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(著者抄録)
就業継続の問題は,男女の雇用機会の平等を実現する上で,とりわけ重要な位置を占める課題である。分析によれば,若いコーホートになるほど結婚直前から結婚にかけてのステージにおける雇用の継続傾向は著しく高まっている。だが,出産後1年つまり育児期での雇用の継続傾向は決して高まっているとはいえない。そこで,雇用継続を規定する要因について分析した結果,結婚年齢および高学歴が継続に効果を持つことが判明した。今後,晩婚化や高学歴化は進行することが予測されるので,そうした結果によって,結婚や出産・育児期での雇用継続の増加が予測できる。だが,この分析の結果は晩婚化がさらに進行することを含意しており,それが少子化や高齢化の進行につながる可能性を示唆している。したがって,雇用の継続は,女性の就業支援の面からだけでなく,わが国が直面している高齢化等のマクロな観点からも,強力な支援策が求められる課題であるといえる。

(論文目次)
   I はじめに
  II 男女雇用機会均等法と就業継続支援
 III M字型の変化と就業継続
  IV 結婚・出産と雇用の継続
    1 晩婚化が進む女性のライフコース
    2 結婚・出産と雇用継続
    3 雇用継続を規定する要因
   V おわりに

I はじめに

 男女雇用機会均等法が難産の末成立して,今年で施行10年になる。施行当時,法律の効果について疑問視する向きもあったが,バブル景気の追い風によって,女子の雇用は予想を超える勢いで変貌を遂げた。だが,バブル崩壊に伴って雇用情勢は一変し,女子雇用はこれまでにない厳しい状況下にある。不況の長期化,産業や職務のリストラなど,雇用への逆風が吹き荒れるなかで,女子学生の就職難に象徴されるように,女子の雇用はとりわけ激しい逆風にさらされている感がある。そして,雇用環境が悪化するなかで,「均等法」の問題点がさまざまな形で露呈している。
 本稿は,女子雇用の大きな焦点であり,「均等法」の柱の一つである就業継続に焦点を当て,女子の就業継続の実態,それが女子労働にとって持つ意味と今後の課題について明らかにする。なお,以下では,自営や家族従業を含む就業一般ではなく,雇用に限定して議論することにしたい。



