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(著者抄録)
高齢者(男)の就業行動に影響を与える最も大きな要因は,公的年金収入と賃金(人的資本)である。公的年金収入は過去の研究結果と同様に,高齢者の就業確率に負の影響を与える。特に60~64歳ではフルタイム就業者に対して,厚生年金の収入制限による引退促進効果が強く働いている。一方,市場賃金水準が高いと就業意欲が高まる。高齢者の市場賃金には過去の教育投資や職歴が反映されており,人的資本投資の重要性が確認できる。特に65歳以上でフルタイム就業する者は市場賃金の高い者が多く,公的年金収入の引退促進効果は働きにくくなる。高齢者は年金収入,市場賃金水準,加齢による衰え,健康状態等を考慮しつつ,実質的な引退時期を決定している。

(論文目次)
I はじめに
II 過去の研究結果
III 使用データ
IV 分析のフレームワーク
V 就業確率関数の分析結果
VI 賃金関数の推定結果
VII まとめ

I はじめに

 日本は今後かつて例のない勢いで高齢化が進み,高齢社会を迎えると言われている。高齢杜会における年金制度や雇用システムを展望するには高齢者の就業行動を分析しておくことがかかせない。
 本論文では大都市圏に居住している元給与所得者の高齢男子(引き続き就業している者も含む,以下「サラリーマンOB」)の就業行動と賃金構造について分析する。
 就業者に占める給与所得者の比率は上昇し続けており,大都市圏に居住するサラリーマンOBが増加することが予想されるため,彼らがなぜ高齢になっても就業を続けるのか,あるいはなぜ引退したのか,また賃金構造を決定する要因は何かを調べることは今後の高齢社会を考えるうえで有益であると考える。
 本論文ではIIで過去の研究結果を概観し,IIIで使用データの概要,IVで分析のフレームワークを示す。Vで就業行動,VIで賃金構造の分析結果を示し,VIIでまとめを述べる。



II 過去の研究結果

 高齢者(男)の就業行動に関する過去の研究結果から,公的年金収入が就業に負の影響を与えることが知られている。つまり公的年金収入額が増えると就業確率は低下する。公的年金が就業に与える影響の度合いを示すのは,就業確率の公的年金収入弾性値である。過去の研究結果から就業確率の公的年金収入弾性値をまとめると表1のようになる。

表1 就業確率の年金収入弾性値(男)

 公的年金収入弾性値はおおよそ-0.2前後という値になっている。また本川・森(1981),橘木・下野(1984),清家(1986)の計測結果からは,就業確率の公的年金収入弾性値(絶対値)は年齢が上がるほど大きくなっており,年齢が高いほど就業確率は公的年金収入の影響を受けやすくなるという結果が示される。
 橘木・下野(1984),清家(1986)では公的年金収入弾性値のほうが私的年金収入弾性値よりも大きくなっており,公的年金収入のほうが私的年金収入よりも就業確率に与える影響が大きいという結果となっている。
 Yamada(1990)はフルタイムとパートタイム就業それぞれについて就業確率の公的年金収入弾性値を推計しており,フルタイム就業のほうがパートタイム就業よりも公的年金収入弾性値が大きいが,フルタイム就業の公的年金収入弾性値は年齢層が高くなるほど小さくなること,パートタイム就業の弾性値は小さいものの年齢層にかかわらず一定であることを指摘している。そして公的年金収入はフルタイム就業に対してより就業抑制的に働くとしている。Yamada(1990)は厚生年金の収入制限が与える引退促進効果を重視している。60~64歳では就業収入が増えると段階的に厚生年金支給の減額率が高くなり,月収が限度額を超えると支給されない。このためフルタイム就業の60~64歳の弾性値が高くなるとしている。これに対して65歳以上では月収が60~64歳の限度額を超えても厚生年金支給額は20%までしか減額されないため,引退促進効果が働きにくいことを指摘している(65歳以上の者への収入制限は現在適用されていない)。
 就業行動に影響を与えるもう一つの重要な要因は賃金であるが,過去の研究結果から就業確率の賃金弾性値をまとめると,表2のとおりとなる。賃金弾性値は正であり,年齢が高いほど弾性値が大きくなることがわかる。これは加齢するに従い就業行動が賃金により反応しやすくなることを示している。

