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E1998120001
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登録(調査)年月 |
1998年12月現在
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シリーズ名 |
調査研究報告書 No.116
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報告書等題名 |
高専卒業者のキャリアと高専教育
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分類 |
職業教育・進路指導
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実施組織名 |
日本労働研究機構
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研究参加者 |
本田 由紀、新谷 康浩
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報告書等 | ||
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1998年10月発表
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日本労働研究機構
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B5判/261
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発表
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販売
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要旨 |
【調査研究の目的】
高等専門学校(高専)は、六三三四制の枠を超えて高度な技術教育を施すユニークな教育機関である。この高専の卒業生がどのような職業キャリアをたどり、そのキャリアにおいて高専教育がどれほどいかされているのか。高専入学時および卒業時の進路選択はどのように行われているのか。高専卒業後に大学に編入する者の増加は、高専教育の内部過程にいかなる影響を及ぼしているのか、本調査研究は、これらの点について明らかにすることにより、専門性の高い学校教育と労働市場の接合の将来像を探ることを目的とする。 【調査結果の概要】 (1)高専卒業者の職業キャリア 高専は従来、第2次産業大企業技術職の人材を典型的に要請していたが、その割合は明らかに減少しており、第3次産業やより小規模な企業が増加している。その変化が著しいのは情報系など新しく設置された非伝統学科である。高専卒業者の転職率は、卒業後3年間で約2割、卒業後10年間で4割弱であり、最初の勤務先規模が小さいほど転職率が高い、転職理由は、近年のほうが「他に魅力ある仕事があった」という積極的な理由および家事都合などのやむをえない理由が減少している。転職によって企業規模や給与などの労働条件は低下しても、仕事の質そのものは向上している場合が多い。 (2)職業能力形成における高専の役割 高専教育で身につけた専門性が生かされている度合いが大きいのは、第2次産業大企業技術職というこれまで典型的な高専卒の就職先である。企業における能力形成の方針は、大企業技術職で積極的であるが、その積極性も近年では低下している。高専教育はいかなるタイプの職業キャリアの者にとっても、能力形成において重要な位置を占めている。ただし高専が十分に役割を果たしうるのは能力のうちでも「職業専門知識」の獲得に関してであり、この能力は一企業に定着して技術職のみを経験してきた者には必要性が高いが、それ以外の職業キャリアの者にとっては必ずしも重要でない場合もある。 (3)企業内での高専卒業者の処遇 高専卒業者の処遇は、労働条件面では「大学工学部卒と高卒の中間」という位置づけがある一方で、仕事内容に関しては「大学工学部に類似」した処遇を受けている。このように大卒と同等の仕事とをしながらも賃金などの労働条件が大卒より下であることに対する高専卒業者の不満もかいま見られる。高専卒業者にとって非典型的な就職先である職場においては、高専卒業者の処遇が相対的に低くなるか、もしくは曖昧なものとなる傾向がある。現在の勤務先において高専卒業者が到達している最高位は、全体的には「課長レベル」という回答が多くなっている。この点についても、高専卒業者にとって典型的な職場においてはそのような明確な最高位がみられるのに対して、非典型的な職場においては、それが不明確なものとなっている。年収についてみると、技術職、大企業といった高専卒業者にとって典型的な職場では年収が高い。 (4)中学生の進学先としての高専の位置づけ 高専への入学者は、中3時の成績が高いこと、実際に入学した高専・学科を第一志望としていたものが多いこと、専門的知識の取得や技術への興味を受験理由としている者が過半数を占めることなどを特徴としており、高専への進学に際しての進路選択は全体としては適切に行われているといえる。しかし他方で、中学の教師や家族などの勧めにより、成績による振り分けなどを理由として、受験の間際になってから高専への進学を決めた者も一部に存在しており、中学での進路指導には改善すべき点も残されている。高専進学の際の動機や経緯は、高専在学中の諸活動の活発さ、最終学年での教育達成、卒業後のキャリアへの満足度などを左右している。総じて、高専の教育内容そのものへの自発的な興味・関心に基づいて高専に入学した者が、高専教育に高い適合性を示している。その一方で、高専入学後に自らの進路選択の間違いに気づき、進路変更を望むものも少なからず存在しており、そのようなケースに対応しうる制度的柔軟性をいかにして導入するかが課題となる。 (5)高専在学中の学校生活 高専の学生は専門科目、特に実験・実習には積極的に取り組む傾向が見られるが、人文・社会系の一般教育については、カリキュラムの中で量的にも少なすぎ、内容的にも充実していないという声が強い。高専の長所として、大学受験に縛られずのびのびと学校生活を送れるという点を多くの者が挙げているが、同時に、交際範囲の狭さや学業の中だるみ、施設・設備の不備を指摘する声も過半数に達している。学校生活の諸側面への取り組みの熱心さや、最終学年における教育達成は、卒業後に大学編入を予定しているか就職を予定しているかによって異なるだけでなく、編入先大学や就職先規模とも関連している。半数以上の学生が、主に第4学年の夏休みに企業実習を経験しており、実習期間の長さや実習先、有効性などには学科などによって相違がみられる。 (6)高専における就職先決定過程 高専卒業後に就職することを決めた時期は高専入学前と高専高学年とに二極分化しており、前者の場合には積極的な理由から就職を選んだケースが多いが、後者の場合には大学編入には学業成績が十分でないなどの消極的理由から就職する者も含まれる。具体的な就職先の決定は、高専に来た求人や高専の教授の勧めなどに基づいて、最終学年の春から初夏にかけて急速に行われる。就職先企業規模は、高専5年時の学業成績や高専在学中の諸活動の熱心度、就職プロセスなどに影響されている。 (7)大学編入者の増加に伴う諸変化 大学編入率は、87年卒の約1割から94年卒では2割以上に拡大しており、大学編入者は主に高専での成績が上位の者である。編入増加に伴い、編入先大学は技術科学大学以外の多様なタイプの大学へ、編入先学部も工学部から他の理系学部へと多様化している。進学機会の拡大により、大学編入を動機として高専に入学した者も増えている。大学編入希望者の増加に対して、高専側も編入試験への準備など多様な支援を提供しはじめている。大学編入後には、語学面ではギャップがあり、専門教育は重複しているという点で、高専と大学の教育内容の接続に問題がみられる。編入先の多様化により、大学生活に溶け込みにくいと感じる者も増加傾向にある。大学編入者の7割前後は大学院に進学しており、高専卒業後すぐに就職した者との間で、長期的な職業キャリアに相違が生じている。 (8)高専教育に対する卒業生の評価と意見 高専卒業者の間で、高専の教育内容や自らの進路選択に対する満足度は全体にかなり高く、大学編入者や、高専卒業後に高専教育を活かせる職業キャリアをたどってきた者において特にその傾向が強い。しかし高専教育に対する意見や評価には卒業者の中で分散が大きく、その分散はやはり卒業後のキャリアに強く規定されている。キャリアと意見の組み合わせから、高専卒業者のなかには、高専で得た知識を生かせる職業を経験してきた「典型的高専卒」グループ、大学編入者を多く含みアカデミックな教育内容を望む傾向が強い「超・高専卒」グループ、高専教育と関連の弱い職業の経験者の比率が高く教育内容に関しては実戦性志向が強い「周縁的高専卒」グループという、大きく3つの類型が見いだせる。 |
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目次 |
第I部 総論
序章 調査研究の目的・方法と各章の概要 1 調査研究の目的 2 調査の実施方法 3 各章の概要 第1章 既存データからみた高専の特徴 1 はじめに 2 学校としての高専の特徴とその推移 3 卒業後の進路とその推移 4 おわりに 第II部 高専卒業者の職業キャリアと職業能力形成 第2章 高専卒業社の職業キャリアパターン 1 本章の分析課題 2 初職への参入形態の分布とその変化 3 現職の勤務状況 4 転職経験 5 地域移動 6 キャリア類型 7 まとめ 第3章 職業能力開発における高専の役割 1 はじめに 2 初職と現職における専門生と高専教育との関連度 3 企業における継続教育訓練の方針 4 職業キャリアと継続教育訓練 5 職業キャリアと継続能力形成の可能性 6 まとめ 第4章 高専卒業者の企業内地位 1 はじめに 2 高専卒業者の処遇 3 高専卒業者の最高位 4 現職の年収と週平均労働時間 5 まとめ 第III部 教育機関としての高専 第5章 進路としての高専の位置づけ 1 本章の分析課題 2 高専という進路選択に至る過程 3 進路選択過程がその後に及ぼす影響 4 まとめ 第6章 高専在学中の学校生活 1 本章の分析課題 2 高専在学中の学校生活の概観 3 学校生活と高専教育への適応 4 学校生活と高専卒業後の進路 5 企業実習の実態と機能 6 まとめ 第7章 高専における就職先決定過程 1 本章の分析課題 2 高専における就職プロセス 3 就職結果の規定要因 4 まとめ 第8章 大学編入者の増加に伴う諸変化 1 本章の分析課題 2 大学編入の増加に伴う諸変化 3 大学編入、編入先の規定要因 4 高専卒業後就職者と大学編入後就職者の職業キャリアの比較 5 まとめ 第9章 高専教育に対する卒業生の評価と意見 1 本章の分析課題 2 進路選択・高専教育・キャリアに対する満足度 3 高専教育に対する評価と意見 4 まとめ 付属資料A 調査票 付属資料B 基礎集計 付属資料C 自由記述 付属資料D 3高専のヒアリング調査結果 (1)A高等専門学校 (2)B高等専門学校 (3)C高等専門学校 |
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問い合わせ先 |
独立行政法人 労働政策研究・研修機構
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労働図書館所蔵・非所蔵の別 |
所蔵
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研究する上で実施した検査 |
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実施した
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郵送による自記式調査。1998年2月に調査票を発送したのち、3月に未回答者の中から4,000名をランダム・サンプリングして再度調査票を発送。
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全国56校の高専を1987年3月および1994年3月に卒業した者のうち住所が卒業生名簿に記載されていた13,378名(有効回答2,019票、回収率15.1%)。
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1998年02月
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1998年03月
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高専受験理由、志望順位、中学3年時学業成績、在学中の諸活動の熱心さ、教育内容・学校生活への感想、企業実習の内容、就職プロセス、大学編入動機、編入後の大学生活、最初の職場と仕事の特性、離転職経験、現在の職場と仕事の特性、処遇、職業能力開発経験、高専教育に対する評価など
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情報入手方法 |
アンケート以外
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全文情報 |
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