II 男女雇用機会均等法と就業継続支援

 就業継続の問題は,男女の雇用機会の平等を実現する上で,とりわけ重要な位置を占める。就業の中断は,勤労者本人にとってキャリア形成に大きな損失を招くだけでなく,企業にとっても不都合な面を持つ。とくに,日本では,大企業を中心にして長期雇用を前提とする雇用管理が制度化されているため,多くの企業では,長期勤続が期待できる男性と,結婚や出産・育児などによって職業を中断する傾向が高い女性とでは,採用から配置・訓練・昇進・退職などにおいて異なる管理をすることが慣行となってきた。そして,こうした慣行の帰結として,基幹労働力としての男子と補助的労働力としての女子という区別が,多くの職場において定着してきた。男女雇用機会均等法は,こうした日本的雇用慣行の下で,職場における男女の雇用機会の平等を,慣行そのものの変革をも含めて,いかに実現させるかという課題を担うものであった。
 このため「均等法」は,雇用機会の男女差別を直接に規制するとともに,こうした差別を生み出すメカニズムに立ち入って差別の改善を目指すという二本立てになっている。すなわち,総則に続き,第2章で,募集・採用,配置・昇進,教育訓練,福利厚生,解雇・退職など採用から退職に至る過程での個々の差別の規制を行い,第3章では,女子の就業の援助策を提唱している。そして,就業援助として,職業指導や再就職援助などの一般的支援と並んで,再雇用・育児休業など雇用継続の支援策がうたわれており,国や地方自治体の責務が規定されている。
 要するに,男女雇用機会均等法は,個々の差別の規制だけでなく,差別を生み出すメカニズムにまで踏み込んで差別の是正を図る援助策をも含み,「規制」と「支援」の両面から男女格差の解消を目指す構成になっている。
 とはいえ,わが国の「均等法」は,欧米諸国の平等法に比べて,法的拘束力の点で不徹底な内容であることは否めない。欧米の平等法は募集・採用から退職・解雇に至るすべての面で差別行為を明確に禁止するとともに,紛争解決のための強力な機関の設置を定めている。これに対して,「均等法」は,募集・採用と配置・昇進については事業主に対して“努力義務”とし,その他については“禁止義務”とするように,規制の方法が異なる形をとっており,差別規制の面で脆弱な法律といえる(注1)。したがって,そうした均等法の持つ問題点を補完するという側面からも,女子の就業援助策は,きわめて重要な役割を担うものといえる。平等の実現へ向けていかに実効性のある援助の施策が打ち出せるかが大きく問われることになる。その意味で,雇用継続の支援は「均等法」の重要な柱の一つとなる。
 法律の施行以来,育児休業制度,介護休業制度,再雇用制度など,雇用継続を支援する制度が必ずしも順調とはいえないが整備されてきている。育児休業制度は,1991年に「育児休業に関する法律」が成立し,子育て中の労働者は男女いずれであっても一定期間子どもの養育のために休業することが法的に認められることになった。平成5年度の「女子雇用管理基本調査」によると,育児休業制度の規定を持つ事業所は50.8%(雇用者30人以上),出産する女性の半数近くが休業制度を取得している。介護休業制度は,育児休業制度に比べて定着が遅れており,同調査によると,導入事業所の比率は16.3%にとどまっている。だが,1995年に育児休業法のなかに組み込む形で介護休業制度の法制化が実現し,4年後の1999年に完全実施される予定であるので,普及は急速に進むものと思われる(注2)。再雇用制度は,「均等法」のなかに再雇用特別措置が盛り込まれたため,育児休業制度や介護休業制度に先立って,1986年から給付金の支給などの対応がなされている(注3)。ただし,導入している事業所の比率は19.7%であり,普及率は高くない。
 働く女性の多くは仕事と家庭の両立という課題を抱えている。それは,これまで女性に家庭責任が期待されてきたからである。「男性も家庭責任を」ということが,日本人の意識においても制度においても浸透しつつあるとはいえ,まだその動きは鈍く,家庭責任が働く女性の大きな負担になっているのが実状である。したがって,職場において女性が男性と並んで仕事をし,その意欲と能力を十分に発揮して職業生活を継続していくためには,仕事と家庭との両立・調和を図ることが重要になる。その意味で,育児休業や介護休業の制度は働く女性にとって不可欠の支援策である。だが,改革・改善しなければならない課題はたくさんある。たとえば,育児休業制度では,休職期間の幅,休職期間中の賃金保障,柔軟な勤務時間体制の整備,休職中の代替要員の確保,復職のための訓練,男性の取得者が少なく現状では女性のための制度になっていることなど,課題は山積している。育児休業制度が,多くの企業に拡大していくことが望まれるとともに,制度の内容についてもさらなる充実が求められることはいうまでもない。現実には,結婚や出産を契機に大半の女子従業員が退職しているという調査結果が報告されている(注4)。また,「技能や経験を持つ人を確保したいので女性は結婚・出産後も仕事を続けてほしい」とする事業所は23.5%という低い比率である(「女子雇用管理基本調査」)。つまり,制度は徐々に整備されてはいるが,女性が結婚や出産を機に退職する傾向は依然として根強く存続しており,企業社会において,女性が結婚や出産をしても雇用を継続することが自然の姿にはなっていない。
 先にも述べたように,男女の格差を生み出す要因の一つとして就業の中断がある。したがって,女性が家事や育児のために中断を余儀なくされることがないように,強力な支援策が必要である。既存の継続支援策の改善が求められるとともに,新たな支援の方策が必要である。そして,そうした有効な支援策の構築のためには,就業継続のメカニズムについての解明が急務になる。女性の就業継続が確かな趨勢として認められるのか否か,継続を規定する要因はなにか。こうしたことを明らかにしてみることが,以下のテーマである。



III M字型の変化と就業継続

 結婚や出産・育児を機に退職し,育児からの解放にともない再び就職する女性が多くいる。このため,女性の労働力率は,若年層と中高年層で二つのピークを形成し,その中間に位置する結婚・出産・子育て期で谷を形成する,いわゆるM字型のカーヴを描くことが知られている。このM字型の就業カーヴは,わが国では女性就業の大きな特徴としてとらえられてきた。だが,M字型の就業カーヴはどの国の女子就業にも当てはまる特徴ではない。たとえぱ,イギリスは日本と同じく女性の就業カーヴがM字型を描くが,アメリカは年齢差がなく台形であり,韓国の場合は,労働力率ではM字型だが,雇用率では第2の山がない片山型である(注5)。さらに,留意すべきことは,いずれの国においても,M字型カーヴは時代とともに大きく変化していることである。
 図1は、年齢階層別の雇用就業率(当該年齢人口に占める雇用者の割合)を1955年から1990年について図示したものである。

図1 女子年齢別雇用就業率の趨勢(1955-1990年)

