論文データベース

[全文情報を閉じる]

全文情報
(著者抄録)
本稿は、先駆企業の事例を通じて、60歳代前半層の雇用に向けて企業が雇用継続制度を導入する場合に求められる、人事管理システムの条件と仕組みについて探索した。これまでの研究によると、雇用継続制度の円滑な運用が妨げられている背景には、3つの課題があると考えられる。第1は能力のミスマッチ問題であり、第2は雇用継続者の選抜に伴う摩擦の問題、第3は新しい雇用契約の受容の困難性である。この点に関しては、古くから雇用継続を行っている企業を事例として分析した結果、この企業では3つの課題を、長期的関係を土台とする人事管理システムを活用することで解決していることが示された。したがって、雇用継続に伴う諸課題を克服していたこの仕組みは、今後高年齢者雇用の拡大を考えるうえで、重要な示唆を持つものと考えられる。
(論文目次)
I はじめに
II 事例企業の概要と調査方法
III X社の事例分析
  1 定年後も雇用される人の能力とキャリア
  2 雇用継続者の決定
  3 新しい契約内容への納得
IV 雇用継続制度が機能する仕組み
  1 雇用される人材の育成と活用による就業機会の創出
  2 選抜に関する合意形成
  3 契約転換に関する合意形成
V 結論

I はじめに

 本稿の目的は,60歳代前半層の雇用に向けて,企業が雇用継続制度を導入する場合に求められる,人事管理システムの条件とその仕組みを明らかにすることにある。そのために,先駆企業の事例を通じて雇用継続制度が円滑に機能していく過程を考察し,人的資源管理の視点から,高年齢者雇用の論理を実証的に検討していく。なお本稿では,定年後の雇用継続を,一律定年制を定める企業において,定年を迎えた後も当該社員が定年前に所属していた企業で引き続き雇用される場合と定義する(注1)。
 少子高齢化が進展していくなかで,高年齢者の雇用をいかにして拡大していくかが重要な問題となりつつある(注2)。しかしながら,平成11年の(財)高年齢者雇用開発協会の調査によれば,定年後の就業希望率は70.7%に達し,その中で定年前企業での就業希望者比率が63.9%に及んでいる一方で(注3),実際に定年後の就業を実現している人はわずかに29.0%に過ぎない(注4)。これに対し,企業側もその多くが定年者の雇用を行っていく意向を持っており,84.4%が雇用継続による対応を考え,また約7割が再雇用・勤務延長制度を設置している(注5)。つまり現状では,企業は高年齢者雇用を行う意向を持ち,そのための雇用継続制度を設置しているが,実際にはその制度がうまく機能していないと察せられる(注6)。
 そこで本稿では,「定年者雇用を実現している企業は,なぜ雇用継続制度をうまく機能させることができるのか」という問題意識に基づき,高年齢者雇用の論理を解釈することを試みた。これまでの研究をまとめると,雇用継続制度の円滑な運用が妨げられている背景には,主として三つの課題があると考えられる(注7)。一つには,企業が必要とする能力と,定年者が保有する能力の格差による,能力のミスマッチ問題である。雇用継続制度が適用されるためには,当該定年者が定年後も雇用されるほどまでに,価値ある人材として育成されていることが求められる。そこで本稿の第1の分析視角は,雇用継続者の能力育成にはどのような特徴があるのかを明らかにすることにおかれる。そのために,定年後も雇用される人材像とその育成過程に焦点を当てる。
 二つめとして,長期化する景気低迷の下では定年者全員を雇用することはできないことから,雇用継続者には選抜がありうる。もし雇用をめぐって選抜が行われるならば,その際には労使間,労働者間に摩擦が生じる可能性がある。第2の分析視角は,雇用継続者がどのように選抜されているのかに着目し,選抜に伴う摩擦が最小化されるメカニズムを探ることにある。
 三つめの課題は,定年後に新しく設定される雇用契約の受容の問題である。多くの定年者は定年前給与が比較的高く,また役職についている場合も多く,そのために定年後の契約内容は大幅に変更されることが多い。したがって,雇用が成立するには,その内容が当事者に納得性をもって受け入れられねばならない。第3の分析視角として,雇用継続者はなぜ契約内容の変更を納得し受け入れるのか,その根拠に視点を向ける。そして契約内容が当事者に受容されていく構造を解明する。以上の分析枠組みは図1のようにまとめられる。

図1 分析枠組み

 本稿が扱う事例X社では,雇用継続制度の運用を困難とさせている三つの課題が解決されていたといえる。以下では,雇用継続制度が円滑に機能し,すでに高年齢者雇用をある程度の規模で実現させているX社の事例を,先の分析視角に即して考察することを通じ,60歳代前半層の雇用に向けた人事管理システムの条件と仕組みを探索していく。



II 事例企業の概要と調査方法

 X社は創業八十余年の,計測・制御情報機器事業を中心とする製造業者である。同社グループは2000年3月現在,支店,営業所を含む直轄拠点21カ所とともに,国内関連会社約60社,代理店・サービス拠点約300カ所によって構成される。従業員数は単独で約6000名,連結では約2万名,また海外拠点は六十数カ所に及んでおり,日本を代表する計測器メーカーである。
 X社における経営の特質は,繰り返し行われてきた海外優良企業との提携を通じて培われた,Bottom Line First(利益優先)を重んじる合理的経営にある。本業を基本としながらも,関連事業分野への新事業所の設置と統廃合を繰り返し,柔軟に組織変革を行いながら徐々に事業領域を広げ,現在の経営基盤を築いてきた。しかし時代環境への適合戦略を巧みに講じていく一方で,人材の育成と管理に関しては,一貫して雇用保障を重視する人事管理を志向してきた。計測機器の製造は微妙で繊細な作業であり,従業員の心的動揺が製品の精度に影響を及ぼす危険性がある。また計測器という資本財の特性として10~15年間の継続的なメンテナンスを必要とし,その意味で計測器の開発,製造,販売,保守点検・修理は,経験蓄積型の技術・技能を必要とするサービス事業といえる。そのために社員の安定的な雇用を保障することが,X社の経営上においても枢要な要件とされてきた。以上の事情を背景に,協調的労使関係の下で維持されてきた長期安定的な雇用関係は,経営側の合理的な経営思想に基づいて導き出された人材戦略によっても支えられていたといえる。
 X社の高年齢者雇用への取り組みは1964年にさかのぼる。このとき,他社に先駆けて再雇用制度が導入され,本人の希望と会社側の意向によって定年後も雇用を延長する仕組みが確立された。その後1975年にX社の高年齢者会社XA社が設立されてからは,同社での再雇用を主流としながら,X社の人事部門関連会社XB社を通じた業務委託契約や専門社員契約,また出向先関連会社との直接契約による雇用継続を実施しており,60歳以上従業員数は本社全従業員5952名中560名にのぼる(注8)。たとえば2001年9月期では,関連会社を含むX社全定年者101名のうち,67.3%にあたる68名が雇用継続を実現している(注9)。このような雇用継続者数の規模からみて,X社は高年齢者雇用の先駆企業といえよう。
 調査は,2000年から2001年にかけて,関係者23名へのインタビューを中心に行われた。その内訳は,人事担当者3名,雇用継続者18名(職場からの雇用希望がなく,人事部による職務開発によって就業した者2名を含む),引退者2名である(注10)。このインタビューは,本調査の目的上,雇用継続者と引退者が他部署に比して多く混在していたX社の生産部門関連会社XC社に出向していたX社本社の定年者12名を中心とし(このうちインタビューが実現されたのは9名),その他はおおむね職務別に層化した各母集団から無作為に選出され行われた。また分析は,インタビュー調査記録に加え,X社本社の2001年9月期定年者全82名に関する「定年後の雇用・就業に関する職場と本人の意識調査原票」「人事担当者との面接記録」,また「内部キャリア」「職務履歴」「研修記録」「取得資格・特殊技能」が記載された人事情報等の一次資料と,さらにX社社史,有価証券報告書,アニュアルレポート,社内報等の二次資料を加えて行われた。