表2 就業確率の賃金弾性値(男)

 賃金構造については清家(1989)に示されており,学校教育が終生有効であること,定年経験で賃金が低下すること,年齢や健康状態にも影響されることが示されている。



III 使用データ

 分析にあたって用いたデータは1992年9月に実施された「大都市サラリーマンの老後の経済生活に関する調査」(以下「サラリーマンOB調査」)の個票である。同調査は東京圏,名古屋圏,大阪圏に居住する世帯のうち,世帯主が元給与所得者(60歳までの最長職が給与所得者であった者)で調査時点において60~79歳であった世帯を対象に就業状態,経済状態,家族構成等について尋ねたものである(世帯主が死亡している場合は寡婦世帯を対象としている)。この調査では,子供と同居している高齢世帯についても家計や資産額について子供世帯とは分離して調査しているので,同居世帯の高齢者の行動も把握できるという特長がある。
 調査方法はまず,地域抽出法(国勢調査の調査区を用いた)で対象地域を抽山した。次に調査員が該当地域の全世帯(1万4004世帯)を訪問し,不在,回答拒否をした世帯を除いた9050世帯のうち,上記調査対象要件を満たす1818世帯に対して訪問留置法でアンケート調査を行った。地域別内訳は東京圏1086世帯,大阪圏544世帯,名古屋圏188世帯である。
 分析に用いたサンプルの概要については表3に示すとおりである。なお回答に欠損値のあったもののと,世帯主が死亡した寡婦世帯については分析対象からはずしたため,964世帯を対象とした。

表3 サンプルの概要



IV 分析のフレームワーク

分析のフレームワーク(P1)

分析のフレームワーク(P2)

分析のフレームワーク(P3)

表4 3段階測定法による関数測定結果(60~64歳)

表5 3段階測定法による関数測定結果(65~79歳)

表6 多項ロジット就業確率関数推定結果(60~64歳)

表7 多項ロジット就業確率関数推定結果(65~79歳)



V 就業確率関数の分析結果

 第1段階の就業確率関数推定結果から次のことが言える(表4,表5の(1),(4))。
 年齢は60~64歳では負になるものの有意ではない。この年齢層では再雇用されて65歳ころまでは雇用が保障されている者が多いことと,年齢による勤労意欲の低下が顕著でないことが影響していると考えられる。65歳以上では年齢は負でかつ有意となっている。つまり65歳を超えると加齢による就業意欲の減退や体力等の個人間の格差が明白となってくることを示している。
 公的年金収入は60~64歳,65歳以上ともに負で有意な結果をもたらす。したがって公的年金収入の増加は明らかに高齢者の就業意欲を低下させる。公的年金収入弾性値を計測すると表8のようになるが,ここから,公的年金収入弾性値は60~64歳で-0.291,65歳以上では-0.601であり,過去の研究結果と同様に60~64歳よりも65歳以上のほうが弾性値が大きくなっている。