 わが国の女子の特徴といわれるM字型カーヴは,明瞭に変化してきたことが分かる。1955年の時点では若年層で山が形成されるだけの片山型であった。M字型は75年の時点で出現し,それ以降はM字を維持しつつも第1の山,谷,第2の山のすべてにわたって全体が上昇するという経過をたどっている。つまり,山の形状は大きく変化している。こうしたM字の推移から,女性の雇用が大きく変化してきたことが理解される。すなわち,かつては女性の雇用は20歳代前半までの若年期に限られており,その比率も高くない状況であった。ところが今日では,学校を卒業した後に,多数が雇用市場に参入するようになっている。そしてその後に,多くが雇用市場から退出してはいるが雇用市場にとどまる割合はかつてに比べて高くなっている。さらに,より多くの女性が労働市場に再参入するようになっている。
 M字型の変化のなかでも,とくに注目すべきことは,谷のボトムの上昇である。谷は,結婚や出産・育児による退職が原因で形成されるものであるから,ボトムの上昇は,そうした課題を抱えた女性が雇用を継続する傾向が高まっていることを示唆しているかにみえる。ボトムの上昇は着実であり,このぺースで進めば,将来,M字が消滅する可能性も否定できない。だとしたら,女性が結婚や出産・育児によって仕事を中断することなく男性と同じように雇用を継続することが当たり前になるのだろうか。
 M字型が今後どのように変化するかという問題は,女性の雇用にとって大きな関心事である。だが,この問題を明らかにするためには,まず,ボトムの上昇について,その中身を検証しなければならない。というのは,ボトムの上昇にはさまざまな要因がかかわっている可能性があるからだ。ボトムの上昇は結婚や出産期に雇用を継続する女性が増加していなくても起こりうる。すなわち,結婚や出産をしない女性が増加する場合である。ただし,この場合は,結婚しないあるいは出産しない女性は雇用を継続する傾向が高いという仮定が必要になる。また,結婚や出産の面で変化がなかったとしても,そうした時期が分散するとともに,再参入が増加したり早期化することによって,退出と再参入が相殺し合い,雇用率が上昇する可能性がある。
 要するに,ボトムの上昇と結婚・出産・育児期の雇用継続の高まりとは必ずしも同値ではない。ボトムの上昇には,女性のライフコースの変化による影響など,さまざまな要因が関連している可能性がある。そこで,ボトム上昇について,以下のような諸仮説を整理しておくことにしよう。
仮説1 結婚や出産・育児期に雇用を継続する女性が増加している
 この仮説には以下のような下位仮説がある。
 (1-1) 結婚期に雇用を継続する女性が増加している。
 (1-2) 出産・育児期に雇用を継続する女性が増加している。
仮説2 女性のライフイヴェントが変化している
 この仮説には以下のような下位仮説がある。
 (2-1) 結婚しない女性が増加している。
 (2-2) 結婚する時期が分散化している。
 (2-3) 出産しない女性が増加している。
 (2-4) 出産する時期が分散化している。
 (2-5) 再参入が増加・早期化している。
 以上のように,ボトムの上昇は,結婚や出産・育児期での継続傾向の高まりだけでなく,ライフイヴェントが変化することによって生じている可能性がある。そして,継続傾向の高まりやライフイヴェントの変化には,高学歴化,職業構成の変化,意識の変化などが影響していることが想定される。そこで,ボトムの上昇が何によってもたらされているのか,検討することにしよう。



IV 結婚・出産と雇用の継続

 以下で用いるデータは,日本労働研究機構が1991年に実施した「職業と家庭生活に関する全国調査」である。この調査は,全国の25歳から69歳の男女それぞれ3000人を対象に,個別面接法によって調査したものである。回収率は男性が80.0%,女性が82.7%である(注6)。

1 晩婚化が進む女性のライフコース

 まず,ボトムの上昇に関係しているとみられるライフイヴェントにおいて,どのような変化が生じているのか,この点についての検討から始めよう。表1は,学校の卒業,結婚,出産というイヴェントについて,それらを何歳で迎えているのか,またどのくらいの人が経験しているかを,コーホート別に示したものである。