III X社の事例分析

 1 定年後も雇用される人の能力とキャリア

 すでに述べたように,X社での高年齢者雇用の規模は極めて大きい。実際に定年者がどの程度雇用継続を果たしているのかを確認するために,X社の2001年9月期全定年者101名の雇用継続状況を集計し,表1としてまとめた。この表によれば101名の定年者のうち,X社グループ内での雇用継続者数は62名に及び,また出向先他企業での雇用をあわせると,68名が雇用継続を果たしていることがわかる。だが,雇用される人がいる一方で雇用されない人もいる。無論そのなかには自ら積極的に引退を望む人もいよう。しかし雇用継続を可能とする人としない人がいるとすれば,その違いとはなんであろうか。インタビュー調査によれば,雇用継続者の能力とキャリアにはおおむね三つのタイプがあると考えられる。定年後も雇用される人材像の特徴を明らかにするために,以下では,雇用継続者の職務能力とキャリアの道筋を,キャリア・タイプのそれぞれについて代表的と思われる事例を一つずつ見ていく(注11)。

表1 X社2001年9月期定年者の雇用継続状況

 入社45年目のA氏は,一貫して計測器に利用される金属部品等の切削加工に従事してきた。途中,組織変革や工場の移転を経験したが,常に機械加工部に所属していた。同部門内では計測器,工計器,科学課を経験することで,あらゆる種類の製品を担当し,様々な素材の部品を扱ってきた。切削には材料,刃物,電気などに関する幅広い知識が必要であるとともに,物を削るという感覚を体得することが求められる。この感覚は素材の特性や刃の角度などによって異なり,微妙にずれがでてくる。NC(numerical control)旋盤が導入された後も,機械が持つ癖によって誤差は生じ,調整しなければならなかった。切削の仕事に重要なことは誤差を絶対的に最小化することであり,自動化が進んでもA氏の旋盤技能は活かされることとなった。どのようなずれが生じるのかは製品ごとに異なり,またその原因も切削の回転数からなのか,金属自体の根本的問題なのか,あらゆる角度から検討しなければならない。A氏は長い経験の中で体得した熟練によって,このような通常の作業では予測できない事態への対処も可能となっていた。現在この誤差は1割程度の確率で生じる。しかしいずれこの確率は機械の改良によって小さくなり,A氏の旋盤技能もNC旋盤に代替されていくであろう。だがそのためには時間とお金が掛かり,現在のX社ではA氏のような人材が必要である。そのことをA氏も認識している。よって定年後も会社側との合意によって同職場での雇用継続が決定した。
 海外営業を担当するB氏もまた,入社以来一貫して営業畑を歩んできた。しかしA氏とは異なり,関連会社への出向を含む人事異動を繰り返しながら,あらゆる部署を定年に至るまで転々としてきた。入社から定年に至る36年間の職業人生で,その異動回数は海外子会社への赴任を含め11回に及ぶ。最終的な仕事は,制御システム事業の,海外電力業界への参入プロジェクトを統括するプロモーターである。この職務を遂行するには,自社のシステム制御装置の性能と販売方法に関する知識,X社製品の限界と可能性への理解,また海外でのビジネスの進め方や,顧客へのサービス開始時に必要となるX社の人材や技術および組織力に関する認識,現地スタッフを含むプロジェクト参加メンバーの管理など,極めて多様で幅広い知識や技能が必要とされる。B氏は,海外営業に必要とされる以上の能力を,多様な部署を異動するなかで獲得してきた。その間に,研究所用計測器の販売,エンドユーザーやプラントメーカーへのシステム制御装置の販売,国内外の新規顧客の開拓,海外販売会社の設立,海外電力企業へのプロモーションなどの仕事を経験し,X社の中での海外営業という職務について,総括的に理解するに至った。海外市場の拡大は現在のX社にとって大きな関心事である。ゆえにB氏は,任務の達成と後輩への仕事の伝承のために,定年後も同職務を継続することとなった。
 C氏は,マーケティング部で経営企画を担当し,企業買収や国内外の計測・制御情報機器業界の調整や働きかけを職務としている。現在は制御システム情報の測定方法を開発する,国内外の他企業との国際共同プロジェクトに参加し,業界でのX社の位置づけや役割,また今後会社が進むべき方向について検討していくことを主要な任務としている。この職務を遂行するには,X社の人材,技術,組織力の把握が必然であるが,計測・制御装置の開発・製造・販売というビジネスについて極めて深い認識が必要となる。C氏は元開発技術者であり,制御装置に関する高い知識を持ち,技術という側面から同ビジネスの本質と可能性を理解していた。C氏のこれまでのキャリアはおおむね以下のようであった。技術者として入社し,研究開発部門に配属されてから約24年間は,技術支援のために米提携会社へと赴任した以外は,同部門内での人事異動を経験するにとどまった。そして入社後24年目に初めて同部門から事業部の技術部に異動し,その3年後に職務を変えて同事業部のマーケティング部に異動した。つまりC氏は,40歳代になり役職が上がるとともに開発から人の管理へと仕事の比率が移行していったものの,入社以降約27年間を技術者として過ごしたことになる。その後は定年に至るまで,職務内容を少しずつ変えながら他部門を何度かにわたって異動した。C氏は以上のキャリアを経て,技術に関する高い知識や技能を,X社の事業全体の中で位置づけてシステム化し,ビジネスとしていく能力を獲得していったものと思われる。C氏もまた,会社からの要請を受けて定年後も雇用継続されるに至った。
 以上のまとめを表2に記した。表2の分析項目は,これまでのキャリア分析を参考に導いている(注12)。X社での雇用継続を果たしたA,B,C氏の人材像の傾向は,各職務能力とキャリアの特徴から,次のように表現できる。A氏の場合,長い就業経験の中で培った職務能力がある特定職務において卓越しており,その専門能力は職務が持つ複雑性や不確実性に対しても対処が可能なまでに精練されている。このような能力の特徴は,生産技能職という同一職能内でのジョブ・ローテーションと職場間異動にとどめられたキャリア・パスによって形成されたものと考えられる。特定職務に関する多様な仕事を経験しながらも,一貫して専門分野を深耕することで,その職務に適合的な知識と技能が高度な水準で習得されたと想定される。

