯の大多数は、中年以降に現在の就職先に勤務をはじめた者である。だから平均で200万円程度の賃金しか稼得できていない。40歳以前に就いた仕事を継続できた場合、年齢上昇とともに、稼得賃金は300万円近くへと改善している。比較的若い時点で継続を望むような比較的良好な仕事に就けたかどうかが重要となっている。

図表3-3-19 現在の仕事に就職した年齢と賃金経路

 第2章からは、近年では、幼い子どもを抱えた若い女性の離婚が多いことがわかった。こうした女性が、安定した仕事に若いうちに就くことができ、これを継続できるということが重要だということが示唆される。しかし実際には、子どもが幼いことは正社員や安定した職への採用を難しくする。ここに幼い子どもを抱える母子世帯の大きいジレンマがある。
 正社員に限定してみたものが図表3-3-20である。中高年の就職者について、有配偶世帯の母よりも年収が平均で低いということはない。しかし賃金の伸びは高くはなく、40歳までに現在の仕事に就いていても、45-49歳での平均年収は300万円を少し超える程度である。

図表3-3-20 現在の仕事に就職した年齢と賃金経路(正社員に限定した場合)

 さらに図表3-3-14で見たように、40歳代後半でも母子世帯の女性の3割程度は非正規雇用であり、そうした就業形態では年齢によらず年収100万円程度しか稼得できていないことを忘れてはならないだろう。
 母子世帯の中で一番経済的に恵まれるのは、若い頃についた正社員の職を継続できた場合である。この場合、図表3-3-20で示されるように40歳代で年収500万円近く稼得できている。次いで35歳までに正社員の職に就いた場合、賃金の伸びはさほど大きくないが、より早くから収入が安定する。非正社員の仕事は経済的には安定しない。
 比較的若い時期に安定した正社員の仕事につけるかどうかが収入の確保には重要である。

(5) 母子世帯に見られる勤続の短さと「予想外」が必要とする調整
 図表3-3-21は、子どものいる世帯の母親の勤続年数を母子世帯と有配偶世帯とで比較したものである。左側は末子が9-18歳の子どものいる世帯、右側が6歳以下の子どものいる世帯である。

図表3-3-21 子どものいる母親の勤続年齢

 全体に母子世帯の母親の勤続年数は短期間に偏っている。特に6歳以下の子どもを持つ場合に顕著である。
 おそらく有配偶世帯の母が子どもを持って就業を継続する場合、その選択は長期的視点に立ったものなのだろう。これに対して母子世帯の母親の場合はもともと予想していなかった離別や死別をきっかけとする就業であり、夫婦2人(あるいは同居親の援助含む)の子育てから、母親単身での子育てへの変化である。
 6歳以下児を抱える母子世帯の勤続状況を見ると、「勤続2年以下」が有配偶では2割だが母子世帯では4割と多数を占めており、離死別をきっかけに仕事に就いた者が多いことがわかる。第2章で見たように幼い子どもを抱えた女性の離婚は多く、就業支援の必要性が痛感される。
 末子が9-18歳になった場合には、有配偶女性についても労働市場への再参入者も増えるから、有配偶世帯の女性と母子世帯の女性の勤続格差は縮小する。しかし子どもが一定程度成長した後も、やはり母子世帯の勤続の方が短い。これは、パート・アルバイト等の仕事で生計をたてている者については、勤続による賃金上昇が少ない就業形態であるだけに、母子世帯の母は少しでも収入の多い仕事を求めて転職しているからではないだろうか。あるいは母親一人で子どものケアをしているために、ケアの事情等により転職せざるを得ない場合も多いのではないだろうか。



4.より良い仕事を求めて
 母子世帯の9割近くが仕事を持っているが、その仕事には満足しているのだろうか。
 この節では有業者の転職希望意識や転職希望職種などを母子世帯の母、うち40歳代の者、18歳未満の子のいる有配偶女性、35歳以上の未婚女性とで比較する。母子世帯の中で40歳代の者を特に集計したのは、子ども年齢が上がり、落ち着く中でどの程度母子世帯の職が安定したかを見たいからである。また未婚女性を35歳以上に限定したのは、自身の収入で自立して生きる必然性が高まる点で、母子世帯と類似性があると考えたからである。有子有配偶女性は18歳未満の子供を持つ母親としての比較として入れた。
 まず図表3-3-22は、有業者全体の就業継続、あるいは転職希望意識である。母子世帯は、現在仕事に就いていても、これに満足な者の割合が相対的に少ない。現在の仕事の仕方で良いとする者は、7割弱である。有子有配偶女性、あるいは35歳以上の未婚女性の双方とも、8割が自分と仕事との関係に満足しているのに対して、母子世帯では転職希望が2割強おり、さらに、生計費が足りないためだろうか、追加就業希望者が10%いる。40歳以上になると現在の仕事で良いとする者は少し増えるが、大きく増えてはいない。

図表3-3-22 有業者の就業継続・転職希望意識

 転職希望者の転職希望理由を見ると(図表3-3-23)、母子世帯では「収入が少ない」が4割と高い。次いで「時間的・肉体的負担が大きい」が高いが、これは有配偶者や未婚者よりは低い。さらに「将来性がない」が未婚35歳以上の者と同様に高い。現在および将来を支えられる仕事につきたいということが転職希望の大きい理由である。

図表3-3-23 転職希望理由

 では転職希望者、追加就業希望者はどのような就業形態に就きたいと望んでいるのだろうか。図表3-3-24の通り、母子世帯は、正社員希望が6割近くと高いのが特徴である。35歳以上の未婚者の正社員希望が5割程度とやや低いのは、すでに多くが正社員であるからではないか。35歳以上の有業未婚者の正社員比率は68.3%、母子世帯は49.9%である(無業者比率は、35歳以上の未婚者の23.1%に対して母子世帯は13.1%であり、有業率そのものが母子世帯の方が高いため、人口全体で見ると差は若干縮小し、35歳以上未婚女性の正社員比率は52.6%、母子世帯の母は44.3%である)。一方、有子有配偶女性の転職希望先は、パート・アルバイトも4割と高く、仕事に求めるものが大きく異なる。

図表3-3-24 転職・追加就業希望者が希望する仕事の形態

 また図表3-3-25は正社員になることを希望している者の割合を、現在の就業形態別、家族属性別に見たものである。母子世帯では、現在非正規雇用についている者で、正社員に変わりたいという希望が7割近くと、子どもがいる有配偶女性の4割と比較すると格段に高い。また未婚者に比べても高いのは、子どもがいることが、社会保険等のある安定した仕事への志向を高めるからではないだろうか。

図表3-3-25 現在の就業形態別に見た正社員への転職希望者の割合

 最後に、母子世帯について、転職希望理由と現在の就業形態の関係を見ることにした。図表3-3-26の最下段に示されているが、転職希望は、現在「パート・アルバイト」、あるいは「その他雇用」の者では3割と高く、現在「正社員」である者は18%とより低い。
 しかし注目されるのは、非正規雇用ばかりでなく、現在の就業形態が「正社員」である者についても、「収入が少ない」という理由での転職・追加就業希望が3割いることである。

図表3-3-26 母子世帯の現在の就業形態と転職希望理由

 こうした者の年収平均を就業継続・転職希望別に比較したのが図表3-3-27である。確かに同じ正社員でも継続就業希望の母子世帯の平均年収は291万円、転職希望は234万円であり、両者には差がある。200万円台の前半では教育費等も考慮すると足りないのだろう。しかし母子世帯の中ではより経済的に安定していると想像される就業継続希望の正社員についても、35歳以上の未婚女性、あるいは有子有配偶女性等と比較すると、それぞれ410万円、345万円に対して母子世帯では291万円であり、経済的にはかなり厳しいと想像される。

図表3-3-27 転職希望者・就業継続希望者等の現在の平均年収

 また転職・追加就業希望者の求職活動の有無を見ると、図表3-3-28の通り、母子世帯では半数が仕事をしながら実際に仕事探しをしている。これは未婚者や既婚者の転職希望者に比べてもかなり高い割合であり、仕事探しは活発である。目前の生計費の不足と、また子どもという生きがいが、仕事に就きながらの諦めない求職活動の継続の支えとなっているのではないだろうか。
 母子世帯は87%が仕事についており、そのうちの3割が収入の不足等から転職を希望しており、さらに希望者の半数は実際に求職活動をしている。まさに、母子世帯の課題は、どうやって「仕事につくか」ではなく、どうやって「生計を維持するに足るだけの良好な仕事に就くか」なのである。