表1 女性のライフコースの概要

 第1に指摘すべきことは,若いコーホートになるほど,卒業の年齢が高くなり,既婚率は低下し,初婚年齢,初子出産年齢が高くなり,末子出産年齢が低くなっていることである。だが,卒業の年齢を除いて,他のイヴェントについては,コーホート間の差はきわめて小さいことも事実である。したがって,高学歴化に比べて未婚化や晩婚化や晩産化の進行はきわめて緩慢であるといえる。ただし,最も若いコーホートの1966-62年と1961-57年において,結婚に関してそれ以前のコーホートとの間に大きな変化が起きる可能性がありうる。既婚率は1966-62年(71.0%),1961-57年(90.3%)であり非常に低いからである。とはいえ,これらのコーホートは年齢が若いので今後結婚する可能性が他のコーホートに比べて格段に高い。したがって,この数値をもって生涯未婚化が進行しているとはいえない。ちなみに,1983年の「職業移動と経歴調査」では,調査時の25-29歳の既婚率は85.8%である(注7)。この数値と比べると,1991年調査の25-29歳つまり1966-62年コーホートの71.0%は劇的に低下していることになる。さらにつけ加えると,1983年調査の25-29歳は,1991年調査のおおよそ35-39歳に対応する。35-39歳つまり1956-52年コーホートの既婚率は96.3%であるから,83年調査から91年調査の期間すなわち8年間に,10%強が結婚したことになる。したがって,最も若いコーホートの1966-62年と1961-57年は,今後結婚をする可能性があり,将来にわたって未婚であるか否かは不確かであるが,未婚率(調査時点での)がきわめて高いことは事実であり,少なくとも晩婚化が着実に進んでいることは確かであるといえる。
 第2は,出産経験率と子ども数がきわめて安定していることである。ただし,この点についても,最も若いコーホートについては,変化の兆しがうかがえる。しかし,先にも触れた通り,今後このコーホートは出産する可能性が高い。したがって,晩産化は徐々に進んでおり,若いコーホートにおいてはそれがさらに進行することが予想されるが,結婚した女性が出産するかしないかという点では,大きな変化は生じていないといえる。むしろ,古いコーホートよりも若いコーホートほど出産した比率は上昇している(注8)。
 第3は,結婚年齢および初子出産年齢のバラツキ(分散)については,標準偏差(SD)でみるかぎり,大きな変化はみられないことである。ただし,学校卒業年齢が上昇しており,卒業年齢の分散が新しいコーホートで小さくなっている。このことが,結婚年齢の下限を押し上げる効果をもたらすために,結婚年齢のバラツキに変化がみられない状況になっていると思われる。しかし,結婚年齢のバラツキは,標準偏差の値では正確にとらえられない。おそらくその分布の型が重要になる。
 以上から,女性のライフコースの変化について,変化しているイヴェントと出産経験率のようにほとんど変化がないイヴェントがあること,さらに変化しているイヴェントについても,既婚率のように特定のコーホートにおいて大きく変化し,それ以前のコーホートにおいてはきわめて緩やかな変化でしかないことなどが確認された。
 先のライフイヴェント変化仮説に関して,次のように指摘することができる。
 「結婚しない女性が増加している」については,既婚率は低下していることは確かであり,この仮説は妥当する。だが,コーホート間の差はきわめて小さいことも事実である。ただし,若いコーホートにおいて変化の兆しがうかがえる。したがって,未婚化は進行しているといえるが,少なくとも1956-52年より古いコーホートにおいては,きわめて緩慢な進行であったということである。
 「結婚する時期が分散化している」については,晩婚化の傾向が認められており,時期が高齢方向へ向けて広がっていることが予想されるが,分散化が進んでいるとはいえない。
 「出産しない女性が増加している」については,日本では非嫡出子は少ないので,既婚率の低下が出産しない人の増加につながることから,既婚率の低下による出産経験率の低下はみられる。だが,既婚者での出産経験率はきわめて安定しており,既婚者に限るとこの仮説は妥当しない。
 「出産する時期が分散化している」については,晩産化の進行があり,その限りで妥当する。だが,結婚する時期と同様に分散化それ自体は進んでいるとはいえない。
 「再参入が増加・早期化している」については,末子出産年齢が若くなっており,再参入の早期化が進んでいることが示唆される。

2 結婚・出産と雇用継続

 M字型のボトムの上昇に関係すると思われる女性のライフイヴェントの変化について考察した。イヴェントの多くは変化しており,それらがボトムの上昇に影響していることが示唆される。だが,イヴェントの変化はきわめて緩慢である。これに対して,ボトムの上昇は,図1にみられたように,かなり急速に進んでいる。したがって,結婚や出産の時点での雇用の傾向に何らかの変化が生じていることが推察される。そこで,結婚,出産,育児期での雇用状況についてみてみよう。
 図2は,結婚前1年,結婚時,結婚後1年から3年,初子出産時,初子出産後1年から2年の各時点で,雇用者である(あった)比率を,各コーホートについて図示したものである。以下のことが指摘できる。