表2 能力・キャリア分析結果

 一方B氏の海外営業に関する職務能力は,X社の持つ資源や組織の特殊性といった諸事情に通じたものであり,X社の組織的な複雑性や不確実性に対して対処が可能なまでに高められている。このような特徴は,営業という同一職能分野での職場間,事業所間を常に異動しつづけるキャリア・パスを通じて,X社という組織に適合的な知識と技能が高度な水準で習得されたために形成されたと考えられる。
 対してC氏の職務能力はより複合的といえる。その職務能力は,ある特定分野での専門的な知識や技能を基礎としながらも,X社の持つ組織的な複雑性や不確実性に対処可能なものとなっている。このような特徴は,キャリアのある一定時期まで専門分野を深耕すべく同一職能内の異動にとどまり,その後職能横断的な異動によって,蓄積された知識と技能がX社特有の諸事情の中でシステム化されていくために形成されたと考えられる。
 つまり,定年後の雇用継続を実現した人は,概して同一職能内での経験年数が長く,そのなかで職務ごとに特徴のある異動を経験していくことによって,最終的に各職務に必要とされる職務能力が獲得されていったと考えられる。雇用継続者のキャリアに見られる以上の特徴は,他の事例の場合にもおおむね同様の傾向として見られていた。さらにこのキャリアの特徴は,雇用継続状況との関係から検討した場合,より明らかな傾向として確認することができる。表3は,X社本社における2001年9月期定年者82名を,先の事例に見られる三つのキャリア・タイプに分類し,雇用継続状況との関係を集計したものである。さらに,各キャリア・タイプにおける同一職能内での経験年数を,雇用継続状況別に集計し,図2としてまとめている。

表3 キャリア・タイプ別雇用継続状況

図2 雇用継続者と雇用不継続者の同一職能内年数

 まずキャリア・タイプ1の代表的な職務は「生産技能職」「現場管理・監督職」「(資格)専門職」「研究開発・技術・設計職」である。このタイプで雇用継続を実現した人のキャリアは,一貫して同一職能内でのジョブ・ローテーションや人事異動に限られている傾向を持つ。その数は雇用継続者31名中23名にのぼる。また雇用継続者の同一職能内での経験年数は平均33.74年であり,X社の同一職能での従事期間が長期にわたっていたことがわかる。その結果,その職務能力は,専門分野での限定的な深耕型であることがうかがえる。
 またキャリア・タイプ2の代表的な職務は「営業・販売・サービス職」「事務職」「総務・人事労務・教育職」「財務・経理職」である。このタイプでの雇用継続者は,そのキャリアの傾向として,同一職能分野での関連会社への出向を含む職場間,事業所間異動を繰り返していることがうかがえる。このようなキャリアを持つ人は,雇用継続者24名中20名に及ぶ。またそれらの人々の同一職能分野での経験年数は平均36.58年であり,職業人生の多くを同一職能で過ごしてきたことを示している。その結果,その職務能力はX社の持つ特殊な事情にも対処可能な,組織に関係する全般的な知識,技能を中心に構成されていると察せられる。
 さらにキャリア・タイプ3での代表的な職務は「経営・企画職」である。このタイプの雇用継続者のキャリアは,ある一定期間までは同一職能内での異動を経験し,その後は職能分野を横断して異動していく傾向を持つ。雇用継続者8名中6名がこの傾向のキャリアを持ち,同一職能内にとどまっていた期間は平均25.38年となっている。その結果,専門分野に立脚する知識や技能を持ちながら,それをX社特有の諸事情の中でシステム化し機能させる,複合的な職務能力を有するに至っていると想定される。
 一方,定年後に雇用継続が果たされなかった人は,その傾向として上記三つのキャリア・タイプからは概して外れている場合が多い。また同一職能内での経験年数も,雇用継続者と比較した場合に短いという特徴を持っている。そのため,雇用継続を果たされなかった人は,各職務において必要とされる職務能力の獲得が比較的困難であったと考えられる。ただし,同一職能内での経験が長い人の中にも,雇用継続が果たせなかった人が幾人かおり,同一職能内年数が長いことが,必ずしも雇用継続のための十分条件ではないこともたしかである。たとえば,不況や産業構造の変化によって所属部署での仕事量が減少するといった外的要因によっても,雇用継続の決定は左右される(注13)。また本人の,担当職務に関する本来的な資質も関係してこよう(注14)。一方,逆の例外もあり,同一職能内での経験が比較的短い場合でも,高い能力を獲得しているとみなされ,雇用継続される人もいた。
 しかし,ここで観察された以上のような雇用継続者と不継続者のキャリアの違いは,統計的にも有意な水準で支持されている。雇用継続とキャリアの関係における独立性の検定を行った結果,キャリア・タイプ1では5%有意で,またキャリア・タイプ2では10%有意で,雇用継続の決定がキャリアのあり方に影響を受けていることが確認された。また同一職能内での経験平均年数のt検定では,5%有意で雇用継続者と雇用不継続者の間に差があることが確かめられた。以上から,定年後も雇用される人材は,多くの場合,各職務における代表的なキャリア・タイプを経ている,また同一職能内年数が長いという特徴を持ち,そのために雇用継続につながる職務能力が獲得されていたと考えられる。

 2 雇用継続者の決定

 このように,雇用継続を果たした者のキャリアには一定の傾向が見られることから,その雇用はある制約の下で限定的に行われていることがうかがえる。通常,X社の雇用継続者は,会社側と定年者本人との雇用・就業希望の一致によって決定される。つまりX社の雇用継続は対象者を選抜する方式を取っている。定年後の雇用・就業に関する意識調査は,本人とその所属長を対象とした調査票と,その後の人事担当者との面接が基本となっている。職場の意向を代表する所属長は,当該定年者に対する同部署の雇用希望の有無や,雇用形態に対する要望を書くことができる。また定年者は,定年後の就業意思とともに,希望する職種や部署について書き込むことができる。2001年9月期本社定年者に関する雇用継続希望の結果を記したのが表4である(注15)。

表4 X社本社2001年9月期定年者の雇用継続希望状況

 通常本人と職場は,個別に雇用希望を表明するために,両者の意見が一致する可能性を予見することはできない(注16)。また,職場での必要労働力の変化は,職場の所属長が判断を下す場合の主要な準拠要因となるが,定年者本人にとっては,本来的には就業意欲を左右するものではないといえる。しかしながら本表が示すとおり,両者の希望が一致する確率は極めて高い。
 表4に示された91.5%におよぶ高い雇用継続希望の一致は,定年者本人が,職場からの雇用要請が出ないであろうと予見した場合に,就業希望を出さないために起きていると考えられる。そのような行為は,人事施策によって方向づけられた労使間,労働者間の関係を通じて,次のような事情が生じるために起きる。第1に,X社の人事施策では,関連会社への出向を含めた異動およびジョブ・ローテーションが人材育成を強く意識して設計されており,全社的な異動が30歳代中半まではキャリアの形成を,その後はキャリア活用を目的として行われている。よって各社員は年齢に関係なく,入社から定年に至るまで多くの異動とジョブ・ローテーションを経験する(注17)。多くの異動を通じ,各社員はX社の持つ価値観や仕事のやり方,達成水準という固有の評価尺度を知覚し,定年時にはこれと照らし合わせながら,自分の職務能力を他の社員との比較の中で位置づける。つまり所属する職場のみならず会社全体の中で,雇用継続の可能性を検証することが可能となっている。
 第2に,そのように自分の職務能力を確認していく工程は,X社の人事施策によっても下支えされ,促進されていく。X社では年度末の人事考課時以外にも,35歳,45歳,55歳,58歳,59歳時に,キャリアの確認を目的としたセミナーの受講が義務づけられている。また55歳以降は随時カウンセリングを受ける機会が設けられている。セミナーでは自分の持つ職務能力の「棚卸し(自己確認)」と今後の働き方に関する展望を示すことが求められ,これに加え55歳以降のセミナーでは,定年を自覚させることを目的とする講演会や,各自への具体的な退職金や年金額の提示と同時に,定年後の賃金に関する説明会が開かれる。また55歳以降のカウンセリングによって,定年後の進路についての相談が随時できるようになっている。このように具体的な機会を与えられることによって職務能力の診断が,また定年後に働くことへの意欲の確認が促されていく。その結果,定年前の意識調査の段階では,自分が定年後も会社側から必要とされる人材であるか否かの診断と,定年後の就業に対する意思の確認がおおむね終了している。そこでの判断が就業希望の書き込みに反映されることとなる。
 このような事情を背景に,就業意思を表明するに至るまでの,定年者本人の思考過程はおおむね次のようである。定年者本人もまず,会社側と同様に所属部署の業績状況をかんがみる。そして同部署での必要労働力が減少していると認識した場合,人事施策を通じてすでに診断されている自らの職務能力を振り返り,他者との比較の中で雇用継続が期待できない場合には,同部署での就業希望を出さない。そして次に,これまでの人事異動やジョブ・ローテーションでの経験から,会社全体の中で自分の職務能力を位置づけて,他部署での就業可能性を探る。現在の職務能力を活かせると考える部署に自らを位置づけ,十分に職場の必要性に応じられると予見した場合にのみ,当該部署への就業希望を出す(注18)。一方これが期待できない場合には就業希望自体を出さない。本来的に就業意欲を持っている場合には,逐次このような判断が行われていく(注19)。
 以上のように,定年者は雇用継続が可能な人数に限りがあることを認識し,自分が雇用される人材か否かの自己診断を前もって行うために,雇用継続希望に関する高いマッチングが実現されている。つまりX社での雇用継続者の選抜は,人事施策の策定によって方向づけられた労使間,労働者間の関係を通じて潜在的に行われており,その判定が顕在化するときには,すでに両者の意向が一致しているのである。よって,X社では選抜による摩擦が最小化され,結果として希望者全員にほぼ等しい高年齢者雇用が円滑に実現されている(注20)。