図表3-3-28 転職希望者・追加就業希望者の求職活動の有無




5.子ども数と暮らし向き
 このデータからわかる暮らし向きを母子世帯とその他の世帯とで簡単に比較してみよう。
 図表3-3-29の通り、母子世帯の労働力率は常に8~9割であるが、世帯年収平均は、35歳未満では200万円に達せず、40歳以上でも250万円程度であり、有子有配偶世帯の3分の1にも達していない。本人の稼得収入は平均で30歳代までは200万に達せず、40歳代になりようやく200万に届く程度である。同じように子を持つ有配偶女性と比べれば、35歳未満では本人収入は2倍以上、35歳以上でも本人収入で見れば1.5倍の収入を稼得してはいるものの、男性世帯主収入と女性世帯主収入の格差は大きく、世帯収入としてはきわめて低水準である。「本人以外の世帯収入」が推計で約50万円程度あり、これが低い年収を多少ながら補填している。これは、児童扶養手当や養育費の仕送り、あるいは遺族年金等であり、さらに40歳代に入るとやや増えているのは、おそらく子どもが成長しアルバイト等で働き出すことからだろう。

図表3-3-29 世帯収入・労働力率の比較

 一人あたりの収入水準を算出してみよう。ここでは単純には世帯年収を世帯人員で割ることはしなかった。永瀬(2001)では、家計調査と食費コストを用いた研究から、子どもの大人換算を、6歳以下は0.13人、7-13歳は0.3人、14-22人は0.27人と推計した。そこでここでは、14歳以下の子どもは0.3人、15歳以上の世帯員は、1人目は1人、2人目以降は、2人で使えるものも多いことなどから0.5人とおいて、一人あたりの収入水準を算出した。つまり同居の大人、あるいは同居の15歳以上の子どもは0.5人として計算し、世帯規模の利益等を考慮した上で一人あたりの消費可能収入を計算した。このようにして有効世帯人員を計算し、世帯収入を割って一人あたり収入を計算したものが図表3-3-30である。

図表3-3-30 一人あたりの収入(等価尺度を用いた人員換算)

 母子世帯は、子どものいる夫婦世帯、未婚女性、未婚単身女性、どの世帯よりももっとも貧しい。有子有配偶世帯の消費可能収入は1人あたり30歳代前半で291万円であり、未婚者も同じ世代で336万円、一人暮らしの場合は301万円であるが、母子世帯では同じ年齢層で132万円である。
 しかも年齢階層が上昇しても平均で見ると生活は安定していない。45-49歳層では、有子有配偶世帯は、父親の収入の増加や、母親の就業が増えること、あるいは子どもが1人くらいはすでに独立することなどから、一人あたり消費可能収入は349万円になっているが、母子世帯では171万円である。
 ことに子どもが幼い場合、稼得収入が低く、一人あたり所得は低下する。母子世帯では6歳以下の子どもがいる場合の1人あたりの収入は120万円、末子7-14歳で152万円である。一方有子有配偶世帯でも、おそらく年功賃金や母親の非就業を反映し、6歳以下の子がいる世帯ではやや低いが、それでも一人当たり収入が286万円、7-14歳の子がいる世帯では322万円と母子世帯のいずれも2倍以上である(図表3-3-31)。

図表3-3-31 子ども年齢と収入

 また図表3-3-32の通り、子ども数が増えるほど生活水準は低下している。子ども数が増えるほどに収入が増えるというわけではないからである。子ども数が5人の世帯となると、夫婦がいる世帯であっても、一人あたりの収入は200万円と低くなっている。これは日本の社会保障制度において、児童手当が低く、子ども数に応じて十分に増えないからでもあるだろう。

図表3-3-32 子ども数と生活水準



6.女性の就業確率、賃金関数の推計と男性賃金との比較

(1) 方法
 この節では、賃金は「子どもを持つ」こととどうかかわっているか、また「母子世帯」はどのような特徴があるか、女性の中で、また男性も含めて比較を行う。
 次のような推計を行う。

 A.就業選択確率の推計を母子世帯、有子有配偶について行う(両者はどのように異なるのか)。

 B.母子世帯と有配偶世帯で賃金関数は異なるかどうか推計する(母子世帯の賃金が何らかの理由で低いということがあるかどうか)。

 C.男性の賃金関数と女性のそれとを比較する。

 賃金率は、このデータの設問には含まれていない。そこで「年間就業日数」、「週間労働時間階級」、「個人の就業年収」の3つの階級値に一定の仮定を置いて求めざるを得ない。就業日数階級から「推計年間就業週数」を算出、これと週間労働時間階級から「推計年間労働時間」を算出、次いで年収階級の中央値を推計年間労働時間で割ることで「推計賃金率」とした。この対数を賃金関数の被説明変数とする(注4)。なお賃金率は、主な収入が賃金・給与の者に限り算出した。児童扶養手当等が、個人の年間の就業収入に紛れ込んでいる可能性があると考えたためである。また賃金率の高い者および低い者上下2%は異常値として除いた。図表3-3-33、図表3-3-34、図表3-3-35は、家族属性別に推計した労働時間や賃金率の平均を示したものである。

図表3-3-33 家族属性別に見た年収平均と推計週間就業時間数平均
図表3-3-34 家族属性別に見た推計賃金率平均と推計年間労働時間平均
図表3-3-35 家族属性別に見た推計賃金率対数平均とサンプル数

 このようにして求めた賃金水準の数字を平成9年『賃金構造基本調査』と比較すると、短時間労働者でやや高め、フルタイム労働者でやや低めである(注5)。このような差は、主に50万円から100万円程度の幅のある階級値を、比較的幅の大きい週間労働時間階級値と年間労働日数階級値の中央値で割ったことによる誤差から生じたものと考えられる。しかし誤差は正と負の両方向に分布していると考えて賃金関数の推計を行うことにしたい。また労働時間の長短が推計賃金にバイアスを生じさせている可能性を考えて、フルタイムの労働者に限った推計なども行う。
 上下2%を異常値として除いた上で、賃金データのとれる有配偶者は約72,015人だが、このうち末子が18歳未満である有配偶女性は、42,802人であり、これが図表3-3-35の最右欄の「有子有配偶」である。両者の差は約30,000人であるが、そのうちわけは同居子どもが18歳以上の者が、11,000人弱、同居子どもがいない者が19,000人である。(同居子どもがいない女性は、20歳代前半の既婚者の76%、後半の既婚者の55%、30歳代後半で最低の17%であるが、再び、45-49歳層の有配偶女性の39%となる。)なお説明変数に欠損値がある場合はそのサンプルは除いて賃金関数の推計を行う。

(2) 母子世帯と有配偶世帯の就業確率の推計
 母子世帯と有子有配偶世帯の母とで就業確率を別々に推計したものが図表3-3-36の左の欄と右の欄である。一番大きい差は幼い子どもがいることが就業を抑制する度合いである。方向は類似だが規模は母子世帯ではほぼ半分である。末子6歳以下がいると有配偶世帯の母の労働力率は33%下がるが(偏微係数の欄参照)、母子世帯では約半分の15%しか下がらない。末子7-14歳がいる場合も、末子が15歳以上の場合と比べて有配偶者の労働力率は10%程度低下するが、母子世帯の低下はここでもほぼ半分である。子ども数は、2人を基準として3人以上いる場合に有配偶女性の労働力率は5%ほど高まり、一方子どもが1人の場合は、労働力率が下がる。また下がる度合いは母子世帯は有配偶世帯のほぼ半分である。

図表3-3-36 就業確率の推計 1

 次いで達成学歴の効果を見ると、有配偶世帯に比べて母子世帯では、中卒に対して短大・大卒の労働力率の上昇がより顕著であり、特に短大卒者の上昇は大きい。
 また就業以外の収入額が母親の就業を抑制する度合いは母子世帯でより大きい。これは母子世帯のほとんどが生計維持のために働いているからであろう。またもう一つ、働いていない場合に「他の世帯所得」が計測されやすいというデータ上の問題もあるかもしれない。ここでは世帯収入から個人の就業収入を引くことで「本人の就業以外の収入」を求めるという大雑把な方法によっているため、児童扶養手当や養育費等の部分的な推計しか出来ていない。平成9年時点では、子どもが1人で年収が204万円以下だと約49.7万円、子どもが2人で年収が265万以下であると、約55.7万円が児童扶養手当として支給された。またこれを超えると児童扶養手当は一部支給となり、子ども1人年収が300万円までは33.2万円、子どもが2人で年収が354万円までは39.2万円が支給された。しかし階級値幅が300万円以上では100万単位と大きくなる関係で、本人の年収が300万円の前半の場合は他の収入が合計で50~100万円近くない限り、他の収入は計測されにくい。逆に非就業の場合は、必ず「他の世帯所得」が計測できる。つまりここで推計されている「就業以外の収入」が就業に与える効果は、児童扶養手当や養育費にあたると考えられるがその支給額が就業行動に与える効果をこのデータで正確に推計できているわけではない点には留意が必要である。
 また有配偶女性は中年で労働力率が上がる効果が見られるが、母子世帯ではそのような効果は見られず、一貫して高い。
 次いで図表3-3-37は、母子世帯と有配偶世帯を合わせて労働力率の推計をしたものである。説明変数は、図表3-3-36から大きい差が見られた「末子年齢」をより詳細にし、また「末子年齢」、「他の世帯収入」、「学歴」について、母子世帯との交差項を入れた。