図2 結婚・出産期の雇用就業率の推移

 (1) いずれのコーホートも結婚前1年,結婚時,結婚後1年,そして,初子出産時,初子出産後1年にかけて雇用就業率は下降する。つまり,結婚や出産を契機に雇用市場から退出している。なお,結婚や出産を契機に雇用市場に参入するケースはほとんどない。結婚によって自営や家族従業への参入はあるが,雇用市場への新たな参入は例外事象といえる。したがって,比率の減少分は純粋に退出とみなして問題はない。
 (2) 結婚前1年および結婚時の雇用率は,コーホート間で大きな相違があり,若いコーホートになるほど結婚前および結婚の時点での雇用率が高い。したがって結婚の時期での雇用を継続する傾向が大幅に上昇していることが明らかである。
 (3) 結婚後1年になると若いコーホートでは急激に雇用率が下降し,それ以降,コーホート間の雇用率の差は次第に縮小していく。
 (4) 初子出産時においてはいずれのコーホートも雇用率は低くなる。だが,コーホート間に差はある。
 (5) 初子出産の1年後になるといずれのコーホートにおいても雇用率は低く,コーホート間の雇用率の差はなくなる。出産1年後には多くが退職しており,若いコーホートにおいても雇用率つまり継続している比率は2割に満たない。出産後では雇用を継続する傾向がどのコーホートにおいても例外なくきわめて低くなるということである。
 したがって,結婚前および結婚の時点では,若いコーホートになるほど雇用を継続する傾向は着実に上昇していることは明らかである。ところが,出産時になると,若いコーホートにおいても継続の比率はきわめて低くなる。とくに出産後では,どのコーホートにおいても多くが雇用市場から退出しており,コーホートに差がみられなくなる。
 ちなみに,結婚と初子出産の間隔は表1に示しているように,平均でおよそ1.5年であり,コーホート間に差異はない。0年(6.8%),1年(52.5%),2年(23.8%),3年(8.2%),4年(3.6%),5年以上(5.0%)である。したがって,結婚後1年での急下降には,初子出産による影響があることがうかがえる。
 要するに,若いコーホートになるほど結婚前および結婚時の雇用率は着実に上昇しており,結婚直前から結婚にかけてのステージにおける雇用の継続傾向は著しく高まっているといえる。だが,出産とくに出産後1年では多くが退職しており,コーホート間の雇用率の差異はきわめて小さなものになっている。したがって,出産後1年つまり育児期での雇用の継続傾向は決して高まっているとはいえない。
 とくに留意すべき点は,最も若い1966-62年コーホートの結果である。このコーホートはいわば均等法世代と呼ぶべきコーホートである。なるほど,先で検討したように,このコーホートの既婚率,出産経験率は他のコーホートと比較して低い。つまり,結婚しない傾向,出産しない傾向,あるいは結婚・出産をしたとしてもそれらが遅くなる傾向にあることが指摘された。だとしても,図2によれば,このコーホートの結婚し出産した人では,古いコーホートと何ら変わることなく多くが退職している。出産後1年の比率は2割であり,1961-57年,1956-52年コーホートとに差はまったく認められない。この限りでは,均等法の影響はまったくないといってもいい。ただし,このコーホートには未婚者や出産未経験者がまだ多くいるので,そうした人たちが今後いかなる行動を選択するかが注目されるところである。
 分析結果から,結婚時での雇用継続が増加していることは確かだが,出産・育児期での雇用継続については増加は認められないことが明らかになった。とくに,出産後1年つまり育児期に入ると若いコーホートでも雇用を継続する女子は激減し,多くが退職する。ボトムの上昇の説明として,結婚や出産・育児期での雇用の継続が増加しているからという仮説は,結婚期については妥当するが,出産育児期ではまったく妥当しない。出産・育児を契機として若いコーホートにおいても多くが退職しているからである。
 では,出産・育児期での大量退出にもかかわらず,ボトム上昇が起きているのはなぜなのか。先に検討した晩婚化,晩産化といったライフイヴェントの変化,ここで明らかになった結婚期での継続の増加がボトム上昇を支える要因であることは確かだが,加えて,おそらく再参入の増加と早期化が関係していることが推察される。比較的早い時期に育児を終了した女性が早期に再参入を果たしている可能性が高い。遅く結婚する人の増加の効果と再参入の早期化と増加の効果が足し算されて,ボトムの上昇をもたらしていると思われる。重要なことは,ボトム上昇がすなわち結婚や出産・育児期での雇用継続の増加ではないことである。出産を契機に多くの女性が雇用から退出する傾向に変化は生じていない。

3 雇用継続を規定する要因

 そこで,雇用者として働き続けるかそれとも退職するか,この分岐がどのような原因によるものなのか,継続の規定要因について検討しよう。
 次のように課題を設定する。結婚直前から結婚後,そして出産さらに出産後という時点に着目する。そして,それぞれの時点で雇用に就いているか否か,すなわち雇用就業・非雇用就業の分岐がいかなる要因によるかを明らかにする。
 以上の課題を明らかにするために,ロジット分析を用いることにする。ロジット分析はある事象が起こる確率を予測するために開発された方法であり,次のような式として表される。
  log(P/1-P)=b0+b1X1+b2X2+………+bnXn (1)
 Pは事象が発生する確率。ここでの課題でいうと,雇用者である確率である。ロジット分析は,雇用者でない確率(1-P)に対する雇用者である確率Pの比率,つまり,見込み(P/1-P)を,X1,X2,……Xn,等の独立変数で予測する。(1)式はこの見込みを対数の形で定式化したものである。
 表2は,結婚前1年,結婚時,結婚後1年,初子出産時,初子出産後1年について,それぞれの時点の雇用・非雇用の分岐を予測するロジット・モデルによって分析した結果を示している。独立変数としては,コーホート,本人の学歴,夫の学歴,結婚の年齢を投入している。結婚年齢以外の変数はカテゴリー変数であるから,コーホートについては最も若い「1966-62年生まれのコーホート」,学歴については最も多数を占める「新制高校」を参照カテゴリーにして,それと比較したときの各カテゴリーの効果を算出している。