 3 新しい契約内容への納得

 現在X社の雇用継続は,高年齢者会社XA社との再雇用契約,人事部門関連会社であるXB社との業務委託契約や専門社員契約,出向先企業との直接契約という三つの形態に分かれている。XA社,XB社との契約では,その多くが定年前に勤めていた職場であるX社の各部署に派遣されるようになっている。
 これらX社の雇用継続に共通する主要な規約は,いったん定年退職の手続きをとり,これまでの雇用契約を終了させ,再雇用の形で再び新たな契約を締結することである。そして契約内容は雇用形態ごとにあらかじめ設定されており,対象者に一律で適用される。またその働き方としては,1)多くは従来部署で同じ職務を継続する,2)おおむね従来の勤務条件の下で就業する(注21),しかし3)賃金は大きく低下する,4)役職は外れる(注22)という共通の特徴を持っている(注23)。
 このような契約内容は,企業側が高年齢者雇用を実施する場合の,経営上の目的と運用上の問題から設定されており,1)これまでと同様に定年者の能力が発揮されるには,従来部署で従来の職務に従事することが望まれる,2)総人件費の肥大化を防ぐために,定年後の賃金を低く抑える必要がある,3)現役世代の昇進機会を奪う可能性があってはならないため,役職を退いてもらう必要がある,という理由に基づいている。
 それではなぜ,このような企業主導的ともいえる契約内容が当事者に受け入れられているのか。定年者が契約内容を受容していく構造を,定年者を取り巻く企業内外での社会関係に関連づけて,次の三つの側面からとらえることができる。第1には,定年者はこの雇用契約を,新たに結ばれたスポット的な契約とはとらえない。長期的な雇用関係の下で,これまでの賃金制度が生活保障の意味合いを暗黙的に含んでいたために,主として雇用継続者は,定年後の賃金も生涯賃金の中で位置づけて理解している。この点は,雇用継続者18名に行ったインタビューにおいて,定年後の賃金が生活給という視点からとらえられていることから確認できる。「もっと多くもらえるならば,それにこしたことはない」「自分のやっている仕事内容を考えれば,本来はもっともらってもよいはずだ」と考えながらも,「これから特にお金が必要となることもない,生活していくぶんには困らない」「昔からそういう契約になっているし,みんなそうなので疑問を持ったことがない」とし,契約内容に対する具体的な不満はないと答え,「将来的に年金を受け取れるので十分」としていた(注24)。インタビューを通じて明らかなことは,雇用継続者は暗黙的な選抜が行われていることを察知しており,定年後も就業を続けられること自体に誇りを感じ,経済的報酬よりも自分が必要とされている人材であるという実感のほうが,就業を続けるより重要な決定因となっていることである。
 また,雇用継続者の多くは,X社に長期にわたって勤務する者であった。X社の賃金体系では給与はある程度年功的に上昇し,定年前までは安定的な給与を受け取ることができ(注25),さらに長期勤続ゆえに定年後には十分な退職金と年金が約束されている。このことが,大幅に下がる賃金への納得性を高めている一つの要因と考えられる。なお,年金の満額支給開始年齢の引き上げに対しては,この空白期間を予見した消費活動を行うのみとし,特に重要な問題とはとらえられてはいなかった。
 第2に,同じX社での就業でありながら,契約の締結には第三者機関が介在することで,定年後の雇用関係は概してX社から切り離してとらえられている。この仕組みは,当事者と職場双方の意識変革に貢献している。雇用継続者の多くが従来の職場で勤務するということは,役割と立場が大きく変わると同時に,昔の部下の下で働く場合が多いことを意味する。契約締結に介入するXA社やXB社は,契約内容の変更とともに両者間に生じる摩擦を回避する緩衝材として機能している。またX社の高年齢者雇用の歴史は長く,前例が身近に多く存在するために,当事者のみならず職場の人々にも,定年後に働くというイメージが形づくられやすい傾向がある。
 さらに第3として,定年者は,同社での就業を辞め,他に職を求めた場合に起きる不確実性とあらゆるコストを想定し,その比較の中で契約内容の妥当性をはかり納得性を高めていく。他社に移った場合に,当該賃金と同様もしくはより多くの報酬が約束される確証はない。また次の職を見つけ出すまでの探索コスト,精神的不安,新たな人間関係や信頼関係を築くまでに要する時間や労力などは,雇用保険によっても賄えるものではない。定年者の多くはおおむね,「新しい人間関係の中で仕事をして,信用を得るまでには時間が掛かる(注26)」と考え,大幅に変更される契約内容を納得していくようであった。
 このような企業内外の社会関係に基づいて,雇用継続者は契約内容を暗黙的に受け入れていく。(財)高年齢者雇用開発協会(1998b)によって実施されたX社の雇用継続者意識調査(注27)は,このような働き方が高い満足感を得られるものであることを明らかにしている。現在の人間関係を「良好」もしくは「普通」と感じている人は96.5%,仕事にやりがいが「ある」もしくは「普通」と答える人は97%に達していた。また人事異動に関しては,92%の人が現職での就業を希望していた。なお,2001年9月期定年者のインタビュー調査においても同様の結果であったといえる。