図表3-3-37 就業確率の推計 2

 学歴に関しては、中卒に比べて学歴が上昇するほど労働力率は上がるが、母子世帯ではその効果が30%も(大卒の効果が7%、加えて母子世帯で大卒であることの効果が22%)高いことになる。
 また末子年齢が16歳以上に比べて、例えば末子年齢0-3歳では41%と大幅に母親の労働力率は下がるが、母子世帯の場合は、低下幅が15%ほど小さいことが推計されている。母子世帯で小さいという効果は末子が4-6歳までは有意だが、7歳以上では母子世帯特有の効果は有意には推計されていない。
 また子ども年齢や学歴を通じた効果と別に、母子世帯であることは労働力率を18%有意に上げる。
 他の収入源があることが、就業を抑制する度合いは、母子世帯の女性では有配偶女性に比べるとはるかに大きい。これは既に述べたように、実際の効果かもしれないし、またデータの歪みから拡大して生じている効果である可能性も高い。
 日本の母子世帯の労働力率の高さは国際比較の中でも際立っている。なぜ高いのか、という点について、<1>有配偶世帯に見られる子どもが就業を抑制する大きい効果が母子世帯では緩和された度合いでしか見られないこと、<2>就業以外の所得源がきわめて少ないことなどが考えられる。

(3) 母子世帯と有配偶世帯の賃金関数の推計
 次に母子世帯の賃金関数を推計する。「母子世帯はそうでない世帯に比べて説明できない理由によって賃金が低い」といったことが見られるだろうか。クロス集計表を見ると、母子世帯の賃金は、例えば「正社員」や「嘱託」等を見ると、同じ年齢層では有配偶世帯よりも若干低く、「パート・アルバイト」等では若干高めであった。
 結論を先に言えば、母子世帯だから賃金が差別的に低いということはなかった。むしろ、母子世帯は、同じように子どもを持って働く有配偶女性と比べると、少しでも賃金の高い仕事を活発に探す結果ではないかと思われるが、若干賃金が高いという有意な効果が見られた。しかしながら、その水準は、有配偶女性よりもごくわずかに高いにすぎなかった。またそうした努力よりも「正社員」になれているかどうか、「職種」は何か、「企業規模」が大きいところに就職できているか、といったことが賃金水準に大きい差をもたらしていた。
 次の方法で賃金関数の推計を行った。

<1> 賃金の説明変数に「学歴」、「勤続」に加えて「母子世帯」ダミーを入れて最小二乗法で賃金関数を推計、「母子世帯ダミー」の効果を見る。さらに「就業形態ダミー」を加えて、「母子世帯ダミー」の変化を見る。これを未婚者も含めた20-49歳女性全体、および18歳未満の子どものいる世帯に対して行う。

<2> 次いで18歳未満の子どものいる世帯のみを取り上げる。
・「勤続」、「学歴」を説明変数に入れて考慮した上で、「母子世帯ダミー」または「母子世帯」×「勤続」の効果を見る。母子世帯は出産離職後、母子世帯になった後に再就職する者が多いことが第2章の分析から示唆される。そこで、中年期からの子持ち就職を果たした母子世帯については、同じ勤続年数であっても、賃金を上げる効果が薄いのではないかと考えてこうしたクロス項を入れた。

・さらに「職種」、「企業規模」、「居住地域」、「就業形態」などの変数を加えて、「母子世帯ダミー」または「母子世帯」×「勤続」の効果の変化を見る。

まずは<1>の結果から報告する。

図表3-3-38 賃金関数の推計 1 (未婚者等を含む20-49歳女性、就業者全体)

 図表3-3-38の左2欄は未婚者等も含めた20-49歳の有業女性で主な収入源が給与・賃金である者について、賃金関数を推計したものである。まず「学歴」、「勤続」のみを説明変数とした最左欄では、有配偶者は無配偶者に比べて賃金率が13%程度低く、また無配偶でありかつ子どもがいる母子世帯であると4%弱であるが、子どもがいない場合よりも賃金率が低いことが示されている。しかしこうした差は、「正社員でなくパートで働いている」といった差によるかもしれない。左から第2欄では説明変数にパート、正社員といった「就業形態ダミー」を入れた結果である(ベースは家族従業・自営業である)。すると、賃金差のきわめて大きい部分が就業形態によって説明されることがわかる。たとえば家族従業や自営業で賃金を得ている者に比べると、正社員は37%、パート・アルバイトは6%、時間あたり賃金率が高いということが示されている。つまり正社員とパートとで見れば賃金差が30%程度あるということになる(家族従業・自営業等を除きベースを「パート・アルバイト」とすると「正社員ダミー」の係数は28%であった)。また有配偶だと賃金が低いという効果は、就業形態に多くが吸収され、賃金が低いという程度は3%程度に縮小、母子世帯だと賃金が低いという効果は統計的には有意な効果は持たなくなる。次いで18歳以下の子どもがいる場合に限るとどうか。右2欄であるが、母子世帯は、18歳以下の子どものいる有配偶女性に比べて、3%程度は賃金が高いことが示されている(就業形態ダミーを入れない場合は13%程度も高い)。3%はきわめてわずかではあるが、世帯を支えるために、少しでも良い仕事をと求めることが、若干の賃上げを可能としているのかもしれない。
 <2>の結果(18歳以下の子どものいる女性を対象に限り、説明変数を追加していった結果)は、図表3-3-39以降から示されている。
 図表3-3-39は、年齢階級別に、学歴、勤続、勤続二乗項を説明変数とする賃金関数を推計し、「母子世帯ダミー」を入れたものが上の表、「母子世帯ダミー」だけでなく、「母子世帯」と「勤続年数」のクロス項を入れたものが下の表である。最左欄が18歳未満の子どもがいる有配偶または母子世帯人口全体での推計である。次いで20歳代、30歳代、40歳代の結果を示してある。

図表3-3-39 賃金関数の推計 2 (18歳未満の有子世帯、就業者全体)

 まず賃金関数全般を見ると、20歳代については、勤続が賃金を上げる効果が高いことが目立つ。1年の勤続が11%程度賃金を上げるが、40歳代になるとその効果は2%程度と低くなる。逆に年齢が上がるにつれ学歴が賃金を上げる効果は拡大することが大卒ダミーの大きい正の効果に見られる。
 「母子世帯ダミー」の係数であるが、係数は有意に正であり、母子世帯であることは、賃金を下げるよりはむしろ上げる効果があることが示された。20歳代では有意ではないが、30歳代では8%、40歳代では14%、学歴や勤続が同じ者を比較すると賃金が上がるという効果がある。また母子世帯だと勤続係数が下がるという効果は、全体、および30歳代で見られた。
 次いで図表3-3-40は図表3-3-39にさらに「職種」、「従業者規模」、「地域」、「就業形態」などを賃金の説明変数として加えたものであり、年齢階級別および全体について賃金関数を推計したものである。「学歴」や、「就業形態」の効果は、「職種」や「企業規模」等を加えると、ここにかなりが吸収される。たとえば図表3-3-38の有子有配偶者については、「正社員」は家族従業等よりも39%も賃金が高かったが、図表3-3-40では従業者規模等の効果の中にも係数は吸収され、今回は「正社員」効果は28%代に縮小している。また大卒が中卒よりも時給が5~6割高いと出ていたが、これも職種等に吸収され、今回は2割程度の差に縮小している。「母子世帯」の効果は、このようにさまざまな変数を考慮した上でも、全体、および40歳代では有意に正である。わずかに4~5%と規模は縮小しているが、若干だが有意に高い賃金となって表れている。

図表3-3-40 賃金関数の推計 3 (18歳未満の有子世帯、雇用者に限る)