表8 弾性値の計測結果

 本研究では従来の研究結果より大きい弾性値が計測されたが,年金収入が比較的高く65歳以上の就業率が低い大都市部のサラリーマンOBが調査対象となっていることが影響している可能性があり,弾性値が従来よりも上昇しているとは断定できない。
 私的年金収入は60~64歳では負で有意である。65歳以上では負であるが,10%水準で有意であるに過ぎない。私的年金収入弾性値は表8のとおりであるが,60~64歳で-0.026,65歳以上では-0.028となっており,年齢層が高くなっても値はほとんど変化しない。
 私的年金収入は公的年金収入よりも額が小さいことや,支払期間が限定されているため,公的年金収入ほど就業意欲に対して有意に働かないことが指摘されてきたが,ここでもそうなった。ただし,弾性値の値は過去の研究結果よりも大きくなっている。
 貯蓄の就業に対する効果を調べるために,ここではまず粗金融資産額(預貯金+株式+債券,負債額は不明)を説明変数に用いて就業確率関数を推定したが,有意な結果はもたらされなかった。
 高齢者の就業確率と貯蓄額との関係については過去の研究結果をみても見解が分かれている。本川・森(1981)は両者の間に明確な関係が示されないとしている。Ishikawa(1988)は貯蓄額は就業確率に正の影響を与えるとし,その理由として貯蓄額の多い者は能力的にも恵まれており,高齢になっても就業機会が多いからであるとしている。またYamada(1990)は貯蓄額は高齢者の就業に正の影響を与えるものの強い影響ではないとしている。
 ここでは60歳以前での就業収入額や老後の生活水準によって必要とされる貯蓄額が異なるために,金融資産額の水準のみでは高齢者の就業行動を説明できないことによると考えた。そのため橘木・下野(1984)と同様に,粗金融資産額を年間収入(年金収入+就業収入+その他収入)で除することにより,貯蓄額の個人差を平準化してその影響をみた(注3)。その結果,橘木・下野(1984)の結果に示されたのと同様に,60~64歳,65歳以上ともに粗金融資産額/年間収入は負で有意となった。
 学校教育が人的資本の形成に寄与するため,高齢になっても就業に有利に働くことが指摘されているが(清家(1989)),ここでも大卒ダミーは60~64歳,65歳以上ともに正で有意な結果を示している。つまり継続して雇用されるにあたっても,高学歴は有利であることを示している。
 健康ダミーは60~64歳では正で10%水準で有意であるにすぎないが,65歳以上では正で有意となる。これは60~64歳では健康状態にあまり差がないが,65歳以上になると健康に個人差が大きくなり,健康の就業意欲に与える影響が高まることによる。
 配偶者ダミーは60~64歳,65歳以上ともに正で有意となっている。これは配偶者のために就業する必要が生じること,配偶者の家事労働が世帯主の就業を助けることといった理由が考えられるが,配偶者の役割については家計内部の分析にまで踏み込んでみる必要がある。
 このほか,就業選択に影響を与えるものとして家賃支払いの有無,ローンの有無,子供との同居,別居といったことが考えられるが,これらの与える影響をダミー変数を用いて調べたところ有意な結果をもたらさなかった。
 次に多項ロジットモデルを推定した結果から,プロビットモデルでは得られなかった結果について述べる(表6,表7)。
 公的年金収入についてみると,60~64歳では,フルタイム就業,パートタイム就業,自営業いずれに対しても負で有意になっている。しかし65歳以上ではパートタイム就業と自営業に対して負で有意になっているものの,フルタイム就業に対しては有意になっていない。
 フルタイム就業,パートタイム就業,自営業それぞれの就業確率の公的年金収入弾性値は表8に示される。フルタイム就業では60~64歳での弾性値が大きいが,65歳以上になると弾性値の有意性が失われる。これに対してパートタイム就業と自営業では60~64歳での弾性値が小さいが,65歳以上では大幅に上昇している。プロビット分析の結果から公的年金収入弾性値は60~64歳よりも65歳以上のほうが大きいことが示されたが,これは65歳以上ではパートタイム就業と自営業の65歳以上での弾性値の上昇が,フルタイム就業者比率の低下や非就業者比率の上昇と相まって,生じたことがわかる。
 公的年金収入が60~64歳層のフルタイム就業で弾性値が大きくなっている背景には,厚生年金の収入制限による引退促進効果がある。65歳以上でのフルタイム就業で有意性が失われるのは,65歳を超えてもフルタイムで就業している者の就業収入が表3にあるように高く,就業意欲も強いために,公的年金の引退促進効果を受けにくいことによると考えられる。
 その他収入(資産収入,仕送り等)は60~64歳,65歳以上ともにパートタイム就業について負で有意となっている。パートタイム就業する者は資産収入等がある場合,就業意欲が低下することを示していると考えられる。
 粗金融資産額/年間収入額については,60~64歳ではフルタイム就業,パートタイム就業いずれに対しても負で有意となっている。65歳以上ではフルタイム就業に対して負で有意となるものの,パートタイム就業に対しては有意でなくなる。65歳以上でフルタイム就業している者は貯蓄額の水準自体も高いが,高い生活水準を維持するために就業していると考えられる。パートタイム就業する者は貯蓄額が大きいと就業意欲が低下することを示していると考えられる。また自営業の場合,60~64歳では有意とならず,65歳以上では負であるが10%水準で有意になるに過ぎない。自営業の場合,貯蓄額の水準そのものが高いのでこのような結果となったと考えられる。
 学歴ダミーは,60~64歳,65歳以上いずれも高卒,大卒ともにフルタイム就業に対して正で有意となっており,フルタイムの就業に対して学校教育は有効であることを示している。パートタイム就業に対しては60~64歳で大卒が有意であるが,65歳以上では高卒,大卒ともに有意ではなく,65歳以上のパートタイム就業は人的資本の蓄積を比較的必要としない仕事内容であることを示している。自営業では60~64歳,65歳以上いずれも大卒が有意である。これは専門的な知識を有する自営業を開業している者が多いことを示唆している。
 以上をもとにサラリーマンOBの引退に至るまでの過程を描くと,次のようになる。
 ・(定年)→引退
 ・(定年)→パートタイム就業→(引退)
 ・(定年)→雇用延長等によるフルタイム就業→(引退)
 ・(定年)→雇用延長等によるフルタイム就業→パートタイム就業→(引退)
 ・(定年)→自営業→(引退)
 この経路を公的年金収入との関連でとらえると,まず定年時あるいは公的年金受給開始時に年金のみで老後を過ごせると判断すれば引退する。そうでない者や就業意欲の高い者はその後も働くが,60~64歳では厚生年金の収入制限によりフルタイムから引退あるいはパートタイム就業への切り替えを行った者が多かったと考えられる。65歳以上になると,パ一トタイム就業者が公的年金収入の影響で引退を考える。また自営業を選択した者も65歳以上になると同様に公的年金収入の影響で引退を考える。ただし65歳以上でもフルタイムで就業する者は就業意欲が強く,高い生活水準を維持するために就業しているため,公的年金収入の就業抑制効果が働きにくいと考えられる。