IV 雇用継続制度が機能する仕組み

 1 雇用される人材の育成と活用による就業機会の創出

 事例分析によれば,X社で定年後も雇用される人材の職務能力を職務別に整理した場合,おおよそ次のようであった。1)特定職務に特化した能力となっており,担当する職務が持つ複雑性や不確実性への対処が可能なまでに高められている。2)X社の持つ資源や組織の特殊性に通じた能力となっており,組織的な複雑性や不確実性への対処が可能なまでに高められている。3)特定分野での専門知識と技能を基礎としながらも,それを組織の諸事情に則してシステム化するために,組織的な複雑性や不確実性への対処も可能となっている。このような三つの職務能力の特徴は,同一職能内年数が長く,またそこでの経験が異なることによって形成されると考えられる。
 小池(1997)および猪木(2002)は,企業にとって価値ある人材の育成に必要なキャリアの特徴を,特定分野での幅広い経験と専門性の深耕にあるとし,これをキャリアのヨコへの広がりとタテへの深まりという概念によって表現した。そのようなキャリア形成は,職務別に施される定期的な人事異動やジョブ・ローテーション,企業内育成といった制度的慣行を通じて行われるが,その間に各人材の持つスキルは,職務ごとに分化していくものと思われる。それではこのスキル分化は最終的にどのような人材像を形成するのか。事例から導かれた3種の職務能力の特徴は,次の分類によって解釈される。
 図3の横軸は職務遂行に必要となる「知識・技術体系の種類」を,縦軸は「経験・技能幅の程度」を表す。知識・技術体系が「専門的」であるとは,ある特定の職務において限定的な知識・技術体系が高められている様子を指し,その意味で「職務に対して特殊化したスキル(job-specific skills)」がその主要な構成要素といえる。これに対置させられるのが,より「一般的」な知識・技術体系である。一方,経験・技能幅が「重層的」であるとは,多岐にわたる部署を通じて組織における多様な経験・技能が獲得されている様子を指し,「組織に対して特殊化したスキル(organization-specific skills)」がその主要な構成要素といえる。これに対置させられるのが「単一的」な経験・技能幅であり,先の場合ほどまでには多様ではない経験・技能幅の様子をいう(注28)。ここから,「知識・技術体系の種類」と「経験・技能幅の程度」の組み合わせの状況によって,定年後も雇用される人材として,次の3種の人材像が想定できる(注29)。

図3 定年後も雇用される人材の職務能力

 「J型」:相対的にみて「職務に対して特殊化したスキル」に依拠する職務能力を持っており,知識・技術体系は「専門的」である比率が高く,経験・技能幅は「単一的」である比率が高い。X社の場合,その職務としては「生産技能職」「現場管理・監督職」「(資格)専門職」「研究開発・技術・設計職」がこれに当たり,事例で紹介されたA氏が当てはまる。
 「O型」:相対的にみて「組織に対して特殊化したスキル」の程度の高い職務能力を持ち,知識・技術体系は「一般的」である比率が高く,経験・技能幅としては「重層的」である比率が高い。X社の場合,その職務としては「営業・販売・サービス職」「事務職」「総務・人事労務・教育職」「財務・経理職」がこれに当たり,事例のB氏がここに分類される。
 「J-O型」:相対的にみて「職務に対して特殊化したスキル」と「組織に対して特殊化したスキル」の複合的な職務能力を持つ人材であり,知識・技術体系としては「専門的」である一方,経験・技能幅は「重層的」である比率が高い。X社の場合,その職務としては「経営・企画職」がこれに当たり,事例のC氏が当てはまる。
 なお「E型」は,将来の雇用継続の対象とならないばかりでなく,X社ではすでにこれらの業務は外部化されていた。したがってX社には「E型」に分類される正規社員はおらず,2001年9月期定年者においても,該当する人材はいなかった。
 特定企業と雇用関係を結び内部労働市場の入り口に立った「人」は,時間的経過を経て,職務ごとに代表的なキャリア・タイプを通じて,以上のような,定年後も雇用される能力を有した「人材」となっていく。定年後の雇用継続は,その蓄積された知識を開示し,保有する技能を顕在化させることによって就業機会が創出されるために果たされる。以上から,60歳代前半層の雇用に求められる人事管理システムの第1の条件は,企業にとって必要な人材の内部での育成である。

 2 選抜に関する合意形成

 X社の雇用継続は限定的に行われており,雇用継続者は,企業側から見た当該定年者の人材としての重要度によって決定づけられているといえる。このことは,高年齢者雇用が必要人材の雇用のみを行うことによって,福祉ではなく経済性を追求する活動の一部として機能していることを示唆している。
 そのための選抜は,定年到達時ではなく,入社以降随時行われていく人事異動,ジョブ・ローテーション,またセミナーなどの人事施策を通じて,当該定年者自身による職務能力の診断によって行われている。そのような「自己選別」という潜在的な選抜によって,雇用継続者の規模が量的・質的に制限されている。
 自己選別の過程では,長期にわたる一貫した人事管理の下で,評価に必要な情報は企業のみならず当事者にも十分に与えられている。そしてその評価軸がこれまでの雇用継続の経験に照らし合わせて,納得性を持つ評価軸であることが各定年者に暗黙的に認識されている。自己評価を行う機会は,人事政策の中で継続的に与えられており,定年到達者は情報の非対称性が低いなかで,何度にもわたる職務能力の診断を行い,定年後も必要とされる人材であるか否かを自己判断する。よって最終的に定年後の雇用・就業に関する企業側の判断と当事者の判断が乖離する可能性は僅少となる。
 もし定年後の雇用継続の選抜が,より明らかな形で起こるならば,高年齢者雇用をめぐって労使間,労働者間関係に摩擦が生ずる可能性が出てくる。X社の高年齢者雇用は,自己選別という前もって行われる双方合意の選抜によって,最終的には希望者全員雇用に近い仕組みとなっている。60歳代前半層の雇用に求められる人事管理システムの第2の条件は,雇用継続者の選抜に関する合意形成に結びつく,自己選別を可能とする人事施策の策定である。

 3 契約転換に関する合意形成

 60歳の定年を契機に,X社の契約内容は大きく変更される。ひとつには支払賃金の大幅な下落であり,またひとつは役職待遇の廃止である。これらが定年前と同じ部署で同じ職務を継続するなかで行われる。
 もし仮に定年後の賃金が定年前と同水準に設定されたならば,X社の高年齢者雇用は困難性を高めていたであろう。全社的な賃金カーブのフラット化が現役世代の賃金を圧迫し,高年齢者雇用推進の反対圧力として作用していく可能性がある。これまで賃金カーブは多くの企業で定年まで昇給しつづける傾向を持ってきた。そのために,60歳代前半層雇用の検討に際して,年功賃金カーブの修正案が提起されてきたが(注30),X社はどの修正案も採用せず,現役世代賃金への影響をできうる限り回避し,定年後の大幅な賃金引下げによって対応してきた。
 X社の賃金体系は,成果給の割合が低く抑えられており,資格給と年齢給部分によってある程度年功的に上昇していくよう設計されている。また「職能資格制度」は知識・技能習得を労働者に促すと同時に,職能が賃金と連動していることから,「年功賃金体系」や「福利厚生制度」とともに労働者を長期の契約にとどまらせる作用を持っている。X社ではこのような長期勤続の結果としての,定年前の安定的な給与と定年後の十分な退職金と年金を担保として,定年後の低賃金化が当事者にとってはある程度の納得性をもって,また現役従業員に対しては説得力をもって実現されているということができる。
 またX社における雇用継続では,役職待遇は外れ,定年前と立場が大きく変わる。これに対する当事者と職場の意識変革は,第三者機関である高年齢者会社XA社と人事部門関連会社XB社を通じて,雇用契約がX社本社から切り離されることによって促されている。XA社とXB社が,当事者と職場の摩擦を回避する緩衝材として機能するために,また過去に多くの前例を出している経験とにより,立場の変更に対する理解が当事者と職場双方で高められていると考えられる。
 さらに,賃金や立場の変更に対する納得性は,外部労働市場に出た場合に想定されるリスクの存在によっても高められる。外部労働市場を通じ新たな契約を見いだすまでの探索コストと移転コストとを比較した場合,X社の賃金は当事者にとっての納得賃金となり,現在の職場にとどまることへの納得性が高められ,契約内容の妥当性が確認されていくと考えられる。
 このように契約内容の受容の過程は企業内外の社会関係の中で行われていき,最終的には契約内容や当事者の立場への正当性(legitimacy)が確立されていく。つまり労使間また労働者間で,その契約は心理的に正当化される。このような過程を通じて心理的な納得性を維持していく契約をMorishima(1996)は心理的契約(psychological contracts)と呼んだ。X社の雇用継続は,心理的契約を基礎として,当事者と職場双方に,大幅な契約転換に対する合意が形成されていくことによっても支えられている。60歳代前半層の雇用に求められる人事管理システムの第3の条件は,契約転換の合意形成に結びつく,契約内容の受容に向けた納得的な心理的契約の構築である。
 以上のように,X社の高年齢者雇用は,雇用される能力を育成するシステムと,選抜や契約転換の合意メカニズムを,これまでの人事管理システムの中に組み込み,経営活動の一部とすることで,雇用継続制度が円滑に機能しているために実現されていると考えられる。