 正社員のみを取り出したものが、図表3-3-41である。ここでは「母子世帯」*「勤続効果」が有意に負に効くケースが多かった。30歳代、40歳代では、勤続が1年増えると賃金が2%増えるという効果が見られるが、母子世帯では勤続効果が1年あたり0.5~3%程度有意に低いという計測結果となっている。母子世帯の多くは中年からの入社であるが、中年からの1年の勤続の効果は、若年層からの1年の勤続の効果より低いということが、母子世帯の負の係数に表れているのではないかと考える。しかしこうした勤続の負の効果を除くと、母子世帯は、職種、企業規模、学歴、地域等を考慮した上で、母子世帯でない有子女性に比べると、7~19%程度高い賃金を稼得している。正社員については、世帯主であるということで、企業から若干の扶養手当等が支給されることで差が出ているのかもしれない。

図表3-3-41 賃金関数の推計 4 (18歳未満の有子世帯、正社員に限る)

 賃金率は、収入を労働時間で割ることで求めているが、短時間労働者の場合、賃金の誤差が大きくなりやすい(注6)。そこで労働日数が250日以上、労働時間が35時間以上とフルタイムに近い者について、賃金関数を推計したものが図表3-3-42である。ほぼフルタイムで働く女性の賃金を説明するのは何だろうか。パート等を含めた推計に比べると、若干学歴の効果は小さくなっている。勤続は有意だが効果は20歳代を除くと1年につき1~2%とわずかである。13大都市では賃金は1~2割近く高いが、これ以外に大きい影響を与えているのは従業者規模や職種である。たとえば事務職は、労務作業職よりも2~3割程度賃金が高く、企業規模20人未満と比べると、企業規模300人~499人以上では賃金率は3割程度、また1000人以上だと賃金率は4割程度も高いと推計されている。また同じ企業規模に勤務していれば、「就業形態」が説明する部分は大きい。正社員は非正規雇用に対して賃金が4割程度も高い。

図表3-3-42 賃金関数の推計 5 (フルタイムで働いている18歳未満の有子世帯、雇用者に限る)

 このような差を考慮した上で、ここでも30歳代、40歳代では母子世帯の賃金は有意にわずかに高いことが示されている。ただしより大きく賃金を高めるのは、職種、就業形態、あるいは、勤務先の企業規模である。
 これらの結果は、賃金水準そのものを有子有配偶世帯と母子世帯とを比較して、後者が前者に比べて高いことを意味するものではない。同じ勤続、同じ職種、同じ地域、同じ学歴、同じ就業形態と、属性をそろえた場合に、母子世帯の賃金率がやや有意に高いということを示しているに過ぎない。だから母子世帯の方が平均して勤続が短かければ、母子世帯の賃金水準は低いことになる。
 こうした「母子世帯」が他の条件を一定として賃金を上げる効果は、最後のフルタイムの者ばかりの賃金関数によれば約5%程度である。これは「正社員」になることが、フルタイムで働いてはいるがパート・アルバイト等であることに比べて賃金を上げる効果が4割程度に比べれば小さい効果でもある。つまり、同じパートの職、あるいは同じ正社員の職の中で、より高い仕事を確保できる仕事を注意深く探すことで5%程度賃金は上昇するかもしれないが、これ以上に、良好な雇用機会を提供する企業に安定した身分で雇用されるかどうかに収入水準の上昇と安定がかかっている。

(4) 男性賃金関数との比較
 では女性と男性の賃金関数はどの程度どのように異なるのだろうか。
 図表3-3-43は、「学歴」、「勤続」、「就業形態」と「有配偶かどうか」を説明変数として賃金関数を男女賃金2%上下のはずれ値を除いて推計したものである。

図表3-3-43 男女別の賃金関数の推計 1 (雇用者に限る)

 これは両者を別々に推計したものであるので、男女を比べたものではないが、1年あたりの「勤続効果」は男性では3.5%、女性は3%弱と同じ勤続でも男性の方が賃金上、高く評価されている。「学歴効果」は女性の方が高い。またパート・アルバイトと正社員との格差も女性の方が大きく、男性では小さい。逆に「有配偶かどうか」は男性の賃金を17%引き上げるが、女性の賃金は逆に3%引き下げる。
 図表3-3-44は上記の説明変数にさらに「年齢階層」、「子どもダミー」を加えたものである。年齢階層ダミーを入れると、勤続効果は、年あたり男性は2.8%、女性は2.4%と、男女間の勤続効果の格差は縮小する。その一方できわめて大きい年齢ダミーの差が顕在化される。20歳代の男性に比べると、40歳代の男性は、25~30%も賃金が高いが、女性については、5%程度の差があるに過ぎない。この男女格差を経済合理的に説明しようとすれば以下のようになる。男性は勤続年数が短い者も一般に他企業での仕事経験が長いために勤続以外の年齢部分が評価される。一方女性は、一般に離職期間が長い者が多く(このデータでは離職期間そのものはわからない)、勤続以外の年齢部分が評価されない、という解釈である。

図表3-3-44 男女別の賃金関数の推計 2 (雇用者に限る)

 しかし男性には「年功的賃金」が適用されるが、女性にはそうした「年功的賃金」が適用されていないという見方も可能である。そこで、図表3-3-45は男女合わせて賃金関数を推計した上で、1番右の欄は、男性および未婚女性のみについて推計した。未婚女性であれば、子どものケア等の事情によって、離職することも少なく、また離職したとしても無職期間が短いと想像されるためである。
 図表3-3-45では、女性の効果が男性とどのように違うのかを、女性と説明変数を掛け合わせたクロス項の係数から見ることができる。

図表3-3-45 男女別の賃金関数の推計 3 (雇用就業者)

 既に指摘したように学歴や正社員であることといったことが賃金を引き上げる効果は女性の方が高い。たとえば中央の段を見ると、男女共通の大卒効果43%に加えて、女性特有の大卒効果が11%見られ、学歴が高いことは、女性ではより大きく中卒者に対して賃金を引き上げている。また「正社員」であることは、パートやアルバイトであることよりも男女ともに20%程度賃金率を高めるが、加えて女性である場合は、女性のパート・アルバイトと比べてさらに10%程度賃金が高まる。
 しかし女性であることは、単独で約25%賃金を低めているというのが女性ダミーの負の係数が示すところである。特に年齢階層が上がるほど女性であることが賃金を引き下げる効果は拡大する。40歳代であることは、20歳代である場合と比べて賃金を2割強引き上げるが、もし40歳代でありかつ女性であれば、むしろ賃金は2割弱下がる。つまり合計では女性についてはほとんど賃金が上がらないのと同じとなる。このような女性ダミーと年齢階層のクロス項の負の係数の規模は30歳代ではより小さいが、年齢が上がるほど負の係数は拡大している。
 勤続効果については、年齢階級ダミーを入れないケース(最右欄)では女性の勤続係数は男性よりも0.6%程度低いが、年齢階級ダミーを入れると男女差は有意ではなくなる。男女格差の重要な一つの原因は、勤続の評価よりも年齢の評価だということになる。
 未婚女性の場合はどうか。未婚女性でもやはり女性ダミーは有意に負である。また年齢階層が上がるほど、女性であることが賃金評価の上で負に評価される度合いはほとんど変わらない。
 つまり「離職期間」があることが女性の賃金を低めているというよりは、「女性」に年功的賃金が適用されないという解釈がより妥当のように思われる。
 同じような推計を正社員のみを取り出してやってみても、結果は大きくは変わらない。女性であることは、賃金率を25%程度引き下げ、かつ、年齢階層が上がるほど、女性であることが賃金を引き下げる。教育の効果は女性でより大きく、また正社員のみに限るとはじめて、勤続評価が女性の方で若干高く出るという差がある程度である。



7.就業選択とセレクション修正済みの賃金関数および労働供給関数

(1) 就業セレクション修正済みの賃金関数と労働供給関数の推計
 以上の賃金関数の推計では就業選択と賃金とのかかわりについて考察していない。
 しかし女性の場合、有配偶女性の半数は働いてはいない。働く女性は、特定の観察できない質的な差がある者である可能性も考慮して「就業している」という条件付のもとで賃金が観察されているバイアスを修正するのがヘックマンの賃金の2段階推計法である。そこでこの節では、

 A.ヘックマンの2段階推計法を用いて、賃金関数と労働供給関数を推計し、「母子世帯」ダミーを賃金関数、あるいは、労働供給関数に入れて、何らかの効果があるかどうかを見る。

 B.「正社員」、「パート・アルバイト」、「派遣・嘱託等」、「民間企業の役員」、「自営業」、「無職」等の仕事選択がどのように母子世帯と有配偶世帯とで異なるかを推計し、そうした選択を加味した上で賃金関数を推計する。