表2 結婚・出産前後での雇用・非雇用についてのロジット分析結果

 まず,結婚前1年についてみてみよう。コーホート間に有意な相違があることが分かる。若いコーホートになるほど多くが雇用市場にとどまっていることが明瞭である。ただし,1961-57年,1956-52年には有意性は出ていない。つまり,これらのコーホートと基準カテゴリーである1966-62年の間には有意な差はない。先にみたように,結婚前1年では,これらのコーホートにおいては大多数が雇用を継続している。変化はこれらのコーホートよりも古いコーホートで生じている。1951-47年生まれ(団塊世代)までは雇用者である傾向がコーホート間で着実に上昇している。本人の学歴では,旧制小学校,新制中学校,新制短期大学・専門学校,新制大学で有意であり,しかもすべてマイナスの値になっている。つまり,新制の高卒者はそうした学歴の人たちに比べて結婚前1年では雇用にとどまっている傾向が有意に高いということである。夫の学歴の効果は,旧制小学校でマイナス,新制の大学でプラスの効果を持っている。結婚年齢はプラスの効果を持っている。つまり,結婚の時期が遅い人ほど雇用者である傾向が高いということである。
 次に,結婚時についてみてみよう。各変数の効果に結婚前1年とは違った傾向がみられる。コーホートの効果では,確かにコーホートで有意な差は認められるが,差は小さい。また,コーホート間で順次変化しているのではなく,1951-47年生まれ(団塊世代)以前と以後で明瞭に分かれている。本人の学歴の効果も同様に結婚前の傾向と相違しており,新制中学校でマイナスの効果があることが示されている以外は,学歴間で差がないことが明瞭である。夫の学歴は旧制小学校,中学校でマイナスの効果がある以外は有意な差はない。だが,結婚年齢は結婚時においても明瞭にプラスの効果を持っている。
 結婚後1年では,コーホート間の差はさらに小さくなる。中間の三つのコーホートでマイナスの効果を示す以外は有意な差はない。本人学歴の効果では新制の短大・専門学校で有意なプラスの効果が現れる。そして,この時点においても結婚の年齢はプラスの効果を持っている。
 初子出産時では,1961-57年との間には有意な差はないが,それ以外のコーホートでは有意な差が現れている。ただし,留意すべきことは古いコーホートの間にはほとんど差がないことである。本人学歴では,短大・専門でプラスの効果を持っている。そして,夫の学歴では,新制大学でマイナスの効果が出ている。ここでも,結婚年齢はプラスの効果を持っている。
 初子出産後1年時では,コーホートの差はまったくなくなる。そして,本人学歴では,短大・専門学校と新制大学でプラス効果が現れる。そして,ここでも,結婚年齢の効果がプラスであることが明瞭である。
 以上から,次のことが指摘できる。
 (1) 結婚前1年,結婚時,………といった,それぞれの時点で雇用・非雇用を規定する要因が異なっており,継続を規定する構造が変化している。
 (2) 雇用・非雇用の分岐に対するコーホートの効果は,結婚前1年ではきわめて明瞭である。しかし,結婚時以降この効果は減少し,とくに出産時以降になると効果は消えてしまう。つまり,結婚前および結婚時では確かに雇用を継続する傾向は若いコーホートになるほど着実に高まっている。だが,出産さらに出産後の子育て期に入ると,コーホートの間の相違は消失しており,若いコーホートになるほど雇用の継続が高まっているとはいえない。これは,先に図2において指摘したとであり,ここでそれが検証されたのである。
 (3) 学歴の効果はきわめて興味深い。大卒や短大・専門学校は結婚前の時点ではマイナスの効果を持つが,結婚時になると学歴効果はなくなる。だが,出産時および出産後1年では,短大,大学で明瞭にプラス効果が現れる。つまり,結婚を契機として高学歴層も退職する。だが,出産後では,多くの女性が雇用から退出するなかで,雇用にとどまる傾向は高学歴者においてより強いということである。
 (4) 夫の学歴の効果については,一貫して旧制小学校でマイナスである点が最も大きな特徴である。ただし,高学歴の夫の効果は,結婚前はプラス,出産になると突如マイナスに転換する。これは,高学歴の男性と結婚する女性は,結婚前は雇用市場にとどまっている傾向が高いが,出産を迎えると一転して退出する傾向がより強くなるということである。
 (5) 最も留意すべきことは,緒婚年齢の効果である。この要因はすべての時点にわたって一貫してプラスの効果を持っている。つまり,結婚の時期が遅いほど,結婚においても,初子の出産においても,さらに育児においても,雇用者として継続する傾向が高いことである。そして,結婚年齢の効果は,コーホートや学歴の効果を統制してなおも有意に存在するということである。
 結婚期においては雇用継続の傾向は高まっているが,出産・育児期での雇用継続は高まっているとはいえず,多くが退職する傾向に変化は起きていない。では,雇用を継続する要因は何か。分析から明らかになったことは,各時点で継続を規定する要因が相違することである。本人の学歴の効果は,結婚前では高卒者が最も継続の傾向が高く,大卒者は逆に継続しない傾向が強い。しかしながら,出産および出産後になると,大学や短大等の高学歴層で継続の傾向が有意に高くなる。夫の学歴の効果も,結婚前では大卒において雇用にプラスの効果を持つが,出産時になると逆にマイナスの効果を持つ。このように,結婚,出産,……等といった時点の経過に応じて,各要因の効果は変化する。しかしながら,結婚年齢については,雇用に対して一貫してプラスの有意な効果を持つ。つまり,結婚が遅いほどすべての時点で雇用を継続する傾向が高いということである。
 結婚年齢が雇用継続に対して有意な効果を持つという本分析結果はきわめて重要である。というのは,先に検討したように,若いコーホートにおいて晩婚化の傾向が明瞭に進行しており,晩婚化は本分析結果によると雇用継続の増加をもたらすことが予測できるからである。とくに,結婚だけでなく出産・子育て期においても晩婚化は雇用継続に効果があることが重要である。また,高学歴女性の増加も若いコーホートで着実に進行している。したがって,晩婚化プラス高学歴化効果によって,出産・育児期での雇用継続が増加することが予測できる。
 以上を要約しよう。結婚期での雇用の継続は着実に増加している。しかし,出産・育児期での雇用の継続は増加していない。だが,雇用継続を規定する要因について分析した結果,晩婚および高学歴が継続に効果を持つことが判明した。今後,晩婚化や高学歴化は進行することが予測されるので,そうした効果によって,結婚や出産・育児期での雇用の継続が増加することが予測できる。