 VI 賃金関数の推定結果

 第2段階の賃金関数の推定結果からは次のことが言える(表4,表5の(2),(5))。賃金を説明するには人的資本理論の立場からは年齢,職務経験年数と学歴が重要であるが,サラリーマンOBの場合,職務経験年数はほぼ同一であると考えてよい。したがってここでは年齢と学歴が重要な変数となる。
 年齢は60~64歳,65歳以上ともに負で有意である。これは加齢による収入獲得能力の衰えを示しており,過去の研究結果と整合的である。
 学歴ダミーのうち高卒は65歳以上で10%水準で有意であるに過ぎないが,大卒は60~64歳,65歳以上ともに正でかつ有意である。これは高齢になっても大学教育による教育投資効果が継続することを示している。
 定年経験ダミーは,60~64歳では有意性が認められないので,説明変数から除外してある。これは日本的雇用慣行のもとでは定年時に賃金と限界生産力の乖離が最大になるものの,継続して雇用される者は比較的生産性の高い者であるために,賃金水準がただちには低下しないことを示している。しかし65歳以上では定年経験ダミーは負で有意となっており,仕事で培った技能も65歳を過ぎると陳腐化することがわかる。
 健康ダミーは60~64歳,65歳以上ともに有意な結果を得られなかったので説明変数からはずした。これは健康の重要性を否定するものではなく,60~64歳では健康状態にあまり差がないこと,65歳以上で就業している者は健康な者の比率が高いので,このような結果になったと考えられる。健康は留保賃金の説明変数としては重要であり,特に65歳以上では就業確率に大きく影響を与えるものの,市場賃金の説明変数としては説明力が弱いと言える。
 60歳以前の職務経験(管理職,専門職,事務職,生産労働者)のうち,管理職に就いていた者は比較的高学歴の者が管理職に就いていた場合が多い。また60歳以前に大企業で働いていたかどうかといったことも職務経験や学歴と相関度が高いので,職務経験や企業規模は説明変数からはずしている。
 このようにして求めた賃金関数の推定結果からすべての者について仮にフルタイムで就業したときに得られるであろう推計市場賃金を求め,就業確率関数の説明変数として用いて第3段階の就業確率関数を推定した(表4,表5の(3),(6))。ここで賃金関数が市場賃金の説明要因のみで推定されているならば,留保賃金の説明変数の係数が第1段階の就業確率関数のそれと等しくなるはずである。60~64歳(表4)では,(1)と(3)の係数が,65歳以上(表5)では(4)と(6)の係数がほぼ等しくなっている。
 就業確率の賃金弾性値を推定すると表8に示すように60~64歳では0.511,65歳以上では1.271となり,過去の研究結果と同様に60~64歳よりも65歳以上のほうが賃金弾性値が大きい。つまり年齢が高いほど,賃金が労働供給に与える影響が高まることになる。この結果は65歳以上でもフルタイムで就業する者は,人的資本に恵まれて市場賃金が高く就業意欲が強いことを裏付けている。
 従来の研究結果と比較して大きい弾性値が計測されたのは,大都市圏では就業機会に恵まれていることが影響している可能性があり,弾性値が従来よりも上昇しているとは断定できない。