 Aの結果が、図表3-3-46、図表3-3-47である。

図表3-3-46 賃金関数の推計 1 (ヘックマンの2段階推計を採用)
図表3-3-47 賃金関数の推計 2 (ヘックマンの2段階推計を採用)

 まず図表3-3-46はきわめて興味深い結果である。通常賃金関数には「子どもが幼い」といった効果は入れない。しかし女性の場合、子どもを持つことが賃金を引き下げることが知られている。そこでそうした変数を説明変数に入れたところ、通常の「最小二乗法」では、「6歳以下の子どもをもって働いている者の方の賃金が高い」という、他の諸外国では例のない効果が見られた。しかし2段階推計を行い、有配偶、母子世帯、子どもの年齢などによって就業選択を推計し、その上で、働く、働かないという選択行動が与える影響を加味した上で賃金関数を推計すると(左欄)、この効果は見えなくなる。その意味するところは、6歳以下の子どもがいて働く者は少ないが、6歳以下の子どもがいて働いているということと女性の賃金が高いということが強くかかわっているということである。一つの解釈をすれば、6歳以下の子どもを持ちつつ働く女性は、日本の中では、「学歴」や「勤続」等が同じであっても、さらに見えない部分で特に賃金が高いグループに多いということになる。
 しかしその「見えない部分」の多くは、「就業形態」で説明されるようである。つまり6歳以下の年齢の子どもをもって働く女性の多くは、正社員を選択した者に限られている。このことが、6歳以下の子どもをもって働く女性の賃金が高く見える一つの原因であった。賃金関数の説明変数に図表3-3-47のように「就業形態」等を入れると、図表3-3-46と異なり、最小二乗法で見た場合も、6歳以下の子がいると有意に賃金が高いということはなくなる(図表3-3-47の右欄、ただし非有意である)。
 また就業選択のセレクション修正をした図表3-3-47の左欄では、 就業形態等を考慮した上では、幼い子どもを持つことは賃金を12%引き下げるということが示されている。
 幼い子どもがいるが正社員就業をしている女性の賃金は有意に高いが、セレクション修正をしてみると、「学歴」、「勤続」等の説明変数で表されない賃金の高さと有業とが強く関連していることがわかる。幼い子どもを持ち、有配偶であり、かつ、就業を続けている女性は、仕事への嗜好、熱心さ等の「質」の側面で、賃金が高い者である。
 母子世帯の母は、これに対して、多くの場合、長期的な見通しを立てたわけではなく、当初の予定とは異なり、生計維持をするための仕事をしなくてはならなくなった者が多数である。
 次いで図表3-3-48は、図表3-3-46で推計された賃金率を説明変数に加えて行った労働時間(の対数)の推計である。図表3-3-49は、図表3-3-47で推計された賃金率を説明変数に加えて行った労働時間(の対数)の推計である。

図表3-3-48 労働供給関数の推計 1(ヘックマンの2段階推計を採用)
図表3-3-49 労働供給関数の推計 2(ヘックマンの2段階推計を採用)

 両結果は、高学歴ほど労働時間が短くなる効果、賃金率が上昇するほど労働時間が長くなる効果を示している。また正社員は自営業・家族従業等に比べて、労働時間が長く、パート・アルバイト等は逆に短いこと、大都市の労働時間は町村よりも短めであること、小規模企業よりも大企業の労働時間が長いこと、有配偶であることは労働時間を減らすことなどが推計されている。説明変数で説明されない労働時間選択と就業選択の誤差項の相関はなぜか負である。つまり(説明変数以外の部分で)市場労働に出る性向の高い者は労働時間が短くなる傾向があることが示されている。
 なお賃金の説明変数に企業規模や職種等を入れない推計賃金を説明変数に入れた結果(図表3-3-48)では、労働時間は賃金が上がると大きく延びることが示されている。しかし企業規模や職種等の説明変数も加えた結果(図表3-3-49)では労働供給の賃金弾性値はかなり小さいものに推計されている。
 興味深いのは再び「幼い子どもがいる」ことが労働時間に与える効果である。16歳以上の子どもがいる場合と比べると、子どもが11-15歳、あるいは7-10歳までの労働時間は短くなっている。しかし0-3歳の幼い子どもがいる場合に限るとむしろ労働時間は長い。幼い子どもを預けるコストをカバーするために一定以上の労働時間を働くようになるのだろうか。幼い子どもを持ちつつ仕事を続けるかどうか、というのは日本ではかなり特殊な選択となっている。
 母子世帯であることは労働時間には有意な影響を与えていない。

(2) 就業形態選択と賃金関数
 次いでBであるが、「就業形態選択」を多項ロジット分析で行ったのが、図表3-3-50である。末子年齢、学歴、子ども数、有配偶であることなどに対応して、無業に比べてどのような就業形態の選択が増えるかを見たものである。母子世帯である場合は、子ども年齢が幼くとも、無業に対して民間役員・家族従業以外のすべての就業形態での確率が上がる。有配偶者では、無業およびパート選択が高い。一方、母子世帯であることは、ほとんどすべての就業選択を上げるが、正社員のみについては、幼い子どもの効果を除くと下がるように出ている。これは未婚者の正社員選択確率が特に高いからだろう。

図表3-3-50 多項ロジット分析による就業形態の選択

 第1段階目を就業選択、第2段階目を賃金関数推計として、2段階の推計を行ったもの(Maddala (1983) : 276頁)のうち、正社員とパートについて示したものが図表3-3-51と図表3-3-52である。真ん中の欄は、最小二乗法、左右両側は、セレクション修正を行ったものであり、左側は、賃金関数の説明変数に子ども変数を加えてあるもの、右側はこれがないものである。

図表3-3-51 正社員の賃金関数の推計(セレクション修正ずみ)
図表3-3-52 パート・アルバイトの賃金関数の推計(セレクション修正ずみ)

 正社員とパートの賃金関数のもっとも大きい違いは、勤続効果が正社員では高いが、パート・アルバイトではわずかしかないこと、正社員では企業規模効果がきわめて大きいが、パート・アルバイトではほとんどないこと、職種の効果も正社員ではあるが、パート・アルバイトではほとんどないこと、パート・アルバイトでは学歴効果、あるいは専門職くらいしか人的資本係数で有意で大きい正の係数が見られるものはないことなどである。こうした特徴は既に良く知られている。また説明変数に「母子世帯」を加えても、これまでの推計と同様に多くの場合小規模で有意な正の係数が得られる。