V 結  論

 本稿は,事例X社の分析を通じて,企業が雇用継続制度を導入する場合に求められる,人事管理システムの条件とその仕組みを検討してきた。これまで雇用継続制度の円滑な運用を困難とさせていた問題として1)企業側の必要能力と定年者側の保有能力の格差による能力のミスマッチ,2)雇用継続者の選抜に伴う摩擦問題,3)雇用契約の受容の困難性が挙げられてきた。だが,分析の結果,事例企業ではこれらの問題が次のような条件によって解決されていた。第1に企業にとって必要な人材の内部での育成,第2に自己選別を可能とする人事施策の策定,第3に契約内容の受容のための心理的契約の構築である。
 これらの条件が,これまでの制度的雇用慣行との複雑な連関関係の中で,雇用継続の仕組みとして従来の人事管理システムの中に再構成されている。以上の条件と仕組みによって,X社では雇用継続制度が円滑に機能し,持続可能な高年齢者雇用が実現されていた。雇用継続における三つの課題を解決している人事管理システムは,結果として,社会的要請としての高年齢者雇用の拡大を,経済組織としての経済性追求活動に結びつけることを達成するものであったことが指摘できる。
 最後に,本研究から導かれた若干の含意を述べておきたい。
 事例X社の場合,定年後も雇用される人材が持つ職務能力は,長期安定的な雇用関係の下で形成されていた。そして選抜や契約転換に対する合意もまた,長期的関係を土台として達成されていた。長期勤続の傾向は,X社の製品特性に由来し,経営上の人材戦略の結果としての特徴である。このように人事管理のあり方は各企業の持つ経営特性や戦略に依存するといえよう。しかし各企業が求める知識・技能を理解し習得し,企業業績に結びつくまでに発現させるという一連の行為を,普通に想定されるような,平均的な能力を持つ一般的人間が短期間で達成できるとは想像しがたい。また自己選別や契約内容を受容していく仕組みが,短期的関係の中で形成されることは困難と考えられる。ここから,定年後も雇用される職務能力の獲得や,自己選別や契約転換への合意形成のためには,企業側と労働者間に信頼を軸とする,ある程度の長期安定的な関係が重要な役割を持つものと考えられる。そして本稿の分析が示すように,高齢期の雇用が入社以降の能力育成に依存しているのであれば,企業には労働者の定年後の雇用継続に対しても少なからず責任がある。今後企業が高年齢者雇用という社会的要請に応えていくためには,個々の労働者の能力育成を意図した人事管理を行っていくことが求められる。同時に,労働者側は自らの能力開発に関心を払い,キャリアの選択に積極的に参加していく主体となることが望まれる。
 また,高年齢者雇用の実施には,本稿の事例のように雇用継続者を選抜しなければならない場面もありうる。しかし事例では当事者間のみならず職場内の関係維持のために,直接的な選抜ではなく,「自ら気づかせ,選択させる」潜在的な選抜が行われていた。また定年後に大きく変更される契約内容の受容は,その契約が法的な契約としてではなく,極めて漠然とした各人の納得性をよりどころとする心理的契約として成立しているために達成されていた。高年齢者雇用の拡大には雇用継続制度が円滑に機能していくことが必要であるが,このとき,人間の心理に配慮した人事施策が求められているといえるだろう。
 本稿は雇用継続に求められる人事管理システムの条件と仕組みを考察してきたが,その結果は以上のように,高年齢者雇用の拡大には,定年前後の短期的な人事管理ではなく,場合によっては入社にまでさかのぼる,より長期的な視点に立った人事管理が求められていることを示唆するものであった。無論,ここでの議論は,社会的なトレンドとして提起されている定年制廃止を見込んだものではない(注31)。また,定年者が大幅に増えたときにもこのシステムは機能するのかという疑問もあろう。だがこのシステムは労働需給のバランスをある程度調整する仕組みと考えられるため,定年者が増加した場合にも機能していくと考えられる。ただし社会的責任としての側面を考えた場合には,いくつかの修正が必要とされる可能性はあろう。
 けれども現状の企業にとっては,高年齢者雇用を行う際の現実的な人事管理システムといえる。現在,年齢を基準としない雇用関係の構築とともに,高年齢者の能力を企業枠を超えて活用していくために,労働市場を流動化させる必要性が説かれている。しかしその仕組みを支える制度は,業績と報酬を連動させる個別的,成果主義的な人事制度と考えられ,これらは,これまでの雇用関係をより短期的に決済させていく可能性を持っている。しかしながら本稿が扱った事例企業では,長期的関係を土台とする人事管理システムを限りなく維持するなかで,持続的な高年齢者雇用が実現されていた。この二つの考えがどう関連していくかは,これから研究を進めるうえで必要な視点となろう。
 なお本研究には,いくつかの検討すべき問題が残されている。まず,1社の事例分析から得られた結果には少なからず限界がある。ここで示された条件と仕組みの普遍妥当性を検討するために,今後他企業,他産業の分析が求められる。また本分析では,同一職能内に長くとどまることによって,職務能力が高められていることが指摘されたが,そのなかで,どのような仕事をどのようなタイミングで経験してきたかが,職務能力の形成に影響を与えるものと考えられる。仕事経験のタイミングと能力形成に関する考察は今後の課題とし,別稿に委ねたい。

*本研究を進めるにあたり,聞き取り調査にご協力くださいました皆様と,貴重なデータを公開し,調査の機会を与えてくださいました事例企業の人事部の方々に深くお礼を申し上げます。また,この論文をまとめるにあたって,多くの時間を費やしご指導くださいました守島基博先生(一橋大学)と,貴重なご助言をくださいました佐藤博樹先生(東京大学),林大樹先生(一橋大学),佐藤郁哉先生(一橋大学),丁寧かつ的確なご指導とご配慮をくださいました本誌匿名レフェリーの先生方と編集部の方々に心から感謝いたします。なお,本稿は『日本企業の高年齢者再雇用メカニズム――企業特殊スキル,低賃金,摩擦の解消』(一橋大学大学院商学研究科修士論文)に修正・加筆を施したものであり,論文の作成では,伊丹敬之先生(一橋大学),谷本寛治先生(一橋大学),李亨五先生(現淑明女子大学(韓国))にご指導いただきました。ここに記して感謝の意を表します。