V おわりに

 分析の結果から,まず指摘できることは,出産・育児期の支援策の強化が求められることである。結婚では雇用市場から退出しなくなっているが,出産・育児によって退出する傾向には変化は認められない。若いコーホートにおいても,なお,多くが退出している。いかに,育児負担が働く女性にとって大きいものであるかが分かる。その意味で,男女雇用機会均等法を契機に法制化された育児休業制度の重要性が改めて指摘されよう。雇用の中断をもたらす最大の要因は育児であり,育児負担をいかに軽減できるか,これが雇用の継続ひいては男女格差の是正の鍵になる。
 さらに,留意すべきは,継続支援策は,単に女性の就業援助に効果を及ぼすだけでなく,少子化や高齢化の問題にかかわることである。みてきたように,出産・育児期での雇用の継続傾向が,今後,上昇することが予測されるが,その主たる要因が高学歴化と晩婚化にある。晩婚化は女性のライフコースの趨勢として緩やかに進行している。生涯未婚率がどれほど上昇するかは不確かだが,晩婚化が進むことはかなり確かである。だが,雇用継続に結婚年齢が及ぼす影響分析の結果によれば,晩婚化がより進行する可能性が示唆される。なぜなら,結婚を遅くするほど雇用を継続する傾向が高いということは,今後,雇用継続をめざす女性が増加すると,晩婚化が現在の趨勢以上に進行する可能性があることを意味するからである。
 したがって,晩婚化は女性の雇用継続を促進する効果を持ち,それ自体は否定的にとらえるべき趨勢ではないが,晩婚化の過度の進行は,さまざまな難題を生み出す可能性を含んでいることに留意が必要である。第1は,晩婚化は少子化を帰結するという問題である(注9)。第2は,その背景に仕事と家庭の調整問題が存在していることである。
 少子化については,多くの議論がされているし,少子化の問題を女性の就業に関連づけて議論することには疑問があると思われるのでここでは触れない(注10)。留意すべきは,第2の問題である。
 晩婚化の背景には,仕事と家庭の調整問題が存在する。結婚が遅い人ほど雇用継続率が高いという結果は,以下のことを示唆している。まず,結婚や出産・育児期で雇用を継続する人は,結婚の遅延によって結婚までの未婚期間を長期化した人である。これは,結婚や出産・育児期での雇用の継続と結婚までの比較的長い未婚期間が強く関係していることを示唆している。そして,この結婚までの期間は,結婚や出産を含めた諸課題のための準備期間とみることができる。みてきたように,結婚したら多くが間隔を置かず出産している。つまり,結婚と出産は独立のイヴェントであるが,現実には,分離できないイヴェントになっている。したがって,雇用の継続を求めるならば,結婚の時点で結婚だけでなく出産についても対処できる準備が重要になる。そうした準備期間が結婚年齢の遅延として現れる。そして,この準備のなかには,職場におけるキャリア形成での準備と家庭内の負担の調整があると思われる。
 要するに,晩婚化つまり結婚の遅延は,職場でのキャリアの問題と家庭での負担の調整が関係しているということである。言い換えれば,仕事と家庭の調整が困難な課題である現状下での女性のリアクションが,結婚の遅延である。従業員が家庭人であることを前提に仕事が編成されている職場はまれである。また,家庭は,妻が仕事をすることを前提にして家庭内の分担が組まれている現状ではない。こうした仕事と家庭の調整が困難であることが晩婚化を促進している。現在の状態が続けば,晩婚化が未婚化に移行し,それが少子化を進める可能性がある。さらに,これは老親介護の問題に波及する可能性が強い。母親がフルタイムで働く,とくに,小さな子どものいる世帯では,家事分担は,親族に強く依存しており,親族による家事支援に支えられて母親の就業が可能になっているという現実がある(注11)。だが,そうした世帯は老親介護の課題を抱えることになる(注12)。
 以上のように,女性の雇用継続の問題は,女性の職業達成を促し男女格差の是正という面で大きな意味を持つだけでなく,少子化や高齢化の問題にも深く関連しており,そうしたわが国が直面しているマクロな観点からも,雇用の継続を促す強力な支援策が求められているのである。