8.母子世帯の就業支援
 この節では『母子世帯の母への就業支援に関する調査』を用いて、どのような形で母子世帯のキャリア形成に向けた就業支援が可能かを考察する。
 調査によれば母子世帯になった前後に、資格や技能の習得などに向けて準備した者は、16%に過ぎず、40%はその余裕がなかったとしている。離婚直後さしあたりの暮らしの立て方では、「勤労収入で支えた」者が6割、「預貯金を引き出した」者が4割と高い。その他に、児童扶養手当の受給が57%、親・親族からの金銭援助が27%、親・親族の家を頼ったが21%、遺族基礎年金の受給が16%、生命保険の保険金を使うが14%などであるが、「働く」あるいは「預貯金の切り崩し」が主な対処の仕方であれば、なかなか準備をする余裕もないだろう(注7)。
 しかし職業能力向上へのとりくみの希望は高い。希望なしは38%に過ぎず、残りの多くは職業能力向上を希望している。しかし希望が「ある」と明言したものは10%、「希望があるが実施できない」とした者が46%もいる。どのような者が「希望があるが実施できない」としているのかを見ると、末子年齢が幼い者(0-2歳児の母の51%、末子が15歳以上では41%)、収入が低い者(月収10万未満では53%、20万以上30万未満では46%)などである。
 希望しても出来ないのはなぜか。「費用が負担できない」が68%、「仕事が忙しい」が48%である。
 あるいは離婚直後の混乱期に職業能力向上のとりくみをするのは難しいかもしれない。しかしいったん落ち着いた段階で、こうした活動は非常に重要だろう。実際に、母子世帯になってからの期間別に見ると、「希望があるが実施できない」と回答する者は、離婚直後の者だけでなく、離婚後5-9年についても、49%という高い割合が、職業能力向上を希望しているが、なかなか実行できないとしている。
 資格・技能の取得状況で仕事に役立っている高いものに何があるだろうか。10の選択肢を挙げ、加えてその他という欄を設けた設問に対する回答を見ると「役立った」は、「介護福祉士」が91%、「看護婦」が75%、「パソコン」が61%、少し下がって、「ホームヘルパー」が46%、「調理師」が44%、「理・美容師」が40%である。役立ったとしている者は多い。ただしそうした資格をもっていると回答した者の割合は、介護福祉士1%、看護婦6%、パソコン3%、ホームヘルパー6%、調理師5%、理・美容師3%であり、資格保持者の割合は低い。低いながら、母子世帯になってから取得した割合が高いのは、「介護福祉士」の86%、「ホームヘルパー」の84%、「パソコン」の61%、「調理師」の37%である。
 母子世帯自身が望む就業支援策は、「訓練受講などに経済的援助が受けられること」が54%であり、「就職のための支援策などの情報が得られること」が40%である。また子どもが幼いうちは、「延長保育、休日保育の充実」、「学童保育の充実」が4~5割程度と高い。
 しかし9割近い就業率であるのに、「雇用保険」の加入状況を見ると、驚くことに加入していない者が37%もいる。雇用保険からの職業訓練は受けにくい土壌がある。
 黒澤(2003)は東京都の公共職業訓練期間(技術専門校)を終了した者に対して、訓練プログラムが就業率や賃金を上げているかどうかについて計量分析をしている。これについて、女性においては特に35歳未満の若い層について、昼、夜間、期間を問わず約50~70%という高い増収効果を報告している。ただし男性については、効果は昼間訓練については見られず、夜間訓練については30%高まるという結果である。さらに良いデータが必要と限界が記されてはいるものの女性については賃金に対して大きい職業訓練効果があったことが示されている。女性は労働市場においてはマイノリティ・グループであり、そうしたグループには職業訓練が有効というのは、大いに期待できる結果である。
 職業訓練校等公共職業訓練施設に通った者はどのくらいいるのだろうか。『母子世帯の母への就業支援に関する調査』ではわずか33人であり、割合としてはきわめて低い。
 さらに「求職にあたっての問題点」について、11の選択肢を挙げた中で、あてはまるという回答が高かったのは(多項選択)、「年齢制限があった」が39%、「子どもが小さいことが問題にされた」が32%、「求人自体が少なかった」の31%である。また「気軽に利用できる相談先、情報入手先がなかった」、「どこに相談すればよいかがわからなかった」も18%、10%である。
 母子世帯は経済不安を感じつつ、子どもの教育は無理をしてもしたいと考え、健康に留意し、働こうとしている。しかしステップアップをするためのゆとりが経済的にも時間的にもなかなかない。意識を見ると、もっとも同意が高かったのは、「自分が働かなくてはとプレッシャーを感じる」の58%、「母子世帯になってから自分の健康がより気になるようになった」の56%であるが、次いで「経済的に無理をしても子どもの教育は十分にしたいと思う」であり、49%がそう思うと回答した。その次に高かったのが、「母子世帯になって経済的に不安定になったと思う」の43%である。また「機会があったら再婚したいと思う」は年齢に依存するものの、平均しては少なく、「そうは思わない」が38%である(30歳未満の若い層ではそう思うが3割と比較的高い)。「夫は外で働き妻は家庭を守る」には40%が反対している。
 就業支援プログラムの充実、および、そのフォローアップ(本当に意味あるプログラムが提供されているかどうかの調査)が求められていると考える。



9.おわりに
 本稿は、18歳未満の子と母親のみからなる世帯を母子世帯と定義し『就業構造基本調査』平成9年から母子世帯と有子有配偶世帯との就業状況、経済状況を比較した。また補完として『母子世帯の母への就業支援に関する調査』を用いて分析した。
 第2節では労働力率と就業収入、本人の就業以外の世帯収入に着目した。同じ18歳未満の子を持つ世帯であるが、母子世帯の労働力率は高原型に高く、40歳代以降は未婚者に比べてさえも労働力率は高い。有配偶女性については無業者や100万円未満の就業者が多いのに対し母子世帯の稼得所得は全般に高い。しかし300万円以上は少数であり、配偶者の収入がない中で世帯収入は低水準である。正社員であれば稼得収入は年齢とともに上昇するが、他の就業形態では、年齢によらず収入はほぼ横這いである。
 第3節では、ライフサイクルを考慮しつつ就業状況の変化をたどった。有配偶女性は子どもが幼いうちは無業者が多く、やがてパート・アルバイトの割合が高まっていく。また一部には正社員の仕事を長く継続している者もいるが中途参入者は少ない。これに対して母子世帯は、子どもが幼いと思われる段階ではパート・アルバイトが多いが、30歳代以後正社員比率が半数近くと高まり、40歳代になっても正社員の仕事に新たに就いていく者が少なくない。
 第4節では就業継続や転職希望状況を見た。有配偶女性は現状の仕事に満足している者が多いが、母子世帯は収入が少ないといった理由での転職希望者、あるいは追加就業希望者が高く、現状継続を希望する者は7割に満たない。またそうした希望者の半数は、仕事の傍ら求職活動を行っており、高い就業努力が見られる。
 第5節では子ども数と暮らし向きを比較した。有配偶世帯でも多子世帯の経済状況は良くはない。しかし母子世帯では、子ども数によらず、また子ども年齢によらず(幼い頃はもっとも悪いが、子ども年齢が上がっても経済状況は大きくは改善せず)、一人当たり収入は際だって低く、経済状況は厳しい。
 第6節では、母子世帯と有子有配偶世帯女性の就業確率の推計を行い、また賃金関数の推計を行った。母子世帯は子どもが幼いと無職となる度合いが有配偶世帯に比べるとはるかに低い。また他の世帯収入がある場合には母子世帯の方がこれに感応的に無業化しやすいが、他の世帯収入の水準がきわめて低い結果として母子世帯の労働力率は高い。
 次いで男女で賃金関数を比較すると、男性は、有配偶の場合、あるいは子どもがいる場合に有意に賃金が高いが女性は逆に賃金が下がる効果が見られる。また男性は年齢とともに賃金が上昇するが、女性はほとんどこれが見られず、女性であることが(有配偶である、子どもがいるということとは別に)賃金を下げる効果は大きく、年齢階層が上がるほどこの効果は拡大する。このような労働市場の賃金構造があるために、母子世帯の稼得所得は世帯を支えるにしてはきわめて低いものとなっている。
 女性のみの中で見れば、母子世帯は同じ学歴や企業規模に雇用されていて、同じ就業形態に従事している有子有配偶女性よりも有意に賃金が高い傾向が見られる。おそらく少しでも賃金の高い仕事をと模索する結果なのではないか。しかし高い程度は5%程度といった規模である。男性と比べた賃金格差は大きく、5%程度では母子世帯の低収入を押し上げるには遠いものである。
 就業収入を上げるには、仕事分野、勤続、就業形態(正社員)といった点で、より安定した良い仕事に就くことが重要である。また男女の大きい賃金評価の格差を縮小することも重要である。
 第7節では、就業選択のセレクション修正を行った賃金関数、労働時間関数を推計した。日本の女性の就業行動は、出産を境に大きく分断されている。幼い子どもをもって就業継続をする者は日本の既婚女性では少数派である。しかしそうした者は、他の条件を一定としても、高賃金、あるいは仕事に高い志向性を持つ者に多い。つまり幼い子どもをもって仕事を継続するハードルは日本ではきわめて高く、このハードルを超えられた少数者は女性の中では高賃金を稼得できる。しかしこのハードルを超えられない者の多くは、(男性より全般に賃金水準が低い)女性の中でもさらに低賃金しか稼得できない。
 第8節では、就業支援として母子世帯が何を望んでいるかについて、『母子世帯の母への就業支援に関する調査』の結果を主に用いて考察した。母子世帯の半数以上が職業能力向上を望んでいるが、経済的、時間的ゆとりの不足からそれが実現できないと感じている。母子世帯の多くは、無理をしてでも子どもに教育を行い、健康に留意し、働かなくてはとプレッシャーを感じていると言う点で、自立志向が高い。こうしたグループに対して就業支援を行うことは方法によってはかなり高い効果が期待できると考える。
 もっとも経済状況が良いのは、若い頃の仕事継続を続けた一部の女性である。しかしこうした女性は、母子世帯よりもむしろ一部の有配偶女性に多い。母子世帯の多くは、こうした就業継続者であるよりは、子育て中に思いがけず母子世帯になり、それから仕事先を探した者が少なくない。それ故に経済基盤はきわめて脆弱である。生計維持の必要がありながら、子どもがいる女性の主婦賃金、あるいは主婦の労働市場の中に位置付けられているという点に大きい困難を見る。
 母子世帯の経済状況は、より若い時点でより安定した仕事(正社員の仕事)に就くことによって改善することが出来る。しかし問題は、その若い時点には子どものケア負担が大きく、「子どもが幼いことが問題にされ」仕事に就きにくいことである。その結果、正社員の仕事につく年齢は上昇してしまう。それでも賃金水準は、パート・アルバイト等よりは高いが、勤続による賃金上昇は限られ、たとえば41歳以降の正社員就職では実現できる賃金水準は平均で200万円程度に過ぎなくなる。
 母子世帯の母が抱える仕事と家庭の両立の問題は、母子世帯にきわめて特有のものというよりは、一般の女性の持つ問題と類似とインタビュー調査等から感じた。両立が難しい日本の労働市場の現状があるゆえに有配偶女性の多くは出産期に無業選択をする者が多い。仕事を続けるのは親同居である等一部の環境が整った女性であり、そうした支援が少ない女性は配偶者の有無にかかわらず就業継続は厳しい。母子世帯の母は、良好な支援条件がほとんどない中で就業と子育てに奮闘している点で、有子有配偶のフルタイム就業女性が抱える問題と重なる。
 しかし有配偶世帯とは異なる仕事上の支援の必要性も顕著である。就業意欲は高いが、就業能力を上げるための訓練に資金を出す余裕がないという点であり、加えて中途からの参入者が多いという点である。離婚前に無職やパート就業である者も少なくなく、さらに離婚後も雇用保険にカバーされないで働いている者も少数ではない。雇用保険を通じた就業支援は対象とならない者が多いことから、母子世帯に対象を絞った訓練機会の賦与は有効と考える。
 また有配偶世帯と異なる経済上の支援の必要性は大きい。母子世帯になって一定期間が経過した後、正社員に転職する者が増えるなどの自助努力が見られるが、それでも平均的な生活水準が改善されないのは、賃金構造の男女差という構造的問題も背景にはあるからだろう。
 しかしそれでも子ども年齢が上昇するとともに「正社員」の仕事に就ければ生活は安定し改善される。ところが近年の労働市場の非正規化は、正社員の仕事につくことをも難しくしていることだろう。幼い子どものケア負担を引き受けるのは主に母親であるが、離婚はもともと人生の「予想外」であるから安定した仕事を持たない中で離婚が起きている。また結婚観の変化によるものか、不況と若年男性の雇用の不安定化によるものかはわからないが、2章で用いたデータからは、きわめて幼い子どもを抱えて離別にいたる若い女性が多いということが示されている。
 一つの希望は、母子世帯の母の高い就業意欲である。中年からの正社員への参入、活発な求職活動など、状況が厳しい中でも精一杯努力がなされている。インタビュー等から感じたのは、子どもを育てるということが支えになっているということである。しかしそうした高い意欲があっても5節で見たように厳しい経済状況が続く。
 離別親の養育費支払いの取り決めを義務化するとともに、母子世帯に限らず「年功賃金」の恩恵を受けられない世帯に対しては、子どもを扶養するための手当の拡充、あるいは奨学金の一層の整備といった政策が必要なのではないだろうか。賦課方式のもと年金受給世代への世代間所得移転が行われているが、子育て世帯への移転ははるかに少ないものである。母子世帯が人口に占める割合はまだ低いとはいえ、経済が不安定な子育て家庭により高い関心が払われるべきである。また長期的には、安定した仕事への入り口を拡大するような訓練機会の賦与が必要である。さらに大きい目で見れば、有子女性の低賃金を修正するよう労働慣行を見直すことが必要であるだろう。