注 1)その雇用形態として,定年年齢自体の引き上げを除く再雇用,勤務延長などが挙げられる。なお定年前に所属していた企業には,関連会社を含む事業所が含まれる。本稿が扱った事例企業では,多くの関連会社が設置されており,若年期からの関連会社への出向が本社内部の異動と同じように常態化している。このような事例企業の経営特性から,ここでは定年後の雇用継続を,関連会社を含む企業グループでの雇用ととらえることが適切であると判断された。

注 2)たとえば労働省職業安定局(1997),清家(1998),高田ほか(2001),(財)高年齢者雇用開発協会(2001)など。

注 3)数値は55歳以上男性労働者の就業希望状況を表す。また定年前企業での就業希望者比率は,子会社・系列会社を含む企業グループでの就業希望状況を表す。

注 4)労働大臣官房政策調査部(1997)。

注 5)日本労働研究機構(1998)。再雇用・勤務延長制度の設置率は,労働大臣官房政策調査部(2000)。

注 6)労働大臣官房政策調査部(2000)によれば,雇用継続制度を設置する企業のうち,希望者全員に制度を適用する企業は,再雇用制度では26.8%,勤務延長制度では32.8%であり,さらに適用者を限定する企業においても適用率を50%以下とする企業が半数を占めている。

注 7)労働大臣官房政策調査部(2000)の企業調査では,企業(5000人以上規模)の高年齢者雇用における課題として,「賃金体系(67.0%)」「勤務時間・勤務形態(56.9%)」「職務内容・作業環境(55.7%)」「処遇・ポスト不足(44.3%)」が上位に挙げられ,また藤村(2001)および藤村・松村(2001)においても,60歳代前半層の雇用にかかわる課題として,「能力開発」「仕事内容」「賃金を含む処遇体系」が指摘されている。

注 8)本社従業員数データは2000年3月現在(X社のホームページから)。60歳以上従業員数データは2000年11月14日人事担当者へのインタビューによる。また,高年齢者会社XA社の雇用継続の仕組みは,2002年4月から人事部門関連会社XB社に引き継がれ,個人事業主としてXB社と契約することによって行われている。

注 9)なお,本社で定年を迎えた82名では,67.1%にあたる55名が雇用継続されている。本稿ではインタビューと人事情報の入手が可能であったX社本社の定年者に絞り分析を行った。

注10)インタビューを行った雇用継続者18名には,2001年9月期以外の定年者4名が含まれる。

注11)本稿では,「キャリア」を「ジョブ・ローテーションや人事異動によって職務経験を積み,経営活動に貢献する職務能力を形成する過程」と定義する。またジョブ・ローテーションは職場内の配置の移動を,人事異動は同一職能内もしくは異なる職能分野への配置の移動を指し,種類としては職場間,事業所間異動がある(佐藤・藤村・八代,1999)。

注12)小池(1997),(財)高齢者雇用開発協会(1999b),日本労働研究機構(2000)など。

注13)ただし本調査の事例を見る限り,当該定年者に能力があるとみなされた場合には,関連する他部署での就業が実現されているようであった。

注14)また,同一職能内での仕事の種類と経験のタイミングなど,能力を蓄積するうえで必要とされる「キャリアの連続性」に問題があった場合も考えられる。この点に関してはより詳細な分析が必要であり,今後の課題としたい。

注15)雇用・就業希望の状況は,2001年5月に行われた定年後の雇用・就業に関する意識調査票を基本とし,その後のインタビュー調査および資料をもとに実質的な状況を割り出している。たとえば調査時に本人が就業希望を出している場合でも,その後進路を変更し最終的には就業を希望しない場合がある。また同様に,職場でも調査時には要請を出していながらも,その後の需要の変動により最終的にはその要請を取り消す場合がある。本表はこのような調査後に生じた変更を,インタビュー調査と面接記録,本人と人事部とのやり取りで残された手記やメールをもとに再集計し,最終的な数値を算出した。

注16)職場の意向を代表する所属長と定年者本人との間で,前もって打診し合う場合もあるが,これは両者が共に就業希望と雇用要請を出すものとして見当がついている場合に限られる。また所属長が当事者に対して温情から雇用希望を出すような場合もおおむねないという。調査の目的が,当事者の人材としての必要度を問う極めて繊細で微妙な内容を含んでいるために,調査は最終的には個別的に行われるという(2001年10月15日インタビューによる)。

注17)たとえば出向に限っていえば,X社の出向者数は常に1500名前後におよび,他社と比較した場合でも異動の範囲が広く回数が多い。データはやや古くなるが,比較のために数値を挙げると,1997年の平均出向者数378.5人(1000~9999人企業規模,サンプル数110社)に対し,同年X社の出向者数は1437人であった(日本労働研究機構,1999)。

注18)なお表4にあるように,2001年9月期の場合,所属部署ではなく他部署での就業を希望し,雇用継続が決定した人は3名いた。このような就業の場合,本人の他部署での就業希望を受け,その後人事部を通じて当該部署に伝えられることによってマッチングが実現している。本人の従来部署での調査結果は「同部署でのニーズはないが,他部署での就業を奨励する」という内容のものであった(職場用調査票による)。

注19)就業希望を出す者と出さない者に関して,同一職能内年数とキャリアの比較を行った結果,両者に違いがあることが確認された。同一職能内年数の平均値は就業希望者の場合,生産系32.74年,営業系35.68年であるのに対し,不希望者は,生産系29.90年,営業系29.17年であった(なお経営・企画はサンプル数に制約があり算出していない)。また就業希望者の場合,約7割以上が各職務における代表的なキャリア・タイプに適合する人材であるのに対し,不希望者の半分はキャリア・タイプに一致していなかった。ここから,就業希望を出さない人は,キャリアを通じて雇用継続されるのに必要な職務能力を十分に獲得できなかった人であることが予想される。

注20)事例を分析する限り,雇用継続される可能性がないと感じた定年到達者は,就業希望を出さない傾向があるものの,いくつかの例外がある。2001年9月期の定年者のうち,職場からの要請がないが,本人が就業希望を出している例が4件あった。このうち3名は人事部の職務開発によって雇用継続が実現された(2001年9月28日インタビューによる)。このような雇用は,企業の社会的責任という側面からの雇用といえよう。また,他社への転職希望者に対しては,中高年齢者専用の求人情報ファイルが用意されており,希望者は随時閲覧できるようになっている。具体的な転職希望者に対しては,受入れ会社とのやり取りを人事部が一括して行っている。このような転職を含むキャリア相談は,55歳,58歳,59歳時のキャリアカウンセリングで必ず行われ,本人の意思が確認されている。ただし実際に転職希望を出すものは少なく,また転職を実現した者は,おおむね同社での雇用継続も可能と思われる能力の持ち主であるようであった。つまり定年後の就業が困難と自ら判断した者の多くは,同社での雇用継続も転職も希望せず,引退していく傾向にあると考えられる。

注21)約9割が従前の部署に派遣されて就業するため,定年者の従事している職務の範囲は極めて広くなっている。また勤務条件は,それぞれが就業する部署と同じに設定されており,その結果,勤務時間も定年前とおおむね同様となっている。ただし例外はあり,2001年9月期定年者では業務委託契約者2名が週4日勤務に定められた。