(注1) 男女雇用機会均等法は差別規制の面で不透明であることについて,花見(1986)にていねいな解説がされている。
(注2) 育児休業制度は「均等法」成立から6年を要してようやく法制化を果たしたが,介護休業制度は大きな混乱もなく育児休業法に組み込む形で法制化が実現し,制度の普及も急速に進んでいる。高齢化が急遠に進展している今日,この制度への社会的関心が高いことがうかがえる。
(注3) 再雇用制度は,妊娠,出産,育児などを理由に退職した女子について,事業主が募集や採用に当たって特別の配慮をする女子の就業継続の制度である。育児休業制度では,休業中の雇用契約は継続され,休業期間は比較的短期間である(1年)。女性の望ましい就業パターンとして,わが国では,一度退職し育児等に専念しそれが一段落した後に再度就職するという再参入型を希望する女性が現状では多数派である。再雇用制度はそうした女性を対象にした制度である。再就職を希望する女性にとっては,再就職の機会が恵まれていない現状で,以前に勤めていた会社に再雇用されるメリットは大きい。また,企業にとっては,再雇用によって退職前に投資した教育訓練等のコストを回収することができる。
(注4) 社会経済生産性本部「女性社員の処遇と活用に関する調査」(1996年)によると,均等法が施行された後に採用された女性社員のうち,在籍者は29.6%に過ぎず,その大半が結婚を理由に退職していることが報告されている。
(注5) 年齢別の就業率に関する研究はこれまでに数多くなされてきた。アメリカの歴史的趨勢を知る上で,Go1den(1990),韓国については,Brinton et a1.(1995),日本および日米の比較については,樋口美雄(1991),大沢(1993)が有用である。
(注6) 日本労働研究機樽(1995)参照。
(注7) 1983年に実施した調査であり,本データと同様に全国25-69歳の女性が対象になっている。詳しくは,雇用職業総合研究所(1988)参照。
(注8) 若いコーホートほど出産経験の比率が高くなる点については,健康や医療,さらに出産環境などの面で改善が進んだことが関係していると思われる。
(注9) 晩婚化と少子化については,阿藤(1991)参照。
(注10) 少子化は,女性の職業進出だけでなく,日本人のライフスタイルや意識,家族における子どもの位置づけ等,社会のさまざまな変化が原因となって進行している。女性の職業の進出も確かに少子化と無関係ではない。だが,本稿で明らかになったように,女性の職業進出それ自体が少子化を帰結するのではない。仕事と家庭との両立が困難であることから結婚の遅延が進行し,晩婚化が今以上に進むと少子化が進むことが予測されるというのが実態である。女性の職業進出を少子化の原因として指摘する議論は,ともすれば女性の職業進出を否定的に評価する傾向を持つばかりでなく,少子化の背景にある仕事と家庭の両立という課題を見落としてしまう危険性を持つことに留意が必要である。
(注11) 今田(1995)によれば,日本では家事は妻が圧倒的に負担している状況である。だが,フルタイムの妻の場合,妻が家事を全面的に負担する世帯の比率は,専業主婦世帯等に比べて低くなる。しかし,妻負担の減少分は,夫へ代替し夫婦平等の増加に結びつくのではなく,親族依存の増加として現れる。つまり,妻就業による衝撃を親族が吸収する形になっている。とりわけ,子どもが小さい場合には,親族による家事支援に大きく依存している。
(注12) 前田(1995)は,同居形態を分析し,核家族に次いで日本では高い比率を占める直系拡大家族が,女性の就業継続にとって,支援と阻害の両面を持つことを明らかにしている。親と同居する直系拡大家族を形成する女性は,親と同居しない核家族の女性と比べて,就業率,職業キャリア,雇用形態などの面で,良好な機会を確保している。しかしながら,親の年齢別にみてみると,同居親の年齢が75歳以上になる段階では,女性の就業率は一般女性の就業率と逆転しむしろ低い比率になる。直系家族を形成することが女性の就業継続にディメリットとなる。これは,老親の介護によって就業が困難になることを示唆している。


参考文献
阿藤誠「人口少産化の背景とその展望」『日本労働研究雑誌』No.381,1991年。
Brinton,M., Yean-Ju Lee & W. L. Parish,“Married Women’s Employment in Rapidly Industrializing Societies: Examples from East Asia”.AJS. Vol. l00, No.5, l995.
Golden, C.,1990, Understanding the Gender Gap-An Economic History of American Women, Oxford University Press, New York.
花見忠『現代の雇用平等』三省堂,l986年。
樋口美雄『日本経済と就業行動』東洋経済新報社,1991年。
平田周一「女性の職業経歴」日本労働研究機構『職業と家庭生活に関する全国調査報告書』1995年。
今田幸子「女性のキャリアとこれからの働き方-仕事と家庭のダブル・バインドを超えて-」『日本労働研究雑誌』No. 381, 1991年。
今田幸子「夫婦のキャリア構造」日本労働研究機構『職業と家庭生活に関する全国調査報告書』1995年。
雇用職業総合研究所編『女子労働の新時代-キャッチアップを超えて』東京大学出版会,1987年。
雇用職業総合研究所『女性の職業経歴-1975年,1983年「職業移動と経歴(女子)調査」再分析』雇用職業総合研究所,1988年。
前田信彦「女性の家族形成と就業行動」日本労働研究機構『職業と家庭生活に関する全国調査報告書』1995年。
日本労働研究機構『職業と家庭生活に関する全国調査報告書』日本労働研究機構調査研究報告書No.74,1995年。
大沢真知子『経済変化と女子労働-日米の比較研究』日本経済評論社,1993年。





いまだ・さちこ 1947年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。日本労働研究機構主任研究員。主な著書に『ホワイトカラーの昇進構造』(共著,日本労働研究機樽)など。職業社会学専攻。