参考文献
黒澤昌子(2003)「公共職業訓練の収入への効果」『日本労働研究雑誌』5月号

Maddala,G.S. (1983) Limited Dependent and Qualitative Variables in Econometrics, Cambridge University Press, Cambridge.

永瀬伸子(2001)「子どもコストの推計:家計および資産面からの分析」『人口学研究』第28号 1-15頁。


(注1)『母子世帯の母への就業支援に関する調査』では、離婚した当時、末子が5歳以下の割合ははるかに低く16%に過ぎない。これは調査の設計上、同居母子世帯が除かれており、こうした者が低年齢児童に多いことが大きいのではないかと考えられる。しかし『離婚家庭の子ども』調査で見ると、0-2歳の母子世帯の実家同居比率は4割強、3-6歳では2割強であり、この分を調整したとしても、『母子世帯の母の就業支援に関する調査』で見る離婚当時の末子年齢5歳以下は2割程度にしかならず『離婚家庭の子ども』よりもはるかに低い。『離婚家庭の子ども』は平成9年10月の1ヶ月の人口動態調査離婚票に基づく被調査者選定による調査(回収率40%)であり、この時期の協議離婚の実態をかなり正確にとらえたものと考える。一方『母子世帯の母への就業支援に関する調査』では死別等も含まれるなどといった対象の差もある。最大の差は母子世帯になってから5年以上が54%含まれていることである。一つの整合的な解釈として<1>最近の離婚は幼い子どもが持つ者に増えていること、<2>離婚直後幼い子どもがいる母親の方が、実家同居になったり、あるいは家計を支えきれず再婚に移ったりしやすいため時間経過後はとらえられるサンプルが減少するなどが考えられる。実際に『全国母子世帯等調査』からも平成10年調査は平成5年調査に比べて、末子年齢が低くなっていること、子どもの数が少なくなっていること(子どもが幼く、かつ1人のみを設けた時点での離婚が多いと想像される)が指摘できる(資料編参照)。

(注2)賃金関数の推計を5節で行うが、賃金は、賃金・給料が主な収入であり、かつ、労働時間階級、年間労働日数階級、年収階級などすべての変数が欠損でない者から推計した。このため、賃金率が欠損値でない者は全体で127,674人、有配偶有子女性で45,371人、母子世帯の母で2,765人である。また18歳以上の子どものいる世帯はこの節では「有配偶有子」世帯に含めないので注意されたい。

(注3)個人所得は相対的に低所得での目盛りが細かく、世帯所得は相対的に高所得での目盛りが細かい。そこで一人暮らしであるが世帯所得と個人所得が異なる場合は、合理的な範囲で個人所得を世帯所得として置き換えた(たとえば本人収入の階級値は0-49万と50-99万に分かれるが、世帯収入の階級値が0-99万の場合、前者のより細かい階級値を世帯収入として採用した)。明らかに個人所得階級よりも世帯所得階級が高い階級に入っている場合のみに両階級の中央値の差を「本人の就業収入以外の所得」とした。なお高所得では世帯階級値の幅の方が細かくなるために計算した「本人の就業収入以外の収入」が負になるケースが全体の1%弱あったが、これは0として置き換えた。

(注4)年間就業日数は50日未満、50~99日、100~149日、150~199日、200~249日、250日以上のカテゴリーがあり、それぞれ階級中央値(250日以上は260日)を置いた。ついでこの日数を完全週休2日制を仮定して5で割り年間就業週数を算出した。今日完全週休2日制実施企業は3分の1程度だが、月3回、隔週または月2回、週休2日を実施する企業が合わせて6割ほどあり、国民の祝日が13日(約月1回)あることを考えてこうした方法をとった。次いで週間就業時間数は、15時間以内、15~21時間、22~34時間、35~42時間、43~45時間、46~48時間、49~59時間、60時間以上の8階級である。週60時間以上は週60時間とし、他は階級中央値を当てはめた。このようにして(年間就業時間数)=(年間就業週数)×(週間就業時間数)を算出し、次いで有業者の個人収入の中央値を分子に、推計した(年間就業時間数)を分母におき、賃金率を求めた。賃金率の検討の際に、お茶の水女子大学博士課程修了の村尾祐美子さんに、またお茶の水女子大学教務補佐の細貝国世さんにご協力いただいた。謝して記したい。

(注5)パートについては、平成9年『賃金構造基本調査』では企業規模10人以上の女性平均時給は870円であり、賞与の時間換算を足しても930円であって、図表3-3-34で推計した賃金率は平均で1000円弱と若干高めである。逆に一般雇用者については平成9年『賃金構造基本調査』から平均時給を算出すると(決まって支給する現金給与を所定内労働時間で割り、かつ、年間賞与その他特別給与額を時間換算して加える)、10人以上の企業に勤務している女性平均1672円であるが、このサンプルでの平均はやや低めである。

(注6)賃金率は、「階級値」と「階級値」から算出しているため一定の限界がある。階級値の幅の中に個人収入や労働時間が均一に分布していない場合(特に一定方向に一定の属性の者で歪みがある場合)に正しく推計されない。たとえば有配偶女性に限り「個人の年収が50-99万円の枠」の中の99万円にひどく偏っている場合は、有配偶女性の賃金のみが実際よりも低めに推計されてしまう。有配偶女性の多くは「就業調整」をしていると知られているので、この問題は実際にありうる。そこで、労働時間が35時間以上、年間250日以上勤務のフルタイムに近い女性のみを取り出して賃金関数の推計を行った。