 VII まとめ

 高齢者の就業行動に影響を与える最も重要な要因は公的年金収入と賃金(人的資本)である。
 公的年金収入が高齢者に対して就業抑制的に働く。特に従来から指摘されてきた厚生年金の収入制限に伴う早期退職促進効果を確認することができる。収入制限は就業意欲の高い高齢者の就業意欲を抑制することになる。
 賃金関数の推定結果から,高齢になっても就業するためには,過去の教育や職務経験といった人的資本の蓄積の必要性が認識できる。人的資本に恵まれた者は高齢になっても就業機会が多くなる。
 高齢者は公的年金収入,市場賃金水準,老後の生活水準,さらに加齢による衰えや個人の健康状態等を考慮しながら,実質の引退時期を決定していることになる。
 1994年11月の厚生年金法の改正により在職老齢年金制度が改正され,60~64歳層の収入制限が緩和されたことは,就業意欲の強い高齢者の雇用促進に寄与する。したがって今後は高齢者の引退に至るまでの経路が変わってくる可能性がある。
 2000年以降,公的年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられるが,これに伴い経済的要因により就業せざるをえない者が増加することが予想される。このとき人的資本の蓄積が十分でなかった者は就業意欲があるにもかかわらず,就業できないという事態が発生することが考えられる。高齢者の就業や年金制度は人的資本の観点からも考えていく必要があると言える。


本論文の作成にあたって大竹文雄大阪大学助教授,本誌レフェリーの方から貴重なコメントを頂いたことに対して謝意を表する次第である。なお本論文におけるすべての誤りについては筆者に責任があることは言うまでもない。


注1) 3段階推定法はHeckman(1979)で展開された手法を基本としている。3段階推定法の詳細はHeckman(1980),Killingsworth(1983)の3,Berndt(1990)のchapter11を参照。

注2) 清家(1989)は3段階推定法により就業確率関数,賃金関数および労働時間関数を推定している。

注3) Diamond(1977)は資産額そのものではなく,資産額と所得の比率が老後の生活を考えるときに重要であることを指摘した。


参考文献
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本川明,森隆司(1981)「高年齢者の就業率変化に関する要因分析」『労働統計調査月報』vol.38,4-21.
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Yamada. T., (1990) “The Labor Force Participation of Elderly Males in Japan ”, Journal of Japanese and International Economies, vol. 4, 1-23.


Our analysis showed that public pensions and the available market wage important factors that elderly men use to determine whether they will remain in the labor market. Public pensions tend to encourage them to retire, and this effect is magnified by earning test. The higher the market wage, however, the more elderly men are encouraged to continue working. Market wages reflect the education level and background career, underscoring the importance of human capital investment. Elderly men base their retirement ago on the amounts of public pensions, their market wage, the decline in their strength due to aging, and their general state of health.


やまがみ・としひこ 1957年生まれ。ウィスコンシン大学(ミルウォーキー校)大学院修士課程修了。(株)住友生命総合研究所主任研究員。主な論文に「高速道路の交通量と景気動向」(『高遠道路と自動車』vol.34.No.11)など。労働経済・交通経済専攻。