注22)XA社との契約の場合,年収は月額10万円と年8カ月分の賞与と期末手当により210万に設定されている(ただし,当初在職老齢年金を80%受給できるように設定されたこの金額は,現在の最低賃金法を下回るために,検討が行われている)。また業務委託契約と専門社員契約の場合は,定年前年収の約3分の1に定められている。雇用継続者はこれに各種年金を合わせ,いずれの契約においても500万円以上の収入が保証される(ただしこの金額は年金満額支給開始年齢に達した場合を表す)。また派遣元にあたるXA社とXB社は,それぞれ業務委託料として月額23万1000円,契約者賃金の8%を手数料として受け取る仕組みとなっている。役職に関しては例外があり,2001年9月期定年者では業務委託契約者3名が,その職務を遂行するうえでの必要性から部長付が認められた。

注23)出向先企業との直接契約の場合,新たな雇用主であるX社関連会社もしくは他社との規約の中で雇用が成立していくため,事実上X社の契約規定の適用外にある。しかし,出向先企業との直接契約による雇用継続者もまた,4)を除いておおむね同様の契約内容となっている(2001年11月2日インタビューによる)。

注24)2001年9月~11月インタビュー調査による。ただし,本人と職場の就業・雇用希望の一致がありながら就業しなかった者の一部と,他社への再就職検討者は,その背景に契約に対する不満があることが予想される。この数は本社定年者82名中4名であった。また進路未定者3名は,契約に対する潜在的な不満者である場合も考えられる。

注25)X社は成果主義的賃金制度を比較的早期に導入しているが,人事考課によって変動する成果給は給与構成の1割にとどめられており,また年齢給の漸増は47歳までとされているが,職能資格はある程度年功的に昇級していく。したがって,定年までの給与は年齢給と資格給によりある程度年功的に上昇していくようになっている。なお非管理者層の場合では,給与構成は年齢給6割,資格給3割,変動給1割となっている。

注26)2001年9月~11月インタビュー調査による。

注27)XA社全社員196名(1997年4月1日当時)を対象としている。

注28)これまで「技能」「知識」「(職務)能力」という用語は,用いられる文脈や依拠する研究分野によって,多義的もしくは明確に区分されることなく利用されてきた観がある。本稿は,「技能」を「職務に必要な個々の機能(職務要件)を遂行する能力」,「知識」を「技能を発揮する際に,適用が可能となる知識・技術体系」,そして「(職務)能力」を「技能,知識の組み合わせであり,またこれらによって規定される行動,態度,価値観の総体」と定義する。また職務能力は,職務をベースとする「職務適用能力」「職務関連知識」,人間をベースとする「人間関係技能」「人間関連知識」に区別される(Katz,1955;Perlmutter and Hall,1992;田中,2001)(以上は伊藤(2001)に詳しい)。本稿は前者を総じて「職務に対して特殊化したスキル(job-specific skills)」,後者を総じて「組織関係性に対して特殊化したスキル(organization-specific skills)」と概念化している。

注29)「経験・技能幅の程度」が「組織関連的」であるためには,特定組織への帰属がある程度必要と考えられる。つまり,長期的雇用関係と雇用の内部化がその土台といえる。一方「経験・技能幅の程度」が「職務関連的」である場合,その職務能力は,職務単位でくくられるため,企業間を横断することが可能と考えられる。ただし,求められる「知識・技術体系の種類」が「専門的」であるほどに,職務能力を発揮する際に必要となる知識・技術体系は,Williamson(1975)が言うように,職務自体の複雑性の中にはめ込まれた職務の特異性によって特徴づけていると考えられる。多くの場合その職務は組織体系の中に位置づけられており,その意味で専門的な知識・技術体系は分離不可能性が高く,他への移転コストは高くなると考えられる。他方,「知識・技術体系の種類」が「一般的」であれば,他企業への転用は比較的容易といえる。だがこの場合にも「経験・技能幅の程度」が「組織関連的」であれば,特定組織への帰属が必要となる。したがって,ここで示された3種の人材像はいずれも,ある程度特定組織との間の「封じ込められた(locked-in)関係」の中で,結果的に定年後も雇用されるような高い職務能力を蓄積してきたという共通の特徴を有していると考えられる。

注30)(財)高年齢者雇用開発協会(1998a)ほか。

注31)清家(2001),大橋(1998)ほか。


参考文献

伊藤謙治(2001)『情報化対応職務能力診断システムの構築に関する研究報告書』第3章,(財)高年齢者雇用開発協会。
猪木武徳(2002)「ホワイトカラー・モデルの理論的含み」小池和男・猪木武徳編著『ホワイトカラーの人材育成』第2章,東洋経済新報社。
大橋勇雄(1998)「定年退職と年金制度の理論的分析」『日本労働研究雑誌』No.456,pp.11-20。
小池和男(1997)『日本企業の人材形成』中公新書。
(財)高年齢者雇用開発協会(1998a)『65歳定年制を導入する際の賃金制度の在り方に関する調査研究報告書』。
(財)高年齢者雇用開発協会(1998b)『エルダー』「特集 21世紀を活かす高齢者の能力を活用する企業事例」pp.17-24。
(財)高年齢者雇用開発協会(1999a)『継続雇用者に関する従業員意識調査結果報告』。
(財)高年齢者雇用開発協会(1999b)『継続雇用者の人事管理システムのあり方に関する調査研究報告書』。
(財)高年齢者雇用開発協会(2001)『60歳台前半層の雇用延長の制度化を進めるための方策に関する研究報告書』。
佐藤博樹・藤村博之・八代充史(1999)『新しい人事労務管理』有斐閣。
清家篤(1998)『生涯現役社会の条件――働く自由と引退の自由と』中央公論社。
清家篤(2001)「年齢差別禁止の経済分析」『日本労働研究雑誌』No.487,pp.44-56。
高田一夫編(2001)『高齢化に挑戦する労働組合』第一書林。
田中丈夫(2001)『ホワイトカラーと経営革新』白桃書房。
日本労働研究機構(1998)『中高年者の転職実態と雇用・職業展望』No.111。
日本労働研究機構(1999)『出向・転籍の実態と展望』No.126。
日本労働研究機構(2000)『職場における高年齢者の活用等に関する実態調査』。
藤村博之(2001)「60歳代前半の雇用継続を実現するための課題」『日本労働研究雑誌』No.487,pp.31-43。
藤村博之・松村文人(2001)『高齢化時代への労使の対応』中部産政研。
労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部(1997)『65歳現役社会の政策ビジョン――構築のためのシナリオと課題』。
労働大臣官房政策調査部産業労働調査課(2000)『雇用管理調査報告』。
労働大臣官房政策調査部(1997)『平成8年高年齢者就業実態調査報告』労働大臣官房政策調査部。
 Katz, R. L., (1955) Skills of an effective administrator, Harvard Business Review, No.33, 1955, pp.33-42.
 Morishima, Motohiro, (1996) Renegotiating Psychological Contracts: Japan Style, in Cooper, Gary L. and Denise M. Rousseau, Trends in Organization Behavior, Vol.3, John Wiley & Sons, pp.139-158.
 Perlmutter, M., and Hall, E., (1992) Adult Development and Aging, John Wiley & Sons.
 Williamson, Oliver E., (1975) Markets and Hierarchies: Analysis and Antitrust Implications, New York: Free Press.

〈2001年6月6日投稿受付,2002年10月11日採択決定〉


 たかぎ・ともよ 一橋大学大学院社会学研究科博士課程在学中。主な論文に「高年齢ホワイトカラーの能力とキャリア――雇用継続者選別の論理と条件」『日本労働社会学会年報』第13号(2002)。人的資源管理論専攻。