(注7)なお母子世帯になった当時の暮らしをたてた方法として、母子福祉資金の貸し付け、生活保護等は4%代と低く、母子生活支援施設(母子寮)の入所は1%もない。同様に低いのが財産分与・相続分を使った者であり、3%弱である。

第4部 資料編

1 母子世帯の母への就業支援に関する調査集計表

1-1 年齢(問35)
1-2 母子世帯になった理由(問37)
1-3 結婚年齢(問37-2)
1-4 母子世帯になった年齢(問36)
1-5 母子世帯になってからの期間(問35-36)
1-6 学歴(問40)
1-7 就業の有無(問1)
1-8 母子世帯になる前の働き方(就業パターン)(問17)
1-9 母子世帯になる前の就業形態(問17-2)
1-10 世帯人員(問38-(1))
1-11 20歳未満の子ども数(問38-(2))
1-12 末子の年齢(問38-(3))
1-13 子どもの在学状況(問39)
1-14 就学前の保育担当者(問39-2)
1-15 現在の住居(問41)
2-1 有業者の就業形態(問5)
2-2 産業(問6)
2-3 職種(問7-1)
2-4 勤務先規模(問8)
2-5 就業時間(問9-(1))
2-6 就業時間の規則性(問9-(2))
2-7 就業時間帯(問9-(3))
2-8 片道通勤時間(問10)
2-9 勤労年収(問11)
2-10 勤続年収(問12)
2-11 就業継続意識(問13)
2-12 転職の際に重視する事項(問13-2)
2-13 転職経験の有無と転職回数(問14)
2-14 仕事への満足度(問15)
2-15 副業の有無(問16)
2-16 副業からの年収(問16-3)
2-17 副業を含む総就業時間数(問16-4)
3-1 無業者の就業希望意識(問2)
3-2 今すぐ働きたい者が働いていない理由(問2-2)
3-3 そのうち働きたい者が働ける条件(問2-3)
3-4 希望する働き方(問3)
3-5 就業にあたって重視する事項(問4)
4-1 母子世帯になった当時の暮らしをたてた方法(問25)
4-2 母子世帯になる前後の仕事上の変化(問18)
4-3 新しくついた仕事の就業形態(問18-2)
4-4 新しい仕事についた経路(問19-(1))
4-5 母子世帯になった直後の仕事を選んだ理由(問19-(2))
4-6 求職に当たっての問題点(問20)
4-7 就職のための準備(問21)
4-8 仕事に向けての準備の方法(問21-2)
5-1 現在の暮らし(問26)
5-2 健康状態(問27)
5-3 児童扶養手当受給状況(問29)
5-4 収入の内訳(問30-(1))
5-5 主な収入(問30-(2))
5-6 世帯月収(問30-(3))
5-7 月平均子どもの教育費(問30-(4)1)
5-8 月平均保育費(問30-(4)2)
5-9 月平均医療費(問30-(4)3)
5-10 月平均家賃・住宅ローン(問30-(4)4)
5-11 新しく仕事を探す場合の最低収入(問31)
5-12 親・親族からの援助(問32)
5-13 援助内容(問32-2)
5-14 雇用保険加入状況(問28-(1))
5-15 医療保険加入状況(問28-(2))
5-16 年金加入状況(問28-(3))
5-17 意識(問33) 1)母子世帯になって自分の時間的なゆとりが減ったと思う
5-17 意識(問33) 2)母子世帯になって自分の精神的なゆとりが減ったと思う
5-17 意識(問33) 3)母子世帯になって経済的に不安定になったと思う
5-17 意識(問33) 4)経済的に無理をしても子ども教育は十分にしたいと思う
5-17 意識(問33) 5)機会があれば再婚したいと思う
5-17 意識(問33) 6)「夫は外で働き妻は家庭を守る」という考えに賛成である
5-17 意識(問33) 7)仕事の収入を増やすより仕事の時間を減らしたいと思う
5-17 意識(問33) 8)母子世帯にとって暮らしにくい世の中だと思う
5-17 意識(問33) 9)自分が働かなくてはならないというプレッシャーを感じる
5-17 意識(問33) 10)母子世帯であるがゆえに周囲との付き合いに気をつかう
5-17 意識(問33) 11)母子世帯になってから自分の健康が気になるようになった
6-1 パソコンの使用状況(問24)
6-2 パソコンの使い方(問24-2)
6-3 パソコンの使用希望(問24-3)
6-4 パソコンの使用目的(問24-4)
6-5 資格・技能の取得状況(問22-(1)) 母子世帯後取得・仕事に役立つ資格(問22-(2)、(3))(1)
6-5 資格・技能の取得状況(問22-(1)) 母子世帯後取得・仕事に役立つ資格(問22-(2)、(3))(2)
6-6 職業能力向上への取り組み(問23)
6-7 職業能力向上に取り組めない理由(問23-3)
6-8 就労支援策(問34)


2 就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年)

就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (1)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (2)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (3)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (4)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (5)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (6)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (7)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (8)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (9)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (11)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (12)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (13)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (14)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (15)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (16)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (17)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (18)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (19)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (20)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (21)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (22)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (23)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (24)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (25)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (26)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (27)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (28)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (29)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (30)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (31)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (32)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (33)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (34)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (35)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (36)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (37)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (38)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (39)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (40)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (41)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (42)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (43)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (44)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (45)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (46)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (47)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (48)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (49)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (50)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (51)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (52)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (53)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (54)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (55)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (56)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (57)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (58)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (59)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (60)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (61)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (62)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (63)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (64)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (65)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (66)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (67)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (68)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (69)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (70)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (71)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (72)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (73)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (74)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (75)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (76)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (77)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (78)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (79)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (80)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (81)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (82)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (83)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (84)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (85)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (86)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (87)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (88)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (89)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (90)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (91)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (92)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (93)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (94)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (95)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (96)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (97)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (98)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (99)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (100)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (101)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (102)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (103)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (104)
就業構造基本調査の再集計データ(平成9年、昭和62年) (105)


3 全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年)

全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (1)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (2)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (3)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (4)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (5)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (6)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (7)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (8)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (9)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (10)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (11)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (12)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (13)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (14)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (15)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (16)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (17)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (18)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (19)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (20)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (21)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (22)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (23)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (24)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (25)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (26)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (27)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (28)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (29)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (30)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (31)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (32)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (33)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (34)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (35)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (36)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (37)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (38)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (39)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (40)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (41)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (42)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (43)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (44)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (45)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (46)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (47)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (48)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (49)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (50)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (51)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (52)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (53)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (54)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (55)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (56)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (57)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (58)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (59)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (60)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (61)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (62)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (63)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (64)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (65)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (66)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (67)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (68)
全国母子世帯等調査の再集計データ(平成10年、平成5年) (69)


4 母子世帯の母を対象とした取組事例

母子世帯の母を対象とした取組事例(P01)
母子世帯の母を対象とした取組事例(P02)
母子世帯の母を対象とした取組事例(P03)
母子世帯の母を対象とした取組事例(P04)
母子世帯の母を対象とした取組事例(P05)
母子世帯の母を対象とした取組事例(P06)
母子世帯の母を対象とした取組事例(P07)
母子世帯の母を対象とした取組事例(P08)
母子世帯の母を対象とした取組事例(P09)
母子世帯の母を対象とした取組事例(P10)


5 集計対象調査票

集計対象調査票(P01)
集計対象調査票(P02)
集計対象調査票(P03)
集計対象調査票(P04)
集計対象調査票(P05)
集計対象調査票(P06)
集計対象調査票(P07)
集計対象調査票(P08)
集計対象調査票(P09)
集計対象調査票(P10)
集計対象調査票(P11)
集計対象調査票(P12)
集計対象調査票(P13)
集計対象調査票(P14)
集計対象調査票(P15)
集計対象調査票(P16)
集計対象調査票(P17)
集計対象調査票(P18)
集計対象調査票(P19)
集計対象調査票(P20)
集計対象調査票(P21)
集計対象調査票(P22)
集計対象調査票(P23)
集計対象調査票(P24)
集計対象調査票(P25)
集計対象調査票(P26)
集計対象調査票(P27)
集計対象調査票(P28)
集計対象調査票(P29)
集計対象調査票(P30)
集計対象調査票(P31)
集計対象調査票(P32)
集計対象調査票(P33)

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